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フラワーアルケミストと異世界旅行 作者:此峰 優
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下らない"協会"

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「みんな!帰ったよ!!」

「レン!無事だったか!!」

「レン…!追われていると話を聞いて…今俺達が迎えに行こうと…。」

「レン!おかえりなさい!」

「その必要は…無かったみたいだな!おかえりレン!ガハハ!」

「お父さん!」

 レンはある小屋の扉を開けると…そこには彼女を待つ仲間達が、血相を変えた表情で出迎えた。

 彼等の言うとおり、レンが追われている(むね)の情報を得て、助けに飛び出そうとしていたらしい。

 仲間達と、その奥…レンの父親と思わしき大きな背丈の男の人。
 仲間達も今見えるのは男二人と女性一人だ、男性陣の彼等はレンの小さな身体とは比にならない背の高さだ、俺よりも上か?。

 女性は大人しそうに見えるが…その質素な服装に似合わず、腕やふくらはぎに見える筋肉がその素性を露にしていた。

 そんな彼等の胸に抱かれながら、レンは無事に帰還した喜びを彼等と分かち合っていた。

 すると、扉の前で腕を組みながら、この状況を冷静に眺め…微笑んでいる少年の姿が、彼等の目に映った。
 その再会ムードを一瞬にして警戒の雰囲気に変えてしまう…が、レンは慌ててその少年の説明をした。


「誰だ…?まさかレンつけられて…」

「ち、違うの!この人は…。」

※※※

 ここは東の大陸の町の町外れ(アンダーシティ)
 大きなあの町とは雰囲気が全く違う、どちらかと言うと静かな農民や老人が住んでいそうな、田舎…と呼ぶべき場所だった。

 町から歩いて30分ほどだ、草木は生い茂り、自然そのままの姿を保たせたまま、木に直接家を作るなどと言った風景の広がる、不思議な場所だ。

 畑や他の小さな家も見える、ここはどうやら村落になっているようだった。

 その村落の小さな一軒家…そこが"彼等"の隠れ家だった。

「俺は竜之介…この"錬金術協会"とやらを見に来た、よろしくな?

 一応だけど、怪しい奴じゃないからな!?」

 竜之介が自己紹介を済ませると、レンの父親と見た大きな男の人が、勢いよく手に持っていたドリンクを飲み干すと、笑いながら話始めた。

「ガハハハ!!疑ってすまなかったな少年!
 この組織柄(そしきがら)…追われる事もあってな!いやはや…慈善団体も楽じゃないな!ガハハハハハ!」

「誰かに常に追われる慈善団体があってたまるかッ!
 そんなのは慈善団体じゃなくて偽善団体だろ!もしかして変なこと裏でやってるんじゃ無いんだろうな!?」

 少年…竜之介が彼等にツッコミを入れるようにそう言うと…それまで歓迎ムードで仲良く出されたお菓子やらを摘まんでいた彼等は、急に口笛を吹いたり神に祈りを捧げたり…一発芸をやり始めた。

 チラチラとこちらを見ながらそう無理やり話を逸らそうとする姿は滑稽(こっけい)で、実に分かりやすかった。

「あのな!?そんな誤魔化しが聞くと思うか!? 全く…どんな奴等が錬金術を広めようとしてるかと思えば…とんだやんちゃ者ばかりって訳だな…はぁ…。」

 思わず竜之介もため息を隠せず、その様子に彼等も申し訳なさそうにお菓子をちびちびとかじっていた。

 そんな彼等をフォローするように、レンは困惑しながらも竜之介を説得した。

「た、確かに!元々みんな盗賊だったり…荒くれ者だったりしたけど……でも!わたしとお父さんが説得して、それで改心したの!
 でも彼等もわたしも情報を売ることやその…そう言うことしか出来なくて…でもでも!そこである物を見つけたの!見てください!」

 レンがそう言うと取り出したのは、古びた一冊の本だ…比較的新しい本の様に見えるが、これが彼等をこの行動に駆り立てた原因となったものらしい。

 俺はそれを手に取り、表紙を(めく)ると…そこにはびっしりと書かれた源の言葉(ファフト)が現れた。
 あまりにも小さく書かれているが…何とか読むと、どうやら文章…いや、日記の様だ。

