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31話 理不尽な暴力


 星良が担任の杉原先生に職員室に呼ばれているその頃、俺は手渡された弁当を持って屋上をで先に待っていた。

 可愛らしい風呂敷に包まれた弁当箱を両手に持ちながら、今か今かと最愛の人の到着を待つ。


 待っていておよそ数分後だった、屋上の扉が開かれる。


 あれ、予想よりも随分と早いな。杉原先生に呼び出されたはずじゃ……。


 思いのほか早くやって来た事に驚きつつも、俺は出迎えようと立ち上がる。

 だが扉を開いて入って来たのは星良ではなく、複数の男子生徒だった。


 えっ、2年の先輩達だよな? なんでこんなにぞろぞろと?


 屋上にやって来たのは、身に着けている校章バッジの色から全員2年の先輩だと判別できた。

 彼らは呆然としている俺に気が付くと、ズケズケと足音を鳴らしながらこちらに近づいてきた。


 「お前が大道誠也だな? 俺は2年の中島馬頭ってもんだ」


 「そうですけど、あの俺に何か用です……うわっ!?」


 それは本当に突然だった。 

 一番先頭に立っていた中島先輩が俺の胸倉を掴んできたのだ。


 「テメェ、自分がどれだけ恥ずかしい事をしているか自覚あんのか?」


 「いきなり何を……」


 「とぼけるじゃねぇッ!!」


 訳も分からず問い返すと、他の先輩達も次々と怒声を浴びせてきた。


 「お前が三日月ちゃんを泣かせたことが原因だろうがッ!」


 「自分が被害者ヅラしてんじゃねぇぞ!」


 さっきから彼らが俺に対して何を理由にキレているのかさっぱりだが、双葉の名前が出てきた事で俺の中には自ずとだが、この状況を作り出したのは彼女なのかと考える。

 近距離で喚き続ける先輩達をどうにか宥めようとするが、彼等には俺の言葉がまるで届いてくれなかった。


 「一旦落ち着いてください。まずは事情の説明を……」


 「お前に言い訳する資格なんてある訳ねぇだろ!」


 「この期に及んで言い訳なんて見下げ果てたクズだな!」


 ぐっ、言い訳も何も話すら聞きやしない。

 先輩たちは一方的に俺を非難し続けるだけで、こちらに口を開かせようとはしない。


 とにかくまずはこちらの言い分も話さなければ事態は進展しない。 

 そう思って俺が半ば強引に言葉を発しようとしたが、俺の胸倉を掴んでいる中島先輩がここで手を出してきた。


 「喋るんじゃねぇこのクソ野郎!!」


 「あがっ!?」


 まるで手加減など感じられない拳が俺の頬に突き刺さった。


 「はんっ、どうだ? これが三日月ちゃんが受けた心の痛みだ」


 凄まじい衝撃に俺は屋上を転がる。

 頬にはジンジンと熱く、しかも口内を切ったのか口の中に鉄の味が広がる。


 「な、なにを……」


 まさか手を出されるとは思わず、心の中の動揺が拭えなかったが、予想外の事態はこれで終わりではなかった。

 なんと俺を殴り飛ばした中島先輩は俺を掴み上げ、今度は腹部を思いっきり殴りつける。

 

 「うぐっ!?」


 「いいかよく聞けクソ陰キャ野郎。ずっと一緒だったお前に裏切られた三日月ちゃんの心はこの何倍も踏みつけにされたんだ」


 「だから何の話……俺は双葉を裏切ってなんかいない」


 むしろ裏切られたのは俺の方なのだ。

 長年の想いを嘲られ、更には友人達には見世物のように扱われた被害者だ。


 あいつ……まさかここまで手を回してでも俺を苦しめたいのかよ!?


 この連中は間違いなく双葉に色々と誤情報を吹き込まれているのだろう。

 まさか2年の先輩までけしかけ、こんな嫌がらせを働くなんて予想もしなかった。それと同時、ただでさえ心が離れた彼女への見方がこの件で更に失墜していった。


 この理不尽な状況を企てた双葉に怒りが灯るが、まずはこの修羅場をどうにかしなければならない。


 「先輩達、頼むから一旦話を聞いてください。あなた達、多分騙されてるんです」


 「ああ? 俺達が三日月ちゃんに騙されてるって言いてぇのか? 幼馴染を裏切って起きながらまだ反省すらしようとしねえのか?」


 俺の言葉に場は沈静するどころか、むしろより一層の熱がこもる。

 そして怒りの熱は伝播し、中島先輩だけでなく他の先輩の瞳も怒りに染まる。


 「こいつ、マジで救えねぇわ」


 「もうちっと躾てやるしかねぇな」


 おいおい、いくら何でも嘘だろ?

 

 これまでは中島先輩に手を出されても、他の先輩達は遠巻きに様子を伺うだけだった。

 だが今の彼らは明らかにおかしく、場の勢いに身を任せこの場の全員が手を出しかねない雰囲気だった。


 まずい、こいつ等脅しじゃない。完全に目が本気も本気だぞ!?


 このままでは凄惨なリンチがされかねない。そう思ってこの場から逃げようとするが、既に中島先輩の手は俺の襟首を掴み上げていた。


 「歯を食いしばれよ極悪陰キャ野郎。先輩として指導してやるよ」

 

 いつの間にか俺はぐるっと先輩達に囲まれていた。

 そして先輩たちは拳をひとしきり鳴らし、俺に手を伸ばしてきた。




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