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仮病だと知っていましたよ、殿下。あなたを愛していた頃から。今は愛していないので、失礼します  作者: ヲワ・おわり


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第45話 この子を救える

 診察が一通り終わりかけた頃、フリスが低い声で言った。「もう一人、別の家に寝ている子がいます」


 その言い方が引っかかった。「今日の診察には来られなかったのですか」エルナは聞いた。


「動かせない状態です。三日、高熱が続いています。私が毎日様子を見に行っているのですが——なかなか」フリスが言葉を止めた。「……手が尽きかけていて」


「案内してください」


 フリスが少し間を置いた。エルナの目を一度見た。それから「王都の薬師が来ても、難しいかもしれません」


「見てみなければわかりません」


 フリスは何も言わずに歩き出した。エルナはその後に続いた。


 家は集会所から少し離れた場所にあった。道が細くなって、木が密になる。その奥に木造の小さな家がある。中に入ると、薬草の煙の匂いがした。フリスが何かを焚いている。煙が室内に漂っていて、空気が重い。換気した方がいい、とエルナはすぐに思ったが、まず子どもを見ることが先だ。奥の部屋に寝台があって、八歳ほどの男の子が横になっていた。毛布が重ねてある。顔が赤い。


 母親が立ち上がった。目が赤い。眠れていないのだろう。「また来てくださって——この子は、どうなりますか」と声が掠れていた。


「少し診させてください」エルナは言った。


 子どもの横にしゃがんだ。まず顔を見た。目が充血している。口が少し開いている。呼吸が少し浅い。手首に触れて脈を確認した。速い。リズムは均等だ。不整脈はない。次に首筋に手を当てた。熱が高い。肌が乾燥している。発汗が少ない。それは気になるところだ。高熱のとき、体は汗をかいて熱を下げようとする。それができていないということは——汗腺の機能が弱まっているか、水分が極端に不足している。エルナは額にも触れた。こめかみの下に指を当てた。脈が速く、しかし弱い。体力が消耗している証拠だ。


「何か飲んでいますか。水やお湯は」エルナは母親に聞いた。


「飲もうとしないんです。口に持っていくと、少し飲むんですが——ほとんど」


「わかりました。何日目から食べていませんか」


「三日間、ほとんど何も」


 エルナは子どもの腕を軽く持ち上げた。皮膚を指でつまんで、戻るまでの時間を確認した。少し遅い。脱水が始まっている。高熱と脱水の組み合わせは、早めに手を打たないと危険になる。


 フリスが後ろで見ていた。「解熱の薬草は試しました。ウィローバーク。昨日まで三回。でも熱が下がらない」


「それだけでは足りません」エルナは言った。「この子は、発汗できていません。体の水分が足りないから、汗で熱を逃がせない。解熱だけ促しても、水分が足りなければ効果が出ない。発汗を促す薬草と水分補給を同時にやる必要があります」


「発汗を促す——」フリスが少し考えた。「エルダーフラワーですか」


「それと、ペパーミントとジンジャーを組み合わせます。比率が大事です。エルダーフラワーを主成分にして、ペパーミントで体表の血流を上げ、ジンジャーで胃の負担を軽くして飲みやすくする。冷ましたものを少量ずつ飲ませてください。三十分おきに、少しずつ。一度に多く飲もうとしないように」


 フリスが黙った。「三つを組み合わせる、というのは」


「別々では効果が弱くなります。温度も大事です。熱いものは今は飲めない。人肌より少し低い温度で飲ませてください」


「……その比率は」


「エルダーフラワーが三、ペパーミントが一、ジンジャーが半分です。城館の薬草庫にあります。今すぐ作れます」


 エルナは道具箱を開けた。今日持参した分の薬草の中にエルダーフラワーがあった。分量を量った。小さな袋に入れて、飲ませ方の指示を口頭で伝えた。「今日の一回分はここにあります。これで今夜の分を作ってください。明日の朝、また来ます。水分が取れているかどうかを確認します」


「……明日の朝まで、様子を見ればいいですか」フリスが言った。


「はい。夜中に脈が変わったり、呼吸が苦しそうになったりしたら、すぐに知らせてください」エルナは母親に向かって言った。「でも、水分を少しずつ取れていれば、朝までに変化が出てくると思います。良い方向の変化です」


 母親が深く頭を下げた。「よろしくお願いします」


 フリスはエルナが調合するのを黙って見ていた。「本当に、下がりますか」と低い声で言った。


「下がります」エルナは言った。迷いがなかった。この症状なら、処置が正しければ必ず動く。確信があった。それは知識から来ている。二年間、王都で記録し続けた薬草の使用事例から来ている。発汗が止まった高熱の子どもに、この組み合わせが効くことは、三例の記録がある。「この処置で対応できます」


 帰り道、フリスは無言だった。エルナも何も言わなかった。言葉は明日の結果が言う。それで十分だ。


 城館に戻ってから、エルナはもう一度薬草庫に行った。明日の分の薬草を量って準備した。子どもの状態が夜中に変化した場合に備えて、追加の処置も頭の中で準備した。できることはやった。あとは今夜の経過だ。窓の外に夕暮れの色が差してきた。村の煙が遠くに見える。あの家の中で、今夜、母親が眠れずに子どもを見ているだろう。それがエルナには——わかった。だからこそ、明日の朝、必ず戻る。

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