超常の力
…所変わってここは少女の家の食事場。
結局あのあと事情も色々聴きたいので一度ここに来るように…と、リベルと呼ばれる人に怒られて、恐る恐るここに来た。
ああ…終わったわ…これは警察に突き出されるわ…
短い人生だったなぁ…この年で捕まったら就職とかも出来ねぇし…彼女も出来なかったなぁ、しくしく…
涙ながらに渋々と自分の人生を振り替える俺。
歩きながら食事場のテーブルの見える場所まで歩くと、先程の可愛い少女とリベルさんの二人が待っていた。
少女は椅子に座りながらこちらを真剣に見つめている。
リベルさんもむすっとした顔を向けている、これは…パーフェクトに終わったな…。
「さあ、そこに座って下さいな。」
「はいぃ…」
少女に促されるままに俺は彼女の目の前に座った。
きっとこの場で縄でも掛けられるに違いない。
「それでは…両手を出して…」
「うぐっ…ずびっ…」
情けなく鼻水を垂らしながら両手を出す。
勿論素直にお縄に掛けてもらうためにしっかり手首をくっ付けて…
「あら、それじゃダメですわ、しっかり両手を開いて此方に向けて下さいな?」
少女はお縄体勢の俺の手を開き、手の平を向けるように言った。
あ、まさか結束バンドで親指縛るやつか!?
あれ痛いんだよなぁ…でも言えた義理じゃねぇもんな、犯罪だもんな!?しかたねぇよなぁ…。
もう諦めムードの俺は、泣くことも諦め、素直に賢者の如く平常心で手の平を差し出した。
気分は物ごいのそれ、慈悲を待つだけしか出来ない哀れなそれであった。
「さあ早く結束バンドでも何でも縛って下さい!
俺は覚悟出来てるんで!」
目を瞑りながら彼女達にそう言った俺は、悲しみに暮れながら絶望していた。
さようなら…俺の青春と未来の奥さん…
「えっと…ちょっと良くわからないけど…はい! これどうぞ! お腹減ってるんでしょう?」
「…はい?」
あるぇええ???
そう言われた俺は目を開くと、俺の手の平の上に綺麗に焦げ目の付いたパン…見たいなお菓子が乗っていた。
うわめっちゃいい匂いがする…何処かローズマリーに似た匂いだな…癖のない優しい匂いだ…ってそんな事冷静に考えてる場合じゃなくて、これどう言うことだ?
「あーっと…これは?」
「あら、もしかして初めて食べるのですか?
これはスワンスクッキーって言って、スワンってお花の蜜を生地に混ぜて焼いたものですよ! とっても美味しいんだから!」
「いや…まあ確かに美味しそうだけど…警察は?」
「ふぇ? けーさつ?何の事ですか?」
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その後、彼女達と話した所、どうやら見当違いだったようで、俺を捕まえる気など最初からありもしなかったらしい。
思い切り捕まると思って人生振り返ってた俺がバカみたいだ…いやでも不法侵入には変わりねぇか…。
それにしても人の家に土足で急に現れた人間に食事を振る舞うなんて…何て聖人何だこの人達は! 天使かよ! あとあのお菓子は美味しく頂きましたはい。
しかし気になることだらけだ。
まずそもそもここは何処の国だか分からないし、俺の部屋からどうやってここに来たのかもわかんねぇし…。
取り敢えず情報を集めた方が良さそうだ。
一通り落ち着いた俺は彼女達に話を聞くことにした。
「ほんとすんません…騒がせてしまったのは落ち度ですはい…」
「大丈夫ですよ! 気にしないで下さいな!
私がもっとちゃんと説明して上げれば良かったですね♪」
あーもう可愛いなおい! お兄さんの心のドキュン加減を説明して上げたい位だよ!
「いえいえ…俺が勘違いしたせいで…
そう言えば、リベルさん…でしたっけ?
何で俺にお菓子を…そもそも何でお腹空いてるって分かったんすか二人とも?」
確かに俺は朝からまともに食べてない。
片付けに夢中すぎて昼まで動いてたからなぁ…それにしても何故俺が腹減ってるって分かったんだろう?
そんな疑問は直ぐに晴れた。
予想外の答えで。
「ああそれでしたら、リベルさんのこの掛けているレンズのお陰ですよ、ね? リベルさん!」
すると、くいっとその眼鏡を上げると、ふふっと微笑んで頷いた。
「ええ、これは"心眼のモノクル"と言う道具なのです。
これを掛けていると、動物や人、植物から食物に至るまで全ての物の"状態"が分かる物なのです。
面白いでしょう?」
「えっなにその某アニメのロボットが出しそうな便利な道具!
ちょちょ、ちょっと掛けさせて貰っていいすか!?」
「ええ、構いませんよ?」
リベルさんはそのままその眼鏡を外し、俺に手渡してくれた。
良く見ると、リベルさんも眼鏡を外したら凄く美人だな…瞳も綺麗な緑色だし…外国人ってすげぇな。
と、そこで俺はおもむろにその眼鏡を掛けた。
見た目はただの眼鏡…の筈だった。
「…うぉおおおお!?!?」
そこに見えたのは予想以上の物だった。
目の前に居るリベルさんを見た俺は感動した。
年齢、体重、そして食欲や体の状態。文字は無いが、それと取れる記号の用な物で全て露になっていた。
「え、リベルさんってお歳40なのか!?」
「そうですよ、若く見えましたか?ふふ…」
そりゃそんだけ綺麗なら若く見えるって…シワ一つ無いし。
俺はそのまま近くにまだあったスワンスクッキーとやらを見ると、それはそれで温度だと思われる数字や、固さ、大きさに至るまで、白線やイメージの用な表し方で目の前に写し出されていた。
驚いた…何て道具だ…
「すげぇ…何だこれ、科学ってこんなに進歩してたのか…」
「科学?って言うのはわかりませんが…これをお作りになられたのはお嬢様なのですよ…ふふ。」
「お嬢様って…君が? これを?」
リベルさんが言うにはこの少女がこれを作ったとの事。
だとしたら天才だ…本気でノーベル賞物の天才だぞ!素晴らしい!
いやしかし…どうやってこれを作ったんだ?
気になった俺は少女を見つめた。
むむ…
……。
「……胸の辺りに"90"と書いてある。」
「ふわぁああ!! だ、ダメ! お…おちょばーーー!!!」
バシィィ!!!
弁えない俺に彼女の平手打ちが炸裂した。
「オチョバァぁぁあ!? ってか何だそれぇぇ!!」
※※※
気を取り直してその眼鏡を外し、リベルさんへと返した。
いやしかし90…この子…デカイ…。
「…ゴホン…」
「アッ…すいません…」
しかしあらためて考えても凄いものだ。
科学何かじゃ到底到達出来る情報量じゃない。次元が違いすぎる。
科学…と言うよりは超常の力だ、そんな事があり得るのか?
気になる俺は改めて彼女を見つめ、それを冗談半分に聞いてみた。
「これどうやって作ったんだい?
こんなもの作れるの何かゲーム見たいな力が無いと無理だと思ったけど…まさか錬金術とか使えたりして? いやまさかそんな訳ないよな! 科学の進歩に決まってるよな! ははは!」
そんな事やっぱり無いよな!
まあ、人間に不可能は無いって言うし!
あれ、それだと出来ちゃうのか…いやいや!そんな事は…
「えっ! あなた錬金術を知っているのですか!?
そうなんです! これ私が錬金術で作った試作品なんですよ!
まさか錬金術を知っている人に出会えるなんて…」
おい……マジかよ?




