第十二話『スタンプ』
BAR 命の灯火
午後十一時四十分。
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客は二人。
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凛。
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そして女。
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目の下には濃い隈。
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化粧も崩れている。
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ここ数日まともに眠っていない顔だった。
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「同僚です」
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凛がそう紹介する。
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「三浦です……」
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女は小さく頭を下げた。
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尾鹿は水を出す。
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「それで?」
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凛は困った顔をした。
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「たぶん怪異です」
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「たぶん?」
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「私も最初は嫌がらせだと思ったんですけど」
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三浦は震える手でスマホを取り出した。
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「これです」
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尾鹿はスマホを受け取る。
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画面にはLINEスタンプの販売ページが表示されていた。
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タイトル。
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今日もお仕事がんばる♡118日目
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尾鹿は眉をひそめる。
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「118日目?」
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「はい」
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三浦は力なく頷いた。
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「毎日増えるんです」
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尾鹿はスタンプ一覧を開く。
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001日目
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002日目
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003日目
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004日目
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005日目
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延々と続いている。
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全部同じシリーズ。
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全部同じ女。
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三浦だった。
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尾鹿はスクロールを止める。
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013日目。
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デスクでコーヒーを飲む三浦。
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027日目。
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電車で居眠りする三浦。
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044日目。
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更衣室で着替えている三浦。
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尾鹿の指が止まる。
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「これ」
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「はい」
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三浦の顔色が悪くなる。
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「店の更衣室です」
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「撮影禁止です」
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「スマホも持ち込めません」
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店内が静かになる。
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尾鹿は次を見る。
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079日目。
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ドレス姿。
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営業スマイル。
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キャバクラの客席。
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「副業か」
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三浦は俯いた。
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「誰にも言ってませんでした」
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「会社にも」
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「家族にも」
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「友達にも」
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「凛以外には」
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凛は黙っている。
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尾鹿はさらにスクロールした。
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101日目。
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泣いている三浦。
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112日目。
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会社の会議室。
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115日目。
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自宅のベッド。
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眠っている三浦。
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尾鹿はスマホを見つめる。
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どれも盗撮だ。
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だが。
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説明がつかない。
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そして。
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118日目。
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尾鹿の手が止まった。
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スタンプの中の三浦。
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スマホを見ながら泣いている。
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背景。
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BAR 命の灯火。
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カウンター席。
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今座っている席だった。
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「……おい」
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三浦も凛も画面を見る。
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誰も喋らない。
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三浦は唇を震わせた。
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「私」
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「今日ここ初めて来たんです」
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尾鹿は何も言わない。
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言えない。
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そして。
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画面の一番下。
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まだ販売されていないスタンプがあった。
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黒いサムネイル。
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タイトルだけ表示されている。
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今日もお仕事がんばる♡119日目
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販売開始予定
23:59
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三浦は小さく呟いた。
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「毎日増えるんです」
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「必ず」
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尾鹿は黒いサムネイルを見つめる。
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「119日目は何なんだ」
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三浦は首を振る。
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「分かりません」
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「でも」
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震える声。
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「今まで全部」
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「現実になってるんです」
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尾鹿はスマホをカウンターに置いた。
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そして。
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短く言った。
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「怪異だな」
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凛が頷く。
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たこ焼きが水を置いた。
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「スタンプですね」
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尾鹿は頭を抱えた。
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凛はたこ焼きを見た。
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数秒。
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黙る。
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そして。
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「そういえば」
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「この人誰なんですか?」
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三浦も初めて気付いたように顔を上げる。
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カウンターの内側。
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知らない女。
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黒髪。
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無表情。
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いつの間にかそこにいた。
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尾鹿はため息を吐いた。
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「俺もよく分からん」
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「は?」
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「飯田さんが出前頼んだら届いた」
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「は?」
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「そのまま居着いた」
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「は?」
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三浦も凛も同じ顔をしていた。
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女はこちらを見る。
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そして。
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「たこ焼きです」
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三浦は瞬きをした。
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「たこ焼き?」
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「はい」
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「本名は?」
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「たこ焼きです」
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「え?」
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「たこ焼きです」
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尾鹿は酒瓶を片付けながら言う。
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「諦めろ」
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「諦めろって何ですか」
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「俺も諦めた」
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凛は頭を抱えた。
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「命の灯火ってこういう店でしたっけ……」
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「俺も最近そう思う」
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その時。
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三浦のスマホが震えた。
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全員の視線が集まる。
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時刻。
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23:59
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三浦の顔色が変わった。
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「来る……」
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「何がだ」
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「119日目です」
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店内が静かになる。
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0:00
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更新。
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販売ページが自動で切り替わる。
タイトル。
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今日もお仕事がんばる♡119日目
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追加スタンプ 8件
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三浦の呼吸が浅くなる。
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「開きます」
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尾鹿は止めなかった。
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どうせ見なければならない。
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一枚目。
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会社のデスク。
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真っ青な顔で俯いている三浦。
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文字。
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本日最終出勤です♡
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三浦の肩が震えた。
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二枚目。
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キャバクラの更衣室。
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そこで泣いている三浦。
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文字。
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バレちゃった♡
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三枚目。
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会議室。
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怒っている様子の上司。
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正面に座る三浦。
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文字。
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お話があります♡
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四枚目。
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会社のグループLINE。
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未読99+
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文字。
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見つかっちゃった♡
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五枚目。
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空っぽのロッカー。
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文字。
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お世話になりました♡
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「やだ……」
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凛が思わず呟く。
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六枚目。
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笑顔の三浦。
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だが。
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顔だけが黒く塗り潰されていた。
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文字。
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ご利用ありがとうございました♡
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七枚目。
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夜景が広がる屋上
