[行政手続法17条・聴聞の参加人・主宰者]法理編 こはるノート
夕方の片桐行政書士事務所には、昼間より少しだけ人間関係が整理しやすくなります。
電話が止まる。
来客が途切れる。
机の上から余計な書類が減る。
そして残るのは、
誰が当事者で。
誰が当事者ではなく。
でも誰が無関係でもないのか。
そういう、昼間より面倒な話です。
「……コッペパン、ありませんね」
「昨日食っただろ」
相馬先輩が言いました。
「昨日の差し入れですからね」
「じゃあ何で探してる」
「法理編には差し入れが必要かなと」
「何だ法理編って」
「独り言です」
危ない。
昭和六十三年の人に、シリーズ構成まで説明するところでした。
私は机の上にノートを広げました。
昨日書いた題名。
――聴聞の参加人・主宰者。
その下は真っ白です。
でも。
今日はもう、書くことが見えています。
東亜メッキ株式会社。
操業停止処分の予定。
処分を受けるのは会社。
だから、聴聞の当事者は会社。
でも。
現場責任者の牧野正夫さんも、処分によって仕事や給料に大きな影響を受ける。
しかも、設備改善の事実を直接知っている。
当事者ではない。
でも無関係でもない。
そこに出てきたのが。
参加人。
「所長」
「何だ」
「まず、“当事者”と“参加人”を分けます」
「分けろ」
片桐所長は帳簿から目を上げません。
いつもの教育方式です。
答えはくれない。
でも間違えたら止める。
野生の家庭教師。
私はノートに二つの名前を書きました。
東亜メッキ株式会社――当事者。
牧野正夫――参加人。
「当事者は?」
相馬先輩が聞きます。
「不利益処分の名あて人です」
「昨日なら?」
「東亜メッキ株式会社」
「牧野は?」
「名あて人じゃない」
「じゃあ何だ」
「処分について利害関係を持つ、当事者以外の人」
未来の行政手続法十七条。
主宰者は、必要があると認めるとき、
当事者以外の者であって、
その不利益処分について利害関係を有すると認められる者に、
聴聞手続への参加を求めることができる。
または。
その人からの申出に対して、参加を許可することができる。
私はそこまで頭の中で反芻してから、ペンを置きました。
「ここ、かなり大事ですね」
「何が」
「“利害関係がある人=自動的に参加人”じゃない」
相馬先輩が眉を上げました。
「昨日の牧野は利害関係あっただろ」
「ありました。でも最初から参加人だったわけじゃない」
そこです。
行政手続法十七条でいう「関係人」。
つまり。
当事者以外の者で、処分について利害関係を有すると認められる者。
その人が。
主宰者から参加を求められる。
または。
自分から申し出て、主宰者の許可を得る。
その段階を経て。
聴聞の「参加人」になる。
「つまり」
私はノートに書きました。
利害関係人 ≠ 当然に参加人。
主宰者の関与が必要。
「主宰者の関与?」
相馬先輩が聞きます。
「二つあります」
私は指を二本立てました。
「一つは、主宰者が職権で参加を求める」
「うん」
「もう一つは、本人が参加したいと申し出て、主宰者が許可する」
「昨日は?」
「後者です」
牧野さんは、自分から参加したいと申し出た。
市役所の窓口では、
「当事者じゃないから」
と一度閉じられた。
でも市の聴聞規程を確認すると。
利害関係人の参加制度があった。
そこで申出をして。
主宰者が参加を許可した。
だから牧野さんは、初めて手続の中へ入れた。
「ここ、試験で入れ替えてきそうですね」
「何を」
「『利害関係人は当然に聴聞へ参加できる』とか」
「違うのか」
「違います」
私は強めに言いました。
「主宰者が必要と認めて参加を求めるか、申出に対して主宰者が許可する必要があります」
「じゃあ、本人が参加したいって言えば必ず入れる?」
「それも違う」
「行政法、入口狭いな」
「でも勝手に全部入れたら聴聞が大変なことになります」
想像してみます。
大規模工場の操業停止。
従業員。
取引先。
近隣住民。
下請け。
家族。
商店街。
