第二夜 夢③
女性は黒獏を見ると、怪訝な表情で袖を口元に運ぶとサチコを自分の背に隠した。
「黒獏か、なんとおぞましい」
「貴女様、黒獏とは一体何なのですか?」
「見たままよ、サチコは決して関わっては駄目。話しかけられても知らぬふりをなさい、黒獏に好かれても良いことはないわ」
「ちょっとー聞こえてるんだけど、その言われよう酷くない?」
黒獏はひらりと地上に着地し、愉快そうに口元を歪め三人を見る。
「お前か、あのオジサンが言ってた獏って。ふぅん飼い獏ね」
「煩い黙れ」
「はは!そんな可愛い声で威嚇されても怖くないんだけど!」
歩夢は身を屈め琥珀色の瞳を鋭く光らせ、足元から円状の紋様が浮かび、足から這い上がる様に体に定着する。
紋様の動きが止まるのを確認すると、身をさらに屈め勢いよく前へ突進する。黒獏に攻撃するが、寸での所で受け流して右に避けられるのを目で追い、敵を決して視界から外さず次の攻撃態勢に入る。
「危ないなー、オレが何したって言うんだよ」
「決まった道を無視しての侵入」
「ちょっと近道しただけじゃん、何が悪――うわっ」
歩夢は方向転換し突進し黒獏を突き飛ばす、体が接触した際に歩夢の体を巡っている文様が黒獏に微かに痛手を負わせたようで、小さく唸り距離をとる。
「くっそ、ちょっと何なのそれ……ずるくない?」
休むことなく歩夢は目の前にいる侵入者を排除しようと走り出す、黒獏は若干その動きに怖気つき動きを鈍らせ、その隙を見逃さずに攻撃を繰り出す。
「体張りすぎじゃない?なんでそこまで出来るのさ」
「仕事なので、それ以上の理由はありません」
「ったく……」
体が接触する度に黒獏は苦しそうな表情になり、歩夢もまた少しだけ息遣いが荒くなっていく。
「お前ってさ、自殺願望でもあるの?少し落ちつきなよ、オレは仲間と争う気はさらさらないの、そんな苦しそうにしてさ」
「黙ってください黒獏。貴方さえ居なくなれば痛みに耐えなくてすみます!」
「そう」
黒獏は歩夢からかなりの距離をとり、体を屈めて勢い良く突進し、反応が遅れた歩夢の左肩を思い切り噛み付いた。
「……っ!」
歩夢は痛みに顔を歪め黒獏の体を振り払い、左肩からは鮮血が前足を伝い地面を赤く染めた。
「なぁんだ、叫ばないんだ。つまんない」
黒獏はニタリと口を歪め、口元に付いた血を舐めあげ、歩夢は左肩を庇いなが鋭い眼光を向け、再び身を屈め攻撃態勢をとった。
「うわぁ……根性あるね」
流石にその姿を見た黒獏は目を見開くと、自分の背後に恐ろしく鋭い気配を感じて意識を集中させ肩を下ろす。
「ついてないなぁ、何なんだよ。オレはただ食事したいだけなんだけど、お前なら分かるんじゃないの?」
「分かりません」
「あっそ……で、あんたがご主人様って訳ね」
「僕の獏に怪我をさせたようだね」
冷静でありながらも、怒りを含んだ声の方へ振り返る。そこには緋色の瞳を細めて笑んでいる奏人の姿がり、左手にはアンティーク調の柄が印象的な裁ち鋏が握られている。
刃先を黒獏に向けると、柄に緋色の紋様が浮かび上がると手を包むように光りを放ち右手を添える。
鋏は形を変え二本の刀長二尺程(約六十・六センチ)の刀となり、奏人は瞳を光らせ両脇に構えると地面を蹴り走りだし、それを目にした黒獏は一歩後ろに下がる。
「ちょ、え、なにそれ!」
「鋏だよ?」
「そんな鋏ないから、それはもう刀だから!」
刀を前で重ね平行に斬るが、黒獏はそれをギリギリ避け距離をとり睨みつけると、感心した表情で見た。
「へぇ、いい動きするね。じゃあ、これはどうかな?」
