再びの邂逅
「いや、いい。俺はただ、その人が、まだ、この街にいるかを、確認しに来ただけだ」
時燼は、顔を上げ、淡々と、そう言った。
店主は、その言葉に、むっとしたように、眉を下げた。
「どういうことだ。私が教える道は、当てにならんと?それとも、私が、彼女の居場所を探り当てる力など、ないと、そう言いたいのか」
時燼の声は、あいかわらず、素っ気なかった。
「あんたは、彼女が神器の持ち主だと知っている。その力が、どれほど厄介かもな」
「本当に、あんたが、彼女を見つけ出せたなら、それは、大したもんだ」
店主は、ぐ、と言葉に詰まった。そんなことは、彼女が、いちばんよく分かっていた。十中八九、その足取りは、掴めないだろう。
壁の時計が、二つ、時を打った。店主は、ふん、と小さく鼻を鳴らし、顔を、ぷいと背けた。
「……まあいい。せっかく来たんだ。この情報は、くれてやる。見つけられるかどうかは、あんたの運次第だ」
それから、時燼を、ちらりと見て、きっぱりとした口調で言った。
「街の東、小高い丘の上に、一本だけ、ぽつんと立つ木がある。あたりは、どこまでも平らで、あの木だけが、ひとりでに、そこに立っている。お前が探している者は、あの木の下で、よく、ぶらんこをしている。会えるかどうかは、運だ」
時燼は、「助かった」と、短く礼を言い、銀貨を置いて、立ち上がった。
背に閻魔刀を負い直し、扉を押して出ていこうとする。その後ろ姿へ、店主が、急に、声をかけた。さっきまでの、つっけんどんな調子は、消えていた。
「……あの、客。もし、彼女と、刃を交えることになったとして。お前が、彼女の命を、奪いそうになった時は、どうか、彼女だけは、生かしておいてくれ。逆に、彼女が、お前を、殺そうとした時は、私が、お前を、生かしておくよう、言ってやる……」
夜風の中、時燼の足が、ほんの少し、止まった。
「いや、いい」
それだけを、低く、置いていく。その背中は、すぐに、夜の闇へと、すうっと、溶けていき、路地の角を曲がって、見えなくなった。
二つ、三つ、細い路地を曲がった時だった。頭上から、風を切る音が、降ってきた。黒い影が、三つ。濃い黒紫の魔力を、全身にまとわせて、真っ直ぐに、飛びかかってくる。
曲刀が放つ魔力の光が、耳の横を、すり抜け、その風圧で、壁の欠けた瓦が、ぱらぱらと、落ちた。
「この閻魔刀、探したぞ。おとなしく渡せば、命だけは、助けてやる!」
先頭の黒装束の男が、ぎらついた目で、そう叫ぶ。掌に渦巻く魔力は、鋭い棘となって、時燼の胸を、まっすぐに狙った。
時燼は、足を止めなかった。身を、かるくひねって、その棘を、半歩でかわし、右手を、背の閻魔刀へと回す。
柄を握った瞬間、冷たい刀気が、一気に、あたりの魔霧を、吹き飛ばした。
刀身が、ひとりでに震え、淡い青の刀気が、鋭い弧を描く。速さは、残像さえ、残さない。
「がきん」「がきん」と、二度、乾いた音がして、二人分の曲刀が、手から、弾き飛ばされた。
全身を包んでいた魔力の障壁も、粉々に砕け、掌には、刀気で切り裂かれた、深い傷が走る。男たちは、よろよろと、壁の根元へと、倒れ込み、魔力の乱れを、抑えられずにいた。
先頭の男は、目を、かっと見開き、怒りに、全身の魔力を、振り絞る。黒紫の光が、曲刀を、すっぽりと包み、刃は、数寸も、膨れ上がった。それが、時燼の顔面を、叩き割らんと、真っ直ぐに、振り下ろされる。
魔の波が、四方の壁へと、打ちつけられ、石の粉が、舞い散った。
