錬金術?
閲覧ありがとうございます。
これを書いている時にまだ試作段階でしたので改稿が多いのですが…お許し下さい。
目の前の少女は確かにこう言った。
"錬金術を使える"と、そう言ったのだ。
俺は目をぱちくりしながら彼女を見つめ、彼女が嘘を付いているのでは?と考えていた。
しかしどうやら本当の様で、嬉しそうに俺の手を引っ張った。
「さあ!此方にいらしてください!実験室にお連れいたします!」
「ちょ、待ってくれ!マジか!」
「さあさあ!早く!」
少女は俺の手を嬉しそうに引っ張りながら実験室とやらに連れ込もうとする。
俺が知ってるのはゲームの話であってだな…でも今更言えないし、付き合うしかないだろう。
でも本当にそれが実話だとしたら…気にならないと言えば嘘になる。
そして俺はなされるがまま、彼女の実験室へと足を運んだ。
「ふふ…あんなに嬉しそうなお嬢様久しぶりに見ましたわね…。」
二人を見届けたリベルは、テーブルの上のお皿やお菓子を丁寧に取ると、静かに片付けを始めたのだった。
※※※
「さあ!ここが私の実験室ですわ!
中央にあるのが錬金用の装置です、箱の形になっている部分に好きな物をいれると錬金処理が始まりますわ♪」
「ほー…これが…」
目の前にあるのは奇妙な形をしたボックス。
所々青色のラインが光って見える。
機械…だろうか、それにしてはコードや電源の様な物は見当たらないし…珍しい物だな。
部屋の外周には本棚しかない。しかも見たことの無い大量の本が詰められている。
俺が不思議そうに部屋を見ていると、少女は懐にしまっていた一冊の本を本棚に入れた。
今の本…何処かで見たような…?
少女は本をしまうと俺の目の前に立って目を見つめてきた。
澄んだ瞳だ…吸い込まれそうになる。
すると少女はクスリと笑って口を開いた。
「あなた…とても綺麗な黒い目をしてますね!
悪い人じゃなさそうで良かったです♪」
少女はにこやかに笑顔を向けながら言った。
どうやら犯罪者として見られることは無さそうだ…良かった。
「そうだ!お名前を聞いてませんでしたね!
私の名前はフィオラ・ビスマルクです、あなたの名前は?」
フィオラちゃんか…それにビスマルクとは…神話に出てくる幻獣の名前だ、海の王者…深い青の象徴。
彼女の瞳はまさにその青色だな…成る程…さて、名前を聞かれたら答えないとな。
俺は、ふっ…と笑い、髪を整え、最大限に格好つけながら自己紹介した。
「俺は龍ヶ谷竜之介。
歳は19だ…名前は威厳ある伝説の存在…竜をも唸らせる才能と容姿を願ってつけられたんだぜ…よろしくなフィオラちゃん。」
ふっ…決まったぜ…
最高に完璧な自己紹介…
「リュウノスケさん?変わった名前ですね!
それに私より2つも歳上!先程はご無礼して申し訳ありません!」
ん?あれ?全然普通の反応だな…おっかしいなぁ?
この子…難しい話とか良くわからない系の子かな?失敗したな…調子狂うぜ…。
「お、おう気にしなくていいぜ、悪いの俺だしな…」
「ではリュウノスケさん!錬金術についてなのですけど…」
「あ、ああ、何だ?」
「錬金術について…何処までご存知なのでしょうか?」
「何処まで…と言われてもな…」
「知ってることだけでも言ってくださると助かるのですが…」
何処まで…か。
うむ…仕方ない、正直に話すしかないな。あの目を見たら…嘘はつけない。
その質問に対して俺は、"通常作れない物を作る技術"と言うことしか分からないと答えた。
実際のレシピの様なものも分からないし、きっとフィオラの質問に対する期待に添える様な答えは出来ないとも言った。
やはり中途半端に答えても混乱させるだけだし、正直に答えるのが正解だと俺は思っての回答だった。
「そうですか…もしかしたら仲間かもって思ったんですけど…」
フィオラは残念そうに髪を人差し指でくりくりしながらうつ向いた。
少し考えた後、俺は彼女に声を掛けた。
「えっと、フィオラちゃんの望む答えは出来なかったけど…少し錬金術を見せて欲しいなぁ~ってお兄さん思うんだけど…いいかな?」
「えっ!?ほんとですか!?興味あるんですか!?」
「そりゃあ勿論!錬金術師なんて実際じゃ初めて見るからな、興味ない訳が無いさ。」
「良かった!あなたみたいな人に是非錬金術を知って欲しいって思ってたんです!ちょっと待って下さいね…えっと…」
フィオラは近くの本棚の、本では無く別の道具が置かれた場所を探し始めた。
これでもないあれでもないと探している…ん?
