第10話 毎回の表に書いてきた「3両」は、今の何グラムか。答えは二つある。桂枝湯で計算してみる。
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第10話 閑話休題A 3両は何グラムか
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「毎回の表で『3両』って書いてるでしょう」
「書いてる」
「何グラムなの?」
「それが二つの答えがある」
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■1両は15.625グラム、という説
中国中医科学院の研究者が2019年に書いた論文は、漢の重さの単位を黍の粒から組み立て直した。
「黍?」
「きびの粒。漢の重さも量も長さも、黍を基にしてた、という読み」
論文によれば1両は24銖。換算すると、漢の1斤は250グラム、1両は15.625グラム、1銖は0.65グラムになる。量のほうは1升が200ミリリットルで、1合が20ミリリットル。
論文は、量と長さの単位にはほとんど争いが無く、争いが多いのは重さのほうだ、とも書いている。
■1両は13.8グラム、という合意
もう一つは、中国の国の研究計画で専門家がまとめた合意だ。2015年に出たその合意は、古典の処方の1両を13.8グラムとする。
「15.625と13.8。近いけど同じじゃない」
「どちらも今の私たちの使う量よりずっと多い」
この合意には続きがある。13.8グラムは、そのまま使えという数ではない。病の状態で換えるよう求めていて、重い病や危うい病なら1両を6〜9グラム、長く続く病なら3〜6グラム、予防なら1〜3グラムに換える。
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■桂枝湯で計算してみる
「じゃあ桂枝湯の3両は?」
「15.625なら47グラム近く。13.8なら41グラムくらい」
「桂枝だけで?」
「桂枝だけで。芍薬も生姜も3両だから同じ」
◇桂枝・芍薬・生姜
宋本の量:各3両
1両15.625gで:各約46.9g
1両13.8gで:各約41.4g
ツムラ(第2話):ケイヒ・シャクヤク 各4.0g、ショウキョウ 1.5g
◇甘草
宋本の量:2両
1両15.625gで:約31.3g
1両13.8gで:約27.6g
ツムラ(第2話):カンゾウ 2.0g
◇水
宋本の量:7升
1両15.625gで:約1,400mL
1両13.8gで:—
ツムラ(第2話):—
◇煮上がり
宋本の量:3升
1両15.625gで:約600mL
1両13.8gで:—
ツムラ(第2話):—
◇1回に飲む量
宋本の量:1升
1両15.625gで:約200mL
1両13.8gで:—
ツムラ(第2話):—
(水と煮上がりは1升200mLで計算。宋本の量は1剤の量で、ツムラは1日分のエキスの元の量)
「ツムラのケイヒ4グラムは、3両の10分の1から12分の1くらい」
「合意の換え方に当てると、1両あたり1グラムちょっと。数だけなら予防の幅」
「でもちょっと待って」
「何?」
「宋本は1剤を3回に分けて、汗が出たら残りは飲まない、だった。ツムラは1日分。同じ物差しで比べていいのかな」
「そこは比べられない。表は数を並べただけ」
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■枚は、まだわからない
「大棗の12枚は?」
「枚は数の単位で、重さじゃない。今回見た二つの出典は、枚を重さに直していない」
「じゃあ表には入れられないね」
「入れない。わからない物はわからないまま」
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「1回に200ミリリットルも飲むのね」
「熱いのをそれだけ飲んで、布団をかぶる」
「そう聞くと条文が急に自分の体の話になる」
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第10話 まとめ
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■覚えておく数
◇1両
今の量:15.625g(1斤 250g・1銖 0.65g)
出典:2019 年の論文(黍を基にした読み)
◇1両
今の量:13.8g(病の状態で換える)
出典:2015 年の専門家の合意
◇1升
今の量:200mL(1合 20mL)
出典:2019 年の論文
■わかっていること
・重さの単位には争いがある。量(升)と長さには、ほとんど争いが無い(2019 年の論文)。
・合意は、重症・危篤で 1 両 6〜9g、慢性の病で 3〜6g、予防で 1〜3g に換える。
・桂枝湯の桂枝 3 両は約 41〜47g。ツムラのケイヒ 4.0g は、その 10〜12 分の 1 ほど。
■まだわかっていないこと
・大棗の「枚」を重さに直す出典。
・宋本の 1 剤と、エキス剤の 1 日分を、同じ物差しで比べてよいか。
・日本の量(エキス剤の生薬の量)がどう決まったか。製剤の閑話か発見の回で。




