黄金の審問と、暴かれた陰謀
お読みいただきありがとうございます!
改めて大広間に全員を集めた砂の女王クレオ。
シオンとクラウスの正体に気づいた彼女の口から語られるのは、隔離した帝国軍の研究者メビウスのあまりにも身勝手な真実でした。
どうぞお楽しみください!
蓮の花の残り香が、まだ大広間の空気に漂っている。
クレオの足音が、ゆっくりと大広間の中央へ戻ってきた。
しゃらん。
アンクレットの涼やかな音が、天井に吸い込まれていく。
僕たちは——ノア一行、勇者一行、獣人たち——全員が、黄金の広間の中央に並ばされたまま、砂の女王の次の言葉を待っていた。
「さて」
クレオの声が、甘く、怠惰に、大広間を満たした。
「まずは——そこの勇者ちゃん。あんたから聞こうかしら」
しゃらん。アンクレットが小さく鳴る。
蓮の花の匂いが、ルークのほうへと流れた。
「あんたたち、なぜ妾の砂漠で暴れていたの?」
ルークの心臓の音が、わずかに速まった。
けれど彼は逃げなかった。
「——俺たちは、人類を脅かす魔王を討伐するために、ここまで来た」
真っ直ぐな声だった。
迷いはある。けれど、嘘はない。
「帝国からの情報で、この砂漠の異変の原因が魔王にあると聞いた。俺たちは勇者として、その脅威を排除する義務がある」
ルークの言葉に、ガルドが小さく頷く気配がした。
セシリアもまた、静かに手を組んでいる。
クラウスだけが、飄々とした顔の裏で、冷や汗をかき続けているのが理の糸を通じて分かった。
「——ふぅん」
クレオの声から、面白がるような色が消えた。
代わりに——呆れた、という感情が、蓮の花の匂いに混じる。
「勇者ちゃん。あんた、愚かだわねぇ」
「……なに?」
「愚か極まるわ。でも、嘘はついていない。それだけは認めてあげる」
クレオの足音が、ゆっくりと移動した。
しゃらん。
「あんたたちは本気で、あの帝国の連中を信じていたのかしら?」
「……帝国は、人類の同盟国だ。共通の敵を前にして手を組んでいるだけで——」
「ああ、退屈ね。もういいわ」
クレオが、ルークの言葉を手で払うように遮った。
気だるげな声の奥に、鋼のような冷たさが一瞬だけ覗く。
「答え合わせをしてあげましょうか。——あの頭のおかしな研究者のこと、覚えているでしょう?」
「……メビウスか」
ルークの声に、苦いものが滲んだ。
「ええ、その研究者ちゃん。妾の兵が別の場所に捕らえてあるのだけれど——」
クレオが、くすっと笑った。
その笑い声の中に、嘲笑と驚きが同居していた。
「面白いのよねぇ。あの男、尋問するまでもなかったの。聞いてもいないのに、自分たちの計画について、それはもう嬉しそうにペラペラと喋ってくれちゃって」
大広間が、静まり返った。
「この砂漠に眠る特異点の核——妾の大切な魂を奪い取って、兵器の動力源にするだの。獣人どものマナの構造を解析して、何とかいう人造兵士の素材にするだのね」
獣人たちの間に、低い唸り声が走った。
レオンの体から、怒りのマナが微かに励起するのが理の糸に伝わる。
アルヴァの尻尾が一瞬だけ激しく揺れ、すぐに押さえ込まれた。
「挙句の果てには——」
クレオの声が、愉快そうに歪んだ。
「図々しくも、妾に向かって『我々の偉大な実験に協力しろ』と言い出す始末でねぇ。あの男の頭の中、一体どうなっているのかしら。砂に還してあげようかと本気で迷ったわ」
沈黙が落ちた。
重い、鉄のような沈黙。
ルークの心臓の音が、不規則に跳ねている。
怒りと——動揺と——そして、自分たちが利用されていたかもしれないという、苦い理解。
「……俺たちは、そんな計画は——」
「知らなかったのでしょうねぇ。だから愚かだと言ったのよ」
クレオの声が、ほんの少しだけ柔らかくなった。
それは慈悲ではなく——事実を述べているだけの、圧倒的な格の高さだった。
「知らなかったから、許されるわけではないけれど。知ろうともしなかったのは、あんたたちの責任よ」
ルークが何か言おうとして——やめた。
拳を握りしめる音だけが、静かに響いた。
セシリアが小さく息を呑み、ガルドは黙って唇を噛んでいた。
お読みいただきありがとうございます!
帝国の研究者メビウスが自慢げに語った非道な計画を知り、ルークたちは利用されていた現実を突きつけられます。
次回、クレオが語る、この硝子砂漠に隠された過酷な「異変」の真実とは——。
どうぞお楽しみください!
【☆作者からのお願い☆】
壊れかけた世界を静かに直すノアとシオンの旅を、**下にある【ブックマーク登録】と【☆評価】**で応援していただけないでしょうか?
皆様の☆とブクマの温かい一票が、作者の執筆の命の糸(日々の更新の強力な原動力)になります。
少しでも「面白い!」「ノアの旅の続きが読みたい」と思っていただけましたら、どうかお力添えのほど、よろしくお願いいたします……!