足を一歩前に出すと奏人の姿が消え、五感全てを集中させ勢い良く地を蹴り宙を舞い上がった瞬間、黒獏のいた位置には刀を構えて見上げて笑む奏人の姿。
「それは残像だよ、黒獏」
「え?」
真横から聞こえる声に背筋かぞくりと振るえ視線を向ける、奏人の冷たい瞳には表情を歪めた黒獏の姿が映し出されている。
「本当に、いい動きするね。その身のこなし悪くない、でも甘いかな」
左腕を下から斬り上げ、それを慌てて避け距離を取ったが、刃先が前足に触れ小さな傷が生まれる。
「ッ……また出直した方が良さそうだね、分が悪い」
黒獏は黒い霧となり空に舞い姿を消し、その様子を確認すると刀は光りを放ち鋏に戻ると、インバネスコートの間からウエストに付けたシザーホルダーに収めると、奏人は視線を歩夢に向けた。
息は荒く、体に浮き上がる琥珀色の紋様は輝き、琥珀色に光る瞳は焦点が合わず地面を見つめるている。
「歩夢」
目の前に片膝をつくと、優しく頬に触れ顔を上げて唇を耳元に運び、深く澄んだ声で囁く。
「歩夢、人となれ」
歩夢は目蓋を閉じると、紋様は薄れ獏の姿から人の姿へと変わり、我に返った素振りで一息吐くと目蓋をゆっくり開き空を見上げ、その瞳は普段の琥珀色に戻っており奏人は一安心と微笑み頭を撫でた。
「すみません奏人さん、手を煩わせてしまって」
「気にしなくていいよ、それより腕酷いね」
着物の袖から見える腕には血が伝っており、奏人は近付くと左肩に触れる。
「あ、すみません」
「あまり無茶はしないでくれないかな、心臓に悪いから」
奏人は紋様の中に守られてる二人の方を向き深く頭を下げた。
「お騒がせ致しまして申し訳ありません」
「黒獏はもういないのかしら?」
女性は辺りを警戒してサチコを守るように立ち鋭く奏人を見る、奏人は微笑み頷いた。
「いなくなりました、念の為に守りの糸を張り巡らせておきます」
奏人の足元から無数の紋様と糸が現れ空間を包み込んだ。
「あとは歩夢が造っていた現までの道を辿って頂ければ帰れます、お気をつけてお帰りください」
二人を守っていた紋様を解くと、奏人は深く腰を折り右手を空へ向けた。女性とサチコの足元から月へと真っ直ぐと続く絹の道が伸びており、女性は微笑みサチコの手を取ると奏人を見る。
「世話になったわね紡ぎ師」
「仕事ですので」
「流石だわ、それと歩夢」
怪我をした肩を押さえ止血している歩夢を見て苦しそうな表情をする、だが本人は不思議そうに首を傾げ「はい」と返事をした。
「感謝するわ、私を一生懸命仕立て直した事と体を張ってサチコを守ってくれた事。あなたは立派な夢を守る獏だわ、またいつか夢の中で会いましょう」
女性はそれだけ伝えるとサチコの手を引き歩き出す、呆気にとられていた歩夢は慌てて頭を下げ、それを背中に感じたのか女性は小さく微笑んだ。
絹の道は白い光りを放ち二人を導いている、一歩二歩と時々お互いの顔を見合わせて笑い合って歩んだ。その姿を地上から見届け奏人は歩夢の前に手を差し出した。
「僕等も戻るよ・・・手当てをしなくてはね」
「はい」
手を添えると同時に二人の姿は光りの包まれ、桜の舞う庭も静かに消えて行った。
黒と白のタイルを交互に敷いた床にカブリオールドレッグのレッドベルベットソファーが二人掛けと一人掛けが向かい合わせに置かれ、その間にはローズウッドのテーブルが置かれている、生活感の見えないリビングであり仕立屋の二階である。
寝室へ繋がる扉が一つあり、中には夢から帰宅した二人の声がする。
