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メタルブレーカーズ【改】

作者:源三郎
最新エピソード掲載日:2026/11/04
都市を焼かず、ひとことも発しない。ただ空に在るだけで、通信もレーダーも戦闘機も、核さえも沈黙する――D.C.2000年、房総半島沖に現れた、巨大な白いもの。

電子が死ぬ戦場で、人類は初めて知った。自分たちが、どれほど脆い神経の上に立っていたかを。

世界合同迎撃作戦「ユニオンランス」は失敗する。ミサイルは目を失い、戦闘機は翼を奪われ、核すら起爆しなかった。最新兵器がことごとく沈黙するなか、最後に残されたのは、油圧と歯車だけで動く時代遅れのアナログ二足歩行重機――防衛庁地下の極秘計画「華計画」だった。

泥と硝煙に塗れた分厚い装甲板が、一歩踏み出すたびに重苦しく軋む。むき出しのシリンダーが潤滑油を血のように滲ませる。電子の死に絶えた沈黙の世界で、その無骨でむせ返るような駆動音だけが、彼らが生きている唯一の証だった。

陸を踏みしめる〈蓮華〉。空で人間の脳を翼に変える〈月華〉。宇宙から落ちる、脚のない黒い機体〈烈火〉。

勝てない。触れることすらできない。それでも蓮華班の加藤、奥山、伊藤は、撃つためではなく、記録を持ち帰り生きて戻るために、鉄の足で白の下へ歩き出す。

怖いから、帰ろうとする。帰り方を先に決めておく。戻る足を作る。帰る場所を照らす灯台を灯す――その四つの言葉だけが、彼らを地上へつなぐ。

だが、小さな希望は世界の猜疑心に火をつけた。なぜ日本だけが、動ける機体を持っていたのか。国家は揺らぎ、同盟は崩れ、恐怖はやがて暴力となって、人類自身を壊しはじめる。

飛翔体は一度退けられ、しかし、より速く戻ってくる。まるで攻撃しているのではなく、どこかへ帰ろうとしているかのように。

三つの華が咲くとき、人類は白い沈黙の向こうに、本当の戦後を見る。そして宇宙の暗がりから、黒い信号が届く。

 ――恐怖は、どんな兵器より速く、人を壊していく。
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