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12話 どうしてこうなるの?(双葉視点)


 遠ざかってゆく幼馴染の背中を私は追いかけることができなかった。

 まるで私に見せつけるかのよう、誠也は北條と手をつないで去っていく。


 どうして……どうしてこうなってしまったのよ……。


 地面に膝を付けながら、私の頭の中では様々な疑念が渦巻いていた。


 家を出るまでの今朝までの私の予定では、誠也は昨日、私に対して働いた自らの愚かしさに猛省し、私に対して謝罪する筈だった。

 そして矮小な自分を変えて私を振り向かせようと、一から自分磨きを決意し、私に相応しい男になるべく努力してくれる予定だった。


 だが彼はラインをブロックした事を反省などせず、それどころかこの私に対して絶縁宣言を放ってきたのだ。


 「意味わからないわよ。どうして私との縁を切れるのよ!?」


 幼稚園の頃からずっと一緒だった私をあっさり見限り、安っぽい告白をしてきた女の方をあいつは優先した。いや違う、誠也があの女の告白を受け入れたのはあの女も〝幼馴染〟だったからだ。


 「どうして今更になって私と誠也の前に現れたのよ……」


 完全に想定外の出来事だった。私と縁を切る事もそうだが、まさか学園代表の美少女である北條星良の正体が、小学生時代に一緒に遊んでいた幼馴染の田畑星良だったなんて思いもしなかった。

 

 そもそも完全に男子だと思っていたし、苗字だって田畑から北條に代わっていたし、何よりも今の今まで私や誠也に彼女はまるで接触もしてこなかった。だからこそ、あの北條の正体が、かつての幼馴染だと見抜けなかった。


 だが何よりも許せなかったこと、それは私の大事な誠也を横から奪い取った事だった。


 「あの泥棒猫のせいで、全部アイツのせいで……私と誠也の輝かしい未来が台無しだわ……!」


 誠也がこの私のことをあっさり見限った理由は、どう考えてもあのもう1人の幼馴染の存在が大きかったに決まっている。

 あの女さえ……北條さえのこのこと私たちの間に割ってこなければ今頃、誠也はこの私を振り向かせようと努力に励んでいたはずなのだ。


 「許さない。私の好きな人を誑かすなんて許せるもんか……」


 そうだ、誠也は騙されているんだ。

 

 私が少し、そうほんの少しだけとはいえ、強く当たってしまったから今の彼の心はとても不安定になっていた。そこへあの泥棒猫は傷心の隙間を縫って彼を誑かしたのだ。まるで毒のように誠也の心を蝕み、寄生虫の如くへばり付き、そして横から誠也を略奪したのだ。


 今の誠也はきっと上辺だけ慈愛を向けるあの泥棒猫に絆されている。

 本当の理解者の私が彼の目を覚まさせてあげないといけない。たとえどんな手段を用いても……!!


 「私が気付かせてあげないと。今のままだと誠也がダメになっちゃう」


 地面に膝を付けて項垂れていた私だったが、誠也を取り戻すべく立ち直る。

 あんな際限なく甘やかすだけの女が傍に居るだけで、誠也はどんどん怠惰な人間になってしまう。ましてや恋人などになってしまえばもう私の知っている誠也が消えてしまう。

 

 「すぐに気づかせてあげるからね誠也。本当にあなたを想っている幼馴染はどちらなのか」


 あの北條はまるで理解できていない。好きな人だからこそ時には厳しくしなければいけない事を。

 あんな風にベタベタと赤ちゃんのように甘やかすだけ甘やかす、それで生まれるのは自己主張を放棄する傀儡なのだ。そんな関係を恋仲だなんて誰もが認めない。彼女の行いは、誠也を奴隷として扱っていると同義なのだ。


 私は誠也に厳しい対応を取っていたが、そこにはれっきとした〝愛〟がある。

 

 あえて厳しく接することで反骨精神を育み、周囲からもカースト上位の男子と思われるための努力を促す、いうなれば補助なのだ。決して心の底から彼が憎くて行った訳ではない。


 「今に見てなさいよ北條星良。いくらあんたが小学生時代の幼馴染だったとはいえ、中学期間の誠也をあんたは知らない。一時期離れたあんたよりも、高校までずっと隣に居た私の方が幼馴染として、そして誠也の恋人として相応しいだから」


 この時の双葉はこの思考を決して負け惜しみでなく、心の底から本気でそう認識していた。


 彼女はまるで理解していなかった。己の行為がどれだけ想い人の心に傷跡を残したのかを。

 彼女の罵倒が本心からの言葉でなくとも、それが照れ隠しかどうかなど心を読めない限りは分かる筈がないのに。


 そしてなによりも真っ先にすべきことを、彼女はまだ誠也に行っていなかった。


 「待っていなさいよ誠也。すぐにあんたの目を覚ましてあげる」


 決意に満ちた瞳をしながら、自分のしようとしている事が星良への嫉妬からくる逆恨みだとすら気付いていない。

 そんな歪んだ性根の彼女だからこそ、その頭の中には誠也に対する〝罪悪感〟が一切芽生えていないのも、ある意味では当然だったのかもしれない。


 彼女が最優先にすべきこと、それは誠也と星良を引き離す事ではない。傷つけてしまった幼馴染への『ごめんなさい』の一言だというのに……。




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