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霧に覆われた森は月を見つける  作者: 華ノ月


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25/25

24.&エピローグ そして、霧は晴れて月を見つける


 智己がそう言葉を綴り終えると、サバイバルナイフを取り出す。


「安心してね………ほのか……。僕もすぐに逝くから……」


 智己がそう言葉を綴りながらサバイバルナイフを大きく振り上げる。


「やっ……………!!!」


 莉愛が殺されると分かり、目をぎゅっと瞑る。



 その時だった。



 ――――バターーーーン…………………!!!



 部屋の扉が勢いよく開く。



「…………そこまでだ!犬飼智己!!!」



 部屋に入ってきたのは優弥だった。


 そして、優弥と一緒に来た警察官が数人がかりで智己を取り抑える。


「監禁の現行犯で逮捕する!!」


 優弥がそう言って智己の両手に手錠をかけた。




~エピローグ~


「……莉愛ちゃん……無事でよかったわ……」


 あの後、莉愛は警察官によって保護されて、パトカーで警察署に行った。そして、その場に駆け付けた百合が莉愛の無事な姿を見て涙を流しながら駆け寄り、優しく抱き締めた。


 そして、莉愛と百合は先に帰ることになり、優弥はそのまま警察署に残った。


 家に着くなり、莉愛は安心したのか、百合が用意してくれたお布団の中でぐっすりと眠りに入っていった。




***


 智己が独房に設置されているベッドの上で眠る。


 その時、智己は夢を見た。


「……お兄ちゃん……」


 何もない真っ白な空間にほのかが白いワンピースに身を包み、智己に向って微笑んでいる。


「ほのか……」


 夢の中で智己が最愛の妹の名前を呼ぶ。


「ごめんね……。大好きなお兄ちゃんを独りにさせて……」


 夢の中のほのかがそう言葉を綴りながら涙を流す。


「お兄ちゃん……お兄ちゃん……大好きだよ……」


 ほのかが涙を流しながら智己にそう言葉を綴る。


「あぁ……。僕も大好きだよ……ほのか……」


 智己がそう言葉を綴り、一筋の涙を流す。


「もう、独りじゃないからね……」


 ほのかが微笑みながらそう言葉を綴ると、智己に手を差し出す。


「迎えに来たよ……、お兄ちゃん……。ずっと……、一緒にいようね……」


「ほのか……」


 智己が一筋の涙を流し、ほのかの手を取と、二人は手をしっかりと握り、光が差し込んでいる方角に向って歩きだした……。



***


 莉愛は夢を見ていた。


 大好きな両親の夢……。


 夢の中で両親が微笑みながら言葉を綴る。



「もう、大丈夫ね……」



 莉愛がそこで目を覚ます。


「お父さん……お母さん……」


 莉愛が一筋の涙を流しながらポツリと呟く。


 そして、お布団から起き上がり、リビングの方に向かう。


 リビングには百合と優弥がソファーに腰掛けていた。


「あら、目が覚めた?だいぶ長く寝ていたわね。もう大丈夫?」


 百合が莉愛に駆け寄りながら、優しい声でそう言葉を綴る。


 時計を見ると、夜の六時を過ぎていた。


「身体の方はもう大丈夫か?」


 優弥が莉愛にそう声を掛ける。


 その言葉に莉愛が頷く。


 そして、優弥に進められて優弥と対面になるように百合の隣に座る。


「……犬飼智己が自供した……」


 優弥が静かな声でそう声を発する。


 そして、転落事件となぜ智己が監禁のようなことをしたのかを語り始めた。



 両親の転落事故は、やはり智己が仕組んだ事件だった。智己は車にその仕掛けを施すために、点検員を名乗って莉愛の家に訪れていた。智己の顔が分かり、再度映像を調べたら、事故の前に智己が作業着姿で車を点検しているような映像を見つけることが出来たというので、智己にその事を確認したところ、すんなりと罪を認めたという事だった。


