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第15話 熱は無いのに汗ばむ、ときどき熱が出て汗をかく。条文が自分で衛気の不和を言う二つの条。「蔵に他病無し」の蔵を、成無己・湯本・榕堂の頭注がそれぞれ読む。

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第15話 いつも汗ばむ、ときどき熱が出る

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傷寒論 太陽病 第53・54条(一級) 桂枝湯


    * * *


「熱はないのに、首のあたりがいつもじっとりする」

「風邪は治ったんじゃなかった?」

「治った。食欲もあるしお腹も平気。なのに汗だけ止まらない」

「ときどき熱っぽくなったりは?」

「夕方に少し。そのときがいちばん汗をかく」

「今日の二つの条がちょうどそれなんだ。僕が読むよ」


    * * *


■第53条 いつも汗が出るのは、衛が営と和さないから


病常自汗出者,此為榮氣和,榮氣和者,外不諧,以衛氣不共榮氣諧和故爾,以榮行脈中,衛行脈外,復發其汗,榮衛和則愈,宜桂枝湯。


 病、常に自ら汗出づる者は、此れ栄気和すと為す。栄気和する者は、外諧わず、衛気の栄気と共に諧和せざるを以ての故のみ。栄は脈中を行き、衛は脈外を行くを以て、復た其の汗を発し、栄衛和すれば則ち愈ゆ。桂枝湯に宜し。


|要約 いつもひとりでに汗が出るのは、営の気は和していて、外の衛の気が営と調和しないから。営は脈の中を行き衛は脈の外を行く。もう一度汗を出させて営と衛が和せば治る。桂枝湯。


「汗が出てるのにまた汗を出すの?」

「第2話の題と同じだね。汗をかいているのに汗をかかせる」


 成無己はこう読む。風は衛を傷り寒は営を傷る。衛が風の邪を受けていて営は病んでいない。これが「営気和す」だ。衛に邪が宿ると、営と調和できず、皮膚のきめも守れない。だからいつも汗が出る。桂枝湯で風の邪を散らし、営と衛を調えれば治る。


 第2話では、成無己は桂枝湯の汗を「栄弱衛強」と読んだ。ここでは宋本の条文のほうが、衛が営と和さないと自分で言う。


「第2話は成無己の注の言葉。今日は条文そのものが営と衛を言う」

「営は脈の中で衛は脈の外。場所まで書いてある」


 WHO の用語集には営衛不和証がある。熱の無い自汗が特徴で、熱と自汗がともに出ることもある。陽気が虚したとき、または体表に滞った陽気が営と陰液を乱したときに起こる、と書く。今の試験の大綱は、この条を「病が常に自汗出づる」証として立てる。


    * * *


■第54条 ときどき熱が出るなら、その前に汗を出す


病人藏無他病,時發熱、自汗出而不愈者,此衛氣不和也,先其時發汗則愈,宜桂枝湯。


 病人、蔵に他病無く、時に発熱し、自ら汗出でて愈えざる者は、此れ衛気和せざるなり。其の時に先だちて汗を発すれば則ち愈ゆ。桂枝湯に宜し。


|要約 ほかの病は無いのに、ときどき熱が出て汗が出て、治らない。衛の気が和していない。熱が出る時より先に汗を出させれば治る。桂枝湯。


「夕方に熱が出るならその前に飲むってこと?」

「そう読むのが成無己。熱が出て汗が出る時に先だって汗を発する」


 成無己は「蔵に他病無し」を、裏が和していることと読む。衛気が和さないのは表の病だ。そこへ『外台』の「裏和して表病めば、之に汗すれば則ち愈ゆ」を引く。


 大綱はこの条を「時に発熱し自汗出づる」証として、第53条と並べて立てる。


◆「蔵」はどこか


「蔵に他病無し」の蔵を、三つの本がそれぞれの言葉で読む。


・成無己『注解傷寒論』:裏(裏が和している)

・湯本求真『皇漢医学』:内臓(内臓に病が無ければ、病は必ず表にある)

・尾台榕堂『類聚方広義』の頭注:腹中(「其の蔵に寒有り」の蔵と同じく、みな腹中を謂う)


「裏と内臓と腹の中。言葉は違うけど、表ではない所、という点は同じだね」

「だから病は表にある。表なら桂枝湯で汗を出す」


 湯本の注は先其時もはっきり書く。ときどき熱が出て汗が出て、長く治らない人は、その熱と汗が出る前に汗を発すればすぐ治り、それには桂枝湯を用いるのがよい、と。


 (『皇漢医学』の第53条の注は、営気和・衛気不和・自汗などの字で引いたが見つからなかった。湯本の読みは第54条のほうだけ。広義の頭注は OCR の崩れがあり、「蔵版」とある字は読めていない)


    * * *


■いまの製剤


「今の桂枝湯は熱の無い汗にも使うの?」

「第2話で見たツムラ桂枝湯の効能は、『体力が衰えたときの風邪の初期』だけ。熱の無い汗のことは効能の字に無いよ」


    * * *


「夕方の前に何か飲んでみる?」

「まずは温かいお茶にする。熱が出る前にね」

「先其時だ」


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第15話 まとめ

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■覚えておく原文


病常自汗出者,此為榮氣和,榮氣和者,外不諧,以衛氣不共榮氣諧和故爾,以榮行脈中,衛行脈外,復發其汗,榮衛和則愈,宜桂枝湯。(第53条)

 いつも汗が出るのは、営は和していて衛が営と調和しないから。もう一度汗を出させて営衛が和せば治る。


病人藏無他病,時發熱、自汗出而不愈者,此衛氣不和也,先其時發汗則愈,宜桂枝湯。(第54条)

 ほかの病は無いのに、ときどき熱が出て汗が出る。熱の出る時より先に汗を出させる。


■新しく出た言葉


 営気和・衛気不和・営は脈中、衛は脈外(宋本)・営衛不和証(WHO)・先其時

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