銀行。
工場前のラーメン屋。
「売上に影響あります!」
まで全員入ってきたら。
聴聞ではなく町内会総会です。
「だから線を引く人が必要」
私は呟きました。
「主宰者だ」
片桐所長が言いました。
そこで。
私は次の見出しを書きました。
――主宰者。
「昨日の人ですね」
「環境部の次長」
相馬先輩が言います。
「そうです」
主宰者。
行政手続法では。
聴聞を主宰する者。
行政庁が指名する職員その他政令で定める者。
簡単に言えば。
聴聞を進行する人。
「司会者ですね」
「それだけか」
所長が聞きました。
「……違いますね」
昨日を思い出します。
主宰者は。
単に、
「次、行政側どうぞ」
「次、会社どうぞ」
と言っていたわけじゃない。
牧野さんの参加を認めた。
発言の立場を確認した。
会社を代表するわけではない、と整理した。
改善済みの第一系統について行政側へ確認を求めた。
事実を切り分けた。
「聴聞の交通整理をする人」
私は言いました。
「その方が近いな」
所長が答えます。
交通整理。
誰を入れるか。
どの立場で話すか。
何を確認するか。
手続が脱線しないように進める。
ただ時間を測る司会ではありません。
「じゃあ主宰者は、処分する本人なんですか?」
私は聞きました。
「本人?」
相馬先輩が笑います。
「人じゃねえだろ」
「行政庁そのもの、って意味です」
未来の条文を頭の中で整理します。
主宰者は、
行政庁が指名する職員など。
つまり。
処分を行う行政庁そのものと、主宰者は役割が違う。
たとえば昨日なら。
操業停止処分を最終的に行うのは市側の行政庁。
聴聞を進行する主宰者は、指名された環境部次長。
「同じ役所だからって、全部同じ人扱いしない」
私は書きました。
「いいな」
所長が言いました。
「行政法では役割を混ぜるな」
出ました。
片桐所長の一行。
誰が。
何の権限で。
何をするか。
このシリーズ、結局いつもそこへ戻ります。
「じゃあ」
相馬先輩がノートを覗き込みました。
「参加人は何ができる」
「意見を言うとか……」
「他は」
「資料を出すとか……」
「適当だな」
「今から確認するところです!」
行政手続法十七条の教材を頭から引っ張ります。
参加人。
代理人を選任できる。
そして。
その代理人については、前条――十六条二項から四項までが準用される。
「……来ました」
「何が」
「準用」
私は嫌な顔をしました。
「行政書士試験の“前の条文ちゃんと覚えてますよね?”攻撃です」
「何だそれ」
「十七条だけ覚えさせてくれないんです」
参加人も代理人を選任できる。
しかも。
その参加人の代理人については。
聴聞の代理人に関する規定が準用される。
つまり。
代理人は各自、参加人のために、聴聞に関する一切の行為をすることができる。
代理人の資格は書面で証明。
代理人が資格を失った場合には。
その代理人を選任した参加人が。
行政庁へ書面で届け出る。
「当事者の場合と似ていますね」
「似てるなら楽だろ」
「主語が変わるんですよ!」
これが怖い。
十六条では。
当事者。
十七条で準用されると。
参加人。
つまり。
同じ代理人制度でも、
誰のための代理人かが変わる。
「昨日の牧野さんにも代理人を付けられた?」
「未来の行政手続法なら、参加人は代理人を選任できます」
「社長の代理人とは別に?」
「別です」
私は図を書きました。
東亜メッキ株式会社
↓
当事者
牧野正夫
↓
参加人
それぞれが別の立場。
当事者には当事者の代理人。
参加人には参加人の代理人。
「ややこしいな」
「でも人間関係にすると分かります」
東亜メッキ会社の社長が出席できない。
なら、会社側の代理人。
牧野さん自身も事情があって参加できない。
なら、牧野さんは参加人として代理人を選ぶことができる。
ただし。
その代理人が、会社そのものの代理人になるわけではない。
「誰のために話してるか」
私は言いました。
「昨日の主宰者もそこ確認してましたよね」