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裸足でビルの屋上に立つ三浦の後ろ姿。
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文字。
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またね♡
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そして。
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最後。
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八枚目。
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真っ黒。
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何も映っていない。
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文字だけ。
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120日目をお楽しみに♡
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三浦の目から涙が零れた。
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「もう嫌です……」
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「もう無理です……」
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凛が肩を抱く。
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尾鹿は黙って画面を見ていた。
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しばらくして。
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たこ焼きがスマホを覗き込む。
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数秒。
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そして。
「大人気シリーズですね」
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店内が静まり返る。
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凛がジト目でにらみつけて言う
「今そこですか?」
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たこ焼きは頷く。
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「119日も続いています」
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「人気です」
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尾鹿は頭を抱えた。
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「そういう話じゃねぇんだよ」
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だが。
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尾鹿はある違和感を覚えていた。
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「三浦」
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「はい」
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「001日目覚えてるか」
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三浦は少し考える。
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そして頷いた。
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「キャバクラ初出勤の日です」
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尾鹿は次を見る。
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013日目。
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「これは」
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「会社で初めて褒められた日です」
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027日目。
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「徹夜明けです」
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044日目。
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「お店で着替えてた日です」
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尾鹿は黙る。
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そして。
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118日目を開く。
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泣いている三浦。
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背景は命の灯火。
今。
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この場所。
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「やっぱりだ」
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凛が顔を上げる。
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「何がですか」
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「この怪異」
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尾鹿はスマホを置いた。
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「未来を見てる訳じゃない」
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「え?」
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「予定表だ」
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店内が静かになる。
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「予定表?」
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「そうだ」
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尾鹿は118日分のスタンプを指差した。
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「これは予言じゃない」
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「決定事項なんだよ」
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三浦の顔色が悪くなる。
「じゃあ終わりじゃないですか」
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「いや」
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尾鹿は首を振る。
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「一つだけ変だ」
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118日目。
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命の灯火。
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「三浦」
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「はい」
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「お前ここ来る予定だったか?」
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「いいえ」
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「凛に無理やり連れて来られました」
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凛が少しショックを受けたように言う
「無理やりって……」
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尾鹿は頷く。
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「つまり」
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「ズレるんだ」
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「怪異の予定は」
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「人間が介入すると」
凛が理解する。
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「だから118日目は当たったけど」
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「完全には当たってない」
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「そう」
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尾鹿は煙草を咥えた。
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「なら話は簡単だ」
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「119日目を全部外す」
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三浦
「……全部?」
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「会社休め」
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「え」
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「キャバクラも休め」
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「え」
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「スマホ切れ」
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「え」
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「家にも帰るな」
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「えぇ……」
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尾鹿は真顔だった。
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「今日だけお前は」
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「スタンプに写るな」
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三浦は困った顔をした。
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「そんなので変わるんですか」
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「知らん」
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尾鹿は即答した。
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「でも」
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煙草の煙を吐く。
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「118日目は外れた」
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「だから試す価値はある」
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三浦は黙る。
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選択肢は無かった。
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会社へ行けば。
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クビになる。
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店へ行けば。
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副業がバレる。
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なら。
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信じるしかない。
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「分かりました」
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尾鹿は頷いた。
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「今日はここにいろ」
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「え?」
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「店は朝までやってる」
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「俺もいる」
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「凛もいるだろ」
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凛は頷いた。
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「いますよ」
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「有給取らせます」
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「いやそこは相談してから……」
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「もう取ります」
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三浦は少し笑った。
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三浦が笑うのは数日ぶりだった。
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午前一時。
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何も起きない。
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午前二時。
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何も起きない。
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午前三時。
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何も起きない。
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だが。
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スマホだけは静かではなかった。
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通知。
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通知。
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通知。
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通知。
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知らないアカウント。
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知らない番号。
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知らないメール。
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全て同じ内容。
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どこですか?
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三浦の顔色が変わる。
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また通知。
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今日はお休みですか?
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また。
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撮影が出来ません
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店内が静かになる。
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尾鹿はスマホを取り上げた。
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さらに通知。
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どこですか?
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どこですか?
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どこですか?
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画面が埋まる。
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その時。
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コト。
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たこ焼きがスマホを覗き込んだ。
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数秒。
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そして。
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「焦っていますね」
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尾鹿が顔を上げる。
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「分かるのか」
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「人気シリーズなので」
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「そうかよ」
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意味は分からなかった。
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午前四時。
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通知が止まる。
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午前五時。
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何も来ない。
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そして。
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午前六時。
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三浦のスマホが震えた。
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全員の視線が集まる。
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更新通知。
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新作。
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今日もお仕事がんばる♡119日目
販売開始。
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三浦の指が震える。
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画面を開く。
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表示された画像。
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真っ白。
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何も映っていない。
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人物も。
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背景も。
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何も無い。
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ただ一言。
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撮影失敗♡
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誰も喋らなかった。
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数秒。
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十秒。
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やがて。
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三浦の目から涙が溢れる。
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「終わった……?」
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声が震える。
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「終わったんですか……?」
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尾鹿は答えなかった。
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分からない。
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だが。
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少なくとも。
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初めてだった。
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怪異が失敗したのは。
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凛は安堵の息を吐く。
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三浦は泣きながら笑った。
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そして。
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たこ焼きがスマホを覗き込む。
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数秒。
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「打ち切りですね」
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尾鹿は煙草を咥えた。
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「人気シリーズじゃなかったのか」
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たこ焼きは頷く。
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「大人気でした」
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「残念です」
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尾鹿は深いため息を吐いた。




