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5話 再会した幼馴染と交際しました


 「星良が気に病む理由なんて何もないよ。俺が馬鹿を見ただけだから……」


 好意を抱いていた幼馴染に嘲られ、失恋まで植え付けられ、この身が経験したショックは大きい。だが俺がここまで取り乱さず、落ち着いていられるのはこのもう1人の幼馴染のお陰だ。


 だからこそ、そんな幼馴染の悲し気な顔をこれ以上見ていたくなくて、俺は彼女の行動に対して感謝を口にする。


 「さっきは本当にありがとう。星良がいなかったら俺……潰れていたかもな」


 「誠也君……」


 思い返せば返すほど、悲惨すぎる自身の玉砕の仕方に笑い声すら込み上げてきた。

 長年想い続けた幼馴染に罵倒され、嘲笑われ、見世物にまでされてしまった。


 一体いつから俺とあいつの距離はこうまで離れたのかな?


 昔の俺と双葉は本当に仲が良く一緒に遊んだ仲だった。

 一緒に公園で遊び、二人だけで遊園地に行き、そしてお互いの家でお泊り会だってした事もあった。そうして長い時間を共に過ごし、いつしか俺の中では彼女を幼馴染以上の存在として認識し、どんどんと惹かれていった。


 だが中学へと成長するに連れ、彼女とは疎遠となっていき、そして遂には今日のあの嘘告白だ。


 「間抜けな話だよな。結局は俺の一方的な片思いだったなんて……」


 いつか自分を受け入れ、そして昔のような仲睦まじい関係に戻れる。

 そんな淡い期待をしていた愚かな自分に対して失笑すらしてしまう。


 「所詮俺は双葉の言うようなモブキャラだったってことだ。分不相応な望みは痛い目を見るだけだって教訓だなこりゃ」


 今の双葉はすっかり綺麗に成長し、クラス内でもカースト上位の女子で、周りには多くの人間が自然と集まる。

 それに対して俺は平々凡々で地味な男子。クラスでも目立たず、雑務を押し付けられる損な役回りの人間。陰ではクラスから〝便利君〟と呼ばれた事すらあった。


 ははっ……こうして比べりゃ一目瞭然じゃないかよ。俺がフラれた理由なんて……。


 「俺みたいなモブに恋愛なんて贅沢だったって事かな?」


 身の程知らずの自分に呆れてそう呟くと、隣を歩いていた星良が前に回り込んできた。


 そして俺の正面に立った彼女は、まっすぐな瞳と共に言葉を投げてくる。


 「恋愛に容姿や身分なんて関係ないよ誠也君」


 「星良……」


 「言っておくけど、私のさっきの告白は決して嘘告なんかじゃないんだから」


 そう言うと彼女は俺に改めてこう言ってくれた。


 「小学生の時からあなたのことがずっと好きでした。だから、私とお付き合いしてください誠也君」


 そう言いながら彼女は、俺の手を優しく包み込み愛を告げてくれた。

 

 彼女の告白は傷つき今にも崩壊しそうだった心を包み込み、亀裂だらけの俺という人間の穴を埋めてくれた。


 こんな情けのない自分を真剣に愛してくれるその想いに、気が付けば俺はまた涙が零れ落ちていた。だがその涙は先程の嘘告の時の様な悲しみから溢れるものでない。喜びから溢れる雫だった。


 「もしかしたら俺ってさ、薄情な人間なのかな?」


 「どうして?」


 「俺さ、あんな盛大にフラれたばかりなのにさ、もう新しい恋をしちまってるから……」


 俺が自身の軽薄さに対してそう呟くと、彼女は微笑みながら首を横に振ってこう返してくれた。


 「そんなことないよ。正直ね、私も双葉ちゃんの方がお似合いだなって諦めようと思っていたんだ。でもね、やっぱり誠也君を忘れられなかった。高校で再会した時もね、何度幼馴染として話しかけたいと思ったかわかんないよ」


 そこまで言うと彼女は正面から俺に抱き着き、そして甘く切ない声色でこう囁いてきた。


 「小学生の頃からずっと誠也君とこうしたかった。誠也君、小学生に頃からずっとあなたが好きでした。何度だって告白させてください。私と付き合ってください」


 小学生の頃、俺は彼女をただの〝友達〟としか見ていなかった。

 だが彼女は違う。俺のことを1人の異性として見ており、そしてその想いを隠して別れていった。再会してからもその想いは色褪せず、それでも俺と双葉、2人の幼馴染を想って身を引こうとした。


 その健気さが、純粋さが、そしてなにより俺への恋心が愛おしく、考えるよりも先に俺は彼女の告白に返事を返していた。


 「ありがとう。ずっと昔から俺を好きでいてくれたんだな。その……こんな俺で良ければこれからよろしくお願いします」


 彼女の好意に対して俺は答えを出しながら抱きしめ返すと、彼女は満面の笑みと共に俺に言った。


 「えへへ言質は取ったからね。もう別れたいって言っても離してあげないんだから」


 そう口にする彼女の笑顔は学園で見せる清楚なものでなく、まるでかつての小学生の頃の、いたずらっ子の様なあどけないものだった。


 懐かしく、そして幼いころに何度も見てきたその笑みに俺の心はほわっと熱を帯び、この先に星良と恋人として生きていく未来に内心胸が弾むのだった。


 気が付けば数十分前の傷はすっかりと塞がっていた。



 

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