時燼は、目を、冷たく、細めた。逃げもせず、受けもせず、ただ、刀を、引き抜いた。
三度、空気が、裂けた。
わずか三秒。時燼は、刀を、鞘へと戻した。刀身の、うなりが、しだいに、鎮まっていく。彼は、壁に飛んだ血の跡を、一瞥し、淡々と、言った。
「次からは、手を出してはならんものに、手を伸ばす前に、自分の、器を、よく、測ることだ」
言い終えると、彼は、街の東へと、歩き出した。月の光が、彼の影を、長く、伸ばしていく。背中の閻魔刀が、かたかたと、かすかに鳴り、一歩、また一歩と、あの、一本の木へと、近づいていく。
街の東、小高い丘。月明かりが、野原を、どこまでも、照らしていた。木の下に吊るされた、ぶらんこが、夜風に、ぎい、ぎいと、揺れている。誰も、いない。あたりには、野の草の匂いだけが、静かに、漂っていた。
時燼は、首のネックレスを、そっと握り、低く、呟いた。
「……来るのが、早すぎたか」
もう一度、空っぽの丘を、見渡した。それから、きびすを返し、街の中へと、歩き戻る。
彼は、通りに面した、小さな宿を選んだ。扉を押し、金をいくつか置いて、二階の、通りの見える部屋を取る。
部屋に入り、鍵をかける。窓辺に立ち、しばらく、街の東の方角を、じっと、見つめていた。
数日後、彼女と、出会う。その時を、静かに、待っていた。
翌朝、骨の奥まで、しみるような寒さが、部屋の中へと、流れ込んできた。その冷たさに、時燼は、眠りから、引き戻された。
窓へと歩み寄り、ガラス戸を、かるく、押し開く。空から、細かな雪が、ひらひらと、降りていた。城邦の、どの屋根も、どの路地も、一夜のうちに、薄く、白く、おおわれている。
彼は、掌を、窓の外へと、差し出した。小さな雪が、温かな手のひらに落ち、すぐに、冷たい水の粒へと、かわっていく。
時燼は、空一面に、巻き起こる雪を見上げ、ぽつりと言った。
「……また、雪の日か」
着替えを済ませ、部屋を出る。宿の入り口のガラス戸を押すと、雪をはらんだ冷たい風が、ふわりと、流れ込んできた。目の前には、街すべてが、雪に、洗われている。
通りの雪は、ふわりと柔らかく、踏むたび、こちこちと、小さな音を立てる。両側の家々の軒先には、薄い氷が張り、木の枝には、ふわふわと、雪の塊が積もっていた。風が吹くたびに、ぱらぱらと、雪が、落ちてくる。
時燼は、雪道を、ゆっくりと歩いた。肩に降り積もる雪が、この、冷たく固い影に、わずかな、やわらかさを、添えていた。
薄雪を踏みしめながら、通りを歩いていると、ふと、ある看板に、目が留まった。木の板に、太い黒字で、「牛頭人ラーメン店」と、書かれている。妙な店名だった。
彼は、少しだけ、立ち止まった。それから、入り口の、厚い綿の暖簾を、手で押し上げ、中へと入った。
暖簾をくぐると、熱い湯気と、骨の出汁の濃い香りが、ふわりと、顔を包む。顔を上げると、なるほど、鍋を振るう店主は、牛の頭をした、牛頭人だった。
青灰色の、ごつごつした角が、頭の上で、天を突き、厚い手で、長い杓子を握りしめ、かまどの前で、ことことと、スープを煮込んでいる。店の名に、たがわぬ、姿だった。
時燼は、窓際の席に座り、品書きを眺めた。牛肉麺、という文字は、どこにもない。仕方なく、看板の、骨出汁ラーメンを頼んだ。
ほどなくして、湯気を立てる一杯が、卓へと運ばれてくる。骨の出汁は、濃く、麺は、しっかりと、こしがある。雪の日に、どんぶりを、両手で包むと、温かさが、指先から、胸の奥まで、しみてくるようだった。
