第8話「士官会議」
~「おおすみ」~
「おおすみ」の士官室では平田艦長以下「おおすみ」の幹部士官が集まっていた。
コンコン
扉がノックされる。
熊谷雅之
「熊谷三佐!入ります!」
そこに熊谷雅之三佐も来る。
熊谷雅之
「及びですか?」
平田正文
「SBTの意見も聞きたいからな」
SBT。
Special Battle Teamの略である。
警察の特殊部隊「SAT」と「SIT」が警察の‘S’と呼ばれるのなら「SBT」は自衛隊の‘S’である。
特戦群や中央即応連隊からの精鋭を集めて構成された、新たな自衛隊の特殊部隊である。
平田正文
「では始めようか」
平田が一声かけた。
会議のお題は勿論、これからどうするかだ。
SH-60Kから送られてきた映像、写真
そして防空隊との一戦で
自衛隊は改めて自分達が住んでいる世界とは違う世界に来てしまったと実感してしまった。
平田正文
「正直、これからどうしたら良いのかは見当がつかない。何せ異世界だ。我々が住んでいた世界とは何から何まで違う。龍は飛んでいるし、兵隊の服装は前世紀の服に近い、映像で見た船は小さな帆船だ」
平田は開口一番にそれを言う。
そう、これは物語に良くあるタイムスリップとは訳が違う。
タイムスリップだとしたら自分たちがやること1つ1つが元いた時代に悪影響を与える可能性がある。
しかしこれは異次元にスリップしているのだ。自分たちがやることがどんな影響をするのかわからない。
菊松康平
「それに、この世界での我々の兵器はかなり強力な物と断言できます」
菊松は、自衛隊が保有している兵器の危険性について話す。
菊松康平
「もしも我々のこの『力』に欲をしめた奴らがいたら、我々も危ないですし、なによりこの世界に住む人々の命にも危険に晒されます」
沢田直樹
「そうだな。でもいっそのことどこかの国に世話になるか?」
航海長の沢田がそう提案する。
菊松康平
「というと?」
沢田直樹
「もう俺たちはマフジーって野郎と接触している。だからマフジーが住んでる国にお世話になれば、燃料補給とかも出来るし、なにより漂流してるよりはマシだ」
村田直也
「しかし航海長。確かマフジーの国は他国から攻められ、既に領土の2/3は侵略されている話しだぞ」
沢田直樹
「そこで俺たちが手を貸すんですよ」
この発言に、砲雷長の村田は目を丸くする。
村田直也
「それは我々が戦争に加担すると言うのかね!?」
沢田直樹
「あぁそうだ」
菊松康平
「沢田三佐、正気か?」
沢田直樹
「俺は至って正気だ。俺たちが加担する事により、1つの国が助かる。そして俺たちは英雄になる。悪い事じゃ無いと思いますが」
村田直也
「ふざけんな!!」
村田は思い切り机を叩いた。
村田直也
「俺たちは『自衛隊員』であり『兵士』じゃない!!そんなことしても悲劇を生むだけだ!」
沢田直樹
「どんな悲劇を呼ぶんだ!え?確かに俺たちは自衛隊員だがこれは自分たちの国を守るための防衛戦なんだぞ!自衛隊のモットーに即してるだろ!?」
村田直也
「屁理屈だ!」
2人は大声を上げて口論する。
平田正文
「まぁまぁ沢田三佐、村田三佐、少し落ち着け」
平田が注意する。
沢田直樹
「………はい」
村田直也
「すいません艦長」
平田正文
「熊谷三佐、この中で唯一実戦経験のあるあなたに聞きます。マフジーの国に加担して彼らを救う作戦はあなたはどう考えます?」
村田直也
「か…艦長…」
腕組みをしていた熊谷は少し間を置いてから話し始めた。
熊谷雅之
「それで私たちが生き残れるとは考えづらいですね。まず否が応でも戦争の恐ろしさ、悲劇さを知った我々の世界では痛い目みたらもうしませんが、この世界ではありえるかどうか怪しいです。彼の話しによると相手は『ファシスタ帝国』という巨大な帝国だそうです。我々の今の戦力でいけば追い返されるかもしれませんが、そのままその帝国が黙っているかどうか……」
沢田直樹
「そんなもん。俺たちが彼らに戦術のノウハウを教えればいいんだよ!熊谷は陸自だから塹壕や防衛陣地の組み方分かるだろ?この世界はそれだけでもかなり強いぞ」
熊谷雅之
「沢田三佐、だからって保てるかどうかは別だ。戦争は新たな兵器や戦い方が出たらすぐ変わるもんだ。新しい兵器はその場しのぎにしかならない事が多い」
沢田直樹
「しかしその『その場しのぎ』で何人の命が救われるか」
今度は熊谷と沢田が口論する。
村田直也
「すいませんが沢田三佐。」
村田三佐が挙手をしている。
沢田直樹
「なんだ村田三佐」
村田直也
「さっきからあなたたちは戦争にどう加担していくか話しています。だけど忘れていませんか?我々は『日本国』自衛隊なのであって『ライジング帝国』自衛隊じゃありません。」
村田のこの発言に、士官室の空気が凍りついた。
彼らは傭兵とかでは無い。
「日本」という国を守る部隊なのだ。
村田直也
「日本という国を守る目的の我々が、他国の配下になるような事をしていいんでしょうか?」
村田三佐は俯きながらいう。
村田直也
「私は例え異世界に行っても、『日本』を忘れたくありません。もしこの世界の国の配下におかれるのなら私はこの艦、乗員を海に沈める事を提案します」
みんな黙りこくる。
「この世界で他国の軍」として生きるか「船を沈没、乗員は各自この世界で生きるか」
誰もなにも言えない状況で、熊谷三佐が手をあげた。
熊谷雅之
「艦長。1つ言いたい事があるのですが」
平田正文
「…………言って見ろ」
熊谷は席を立ち、みんなを見渡しながら喋り始めた。
熊谷雅之
「『他国に加担』するのでは無く、『他国を助ける』ための組織にすればいいのではないでしょうか?」
熊谷のこの発言にみんな戸惑いを隠せなかった。
熊谷雅之
「元の世界でも、『海外派遣』と称して、他国に駐留したりしてたじゃないですか。あれと似たような事をすれば良いのです。この2隻の船を『日本国』とし、どこかの国でお世話になる。そして時が経てば別の国へ行く」
平田正文
「つまり我々は『国の救出隊』か…」
熊谷雅之
「まぁ、そんなところですね…」
また士官室が黙りこくる。
そして
沈黙の間に、平田艦長がある決断をした。
平田正文
「仕方ない。燃料とかの問題もあるし。どうせ船を捨ててこの世界で朽ち果てるよりかはこの世界で名声を残そう。そのほうが良い。戻れるかどうかわからないんだ。それならやろうじゃないか!」
やっぱり実力不足を実感します。
だけどちょっとずつ力をつけていきたいので、よろしくお願いします。




