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33話 許さない(星良視点)


 扉を開けて映り込む光景に体温がカーっと熱くなる。

 怒りのあまり吐き気すら感じながら、私は屋上に乗り込むと誠也君を囲んでいる連中に怒声をぶつけた。


 「何をやってるのよあなた達はぁッ!?」

 

 周囲の空気を震わせるほどの怒号、自分はここまで大きな声を出せるとは思いもしなかった。

 

 「な、何で北條が? 見張りはどうしたんだよ?」


 誠也君に群がっていた男共が一斉に私に振り替える。

 大勢の動揺と困惑の眼がこちらを見るが、私にはそんな汚れた目玉など入らなかった。


 私のこの双眸が捉えていたのは、屋上の地で倒れ込む誠也君だけだった。


 「星良……」


 体を起こしながら、私の存在に気付いてくれた。

 よく見れば誠也君の頬は赤くなっており、制服には汚れが付いていた。

 

 最愛の人が不条理に痛めつけられた事を完全に理解した私は、誠也君に駆け寄りながら周りの連中を追い払う。

 

 「誠也君誠也君誠也君!? 頬が腫れて、ああしっかり!!」


 「う、大丈夫だよ。それよりも今すぐここを離れて……」


 傷つき熱を帯びている彼の頬に手をやると、その手を逆に彼は握ってくれた。

 それどころか彼は、自分が一番傷ついているのに私の身を案じてくれていた。おそらく遠巻きに様子を伺うこの連中が、私にまで矛先を向けないか不安なのだろう。


 許せない……私の……私の大切な誠也をよくも……。


 鏡がないので自分では気づいていないが、私の両目は充血しており、血眼で彼をいたぶったクズ共を睨みつけた。


 「お、おいヤバくないこれ?」

 

 「まさか人が来るなんて……」


 暴行の現場を見られた男共は狼狽の声を上げる。

 屋上の入り口前で見張りをしていた男は特に狼狽えており、目撃者を作ってしまったミスに青ざめている。

 だがそんな中でも1人の男だけは余裕を浮かべていた。


 「おいおい学園のアイドルがなんて顔してんだよ?」


 その人物は2年の中島馬頭だった。彼だけは何故かこの状況下でも不適に笑っている。

 微塵も反省すらしてない露骨な悪意、それが私の怒りの炎を更に大きく燃え上がらせる。


 「何をそんなにヘラヘラと笑ってるのよ? これは立派な傷害行為なのよ。すぐに学校側に報告して……」


 「いきなり何の話だ? 俺たちはここでただ昼飯を食っていただけ、暴行なんてしてないぞ?」


 悪びれる様子もなくそう言い放つ中島に、私だけでなく被害者である誠也君、そして周りの連中も怪訝な顔つきとなった。


 「そいつは後から屋上に来たんだよ。その時にはもう怪我しててさ、どこかで転んだか打ち付けたんじゃないか?」


 続けて中島が放ったこの言葉に、すぐに周りの連中も意図を察して乗り始める。


 「だよなぁ? いやー顔腫らして何事かと思ったぜ」


 「気を付けなきゃダメだろ1年生」


 まるで身に覚えのないと言わんばかりの態度に誠也君も怒りを滲ませ反論する。

 

 「何を言って、あんた等が俺を……」


 「ふ~ん、じゃあ証拠は?」


 「え、証拠って……」


 「俺達がお前に暴行を働いた証拠だよ。写真や動画でもあるのかよ?」


 いやらしい笑みと共に勝ち誇った顔を見せる中島に、誠也君は歯噛みしていた。

 確かに私も咄嗟の事で現場に飛び込み、誠也君が暴行を受ける現場は肉眼で確認しただけだ。だから彼らは口裏を合わせこの件をうやむやにしようとしているらしい。


 「変ないちゃもんなんてやめてくれよ。それじゃあ俺等はこれで~」


 「なっ、待てよ! それで納得できるわけ……」


 「あ、そうそう。これは独り言だけどな、この期に及んで教師や親に相談するなら、今度は標的が隣に移るかもなぁ~」


 そう言いながらこのクズは誠也君を支える私を見た。

 濁した言い方をするが間違いなく、歯向かえば私も巻き込んでしまうと脅している。


 「ぐ……ふざ、けるな……」


 ぶるぶると拳を震わせながらも、この場で誠也君はこれ以上何も言えなくなる。

 その様子を見て満足したのか、彼は他の同級生達を引き連れ屋上を去っていこうとした。


 だが扉を抜けて立ち去る直前、私は彼等に向けて〝忠告〟をした。


 「今すぐ誠也君に謝り、そして適正な処罰を受けてください」


 「はい? 何で俺らがそんなことを?」


 「これが最後です。自らの過ちを償ってください。でなければ……後悔しますよ?」


 低い声と共に私は最後の〝警告〟を発した。

 だが奴等はその忠言を無視し、そのまま屋上から消えていった。


 ああ…バカな人たち。ここで表の裁きを受けていればどんなに幸せだったか……。


 彼等は理不尽に他者を傷つけ、挙句には罪を隠蔽までした。

 反省もしなければ、大きな過ちを犯した自覚症状すらない。


 だったら、私も反撃の手段は選んだりしてあげないんだから……。


 この瞬間、私の中でかちっとスイッチが入った気がした。

 学園のアイドル、誠也君の恋人、表側で無邪気に生きる自分を奥底に眠らせ、奴等は奥底の鬼を呼び覚ましてしまった。


 精々今のうちに笑ってると言い。誠也君の受けた肉体と心の苦痛、何倍にもして返してあげるから………。




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けと清白の証拠もない
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