出窓が一つ厚手のカーテンが締められている、入口を中心に右手の壁側には奏人のベッド、左手の壁側には歩夢のベッドが置かれ壁のあらゆる場所に守りの品が飾られており、窓側の左にはワードローブ、右にはチェストが置かれている。
歩夢はベッドに正座し、奏人に背を向け着物から左腕を抜き手当てを受けている。
黒獏に噛まれた箇所は黒い紋様が浮き上がり、傷口からはとめどなく血が流れているのを奏人が調合した薬を湿らせたサラシを当てると、ジュッという音と共に黒い蒸気が天井に上がり歩夢の体が強張る。
「う……ぁっ!」
「はいはい、じっとしてなさい」
歩夢は痛みに耐え切れずに小さく声を上げるが、奏人は無表情に手当てを続ける。
「まったく……何故すぐに僕を呼ばなかったかな、これでも怒っているんだよ?帰りが遅いなぁって待っていたら黒獏に怪我負わされてるんだから、黒獏の呪は侮れないのは歩夢も知っているはずだけれど、どうかな?」
「だぁぁぁ!……ひぃぃぃ!ごめんなさいごめんなさい油断していました、だからグリグリしないでください!」
「僕はね、手当てしているだけだよ。ほら、そんなに暴れると前見えちゃうでしょ?大人しくしなさい」
「もう少し優しく…おね……いぃぃぃ!」
「あははは、言葉になってないよ」
口の端を吊り上げ、新しいサラシに薬を湿らし傷口に当てるのを繰り返しす。黒い蒸気は徐々に透明になり紋様も薄れていく。
「よし止血出来た、紋様も呪も大丈夫そうだね。傷口は数日経てば綺麗に消えるよ」
奏人はベットの上に置かれた薬箱を持つとチェストの上に置きに行く。脱力した歩夢は包帯の巻かれた肩をひと撫でしてから着物の袖に腕を入れ奏人の方に体を向けた。
「あ、ありがとうございました」
「主たるもの当然の事だよ、ところで黒獏の感じどう映った?」
奏人は自分のベッドに腰を下ろし、すらりと細くて長い足を組んだ。
「はい、無邪気と言うべきでしょうか、自分の思うまま行動しているようでしたし、楽しんでいました。奏人さんにたいしては恐れを感じていたようですが」
「それは仕方ないよ、歩夢に怪我させたんだから、ちょっとイラっとしたんだよね。そっか、無邪気か、厄介な子に目を付けれれたものだ。あの子は僕のお客様の所にも来たようなんだ」
歩夢は目を見開き、そして静かに視線を奏人から外し膝の上に置かれた両手を強く握る。
「巡回していた叶麒が見つけて捕まえようとしたらしいのだけど、優しい彼には難しい話だよね」
「また現れますか?」
「来る、歩夢の存在に興味を持っただろうし、黒獏はしつこいからね。夢渡りの時は気をつけよう、僕の守りがあっても何が起こるか分からないからね」
奏人は首を傾げて立ち上がり歩夢の前に立ち、左手で歩夢の目を覆い隠す。
「さぁ今日はお休み、現と夢の狭間へ行きなさい歩夢」
その声は脳を揺らし体の力が抜けていき、ゆっくりと体が後ろに倒れて眠りにつく歩夢。 布団を掛けてやり寝顔を見つめて微笑み、奏人は汚れたサラシを持って静かに寝室を後にした。
薄暗いリビング、普通ならば視覚が失われる闇でも奏人の目には明かりのある時と同じ世界が映っている。
一階へ続く階段の前に立っている人影を見つけ、軽く会釈し頬笑んだ。
「助かりました」
人影は何も言わないが奏人は笑顔を絶やさずに近付いた。
「あの方も守れましたし、僕の獏も守れました」
(お礼を言うのは此方の方です、あの方を助けてくれてありがとう)
人影の声は直接脳に響き、人影はゆらゆらと腰を折った。
「あなたの依頼も少しずつ進んで行っています、まずは勇様に昔を思い出して頂き次に紡ぎ作業へと移ります」
(頼みます……それと、黒獏の方は大丈夫ですか?)
