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25話 理性が削られる!?


 母さんとの再会、そして交際報告を終えた俺は星良を自宅まで送り届けていた。

 脚を動かしながらも星良は母さんとのやり取りを話題に、俺のことをさっきからからかってくる。


 「おばさんも相変わらず優しくてノリが良かったから安心しちゃった。それにしても誠也君も中々いいリアクションを見せておもしろかったよ」


 「お前な……母親と恋人に挟まれて、童貞をネタにされる彼氏の気持ちになってみろよ」


 そう言いながら俺が抗議の目を向ける。

 疲れ切った俺とは対照的に、星良はクスクスと悪戯が成功した悪ガキのように笑う。


 そんな純粋な恋人の笑顔を見てしまうと、俺の中の不満感など、まぁいいかと吹き飛んでしまう。


 もうすっかり俺は星良の虜になってしまっているんだな……。


 「あっ、誠也君ったら大胆なんだ」


 「え……あ……」


 それは完全な無意識、気が付けば星良の手を握っていた。

 急に手を握られた星良は驚きなど一切なく、嬉しそうにはにかんでくれる。それどころか逆にこんな指摘を入れられた。


 「でもここはがっつり腕を組んだ方が私は嬉しいかも」


 そう言いながら星良は腕を組んでむぎゅッと密着してくる。

 

 「おい…当たってるって……」


 小学生時代とは違い、すっかり実った胸部が俺の二の腕に押し付けられる。

 羞恥心から俺は照れてしまい、彼女は赤くなったんだと言ってまた俺をからかってきた。

 

 「こんなので赤くなるなんて誠也君は初心だなぁ~」


 ぐ……なんだか星良が俺をからかう頻度が今日一日で増えた気がする。いや、厳密に言えば母さんと話した直後から増えた。


 好きな人にからかわれるのは決して嫌ではないが、ここまでされると意地悪の1つも仕返ししたくなる。


 「あまり過激にからかわない方がいいぞ。星良が魅力的な恋人だから俺も我慢できなくなるかも」


 家での出来事といい、さっきから一方的にかわれた事の意趣返しとばかり、俺なりに肉食動物を連想した目を向けつつ、それっぽいセリフを言う。

 だが草食系の俺の演技など、本物の肉食系である女性にとっては怯ませるどころか、むしろ餌をぶら下げているだけだと知る。


 「いいよ……誠也君ならいつでも受け入れられる」


 そう言いながら星良の目の色が明らかに変わる。

 彼女の瞳の奥底にはピンク色の怪しげな光が灯り、そしてペロっと舌なめずりをして煽情的な態度をぶつけてきた。

 

 そして止めと言わんばかりに、彼女は自分の抱き着いている方の逆、空いている俺の手を取ると自分の胸へと誘導しようとする。


 こ……これはヤバすぎる。とゆーかこんな往来で本気ですか星良さん!?


 あと数センチで胸にタッチする直前、一気に噴き出しながら星良が爆笑した。


 「あッはは! 誠也君は本当に初心なんだから」


 「こ、こいつはぁ~……」


 人の理性をゴリゴリと削って爆笑する星良に悔し気に歯噛みした。

 

 「本気で理性が飛んで襲い掛かったらどうする気だったんだよ」


 口を尖らせながらそう言うと、彼女はまた怪しげな空気を纏って笑う。


 「だから……誠也君なら全然いいんだよ?」


 とても同年代とは思えないほどの妖艶な空気に俺はのまれそうになる。

 

 や…やばい……これは本気でヤバい……。

 

 俺の中の理性がどんどんスライスされ、理性という名の柱が今にも折れかかりそうになる。

 

 だ、ダメだ! こんな場所で絶対に……!!


 襲い掛かる誘惑を耐えようとするが、そんな葛藤など知らずに星良は囁きかける。


 「ねえ……もう雪子おばさんからも許可も貰ったから……いいんじゃないかな?」


 これまでの挑発めいた誘惑とは違い、星良の瞳は、いや顔は陶酔したようにとろけ出す。


 「ここから少し離れた場所にね、実はそういう事をするホテルがある場所、知ってるんだ」


 「な、何でそんな場所を知ってるんだ?」


 確かに調べれば分かるであろうが、仮にも優等生の星良がそんな場所の所在地を知っている事に驚く。

 その問いに対して星良は何も言わず、挑発的に唇をぺろっと舐めるだけだった。その柔らかそうな唇と、妖艶な仕草に見惚れてしまい言葉が詰まる。

 だがその時だった。彼女の透き通る様な美声をかき消すほどの野汚い怒号が飛び込んできた。


 「ごらぁッ!! お嬢に何やってんだクソガキがぁッ!!」


 「え……?」


 それまで浮ついていた俺の意識は一気に覚醒し、声の方に顔を向ける。


 そこに居たのは1人の強面の男だった。

 ハッキリ言ってどう考えても堅気とは思えない。黒スーツにサングラスと、まるで昔のヤクザ映画に出てくる極道そのものだ。


 男はまるで地面を踏みぬかんばかりにこちらに歩み寄って来る。


 「な、何ですかあなた?」


 咄嗟に星良を庇おうと前に出るが、その行動が何故か男の怒りを更に炎上させる。


 「てめぇ……その人に何気安く触ってんだコラ……」


 血走った眼で俺に手を伸ばそうとする強面の男。

 俺は星良に振り返りながら彼女に逃げるように促す。


 「早く逃げろ星良! とにかくここは俺がなんとか……せ、星良!?」


 なんとか彼女だけは安全な場所に避難させようとするが、なんと星良は逃げるどころか俺の前に出てきた。


 「ねえ……どういうつもりかしら?」


 それは明らかに俺でなく、目の前の男に対して向けている言葉。

 先程までの甘えた感情は失せ、怒り一色に染まるその声を聴き誠也は彼女を見やる。


 思わず息をのんだ。何故なら彼女の顔つきはまるで女帝のように凛と厳しく張りつめており、双葉に怒りを向けていた時にさえ見せないものだったからだ。


 未だ見たことのない恋人の変化に言葉を失っていたが、次に彼女の取った行動は更なる度肝を抜くこととなった。


 「人の恋路を邪魔するだけじゃなく、私の大事な人を脅すとはね。この大ボケ野郎がッ!!」


 パァンッと響き渡る破裂音と共に、星良の振りぬいた平手打ちは男の顔面を綺麗に打ち抜いた。

 

 

 

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