 レンがふと、とある一文を指差す。
そこから俺は読み始める…すると、とある文章が浮かんできた。

「『錬金術は全ての人を救う力であり…殺す力でもある。
 だが、その力に差別は無い…扱えるもの全てが人とも神とも成り得る存在へと変わるのだ。

 その力に罪はない。故に裁きを恐れない。

 錬金術は…全てを与える力であり…奪う力なのだ』……か。」

 竜之介が読んだその文章…それの意味はハッキリとは分からない…と言うよりも何か濁されたかの様な文面だった。
 だが、その文にはまるで『錬金術を扱えば等しい者と成れる』かの様な言い回しが感じて取れた。

 彼等にそれを伝えると…どうやらそれが彼等の"錬金術協会"発端の理由で間違いなさそうだ。


「等しい存在…あんた達は盗賊や荒くれ時代に起こした罪を、錬金術によって拭い…それを広めることで認めて貰おうって事か?」

 竜之介がそう言うと、彼等はパッと表情が明るくなり…途端に話に食い付いてきた。

 手に持っていたお菓子を放り出して、竜之介の側に近づき、ニコニコしながら身の上話を始めた。

「分かってくれるか!
 俺はジャック、昔は盗賊をしていて…それで町の皆から嫌われてるんだ…だから!その力を持てば皆に昔の事を忘れて貰えるかもって思ったんだ!」

「忘れる…?」

「きっと錬金術で嫌なことを全部取り払えると思うんだ…そうすれば!俺だけじゃない!他の同じ悩みを持った奴等にも幸福が帰ってくる筈なんだ。」

 ジャックと名乗る小太りの男性は、そう言うとお菓子を一気に頬張り、ご機嫌な様だ。
 次に話をしたのは、その男性に比べ痩せぎみの体型…右腕に傷がある彼だった。

「俺はカイン、小さい頃によく店の商品を盗んで…それを売って生活をしていたんだ。
 それで…その罪を償うために、錬金術でその盗品を返そうと…それならきっと許してくれると思って…。」

「許してくれる…。」

 と、まだ話をしようと思っていたカインと名乗る男性を押し退け、今度は比較的体型も顔も整った20代半ばと思われる女性が現れた。
 礼儀正しく礼をすると、彼女も話を続けた。

「どうも、私はクウォーラ…私も実は昔荒くれで…他の荒くれ仲間と共に動物の異常狩り(デハント)に参加し…動物を密猟していました。
 ですが、その者達と別れ…錬金術の力を信じ続ければ、きっと私達に狩られてしまった動物達も報われる事を出来るのでは無いかと思いまして!」

「………。」

 そのクウォーラと言う女性も、密猟で殺した動物達の無念を還したい…そう言って神に祈りを捧げ始めた。

 竜之介は、三人の話を聞いた時…にこりと笑ってお菓子を一つまみすると、それを口に運んだ。

 彼等の話を聞き終わった所で、竜之介が座っていたそのテーブルから立ち、その話をした三人に向かって、気になることを質問した。

「あんた達の錬金術に対する話は分かった…少し余談何だが、レンから講演とやらの話を聞いた…それを考えたのは誰だ?」

 竜之介がそう笑いながら言うと、ご機嫌にお菓子を頬張っているジャックが手をあげ、名乗り出た。

「俺だよ俺!王城前の通りで錬金術の素晴らしさを伝えれば、きっと分かってくれる人も居ると思ってな!」

「…無理やり強行してでも…か?」

「そうだよ!一度無理やりにでも見て貰えればその素晴らしさが分かる筈だ!差別も罪も関係ない!理想の力で皆幸せになるんだ!」

 と、ジャックが言ったところで、何かを悟ったレンが慌ててテーブルから降りると、彼等の前に立った。

 何かを伝えようとしているようだが、お構いなしにジャックは続けた。

「何だ?レンだって賛成しただろ?親父さんだって…なあ?」

「そ、それは…そうですが…。」

「親父さんとレンが錬金術の素晴らしさを教えてくれた…だから恩返しをしようと思っただけだぞ?何か俺悪いことでも…?」

 三人の仲間達が顔を見合わせて頭にはてなを浮かべている横で、竜之介が見たのは…必死に笑ってその話に会わせようと笑顔を絶やさないレンの姿と、それをぎこちない笑顔で見つめる父親の姿だった。



