↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/23

第14話B 或いはの五つに薬を足し引きする加減法と、それを後の人がみだりに作ったとする『類聚方広義』の項の文。飲んだあとの渇きは治りかけの印。湯本は、青龍の名を麻黄の色から読む。

━━━━━━━━━━━━━━━━

第14話B まとめ

━━━━━━━━━━━━━━━━


■覚えておく原文


若渴者,去半夏,加栝蔞根三兩;若微利者,去麻黃,加蕘花;若噎者,去麻黃,加附子一枚;若小便不利、少腹滿者,去麻黃,加茯苓四兩;若喘者,去麻黃,加杏仁半升。(第40条の方の加減)

 渇けば半夏を去る。ほかの四つは麻黄を去って、蕘花・附子・茯苓・杏仁を加える。宋本は、蕘花は下痢を治さず麻黄は喘を主るから仲景の意ではないのでは、と疑う一文を添える。


傷寒心下有水氣,咳而微喘,發熱不渴。服湯已,渴者,此寒去欲解也。小青龍湯主之。(第41条・二級)

 飲んだあとに渇くのは、寒が去って治りかけている印。


■新しく出た言葉


 栝蔞根・蕘花・五味子・半夏・痰沫(口訣)・四神(青龍・白虎・玄武・朱雀)


━━━━━━━━━━━━━━━━

第14話B 或いは、が五つ

━━━━━━━━━━━━━━━━


傷寒論 太陽病 第40・41条 小青龍湯の加減と、日本の本


    * * *


「咳はまだ出るけど昨日より楽」

「鼻水は?」

「水みたいなのは少し減った。それより喉が渇いてきた」

「渇くのは悪い印じゃないかもしれないよ」

「その話も今日の所にあるの。今日は私が読む」


    * * *


■加減法 或いはの五つに、薬を足し引きする


 宋本は小青龍湯の煮方のあとに、或いはの症ごとの加減を並べる。


若渴者,去半夏,加栝蔞根三兩;若微利者,去麻黃,加蕘花(如一雞子,熬令赤色);若噎者,去麻黃,加附子一枚(炮),若小便不利、少腹滿者,去麻黃,加茯苓四兩;若喘者,去麻黃,加杏仁半升(去皮尖)。


 若し渇する者は、半夏を去り、栝蔞根三両を加う。若し微しく利する者は、麻黄を去り、蕘花(一鶏子の如く、熬りて赤色ならしむ)を加う。若し噎する者は、麻黄を去り、附子一枚(炮る)を加う。若し小便不利、少腹満する者は、麻黄を去り、茯苓四両を加う。若し喘する者は、麻黄を去り、杏仁半升(皮と尖を去る)を加う。


|要約 渇けば半夏を去って栝楼根。少し下痢すれば麻黄を去って蕘花。のどがつかえれば麻黄を去って附子。尿が出にくく下腹が張れば麻黄を去って茯苓。喘すれば麻黄を去って杏仁。


◇渇く

 去る:半夏

 加える:栝楼根3両

 成無己の理由:半夏は辛くて津液を燥かすので渇く人に合わない。栝楼根は苦くて津液を生む

◇少し下痢する

 去る:麻黄

 加える:蕘花(鶏卵ほど。赤く炒る)

 成無己の理由:麻黄が陽を発すると、水が胃に浸みて下痢になる。蕘花は水を下し、水が去れば下痢は止む

◇のどがつかえる

 去る:麻黄

 加える:附子1枚(炮)

 成無己の理由:注は経の「水が寒気を得れば、冷えて必ず打ち合い、その人は即ち…」を引く(そのあとの字は崩れている)。附子で水の寒を温めて散らす。麻黄は汗を発するのを嫌って去る

◇尿が出にくく下腹が張る

 去る:麻黄

 加える:茯苓4両

 成無己の理由:水が下焦にたまる。麻黄は津液を外へ出すので合わない。茯苓はたまった水を下へ泄らす

◇喘する

 去る:麻黄

 加える:杏仁半升

 成無己の理由:『金匱要略』の「形腫るる者は麻黄を内れず杏子を内る」を引く


「喘するのに麻黄を去るの?」

「宋本にもそこを疑う一文があるの」


 宋本は加減のすぐあとに書く。成無己の本にこの一文は無い。蕘花は下痢を治さないし麻黄は喘を主る。いまこの文はそれとあべこべだから、仲景の意ではないのではないか、と。


◆加減法は後の人が作った、とする文


 尾台榕堂の『類聚方広義』の小青龍湯の項には、こう読める文がある。或いは渇き或いは下痢する以下の五つの症は、みなこの方がそのまま兼ねて治すものだ。だから本論は「或」と書いて「若」と書かない。「若」と書けば必ず味を加える。後の人は「或」と「若」の違いを知らず、みだりに加減法を作った。小柴胡湯・真武湯・通脈四逆湯・理中丸・四逆散もみなそうだ、と(四逆散は OCR では「山逆散」)。


「条文は『或いは』で加減は『若し』。字が違う」

「或いはなら八味のままで治す。若しなら薬を足す。字の違いを、薬を足すかどうかの違いと読むのね」


 この文の前後は OCR が崩れていて、本文か頭注か、誰の言葉かは分けられない。


    * * *


■第41条(二級) 飲んだあとに渇けば、治る印


傷寒心下有水氣,咳而微喘,發熱不渴。服湯已,渴者,此寒去欲解也。小青龍湯主之。


 傷寒、心下に水気有り、咳して微喘し、発熱して渇せず。湯を服し已りて、渇する者は、此れ寒去りて解せんと欲するなり。小青龍湯之を主る。


|要約 心下に水があって、咳と軽い喘、熱があるが渇かない。小青龍湯を飲んだあとに渇くのは、寒が去って治りかけている印。


「渇いてきたのはこれだね」

「たぶんね。二級の条だけど昨日の続きだから読んでおく」


 成無己は、咳して少し喘するのは水の寒が肺を射るため、熱があって渇かないのは表の証がまだ終わらないため、と読む。湯を飲んだあとに渇くのは、裏の気が温まり水気が散ったからだ。


