第三話『送り』
BAR 命の灯火
午前一時三十分。
雨の中客は一人。
麻縄凛
ひょんな事から尾鹿と知り合いBAR命の灯火に通うようになった女性だ
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「珍しいな。凛がこんな時間まで飲んでるなんて。」
尾鹿が煙草に火をつけながら話しかける
「帰りたくなくて」
凛はジントニックを一口飲む
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しばらく沈黙。
「尾鹿さんってさ」
「自分からLINE来たことある?」
「は?」
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二週間前。
深夜。
通知。
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送信者
麻縄凛
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送ったよ
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ある日それだけきたんだ 自分から
当然、自分で送ったと思う。
消す。
寝る。
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翌朝。
お気に入りのボールペンが無い。
数日後。
また通知。
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送ったよ
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その翌日。
腕時計が消える。
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また来る。
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送ったよ
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財布が消える。
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気味が悪い。
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パスワード変更。
端末確認。
乗っ取りなし。
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それでも来る。
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送ったよ
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しかも、
送られてくる時間が毎回同じ。
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午前二時十三分。
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そしてある日。
凛は気付く。
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消えた物には共通点がある。
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全部、
大切にしていた物。
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凛が尾鹿にスマホの画面を見せる。
最新の通知。
受信時刻。
昨日の午前二時十三分。
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スマホ画面。
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送ったよ
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その下。
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次はあなた
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尾鹿が聞く
「何が起きるんだ」
「分からないけど...多分良くないこと」
「警察は?」
凛は諦めた様に笑ってみせる
「行ってない」
「こんなの見せても頭おかしいと思われるし」
暫く外の雨の音だけが二人を包む。
凛がぽつり。
「ねぇ」
「これってさ」
「私が送られる側って意味かな」
凜はスマホを見ながら笑う。
「ちょっとだけ安心したんだよね」
「やっと終わるのかなって」
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尾鹿は煙草を揉み消しながら言う
「知らねぇよ」
凛は苦笑い。
「尾鹿さんらしい」
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尾鹿は何かを考えながら続ける
「ただ」
「送られる奴に事前連絡する必要あるか?」
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凛が顔を上げる。
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「え?」
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「送るなら黙って送るだろ」
「わざわざ『次はお前です』なんて言うのは」
「まだお前がそこにいるからだ」
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沈黙。
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尾鹿は続けて問いかける
「送ったよ、しか来てないんだろ」
「うん」
「お前、受け取ったのか」
「え?」
「だから」
「受け取ったって返事したのか」
凛は首を振る。
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「してない」
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「だったら終わってねぇじゃねぇか」
「終わってない?」
「宅配便だってそうだろ」
「送っただけじゃ届かねぇ」
「受け取りがいる」
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凛は半信半疑。
尾鹿は凛に声をかける
「返せ」
凛の手が震える。
「何て?」
受け取ったってな
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「受け取りました」
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「本当に送っちゃった」
凛が呟く。
その日の午前二時十三分。
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スマホが震える。
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通知。
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ありがとうございました。
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凛は目を丸くする。
「助かったのかな」
「さぁな」
尾鹿はぶっきらぼうに言う
「でも礼は言われた」
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凛が帰った後。
尾鹿のスマホに通知が来る
それを見た彼は舌打ちをしてから頭を掻きむしった。
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知らない番号。
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配送完了
添付ファイル1件
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