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仮病だと知っていましたよ、殿下。あなたを愛していた頃から。今は愛していないので、失礼します  作者: ヲワ・おわり


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第48話 共通原因がある

 報告が来たのは朝だった。


「兵士が四人、昨夜から熱を出しています」とヴェルガーが言った。「今朝になって二人増えました。六人が同時に——」


「全員を見せてください」エルナは即座に言った。道具箱を持って立ち上がった。


 城館の兵士棟に連れられた。廊下に兵士が何人か出ていて、エルナを見た。普段、薬師が兵士棟に来ることはないのだろう。六人が別々の部屋にいたが、エルナは順番に全員を診察した。発熱の程度。症状の開始時刻。食欲の有無。吐き気の有無。下痢の有無——確認しながら、頭の中に一覧が作られていく。四人目の兵士を診ているとき、エルナはすでに気づいていた。


 六人目の診察が終わった。六人の症状を頭の中で整理した。共通点、相違点、症状の順序。それが一つの方向を指していた。廊下に出ると、ヴェルガーが壁際で待っていた。


「状態はいかがでしょうか」


「六人全員、症状の出方が非常によく似ています」エルナは言った。「発熱の程度、症状の開始時刻、吐き気と下痢の有無——パターンがほぼ同じです。これは、偶然に六人が同時に同じ病気にかかったのではありません。共通の原因があります」


「共通の原因」


「何か、六人全員が接したものがあるはずです。昨日の夕食が同じだったか、同じ場所にいたか——」


「夕食は同じものです。兵士はまとめて食事します」


「食事か、飲み水か」エルナは少し考えた。「吐き気と下痢が先で、熱が後から来ています。これは食中毒のパターンに近いですが——全員が同程度の症状というのは、飲み水が怪しい。食べ物であれば、量によって症状の差が出るはずです。水なら、全員が同じ量を飲む」


「水、ですか」


「城館の水は、どこから引いていますか」


 ヴェルガーが少し考えた。「上流から川を引いています。城館の脇に貯水槽があって、そこから各所に配水しています」


「今日の朝、兵士の棟で水を使いましたか」


「はい。朝の水は全員が飲みます。それ以外にも洗い物や——」


「水源を確認させてください」エルナはヴェルガーに言った。「ライナルト様に許可をいただけますか。もし水が原因なら、今日中に別の水源に切り替える必要があります。一日でも遅れれば、患者がさらに増えます」


「……水源、ですか」ヴェルガーが少し驚いた顔をした。


「発熱を個別に治療することはできます。でも原因が水なら、水を止めなければ新しい患者が出続けます。根本を確かめる必要があります」


 ヴェルガーが「少し待ってください」と言って、廊下を急いで行った。


 十分ほどして、戻ってきた。「辺境伯が直接、ご案内するとのことです」


 ライナルトが廊下に来た。「水源を確認したい、と聞いた」と言った。


「はい。よろしくお願いします」


「了解した。案内しよう」ライナルトが少し間を置いた。「水源、という発想は——私にはなかった」


「六人が同時に発症した場合、個人の病気ではなく環境の問題を疑うのが先です。治療の前に原因を特定しなければ、同じことが繰り返されます。薬師の仕事は処置だけではありません」


 ライナルトが頷いた。「行こう」


 城館を出て、川に沿って歩いた。ライナルトは先を歩いて道を示した。ヴェルガーも同行した。三人が川沿いの道を進む。朝の空気が冷たい。川の音がした。


 川沿いを二十分ほど上流に歩いた。道が細くなり、草が足元を覆うようになった。貯水槽を経由して、水の引き込み口まで行った。川の上流側を確認した。水の色が僅かに違う場所があった。透明だが、光の当たり方がわずかに違う。エルナは川に近づいた。岩の上に膝をついて、水面に顔を近づけた。水の匂いを嗅いだ。土の匂いの中に、何か別の匂いが混じっている。金属のような、微かな刺激がある。


「この上流に何かありますか。岩を掘っているとか、土を掘り返しているような場所が」


 ライナルトが少し顔を引き締めた。「……採掘の試掘がある。二ヶ月前から始めた。この川の上流一キロほどのところだ」


「そこが汚染源の可能性があります。採掘で地中の鉱物成分が川に溶け出している可能性があります。今日から城館の水は、下流の別の水源から取ってください。患者は処置します。今夜から改善するはずです」


 ライナルトが少し間を置いてから「わかった」と言った。「試掘を一時停止する。水源の確認が済むまで」


「今日中に患者には処置をします。水が変われば、明日から症状が改善するはずです」


 ライナルトが川を見た。水面が光を反射している。「水のことを確認しに来るとは——思わなかった」


「六人が同時に発症した。それが全てを言っていました」エルナは言った。「患者を一人一人診る前に、なぜ同時に発症したのかを考えれば、答えは見えます」


 帰り道、三人はほとんど無言だった。することがはっきりした。あとは動くだけだ。エルナは歩きながら、患者の処置の順番を考えた。六人の中で、最も消耗している兵士から先に処置する。水が変われば自然に改善するだろうが、念のため整腸の薬草を飲んでもらう。夜までにまた診察に行く。水源の汚染がどの程度のものかは、専門家を呼ぶ必要があるかもしれない。それはライナルトが判断することだ。エルナの役目は、今いる患者を確実に回復させることだ。

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