425.
私が魔法を発動させると、一瞬にして雪深い神域の山中へと景色が切り替わった。
凍てつくような冷たい風が頬を刺す。
「で、神獣はどこ? ……いないわね」
周囲を見渡しても、一面の銀世界が広がっているだけだ。
すると、雪煙を上げて巨大な熊型の魔獣が姿を現した。
「ぐぉおおおおッ!」
見上げるほどの巨体から、凶悪な魔力が立ち上っている。
私はその立派な体格を見て、てちてちと歩み寄った。
「ああ、きみが神獣?」
しかし、目の前の『神獣(仮)』の様子がおかしい。
「ぐ……が……ッ」
巨大な魔獣は、私を見つめてガタガタと震えているではないか。
私は首を傾げ、魔獣を見上げて尋ねた。
「どこがピンチなん?」
「が……ががッ」
「え?」
私が間抜けな声を出すと、魔獣は器用に土下座のような姿勢をとった。
「さーせんしたぁッ!」
魔獣はそのまま一目散に踵を返し、雪山へと逃げ帰っていく。
ドスドスという足音が遠ざかり、後には静寂だけが残された。
「えー……」
私はぽかんと口を開けたまま、魔獣が消えた方向を見送った。
「真理、神獣帰ったけど」
「いや、そこにいますよ」
隣に立つ真理が、事もなげに足元を指差した。
視線を下ろすが、そこには真っ白な雪があるだけだ。
「雪しかないわよ。え? どこ?」
「ほら、よく見てください。雪の中に、白い毛玉が落ちてます」
「あ、これ?」
私は真理に言われるがまましゃがみ込み、「よいしょ」と両手でそれを拾い上げた。
それは、真っ白でふわふわの毛玉だった。
よく見ると、ピンと立った三角の耳と、ふさふさの尻尾が生えている。
「狐?」
「天狐ですね」
「てんこ?」
私が首を傾げると、腕の中の毛玉がゆっくりと目を開けた。
透き通るような金色の瞳が、神秘的な光を放っている。
その小さな体からは、澄み切った清廉な神気が立ち上り、周囲の冷気を和らげていた。
「将来的にキャンピングカーに乗る天狐ですね」
「わけわからん……」
真理の唐突な予言に、私は大きくのけぞって突っ込んだ。
相変わらず何を言っているのかさっぱりわからない。
「とりあえず、ほっとけないわ。衰弱してるみたいだし。連れて帰るか」
「この山暮らしは、キャンピングカーの過去の世界線なんでそこんとこよろしくです」
「どこ目線で語ってるのよ……あんた……」
私は呆れ返って溜息をつき、謎のメタ発言を繰り返す真理をジト目で睨みつけた。
【おしらせ】
※2/25(水)
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