「一度侵入されると再び来る可能性はあります、守りの糸を張るには全ての作業が終わってからでないとできません、作業が終わるまで十二分に警戒しますのでご安心ください」
(そうですか、あと貴方の獏は大丈夫でしたか?)
奏人は首を傾げ、ああと演技がかった表現をして黒く汚れたサラシを見せた。
「こちらもご心配には及びません、僕の獏は素晴らしい子ですから」
(それなら良かった、彼女にもお礼を伝えてください。では、私は戻ります)
人影は踵を返すと、一段一段音も無く一階へ降りていく。奏人は感情の読めない表情で影を見送り手に持っているサラシを見つめて力いっぱい握り締め、そして鋭い表情をして台所へ姿を消した。
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(暗い……真っ暗、誰かが追かけてくる)
和樹は暗い世界を何かから逃げるように道なき道を走っていた、振り返っても闇しか見えず何かの姿は見えることは無い。
(怖い)
前を向いて必死に足を動かすが上手く前へ進む感覚はない、頭の中では分かっているのに体が自分の命令に抗っている。
(助けて……助けて…)
「ぁ……っ……」
口を開けて叫ぼうとするが上手く声が出て来ることはなく、擦れた音が喉から漏れる。
走っても走っても闇の先には何も見えない、しかし立ち止まれば何かに捕まってしまうのだと思い、鈍い足取りは止めない。
「今日は凄いや、糸の繋がりってやつだね」
闇に響き渡る声に一瞬足が止まりそうになる。
「何に怯えているの?止まれば良いじゃないか」
(怯え?……)
和樹の速度を落とし、やがて闇の中に立ち止まった。闇は次第に薄れていき見知らぬ街並みが浮かび上がり、追かけて来ていた何かの気配も無くなっている。
「何かに怯えていれば、此処では具現化し追かけられる。お前は何を怯えてる?」
背後から弾むような青年の声がして振り返ると、そこには肩の長さで切り揃えられた漆黒の髪と、見る者を魅了する藤色の瞳に白乳色の肌、首元まできっちりとボタンをとめた皺のないワイシャツに黒いパンツを履き、藤色地に睡蓮の花が描かれた鮮やかな羽織りを身に纏う、中性的な顔立ちの青年が優しく微笑み、膝をついて和樹の目線を合わせる。
「お前、名前は?」
「和樹」
「偉いね、オレに名前を聞かれて答えてくれるなんて」
青年は和樹の右肩に手を置くと、手の甲に紋様が藤色に光り浮かび上がり和樹の肩から染み込んでいく。
「お兄さんの名前は?」
青年は首を傾げ少し考え様に空を見上げる。
「そうだね、最近は呼ばれて無いから忘れてた…えーっと、なんんだったかな?今思い出す」
「忘れちゃったの?」
「名前なんて個人を縛り付けるものだから、オレには必要性が特に無くてね・・・あ!思い出した。オレの名前は夜霧、夜の霧って書いて夜霧」
「夜霧お兄ちゃん?」
夜霧は嬉しそうに口元を上げて頷くが、その瞳は鋭く和樹の瞳の奥を覗いている。
「和樹に質問。何をそんなに怯えているの?オレが相談に乗ってあげるよ」
「わからない、何が怖いのか・・・何が怖いんだろう?」
和樹は首を振り俯き、その姿を藤色の瞳は見逃さず左手を空に掲げて指を鳴らす。
見知らぬ街並みはやがて形を変えて見慣れた場所へと形を変える。すると和樹は体を強張らせて夜霧の腕に縋った。
「ん、どうしたの?此処は廊下だね……どこの廊下かな?」