 莉愛がその話を聞いて、両親の事故がそう言う事だったと分かり、悲痛な表情を浮かべる。


 そして、なぜ智己はそんな行動を取ったのかを話した。


「……犬飼には「ほのか」という名前の妹がいた。かなり仲の良い兄妹らしくて、近所でも評判だったそうだ。だが……」


 優弥がそこで一旦息を吐く。


「妹のほのかは、犬飼の誕生日プレゼントを買った帰りに、通り魔によって殺されてしまった……」


「え…………」


 優弥の言葉に莉愛が呆然としながら声を出す。


 莉愛の頭の中で、あの時の智己の言葉の意味がようやく繋がる。



『…………家から出たらまた殺されてしまうだろう…………?』



 あの時のあの言葉の意味はそういう事だったのだと、莉愛の中で納得がいく。


「ほのかが殺されて、ご両親はショックから病気になり、立て続けに亡くなったそうだ。そして、犬飼は最愛の妹を殺されてから、恐らく心が壊れてしまったのだろう……」


「そ……そんな……」


 優弥の話に莉愛が愕然としながら声を出す。


「そして、犬飼は妹が死んだことを受け入れられず、妹をずっと捜していた。いや……。正確には妹の代わりを探していた……という方が正解だろうな」


「……じゃあ、私は……」


 優弥の言葉に莉愛がそう口を開く。


「あぁ。君はその妹とほぼ似ているよ」


 優弥の言葉に莉愛は何かを言うことが出来ない。


「そして、君を手に入れるため、犬飼は君の事を調べ始めた。すると、生き別れの兄がいることが分かり、その事を利用することを思い付き、転落事件を計画した。その同時期に君を確実に手に入れる為だろうな……犬飼が通ってる大学の研究室からクロロホルムを盗んでいる。多分、君が再度連れて行かれた時にハンカチを口に当てられて意識を失ったと言っていたから、そのハンカチにクロロホルムを沁み込ませてあったんだろう……」


 しばらく静寂が流れる……。


 智己はほのかに似ている莉愛を手に入れるために、莉愛の大好きな両親を殺した……。


 それは、許されることのない事実……。


 だが、それと同時にほのかが通り魔に殺されなければ、こんな悲劇は起きなかったというのも事実……。



「……後、最後にもう一つ伝えることがある」


 優弥がそう口を開く。だが、どこかその口を開くのに重そうにしている雰囲気が伝わってくる。



「…………犬飼智己が独房で死亡しているのが確認された……………」



「…………え…………」



 莉愛が優弥の言葉に頭がついていかないのか、戸惑うような声を出す。


「……全てを自供した犬飼を、独房に入れて、次の日の朝、警察官が様子を見に行ったら死亡している事が分かったそうだ……」


 優弥の言葉に莉愛は唖然として何かを言うことが出来ない。



 智己は取り調べで素直に自供し、独房に入っていた。そして、独房に設置されている簡素なベッドの上で寝ている時に死亡したという事だった。


 調べてみると、智己の死因は心臓麻痺という事だった。


 だが、苦しんで死んだ様子はなく、智己の閉じられた瞳からは、一筋の涙が顔にこびりついており、その表情はどこか安堵したような、穏やかな表情をしていた……。



「それと、今回の件とは関係ない話なんだが、君には生き別れの兄がいるよな?そのことについても調べてみたんだ」


 優弥の言葉を莉愛がじっと待つ。


「………俺だ」


「…………え?」


 優弥の発した言葉がよく分からなくて、莉愛がポカーンとした表情になる。


「君の生き別れた兄というのは、俺の事だ」


 優弥がどこかばつが悪そうな顔で、そう言葉を綴る。



「え……え…………えぇぇぇぇぇぇぇ…………!!!」



 莉愛が予想していなかった言葉に大きな叫び声を上げる。


「……だから、大きな声を出すな」


 優弥が少し怒り気味にそう声を発する。


「まぁ、実際に俺だってその事を知った時は驚いたよ。まぁ、一番驚いたのは百合が何となく勘づいていたことだけどな」


「え?」


 優弥の言葉に莉愛が隣に座る百合に顔を向ける。


「もしかしたらもしかするかも……って、思ったのよ。優弥さんから優弥さんのご両親は育ての親で産みの親ではないというのは聞いていて知っていたし……。それに、二人とも目元がそっくりなのよね」