――会社を代表して意見を述べる立場ではありません。
あの一言。
今思えば重要でした。
牧野さんは。
会社の当事者でもない。
会社の代理人でもない。
自分自身が処分について利害関係を持つ者として参加している。
「参加人って、当事者の応援団じゃないんですね」
「当然だろ」
相馬先輩が言います。
「でも名前だけ見ると、同じ側に見えるじゃないですか」
そこも混同ポイントです。
参加人は。
必ず当事者に味方するわけではない。
たとえば。
工場の操業停止処分。
従業員なら工場側に近い意見かもしれない。
でも近隣住民が法令上の利害関係を持ち、参加を認められるような場面なら。
むしろ、
「停止してほしい」
という側かもしれない。
参加人とは。
当事者の味方。
ではなく。
処分について利害関係を有し、主宰者によって手続参加を認められた者。
「味方か敵かで覚えない」
私は書きました。
「立場で覚える」
「それでいい」
所長が言いました。
次。
利害関係。
これも、ふんわり覚えると危ない。
行政手続法十七条は。
単に、
「影響を受けそう」
という人全員ではなく。
当該不利益処分の根拠となる法令に照らし。
その不利益処分について利害関係を有すると認められる者。
そこが少し硬い。
「所長」
「何だ」
「“利害関係がある”って、本人が困ると言えばそれでいいわけじゃないですよね」
「当然だ」
「処分の根拠になる法令に照らして判断する」
「そういうことだ」
私は昨日の牧野さんを思い出します。
現場責任者。
工場設備の改善状況を直接把握。
操業停止になれば雇用にも大きな影響。
市の規程では、処分との直接の利害関係を理由に参加が認められた。
未来の行政手続法では。
この判断が、処分の根拠法令との関係から整理される。
「つまり、“気持ち的に関係あります”だけじゃ足りない」
「雑な言い方だな」
相馬先輩が笑います。
「でも試験では大事です」
誰でも参加できる。
ではない。
利害関係のある者。
しかも。
利害関係があれば自動参加。
でもない。
主宰者が職権で参加を求めるか。
申出を受けて許可する。
「三段階ですね」
私はノートに書きました。
当事者以外。
+
不利益処分につき利害関係。
+
主宰者の関与。
→参加人。
「試験、これでだいぶ切れそう」
「例えば?」
相馬先輩が聞きます。
私は即席で問題を作りました。
「『不利益処分について利害関係を有する者は、当然に聴聞に参加することができる』」
「×」
「正解」
「『主宰者は、必要があると認めるときは、利害関係人に参加を求めることができる』」
「○」
「正解」
「『利害関係人から参加の申出があった場合、主宰者は必ずこれを許可しなければならない』」
「×」
「正解」
「『参加人は代理人を選任することができない』」
「×」
「正解」
相馬先輩が少し得意そうです。
「俺、受かるんじゃないか」
「行政書士試験ですか?」
「嫌だ」
「そこは一貫してますね」
私は次のページへ進みました。
主宰者。
未来の行政手続法十九条では、行政庁が指名する職員その他政令で定める者。
十七条では。
その主宰者が参加人の入口を握っている。
「ここ、誰が許可するかが大事ですね」
「行政庁じゃないのか」
相馬先輩が聞きます。
「十七条の参加については、主宰者です」
ここ。
主語をずらされると怖い。
行政庁が。
ではない。
主宰者が。
必要があると認めるときは参加を求め。
または参加を許可する。
「昨日、市役所の窓口で倉田係長が決められなかったのも、それですね」
「そうだな」
「窓口の担当者が、“あなた当事者じゃないから駄目”で終わらせるのは雑だった」
「誰に決定権があるか見ろってことだ」
「はい」
結局。
制度の雑さを止める方法は。
いつも似ています。
その人に決める権限があるのか。
誰が判断する仕組みなのか。
窓口の一言と。
制度上の決定を。
混ぜない。
「当事者ではありません」
それ自体は事実。
でも。
だから参加できません。
まで言えるとは限らない。
そこには、