彼は、麺を、ひと口、すすった。立ちのぼる湯気が、目元を、ぼんやりと、曖昧にする。頭の奥で、ふと、古い景色が、ゆらめいた。
前に、この城邦へ来た時、隣には、誰かが、いた。今は、もう、その人は、いない。
だが、別れの時の景色と、あの頃の、人いきれが、やけに、はっきりと、脳裏に、よみがえってくる。
しばらく、思いに沈んでいたが、やがて、時燼は、顔を上げ、残りの麺を、たいらげた。汁まで、きれいに飲み干し、代金を置いて、暖簾をくぐる。
綿の暖簾が、背中で、ぱさりと落ちた、その時。彼は、街路を、なんとなく、見渡した。その視線が、ぴたりと、止まった。
雪景色の中、路地の入り口に、妙な姿の物体が、ひとつ、立っていた。
時燼が、目を凝らすと、その物体は、彼の視線に、気づいたように、突然、こちらの方へと、走り出してきた。
その後ろから、数人の、焦った顔の男たちが、叫びながら、追いかけてくる。
「待て!」「そっちだ!」「逃がすな!」
それは、逃げ道を、見失ったように、まっすぐに、時燼の後ろへと、駆け込み、彼の上着の裾を、死に物狂いで、つかんだ。
時燼が、目を伏せると、その「外套」は、破れた、黒い、ごみ袋だった。彼が、手を伸ばし、そっと、それを、引っぱると。
中から、赤い髪の、赤い瞳の少女が、現れた。頭の上には、小さな、二本の、龍の角が、ちょこんと、生えている。鼻の頭は、寒さで、赤く染まり、おびえた様子で、時燼の背に、隠れていた。
時燼に、面倒ごとに、首を突っ込む気は、なかった。だが、追いかけてくる男たちの、衣服に、混血城邦の、軍の紋章が、ついているのを見て、その気持ちは、ぱったりと、消えた。
彼は、少女から、半歩、離れようとした。
少女の、裾をつかむ手に、ぎゅっと、力がこもる。声は、ふるえ、切羽詰まった、懇願だった。体を、もうひとつ、時燼の後ろへと、押し込む。
「お兄さん……!助けて……!」
時燼は、心の奥で、小さく、ため息をついた。それから、手を伸ばし、少女の肩を、かるく、抱き寄せた。全身の魔力を、ふわりと、揺らめかせ、つま先で、地面を、かるく蹴る。
二人の姿は、次の瞬間には、もう、そこから、消えていた。
雪が、音もなく、降りしきる中に。
あとには、追いすがってきた兵士たちが、ぽかんと、立ち尽くしている。
「やばい……あの実験体、もっと厄介な連中に、連れて行かれたぞ!」
「あんな、低血統が、どうして、ああいう奴と……すぐに、戻って、報告だ!」
時燼は、少女を抱えたまま、人通りのない、静かな裏通りへと、降り立った。つま先が、雪を、かるく、押しのける。全身に漂わせていた、ごく淡い魔力を、すっと、消した。
耳を澄まし、追手の気配が、どこにもないことを、確かめてから、肩を、そっと、離した。
彼が、半歩、身を引いた、その時。
「ぐぅ……」
少女の腹から、小さな音が、ひとつ、鳴った。雪の降る、静かな通りに、やけに、はっきりと、響く。
時燼は、少女を、上から下まで、かるく、眺めた。きゅっと、服の端を、握りしめている手。心もとなく、閉じられた唇。
「……腹が減ってるのか」
少女は、顔を上げ、赤い瞳で、彼を、おそるおそる見た。それから、すぐに、長いまつげを、伏せて、こくりと、小さく、頷いた。
裾をつかむ指に、また、わずかに、力がこもる。耳の先が、ほんのり、赤かった。
時燼は、それ以上は、何も言わず、背を向けて、暖かな灯りの、小さな食堂へと、歩いていった。二歩ほど歩いて、ふと、振り返る。彼女が、ついて来ないのを見て、小さく、ため息をつき、手を、かるく、振ってやる。