ふと、俺は彼女のスカートに目が行った。
彼女のスカートにはベルトの様なものでポーチがくくりつけられているのだが、そのポーチからはみ出ている物に気が付いた。
そこに置いてある錬金術の機械…それに酷似した小さな青いラインの箱がはみ出ている。
「フィオラちゃん?もしかしてそのポーチのやつじゃないのか?」
「えっ!?あっすみません!これです!」
彼女が慌てて取り出したその箱は、神秘的な光を発しながらその存在を主張していた。
それはそこにあるボックスと同じで、錬金術が出来るものだと聞いた。
不思議な力を感じる…でもそんな小さいのを使うのだろうか?少し聞いてみよう。
「その大きいやつじゃなくていいのか?」
「はい!錬金術を知ってもらう分にはこれで充分ですので!」
そう言うと彼女はそれを持って先程の食事場、更に奥の、リベルさんが居る場所まで走って行った。
俺は振り回されてる気がするが…仕方なくついていく事にした。
「おーいフィオラちゃん待ってくれよー!」
※※※
食事場の奥、キッチンルームと思われる場所に来た俺は彼女を探した。
しかし良く見ると綺麗な大理石の様なもので出来た調理台に、整った料理道具。
それに…何だこのステッキ。
道具の中には料理に使うものとは思えない物まで混じっていた、このステッキもそうだが…。
しかも良く見るとガスコンロやレンジのと言った物が見当たらないし、冷蔵庫も無い。
直ぐそこにあった調理棚を開いてみると、紐で縛られた肉などが氷と一緒に置いてあった。
これでは衛生面が気になるが…まさかここって異境の国なのか?
「リュウノスケさん!此方へ!」
すると、奥から彼女の声が聞こえた。
一旦詮索はやめて取り敢えず彼女の用事に付き合うとしよう…
「ああ、ごめんな直ぐ行くよー。」
俺は声の聞こえた方へ歩くと、突き当たりの角にフィオラとリベルさんが待っていた。
どうやらここで実験をするらしい。
「ではこれを見てください!」
少女の取り出したのは…何かの種と…ネズミの尻尾?
何か嫌な予感がするが…てか何処から持ってきたその尻尾。
そして少女はおもむろにその二つを小さなあの箱へと入れ、蓋を閉める。
それを近くにあった台の上に置くと、手をその箱にかざした。
「おいおい…本当に大丈夫なのかそれ?」
「まあまあ、大丈夫ですので大人しくしていてくださいな。」
戸惑う俺にそうリベルさんが言った。
そしてフィオラを見ると、真剣な表情をして何かをブツブツ言っている。
その言葉に反応したのか、置かれた箱は次第にカタカタと震えだし、蓋の隙間からは煙が出てきたではないか。
まるで手品だ。
そして、フィオラは更に強く何かを唱える。
「根源の力よ…賢者の知恵よ…私に力を!」
彼女がそう言った瞬間だった。
その箱に更に強い光で青いラインが浮き上がり、それは強烈な光線となって部屋中に拡散した。
眩しいので目を覆ったが、それでもその青い光はどんどん強くなっていく。
「もう少しです!」
その光に負けず、フィオラはずっと手をかざしている。
裏でリベルさんもその姿を真剣に見つめていた。
そして…最後に青い光は蓋を中心に部屋を凪ぎ払うが如く光輝いた。
途端にボン!と破裂音の様な音が鳴り、光は唐突に消えてしまった。
シュー…と箱から空気が漏れる。
彼女は躊躇無くその蓋を開け、中身を取り出した。
「完成です!見てください!」
彼女が差し出したのは…空豆位の大きさの種に、そのままネズミの尻尾が生えた奇妙な物体だった。
今のが錬金術…にしては出てきたのは子供のオモチャそのものにしか見えない。
「…えっ、あの派手な演出でこれ?
これどう見てもそのままくっ付けただけに見えるんだけど…」
「安心して下さいリュウノスケさん!
ではこれを植えに行きましょう!」
「植えるって…それを?」
「ですです!行きましょう!」
少女はまた嬉しそうにそのままこの家の玄関と思われる扉まで走っていってしまった。
リベルさんもふふっと笑いながらゆっくりそこに向かう。
俺もそこに向かうのだが…これ本当に大丈夫か?
何とも拍子抜けなあの物体を思い出しながら、俺は外へと向かった。
何だか…現実味の無い所に来てしまったようだ…。




