第八話『アフター②』
翌朝。
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眠れなかった。
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正確には眠った。
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だが何度も目が覚めた。
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理由は分からない。
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ただ。
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何度も夢を見た気がする。
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長い髪の女。
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白い服。
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内容は覚えていない。
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なのに。
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朝から涙が出そうだった。
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出社。
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仕事。
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昼休み。
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スマホ。
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何気なく写真フォルダを開く。
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昨日の画像。
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削除したはずだった。
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残っている。
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しかも。
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女が少し近い。
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「は?」
思わず声が漏れた。
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昨日見た時より。
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確実に近い。
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気のせいじゃない。
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そんなはずがない。
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なのに。
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近い。
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慌てて画像を閉じた。
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夜。
仕事終わり。
尾鹿へLINEを送る。
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尾鹿さん
ちょっと聞きたい事があるんですけど
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既読。
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返信なし。
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五分。
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十分。
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三十分。
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ようやく返信が来る。
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どうした
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凛が返信を打とうとした瞬間だった。
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別の通知。
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差出人不明。
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会わせてあげましょうか
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「……は?」
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全身が粟立つ。
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意味が分からない。
気味が悪かった。
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スクリーンショットを削除する。
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画像を削除。
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ゴミ箱からも削除。
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ついでに差出人もブロック。
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終わり。
そう思った。
その直後。
スマホが震える。
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通知。
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差出人不明。
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消さないで
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凛の背筋が凍る。
少し頭を冷やそうと思った。
だが。
会社から家へ帰る道中。
通行人が何人も振り返る。
自分を見ている。
いや。
違う。
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自分の後ろを見ている。
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振り返る。
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誰もいない。
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歩き出す。
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また振り返られる。
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中年の男。
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女子高生。
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サラリーマン。
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みんな。
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凛の後ろを見ていた。
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気味が悪い。
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コンビニへ入る。
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何か飲もう。
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そう思った。
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レジ。
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店員が固まる。
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「……あの」
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「はい?」
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店員は凛の肩越しを見る。
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顔色が悪い。
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「後ろの方……お連れ様ですか?」
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凛の心臓が止まりそうになる。
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振り返る。
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誰もいない。
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「え?」
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店員も困惑している。
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「今、確かに……」
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それ以上聞かずに店を出た。
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電車。
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窓ガラスに自分が映る。
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疲れた顔。
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青い顔。
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そして。
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隣。
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長い髪。
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白い服。
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女。
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凛は飛び上がる。
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振り返る。
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誰もいない。
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窓を見る。
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まだいる。
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女はこちらを見ている。
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スマホが震える。
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通知。
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もう少しです
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意味が分からない。
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ホーム。
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電車が入ってくる。
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その瞬間。
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ふと思った。
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飛び込めば会える。
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凛は固まる。
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今。
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何を考えた?
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怖い。
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怖い。
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怖い。
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そんな事思うはずがない。
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なのに。
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妙に納得してしまいそうだった。
涙が出る。
帰宅。
震える手で鍵を開ける。
部屋へ入る。
誰もいない。
そのはずだった。
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奥から音がした。
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コツ。
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コツ。
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コツ。
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足音。
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凛は息を止める。
スマホが震える。
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通知。
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差出人不明。
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会わせてあげましょうか
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凛は逃げるように洗面所へ入った。
顔を洗う。
冷たい水。
深呼吸。
大丈夫。
大丈夫。
そう言い聞かせる。
ゆっくり顔を上げた。
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鏡。
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自分。
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その後ろ。
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誰かいる。
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振り返る。
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誰もいない。
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もう一度鏡を見る。
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いる。
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女。
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長い髪。
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白い服。
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初めて顔が見えた。
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綺麗だった。
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息を呑むほど。
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女は凛を見つめる。
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微笑む。
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そして。
口が動いた。
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邪魔
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凛の悲鳴が部屋に響いた。