少女は、はっとして、慌てて、彼の後を、小走りに、追いかけてきた。ぴったりと、その後ろに、くっつくように。
暖簾をくぐり、時燼は、壁際の、隅の席に、腰を下ろした。品書きをめくり、温かい、ありふれた料理を、いくつか、頼む。
しばらくして、湯気を立てる皿が、次々と、卓へと運ばれてきた。彼は、その皿を、少女の前に、かるく押しやり、顎で、しゃくった。
「食え」
少女は、箸を手に取り、おそるおそる、顔を伏せて、料理を、口へと運び始めた。頬が、あっという間に、ふくらむ。急いで、かきこむように、それでいて、どこか、遠慮がちだった。
時燼は、向かいの席から、彼女を見ていた。その瞳の色が、すうっと、沈み、本来の色を、消していく。
淡い黄金色の魔力が、眼底から、にじみ出し、冷たい金の瞳へと、変わった。その目は、音もなく、細かな知覚の網を、広げていく。
小さな食堂の中も、外の、雪の降る路地も、すべてが、彼の瞳の内に、映し出されていた。わずかな、物音ひとつ、逃さない。
少女が、口の中の飯を、飲み込んだのを見計らい、時燼は、静かに、聞いた。
「お前、いくつだ」
少女は、顔を上げた。手には、まだ、半分ほど残った、饅頭が、握られている。小さな声で、答えた。
「じゅ、十六歳、です……」
時燼は、かるく、頷いた。
「ああ、そうだな。お前たち龍族の、数え方なら、十六歳だろう。まだ、ようやく、数百年、というところか」
少女は、びくりと、体を、強張らせた。箸を握る手に、きゅっと、力が入る。
赤い瞳に、あらわな、怯えが、浮かんだ。口の中の飯を、飲み込むことも、忘れて、箸を置き、そのまま、席を立って、逃げ出そうとする。
「待て」
時燼は、静かに、彼女を、呼び止めた。金の瞳の冷たさを、ほんの少し、和らげる。
「お前に、興味はない。危害を加えるつもりも、ない」
少女の体は、その場で、ぴたりと、止まった。目の奥の、怯えは、まだ、消えていない。彼女は、こわごわと、身をすくめて、動けずにいる。
時燼は、張り詰めた、その背中を見ながら、あいかわらず、淡々とした口調で、核心を、突いた。
「なぜ、混血城邦に、いる」
「その歳で、本来なら、族地を、離れることなど、ありえん。それに、お前の力では、まともに、人の形を、保つことさえ、できんはずだ」
少女は、うつむき、赤い瞳を、うるませた。声は、糸のように、細く、悔しさと、悲しみが、にじんでいた。
「私……血が、薄いんです。だから、族の、みんなに、いてはいけないって……。化けられるようになったから、逃げてきたんです。逃げなきゃ、殺されるか、それとも……兵器に、されちゃうから……」
「兵器、か……」
時燼は、その、か細い、すすり声を聞きながら、金の瞳を、ゆっくりと、元へと、戻した。
その体が、ほんの一瞬、止まる。胸の奥へ、遠い記憶が、静かに、沈んでいく。千年前に出会った、あの、龍主。あの者も、そうだった。赤い髪、赤い瞳。黒い、龍の角。
しばらくして、彼は、表情を、また、冷たく、もとの、静けさへと、戻した。うつむく少女を、見る。
「これから、どうするつもりだ」
少女は、相変わらず、顔を伏せて、飯を、かきこんでいた。頬を、いっぱいにしながら、口ごもるように、答える。その声は、どこか、途方に暮れていた。
「……分かんないです。歩きながら、考えます。私、弱いから。化けられるだけじゃ、外では、どうせ、長くは、生きられないし」