夕日に照らされた廊下、目の前には重圧な扉がある。
「僕の家……父様の書斎の前」
「へぇ、立派な家に住んでるんだねぇ」
和樹は緊張しているのか小刻みに震え、今すぐにでもこの場を足し去りたいのか夜霧の腕を引張り立たせようとしているが、小さな力に負ける程やわな体はしておらず、夜霧は尚も微笑み首を傾げている。
「何をそんなに恐れているの?自分の家でしょ?」
「此処に居たら駄目、父様に怒られるから僕の部屋に行こう……此処は駄目」
「何故?」
問いかけた時、書斎の置くから此方に向かって来る何者かの気配がして、和樹はさらに焦り夜霧を立つように急かす。
「…誰ダ」
扉がゆっくりと開き、そこには鬼の面をつけた勇の姿があった。和樹はその恐ろしい姿に息を飲み歯を鳴らしている。
「和樹カ……私ハ忙シイ、アッチヘ行キナサイ」
「ご、ごめんなさい」
震える足で一歩下がり頭を下げると「へぇ」という声がして、和樹は顔を微かに横に向けて夜霧を見た。
「キミには“鬼”に見えるんだ、面白いね子供って」
夜霧は立ち上がると勇の前に立ち見上げた、そして左手で鬼の面を掴み勢いよく奪い取ると顔には微かに疲れの表情の勇がいた。
「これが鬼か……」
右手で勇の顔を覆うと黒い霧となり、夜霧の手に染みこむのを確認して和樹の方に振り返った。
「怖い夢見たくないならさ、オレに願えば良いよ」
「え?」
「この夢を獏にあげますってね、そしたら幸せな夢だけ見させてあげる……どう?」
「幸せな夢だけ?……この夢を獏にあげます!」
一瞬悩んだ和樹だが、やはり子供で直ぐに願った。夜霧はその言葉を聞くと飛び切りの笑顔を見せ、再び指を鳴らし空間が歪むと次第に賑やかな音楽が流れてきた、縁日だ。
和樹の幸せな記憶のひとつが具現化している、家族で出掛けた楽しくて大切な思い出。
「幸せな時間にずっと居ればいい」
甘い匂いと香ばしい匂い、賑やかなお囃子が体の奥に響き和樹は瞳を輝かせ夜霧を見上げた途端、視界が暗くなり不思議そうに顔を触ると、形からして狐の面をつけられたようだった。
「さぁお行き……迷い人」
夜霧は楽しそうに背中を優しく押してやる、小走りになり左足が鳥居を越した和樹は不思議な感覚に陥った。
体と記憶が切り離される、振り返るとそこにはさっきまで話していた誰かがいた筈だが思い出せなかった、そして何故此処にいるのかが分からず自分の帰り道すら失っていた。
「あれ?僕は今までなにを――」
「和樹」
自分の名を呼ぶ声がして振り向くと、遠くの方に両親の姿が見えて良子が手を振っている。
和樹は嬉しくなり大きな声で返事をして走って行き、人混みの中に消えて行った。
その姿を夜霧はつまらなそうな表情で腕を組み見つめていた。
「くだらないね餓鬼の夢は……でも、久々の夢は美味しいね」
両腕を目の前にあげる、腕には温かな光りを放った紋様が糸となって絡みついている。
「温かい」
無意識だろう、そう呟くと再び無邪気に楽しむ和樹の姿を見守り、体を霧に包み静かに消えた。
澄んだ青空に眩しい太陽が町を照らしている、勇は部屋の外から騒がしい声に気付いて目を覚ますと、羽織に袖を通し寝室を出た。
「和樹起きなさい……和樹!」
騒がしい声は和樹の部屋から聞こえていた。良子の声に焦りの色が加わり、ただ事ではないと感じ中に入ると眠り続ける和樹とその体を揺する良子の姿がある。
「どうした?」




