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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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まだ、誰かが残っている

作者:伊丹 宝
最終エピソード掲載日:2026/07/06
この町では、何かがおかしい。

ベンチは気づくと増えている。電話はかかっていないのに鳴り続ける。存在しないはずの写真が、毎日同じ場所に現れる。だが誰も、それを「異常」とは呼ばない。

ある女子高生は、町に起きる小さな違和感に気づく。
しかしその違和感は、記録に残すたびに少しずつ書き換えられていく。“見たもの”は消えない。ただし“見たことにされる内容”だけが変わっていく。

やがて彼女は知る。この町では、出来事は起きていない。
代わりに起きているのは—…。現実の整合性を保つための「修正」そのものだということを。

道に立つ子どもは事故を防いでいるのではない。消えない落書きは誰かの悪戯ではない。鍵のない家は、出入りするために存在していない。それらすべては、ただ一つの目的のために存在していた。

「世界を、完成させないため」

町はやがて一つの声を持つ。町内放送は通知ではなく、思考の同期となり、住人は個人ではなく“認識の分割結果”へと変わっていく。そして最後に現れる“記憶回収人”は語る。

これは記録ではない。記憶でもない。これは—…忘れても壊れない世界を作るための、事後生成ログだ。

しかしそのとき、ひとつの矛盾が残る。もしこの世界が「忘却のため」に作られているのなら、いったい誰がそれを“記録している”のか。

そして、まだ回収されていないものがあるとしたら—…それは本当に「過去」なのだろうか。
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