関係人なのか。
参加申出ができるのか。
主宰者がどう判断するのか。
次の段階がある。
「昨日のカタルシス、そこでしたね」
「何だカタルシスって」
「また独り言です」
相馬先輩が怪訝な顔をします。
危ない。
私は気を取り直してノートを整理しました。
そして。
もう一つ。
「参加人は、当事者になるわけじゃない」
私は書きました。
「昨日もそうでした」
操業停止処分の名あて人は東亜メッキ株式会社。
牧野さんが参加人になっても。
処分そのものが牧野さんに向かうわけではない。
牧野さんが発言したから。
会社の権利義務が牧野さんへ移るわけでもない。
「誰に処分の効果が及ぶか」
所長が言いました。
「そこを外すな」
「はい」
これも毎回です。
誰が喋ったか。
誰が参加したか。
誰が代理人なのか。
そこに目を奪われても。
結局。
誰に法律効果が帰属するのか。
そこを見ないといけない。
私はノートに書きました。
参加人は、当事者とは別。
参加しても、処分の名あて人になるわけではない。
「じゃあ参加人って、何のためにいるんでしょう」
私が聞くと。
相馬先輩が肩をすくめました。
「昨日見ただろ」
たしかに。
見ました。
第一系統は改善済み。
第二系統は未改善。
行政側の通知では。
「改善命令に従わなかった」
という大きな表現になっていた。
でも牧野さんが参加したことで。
どこまで改善されたのか。
何が残っているのか。
事実が細かく机の上に乗った。
「当事者だけでは出ない情報を、手続に入れる意味もある」
私は言いました。
「それだけじゃない」
片桐所長が口を開きます。
「処分で影響を受ける者に、意見を述べる機会を与える意味もある」
なるほど。
行政側の情報収集だけじゃない。
参加人自身の利害もある。
処分が出れば、自分の立場に影響する。
だから。
その人自身が手続の中で意見を述べる。
ただし。
何でも自由参加ではない。
主宰者が入口を管理する。
「制度として、ちょうど真ん中なんですね」
「何と何の」
「閉じすぎと、開きすぎの」
当事者以外は一切排除。
それでは狭すぎる。
影響があると名乗れば全員参加。
それでは広すぎる。
その中間で。
利害関係。
必要性。
主宰者の判断。
という冷たい線を引く。
私は昨日のことを思い出しました。
牧野さんは。
かわいそうだから入れてもらったわけではない。
従業員だから自動的に入れたわけでもない。
処分との利害関係があり。
設備改善の事実を直接知っている。
参加する意味がある。
だから主宰者が認めた。
「制度の冷たさって、やっぱりこういうところですね」
「何がだ」
相馬先輩が聞きます。
「情で入れるんじゃない。関係を見て入れる」
「まあな」
「だから逆に、窓口の気分でも追い返せない」
それ。
私はかなり好きです。
かわいそうだから入れてあげる。
では弱い。
担当者が変われば結果も変わる。
でも。
あなたは処分とこういう利害関係がある。
主宰者が参加を認める。
そう整理されれば。
席は好意ではなく、制度上の席になります。
「じゃあ試験整理」
相馬先輩が言いました。
「またですか」
「覚えたか確認だ」
「はいはい」
私は指を折りました。
「参加人とは?」
「当事者以外の者で、不利益処分について利害関係を有する者のうち、聴聞手続に参加する者」
「どうやって参加する?」
「主宰者が必要と認めて職権で参加を求める。または、申出に対して主宰者が許可する」
「利害関係があれば自動?」
「自動じゃない」
「代理人は?」
「選任できる」
「参加人の代理人は何ができる?」
「前条十六条二項から四項まで準用。聴聞に関する一切の行為。資格は書面で証明。資格喪失時は、選任した参加人が行政庁へ書面で届け出る」
「主宰者とは?」
「行政庁が指名する職員その他政令で定める者。聴聞を進行する役割」
「昨日は?」
「環境部次長」
相馬先輩が頷きました。
「よし」
「先輩、教師向いてますね」
「嫌だ」
「全部嫌ですね、この人」