 すると、竜之介は急にため息を付くと…テーブルの横に置いたリュックを肩に背負う。
 そのまま背を向けて扉の方へと歩きだし…扉に手を掛けて開いた。

 その様子に慌ててレンと彼女の父親が止めた。

「りゅ、リュウノスケさん?何処へ…」

「何か…用事でもありましたかな?」

 そう言うと、竜之介は足を止め…ゆっくりと振り向いた。
 開いた扉から射し込む太陽の光…それを背に受け、影になった彼の顔からは、先程までの笑顔など何処にも無かった。

 冷たく重たい表情…主にレンを取り囲む三人に対してそれを向けていたのだ。

 三人はぎょっとした。

 まるで先程までの冷静で温厚そうな少年とは思えないその表情(かお)に…。



 彼はそのまま口を開き、彼等に言った。



「あんた達…さっきの話、実に良く分かった。
あんた達の苦労も、その歩みも手に取るように丁寧にな。

 だけどよ…あまりにもあんた達のその考えは…"錬金術には関係ない"事ばかりだ。

忘れる?許してくれる?報われる?

バカも休み休み言えよ…そんな事の為に錬金術を使うなんて愚かにも程がある。

 それに、皆認めてくれるだの何だの…そんなのはただの自己満足だ、そんな下らない綺麗事の為に錬金術を使うとか考えてんじゃねぇぞ!!

 錬金術って言うのはそんな単純な力じゃない…自然の力や、当人の精神力…そして並々ならぬ努力と苦労の末に、やっと使える"技術"だ。
 神の力?笑わせるな…見た目はどんなことも出来るように見えるかもしれないが、それは違う。

 イメージや努力、生活や自分の経験全てを、理想の形として産み出すこと出来る技術だ。
 時には自分の身体を危機に晒すことだってある…それをリスクにやる勇気がお前らにあるのか?

 少なくとも彼女には…フィオラにはあった。

 『自分の為じゃなく他人の為に』リスクを背負う勇気が…な。

 あと!言わせてもらうが…
 レンが追われていた理由は…ジャック、お前の考えたその自己満足で押し付けた価値観のせいだ、それが不満を買い、レンが追われる嵌めになった…。

 もしも俺が助けずにそのまま捕まればどうなっていたか分からない…年端も行かない小さな子供に大義名分と言う汚名を着せ、危機に晒したのはお前だ!!

 "錬金術協会"だなんて大層な名前で…慈善団体だなんて言っていたが、言った通り…それこそとんだ"偽善団体"だったわけだ。

 悪いけど…俺はあんた達に手を貸そうと考えていたがやめだ。


 お前達のやってることは…『殺す力と奪う力』に向かってるって事を胸に刻んで置くんだな…。」


竜之介は怒りを出来るだけ押さえた震えた声で、それでも充分に分かるように…彼等に強く言い放った。

 その言葉を受けた三人は…レンとその父親は、目を彼から離すことなく、口を空け…放心したかのように何も言うことは無かった。

 彼は最後に、一言言った。



「ああ、そのお菓子…旨かったぜ、ごちそうさん。」


 そう言うと竜之介は扉を閉め……その小屋を後にした。


 と、その姿を見届けた時、はっと放心状態から解放されたレンが慌てて身支度を整えると…勢いよく小屋の扉を開け、叫びながら出ていってしまったのだった。

 父親の止める声が後ろから聞こえていても…レンが小屋から出るのを止めることは出来なかった。



「ま、待ってくださいリュウノスケさん!!」

「こ、これ!レン!!戻るんだ!レン!」
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