『皇漢医学』も、はじめ渇かないのは胃に水がたまっているためで、飲んだあとに渇くのは薬の力が水を追い出し胃の中を比べて乾かしたからだ、と読む。「小青龍湯之を主る」の句は「発熱して渇せず」の句に続くものとして読む。


    * * *


■日本の漢方では


◆平素から胃に水がある人の風邪


 湯本求真の読みでは、この条の人はふだんから胃の中に水がたまっている。そこへ感冒や腸チフスにかかると、表の証と胃の水がからみあって、いろいろな症が出る。


・乾嘔:胃の水が表の病に突き動かされて上に逆らう

・咳:表の病と胃の水が呼吸器に迫る

・渇く・下痢:胃の水が下に行く

・噎:飲み込んだ物と、上に迫る水がぶつかる

・尿が出にくい・下腹が張る:水が上に行って下りない/下腹に集まる


 薬の役も湯本は自分の言葉で分ける。麻黄と桂枝で表を解き、桂枝で水の毒が上に迫るのを抑える。細辛・乾姜・半夏で胃の水を去り、芍薬と五味子で咳などを収め固める。甘草は諸薬を調えて組織の引きつりを緩める。そうすれば、古い病の胃の水も新しい病の表証も、ともにすっかり消える、と。


「成無己は水と寒で肺が冷える。湯本は胃にたまった水」

「水がもとにあるのは同じ。置き場が肺と胃で違うの」


◆青龍は、麻黄の色


 湯本は方の名にも触れる。小青龍湯と大青龍湯の名は、二つの方にある麻黄の色が青いのを、昔の四神の青龍になぞらえた。同じように、白虎湯は石膏の白、玄武湯(真武湯)は附子の黒、朱雀湯(十棗湯)は大棗の赤からつけた、と書く。


◆汗があっても押し通す


 湯本が引く『勿誤薬室方函口訣』は、この方の目当てを痰沫・咳嗽に置く。寒さや暑さが来ると必ず咳が出て、痰沫を吐いて横になれず、喉がぜいぜいする。それは心下に水飲があるからだ。そして、汗が出ているときに汗を出す薬を与えるのは禁じ手だが、咳して汗がある症にもこの方で押し通すことがある、と言う。ある老医の伝えでは、そのときの汗は必ずひどく臭うので、それを一つの印にするとよい、とも続ける。


    * * *


■いまの製剤


「ツムラの小青竜湯は八味のまま?」

「八味のまま。半夏だけが倍」


◇半夏

 宋本:半升

 ツムラ小青竜湯エキス顆粒(医療用):6.0g

◇麻黄・芍薬・細辛・乾姜・甘草・桂枝(ツムラはケイヒ)

 宋本:各3両

 ツムラ小青竜湯エキス顆粒(医療用):各3.0g

◇五味子

 宋本:半升

 ツムラ小青竜湯エキス顆粒(医療用):3.0g

◇煮て得る量と飲む量

 宋本:水1斗(手元の宋本のテキストは一升。第14話A)から3升を煮て、1回1升

 ツムラ小青竜湯エキス顆粒(医療用):1日9.0g(乾燥エキス 5.0g)


 効能は「水様の痰、水様鼻汁、鼻閉、くしゃみ、喘鳴、咳嗽、流涙」のある気管支炎・気管支喘息・鼻炎・アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎・感冒。口訣の痰沫と並べると、今の効能は痰も鼻汁も「水様」と書く。


 添付文書には、通年性の鼻アレルギーの人でプラセボと比べた試験が載る。2週間飲んで、中等度改善以上は小青竜湯の群で44.6%、プラセボの群で18.1%だった。副作用の出た割合は6.5%と6.4%。


 重大な副作用には、偽アルドステロン症とミオパチーのほかに、間質性肺炎と肝機能障害も並ぶ。


生薬のメモ 五味子(ゴミシ)

|

|中医学 臺灣中藥典では、五味子の乾燥した熟した果実で、北五味子と呼ぶ。収渋薬に入り、味は酸と甘で性は温。肺・心・腎の経に入り、肺を斂めて咳を止め、汗を斂める。用量は1.5〜7.5g。

|

|日本漢方 日本薬局方のゴミシは、チョウセンゴミシの果実。「弱いにおい及び酸味があり,後に渋くて苦い」。


生薬のメモ 半夏(ハンゲ)

|

|中医学 臺灣中藥典では、カラスビシャクの乾燥した塊茎。祛痰薬(燥湿化痰)に入り、味は辛で性は温、毒がある。脾・胃・肺の経に入り、湿を燥かして痰を化し、逆を降して嘔を止める。用量は3〜11.5gで、ふつうは炮製してから使う。生の半夏は毒があるので炮製法に従う。

|

|日本漢方 日本薬局方のハンゲは、カラスビシャクのコルク層を除いた塊茎。「ほとんどにおいがなく,味は初めなく,やや粘液性で,後に強いえぐ味を残す」。


「宋本も半夏を『洗う』と書いてたね」

「台湾は炮製してから使うと書く。日本はコルク層を除いた塊茎と書く。手の入れ方の書き方がそれぞれ違う」


    * * *


「喉はまだ渇く?」

「渇く。水を一杯ちょうだい」

「はい。寒が去って治りかけ」

「それは第41条の読みでしょ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。