 百合が微笑みながらそう言葉を綴る。


「確かに、俺を育てた親と産みの親は違う。その事は大学生の時に両親から聞いている。だが、育ての親には感謝しているから産みの親の事は気にしたことは無かったんだ。勿論、産みの親が誰なのかも調べたことも無い。だから、産みの親に君がいた事も当然知らなかったわけだ」


 優弥が家の事情を淡々と話していく。


「じゃあ……本当に……優弥さんが実の兄……なんですか……?」


 莉愛が「信じられない」とでも言いたい顔でそう声を発する。


「まぁ、そういうことだな」


 優弥が淡々とした口調でそう応える。


「まぁ、だからという訳でもないが、百合の希望もあるし、君さえ良ければこの家で一緒に暮らしてもいいと思っている」


「…………え?」


 優弥の口から更に出てきた言葉に、莉愛は唖然となる。


「これから子供も生まれてくるしな。俺は仕事で忙しいから君が百合の手伝いをしてくれると助かる」


「子供…………?」


 莉愛が再度、百合の顔を見る。


「私のお腹にはね、新しい命が宿っているの……」


 百合がお腹に手を優しく当てて、笑顔でそう言葉を綴る。


「返事は?」


 優弥が莉愛にそう声を掛ける。



 本当の実の兄との新しい家族……。


 一人じゃないという安堵感……。



「………よろしくお願いします……」


 莉愛が涙を流しながらそう言葉を綴った……。




「………ホントにいろいろあったな~」


 莉愛が与えられた部屋の窓を開けて、夜の空を眺める。


 夜空には星空が広がっており、大きな満月が昇っている。



 短い期間で起こったいろいろな出来事……。


 その出来事を振り返りながら、いろいろな想いが交差する……。


 そして、これかもいろんな出来事が起こり、それを一つ一つ乗り越えていく……。


 人は生きていく上で、必ず平坦な道を歩くわけではない……。


 いろいろな人と出会い、いろいろな経験をして成長していく……。



 そして、その経験がいつかは役に立つ事を信じて……。




「…………莉愛ちゃーん!ちょっと来てくれるー!」


「はーい!」


 莉愛を呼ぶ声が聞こえて、返事をする。


 莉愛は窓を閉めると、部屋を出て行く。



 霧に覆われた森……。


 謎だらけだった霧が晴れていく……。


 そして、全ての謎が解け、森には大きな月が顔を出した……。




(完)



こちらの作品を最後までお読みくださり、本当にありがとうございますm(_ _)m


智己は、最愛の妹を殺されなければ、今回の事件は起きなかったかもしれないです…。

事件が更に事件を生んでしまいました…。


最後までお読み頂いた皆様、本当にありがとうございますm(_ _)m


今回の物語は、どう感じましたか?


良かったら、感想やレビューコメントを頂けると嬉しいですm(_ _)m


後、こちらの作品が、面白かった、良かった、と感じましたら、是非評価☆を頂けると嬉しいです(^^)


よろしくお願い致しますm(_ _)m


次のお話は、悪と戦う男たちの話になります!!


投稿時間は昼頃を予定していますので、投稿した際には是非読んで頂けると嬉しいです(^^)


新作の投稿は10月を予定しておりますm(_ _)m


よろしくお願い致しますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
感想書こうか迷っていました。 ネタバレになるので多くは語れません。 最後の真相には大変驚きました。 他のミステリーも読ませて頂いてますが、 とてもわかりやすく、尚且つ真相が衝撃的ですね! ミス…
Xでご紹介頂き、ありがとうございます。 最後まで読ませて頂きましたので、感想を。 ミステリーなのでネタバレを含まないように気をつけながら。 まずは物語の入りから 両親の突然の転落事故で天涯孤独になる…
とてもゾクゾクしました。 また、真相に驚きました。
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