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28話 別れた後のやり取り


 星良を送り届けたその後、俺はまだ少し現実味が湧いてこなかった。

 まさかあの学園3代アイドルの1人である星良が、極道の娘だとは思いもしなかった。


 でも、どこか腑に落ちている自分もまた心のどこかに居た。


 思えば彼女は俺が双葉たちに嘘告白をされて嘲笑われていた時も、クラス中から猜疑心や嫌悪感を向けられている時も、真っ向から堂々立ち向かい俺を庇ってくれた。

 あの威風堂々とした立ち振る舞い、極道の娘と思えばどこかすんなり受け入れられたのだ。


 その時だった、俺のスマホが部屋中に鳴り響く。


 「あ、星良から……」


 画面に表示される星良の名前を確認すると、俺はすぐに電話に出る。

 

 『もしもし…誠也君?』


 『ああ、どうかしたのか星良?』

 

 電話越しに聴こえてきた声色はどこか不安げに思えた。

 

 多分…いや絶対に自分の家柄についての話だよな。


 もしかしたら星良は負い目を感じているのかもしれない。

 自分が極道一家の組長の娘である事実を秘匿していたことを。


 『今日は驚かせてごめんね。言い訳がましいけど隠し通す気なんてなかったの。ただ…まだ交際を始めて2日目、時期を見計らってから報告した方がいいと思って……』


 『謝る必要なんて微塵もないよ。星良が誰の娘でも関係ない、俺は……星良という1人の少女が好きなんだから』


 穏やかな口調でそう言うと、スマホ越しから静かに泣いている音が聴こえてきた。

 あえて俺は何も言わず、通話をしたままの状態で彼女が落ち着くのを待った。


 『えへへ……スマホ越しのやり取りで良かったかも。誠也君に汚い泣き顔見せないですんじゃった』


 まだ少し涙声だが、すっかり普段の彼女に戻ってくれて胸を撫で下ろす。


 そこから俺たちは他愛のない話に花を咲かせる。

 もう俺の中では数時間前に知った星良の家庭事情など頭から抜け落ちていた。


 気が付けばすっかり遅くまで話し込んでおり、明日も学校があるので会話もお開きとする事にした。


 『それじゃあ星良、また明日な』


 『うん……あっ、誠也君』


 通話を切ろうとした時、何かを思い出したかのように星良が最後に一言送って来た。


 『おやすみ誠也君……ちゅっ♡』


 最後に聴こえてきたキス音に顔が一気に熱くなる。

 直接キスをされた訳ではないが、彼女の口から聴こえてきたキスの音でこれまでのキスシーンが連想されてしまう。


 「うう……寝る前だってのに理性を削らないでくれよ」


 完全に生殺し状態となってしまった事を、もう画面が消えている向こう側の恋人に愚痴る。

 いや、星良の性格を考えると、こうして俺が悶々とする事も想定して楽しんでいるかもしれない。



 ◇◇◇



 「ふう……」


 誠也君との通話を終えた後、私は一気に気が緩んで弛緩した。

 

 「受け入れてもらえたな……」


 誠也君と正式に恋人同士となった時、私の中には喜びだけでなく不安の感情も潜んでいた。


 私が好きになった人が家柄で見る目を変えてくる人でない事は理解していた。 

 それでもだ、私が極道一家、それも組長の娘と知った際の彼のリアクションを知るのが怖かった。


 もしも恐れられたらどうしよう? もしも私を見る目が変わったらどうしよう? もしも……別れを切り出されたらどうしよう……?


 だけど自分がいかに馬鹿な不安を抱えていたのか、彼の穏やかな言葉で思い知らされた。


 ほんっと……私も馬鹿なんだから。彼を信頼しているなんて思っておきながらこの有様だもん。


 彼を信じ切れていなかった自分が内側に居る事に気付き、そんな自らに渇を入れるように頬を叩いた。それと同時、私の部屋の襖が開く。


 「星良、ちょっといいか?」

 

 「お父さん……」


 部屋の入って来たのは貫禄溢れる中年男性、つまり私の父である北條源五郎(ほうじょうげんごろう)だ。

 

 「南条から聞いたぞ、バカがお前の恋人に迷惑をかけたってな」


 「うん。でもその件ならもう大丈夫だよ」


 「ああ、それは分かっている。南条から事の詳細は全て聞いているからな。しかし……お前の彼氏は随分と度胸のある子みたいだな。まさかあの南条に物言いできるなんてな」


 そう言いながらお父さんはどこか嬉しそうに笑っていた。

 私に恋人ができたと聞いた時、お父さんの顔は少し歪んでいた。だが私がずっと片思いだった幼馴染が相手と知ると、渋々了承した感じだった。


 だが今のお父さんは明らかに誠也君へ好感を持っている様子だった。


 「近々、是非ともワシも誠也君に会って話をしたいものだ」


 「きっとすぐ叶うよ。だって彼は誰であろうと偏見なんて向けない人なんだから」


 強面のお父さんにおっかなびっくりしつつ、彼氏と父親が対談する場面を想像して、自然と私の口角も緩むのだった。




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