「どこか、落ち着く場所でも、ないのか」
彼女の、箸を動かす手が、少し、止まった。赤い瞳が、ふらふらと、泳ぐ。
「どこにも……この街、どこへ行っても、私みたいなのは、売られちゃうし。他の種族にも、低血統は、いらないって、追い出されるし。ずっと、ふわふわ、してるしか」
「族に、お前を、かばってくれる者は、いなかったのか」
その言葉に、少女が、飯をすくう速度を、わずかに、落とした。
「……いません。みんな、私の血を、汚いって。父も、母も、もう……」
時燼は、しばらく、黙っていた。それから、ただ、短く言った。
「食い終わったら、早く、ここを出ろ。あまり、長居は、するな」
少女は、きょとんと、彼を見上げた。赤い瞳には、迷子のような、かすかな期待と、不安が、ゆれている。
「じゃ、じゃあ……私、あなたに、ついていっても、いいですか……?」
「連れていくとは、言ってない」
彼女の瞳から、すっと、光が、消えた。うつむき、残りの飯を、黙々と、口へと運ぶ。もう、何も、言わない。静かな、噛む音だけが、小さな店内に、ぽつり、ぽつりと、響いていた。
時燼は、顔を伏せて、飯を食べる少女を、じっと、見ていた。頭の上の、小さな龍の角が、しょんぼりと、垂れている。赤い髪が、何本も、頬に、張り付いて、痛々しい。
頭の奥で、あの日の、血の色が、ぐわりと、蘇ってくる。赤い髪、赤い瞳の、龍主が、死んだ。神器が、血の霧の中へ、砕け散った。
死に際、その指が、彼の服の裾を、掴んで、離さなかった。息も、絶え絶えに、悔いを、残した声で、言った。
「この神器さえ……なければ……私は、お前と、ずっと、一緒に、いられたのに……」
「これから先、もし、私と、よく似た、顔の者に、出会ったら……私の、代わりに、一度、連れて行ってくれ。私たちが、初めて、出会った時のように……一度でいいから、ちゃんと、旅を、させてやってほしい……」
あの日の、血の熱も、指の温もりも、ようやく、薄れていく。時燼は、はっと、我に返り、しおれた少女の、頭の上に、視線を、戻した。
「……お前、名前は」
少女が、勢いよく、顔を上げた。赤い瞳に、ぱっと、小さな光が、弾ける。さっきまでの、しおれた様子が、嘘のように、消えていく。
しょんぼりしていた、龍の角まで、ぴんと、立った。口元に、かすかな、笑みの形が、のぼり、声は、透き通って、かすかに、はずんでいた。
「レヴィテルです!」
時燼は、きらきらした、その顔を、しばらく、眺めていた。それから、ふ、と笑い、淡々と、言った。
「ただ、名前を聞いただけだ。連れていくとは、言ってない。あまり、早とちりするな」
レヴィテルの、瞳の光が、ぱっと、しぼんでいく。口元の笑みも、中途半端に、固まった。立った角まで、しんなりと、垂れて、指先で、卓の縁を、かりかりと、引っかいている。小さな声で、返事をした。
「……はい」
そして、また、うつむいた。
時燼は、そんな彼女を見て、口元を、ほんの、ごくわずか、持ち上げた。こぼれたのは、声にもならない、息だけの、笑いだった。
けれど、その目の奥には、淡い、とりとめのない寂しさが、揺れていた。昔の、あの人に、どこか似た、赤い髪と、赤い瞳の上を、その寂しさが、いつまでも、離れずに、たゆたっていた。
彼は、窓の外へと、目をやった。雪は、いよいよ、激しく、降りしきっている。窓に、吹きつける雪が、白く、かすんで、天地の境を、消していく。
「……いったい、なぜなんだろうな」




