表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/40

37話 廃倉庫への呼び出し


 日没直後の夕闇の中、もう空も黒ずんだ廃倉庫の近くに集まる複数の人影があった。

 

 「たくっ、なんだってこんな場所に……」


 苛立たし気にぼやくのはサッカー部2年の中島だった。

 どうして彼はこんな時間帯、それも人気のない廃倉庫に集まったのか、それにはある理由があった。


 「おいどこに居るんだよ伊豆!?」


 大声を出しながら、廃倉庫に入口付近目掛けて中島は叫ぶ。


 「くそっ、返事しろよ伊豆! 大道の件で話し合いすんだろ!?」


 彼をこの場に呼び出したのは、同じサッカー部2年の伊豆だった。


 「なあ中島、本当に伊豆に指定された場所ってここで合ってるのか?」


 「薄気味悪ぃな……」


 「うるせぇよ。場所は間違いなくここで合ってるよ」


 中島の後ろには一緒に誠也をリンチした2年の男子達もおり、中島の指示で呼び出されたのだ。

 本来であればこんな夜遅く、ましてや薄気味悪い廃倉庫に呼び出しを受けても、集合拒否をしているだろう。

 だがこの呼び出しに関しては、彼等は拒絶する訳にもいかなかった。


 くそ……どこに居んだよ伊豆? 

 

 懐中電灯で辺りを照らし、この場所に招集をかけた人物を探しつつ、彼は悪態を吐く。

 

 ちくしょう……こんな面倒な思いさせやがって。許さねぇぞ大道……。


 歯ぎしりをしながら、彼は自宅でくつろいでいた時の事を思い返していた。

 帰宅後、彼は三日月に仕事完了のメッセージを送っていた。


 ――『三日月ちゃん、あの大道ってヤロウにはちゃんと教育しておいたよ』


 ――『はい、教室に戻って来た彼の頬の跡を見ました! これで多少は留飲も下がりました。でもまだ胸の痛みが取れなくて……』


 ――『心配しなくても明日以降も俺たちが教育してやるさ。君みたいな慈愛の深い娘を傷つけた報いは受けないとね!』


 ――『でも大丈夫でしょうか? あまり大きく誠也が怪我している姿が見られると、いじめを働いていると誤解されないでしょうか?』


 ――『大丈夫だよ。明日以降は精神的な制裁方法にチェンジするからさ』


 ――『ありがとうございます! やっぱり中島先輩に頼んで正解でした!!』


 このラインのやり取りの最中、顔のニヤけが終始治まらなかった。

 

 これってもう三日月ちゃん、完全に俺を頼りにしてるじゃん。

 この流れで誘えばデートぐらいならしてくれるかもしれない。いや、それどころか俺に特別な感情を持ってくれる可能性もある。

 

 「よし、思い切ってアプローチ仕掛けてみるか!」


 俺は興奮気味にメッセージを打ち込んだ。


 ――『ねえ三日月ちゃん、今週の休みは部活の練習も休みなんだ。もしよかったら俺と一緒に出掛けてみないかな? 俺ならきっと君の心の傷を埋めてあげられる気がするんだ』


 我ながら果敢に攻めた内容と思いつつも、このメッセージを三日月ちゃんへと送信しようとした時だった。

 ピコンっという電子音と共に、伊豆からメッセージが送られてきたのだ。


 「たくっ、いい所で邪魔しやがって……」


 悪態をつきながら届いたメッセージを、めんどくさそうに眺めた俺だったが、内容を読み終える頃には嫌な汗が噴き出ていた。

 伊豆から送られたラインには、このようなメッセージが記されていた。


 ――『おいやべぇぞ! 大道が俺たちの事を教師に相談しようとしている! さっき大道本人から連絡が来たんだ!!』


 「は……いや、いやいやいや……」

 

 画面に送信されているメッセージに思わず声が震えた。

 あれだけ脅しをかけていたというのに、大道は俺たちのことを学校側にチクる気でいるのか? 


 屋上を立ち去る際、あいつは悔し気に震えるだけで何も言い返してこなかった。

 それに俺たちが暴行を振るった証拠はないのだ。だからアイツも泣き寝入りすると思っていたが、まさか今更抵抗を見せてくるとは……!?


 落ち着け……いくらアイツが訴えようが証拠はないんだ。


 とはいえだ、このまま放置して置くのも不味い。

 三日月ちゃんへ別れのメッセージを送ると、すぐさま伊豆にメッセージを送る。


 ――『おい伊豆、マジで大道から連絡来たのか? あいつは一体何って言っていた?』


 ――『それなんだけどな、実は大道から呼び出しがあったんだ。今から指定する廃倉庫まで来てくれって……』


 ――『はあ? なんだってそんな場所に俺たちを呼び出すんだよ?』


 ――『そんなの分かんねぇよ。でもここでシカトするのも不味いだろ』


 大道のヤロウは一体何を考えてやがる?

 言いたいことがあるなら電話すりゃいいだけだろ? なんだってそんな人気のない場所まで俺たちを誘導する? まさか仲間を呼んで復讐でも企んでるのか?


 俺のこの考えはあり得る話だ。

 人気のない夜の廃倉庫、リンチを働いた俺たちに暴力で仕返しをしようと、自暴自棄な陰キャなら目論んでいる危険性もある。


 だから家を出る前に、俺はあいつを制裁したメンバー全員に連絡を入れ、数を集めてこの場所に乗り込んだ。

 他のメンバーも事情を聴くと二つ返事で了承し、家族には適当な理由を付けて抜け出してくれた。


 だがいざ目的の廃倉庫に付くと、伊豆も大道も見当たらない。


 「ぐぎゃッ!?」


 「え?」


 俺の背後からカエルの潰れたような悲鳴が上がった。

 その悲鳴は次々連鎖し、振り返ると同行したメンバーは全員倒れていた。


 「なに……がッ!?」


 事態が呑み込めず立ち尽くしていると、首筋に強い衝撃が走り火花が散る。


 「のこのこやって来てくれたご苦労さん。それじゃあ事情聴取のお時間だ」


 薄れゆく意識の中、俺の耳には大道とは別人の低い男の声が聴こえた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