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命の灯火  作者:
12/18

第十一話『出前』

BAR 命の灯火



深夜一時。



客は一人。



飯田。



珍しくカウンターに座って酒を飲んでいた。





「珍しいですね」



「何が」



「客やってるの」



「今日は働きたくない」



「いつもでしょう」




そんな話をしていた時。






飯田がスマホを取り出した。





「腹減った」





出前アプリを開く。




適当にたこ焼きを注文する。



三十分後。



店のドアが開いた。




若い女だった。





二十歳前後。





黒髪。





無表情。





女は店内を見回す。





そして。


真っ直ぐ飯田の前まで歩いてきた。




立つ。



黙る。



飯田も見上げる。



女が言った。





「私がたこ焼き」







沈黙。








「は?」


尾鹿が思わず聞き返す








女は何も言わない。




ただ立っている。







飯田は一口酒を飲み言う。


「来たか」



「知ってるんですか?」



「知らん」



「じゃあ何なんですか」







飯田は女を見る。







女も飯田を見る。







数秒。







飯田は頷いた。



「たこ焼きだな」



「何がですか」



「見れば分かるだろ」



「分かりませんよ」







女は黙っている。







飯田は勝手に解説を始めた。







「たぶん怪異だな」







「たぶん?」







「たぶん」







「適当じゃないですか」







「だって初めて見たし」







尾鹿は頭を抱えた。







飯田は続ける。







「出前で来るんだろ」







女は頷く。







「ほら」







「ほらじゃないですよ」







「出前の怪異だ」







「そんな雑な分類あります?」







「今できた」







飯田は満足そうだった。




女は静かに座る。







誰も勧めていない。







勝手に座った。







カウンター席。







まるで昔からそこにいたみたいに。







しばらくして。






飯田が立ち上がる。






「じゃあ帰るわ」







「待ってください」







尾鹿が即座に止める。







「これどうするんですか」







飯田は女を見る。







女も飯田を見る。







そして。






「出前だからな」





「届いたら受取人のもんだろ」




「俺受け取ってませんよ」



「店に届いた」


「じゃ、そういうことで」





カラン。







尾鹿が止める暇もなく飯田は店を出る







店内。







尾鹿。







たこ焼きと名乗る女







沈黙。







数秒。







女が口を開く。







「ご利用ありがとうございます」







尾鹿は深いため息を吐いた。







BAR 命の灯火。







今夜もまた。







厄介な客が増えたらしい。


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