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425/433

425.

 私が魔法を発動させると、一瞬にして雪深い神域の山中へと景色が切り替わった。

 凍てつくような冷たい風が頬を刺す。


「で、神獣はどこ? ……いないわね」


 周囲を見渡しても、一面の銀世界が広がっているだけだ。

 すると、雪煙を上げて巨大な熊型の魔獣が姿を現した。


「ぐぉおおおおッ!」


 見上げるほどの巨体から、凶悪な魔力が立ち上っている。

 私はその立派な体格を見て、てちてちと歩み寄った。


「ああ、きみが神獣?」


 しかし、目の前の『神獣(仮)』の様子がおかしい。


「ぐ……が……ッ」


 巨大な魔獣は、私を見つめてガタガタと震えているではないか。

 私は首を傾げ、魔獣を見上げて尋ねた。


「どこがピンチなん?」

「が……ががッ」

「え?」


 私が間抜けな声を出すと、魔獣は器用に土下座のような姿勢をとった。


「さーせんしたぁッ!」


 魔獣はそのまま一目散に踵を返し、雪山へと逃げ帰っていく。

 ドスドスという足音が遠ざかり、後には静寂だけが残された。


「えー……」


 私はぽかんと口を開けたまま、魔獣が消えた方向を見送った。


「真理、神獣帰ったけど」

「いや、そこにいますよ」


 隣に立つ真理が、事もなげに足元を指差した。

 視線を下ろすが、そこには真っ白な雪があるだけだ。


「雪しかないわよ。え? どこ?」

「ほら、よく見てください。雪の中に、白い毛玉が落ちてます」

「あ、これ?」


 私は真理に言われるがまましゃがみ込み、「よいしょ」と両手でそれを拾い上げた。

 それは、真っ白でふわふわの毛玉だった。

 よく見ると、ピンと立った三角の耳と、ふさふさの尻尾が生えている。


「狐?」

「天狐ですね」

「てんこ?」


 私が首を傾げると、腕の中の毛玉がゆっくりと目を開けた。

 透き通るような金色の瞳が、神秘的な光を放っている。

 その小さな体からは、澄み切った清廉な神気が立ち上り、周囲の冷気を和らげていた。


「将来的にキャンピングカーに乗る天狐ですね」

「わけわからん……」


 真理の唐突な予言に、私は大きくのけぞって突っ込んだ。

 相変わらず何を言っているのかさっぱりわからない。


「とりあえず、ほっとけないわ。衰弱してるみたいだし。連れて帰るか」

「この山暮らしは、キャンピングカーの過去の世界線なんでそこんとこよろしくです」

「どこ目線で語ってるのよ……あんた……」


 私は呆れ返って溜息をつき、謎のメタ発言を繰り返す真理をジト目で睨みつけた。

【おしらせ】

※2/25(水)


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― 新着の感想 ―
>「この山暮らしは、キャンピングカーの過去の世界線なんでそこんとこよろしくです」 知ってた。 つうか向こうでほぼ答え言ってるも同然だったし。
え?なんか最後にとんでもないこと聞いた気がしたんですが…
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