私はノートの最後に。
人間関係の図を書きました。
行政庁
↓指名
主宰者
↓聴聞を運営
↓必要なら参加を求める/申出を許可
関係人
↓参加
参加人
そして横に。
行政庁
↓不利益処分
当事者
「この図、分かりやすい」
私は自分で満足しました。
「自画自賛するな」
「だって、誰が誰に何するか見えるじゃないですか」
行政法は。
単語だけで覚えると眠い。
でも矢印を書くと少し起きる。
誰が。
誰を。
何のために。
どの権限で。
そこを線で結ぶと。
急に町の人の顔が戻ってくる。
牧野さん。
会社。
主宰者。
倉田係長。
それぞれの位置が違う。
「じゃあ、一行の覚え書き」
私はペンを持ちました。
少し考えます。
昨日の現場で一番強く残ったのは。
片桐所長の言葉でした。
――当事者でないことと、利害がないことは別だ。
私はそのまま書こうとして。
少しだけ足しました。
――当事者でなくても、利害があれば手続の外とは限らない。参加の入口を開くのは主宰者。
「長い」
相馬先輩が言いました。
「一行です」
「また二行だ」
「ノートの幅です!」
「じゃあ試験用」
「はい」
私はその下に、短く書きました。
――参加人=当事者以外の利害関係人+主宰者の関与。参加人も代理人を選べる。
「今度は?」
「まあ読める」
「偉そう」
でも。
たぶんこれで忘れません。
工場の操業停止。
処分を受ける会社。
でも処分で生活が揺れる従業員。
当事者ではない。
だからといって。
何も言えないとは限らない。
参加人という席がある。
そして。
その席を誰に用意するかを、主宰者が判断する。
役所の手続は、冷たいです。
当事者。
関係人。
参加人。
主宰者。
まるで将棋の駒みたいに、人へ名前を付けます。
でも。
その名前があるから。
「会社じゃないから帰ってください」
だけで終わらなくなる。
同時に。
「困るから入れてください」
だけで誰でも自由に入れるわけでもなくなる。
関係があるのか。
必要があるのか。
誰が判断するのか。
冷たく切り分ける。
その冷たさが。
昨日は、牧野さんのための椅子を一つ作りました。
処分の結果はまだ決まっていない。
東亜メッキの第二系統には、本当に問題が残っています。
行政側が厳しい措置を取る可能性もある。
参加できたから、勝つわけではない。
でも。
「改善していない工場」
という一枚の札が。
「第一系統は改善済み」
「第二系統には問題が残る」
という二つの事実に分かれた。
その違いは大きい。
手続に誰を入れるかで。
事実の見え方そのものが変わることがある。
私はノートを閉じました。
「終わったか」
相馬先輩が聞きます。
「終わりました」
「じゃあ茶」
「私が入れるんですか」
「見習いだろ」
「その役割分担、誰が決めたんです?」
「俺」
「権限あります?」
「主宰者」
「何の手続の!」
片桐所長が新聞から顔を上げました。
「職権で参加を求める」
「何にですか」
「茶を入れる手続に」
「参加拒否します」
「許可しない」
「主宰者強すぎません!?」
相馬先輩が笑います。
「利害関係あるぞ。俺が茶飲みたい」
「それはただの欲望です!」
「処分に影響する」
「何の処分ですか!」
所長が一言。
「勤務評価」
「急に不利益処分っぽくしないでください!」
結局。
私は三人分の茶を入れました。
制度上ではなく。
ただ、じゃんけんに負けたからです。
公平。
透明。
救済なし。
でも湯呑みを並べながら。
私は少し笑いました。
昨日まで眠かった十七条が。
今日はもう、人の顔をしています。
当事者ではない。
でも無関係でもない。
その間にいる人を。
制度は「部外者」で切り捨てず。
かといって誰でも無条件には入れず。
参加人という席を用意する。
そして。
その入口を、主宰者が管理する。
今日の覚え書きは、これで十分です。
――当事者でないことと、利害がないことは別。参加できるかを決めるのは、窓口の空気ではなく主宰者。
窓の外では。
昭和六十三年の町の工場から、夕方の煙が細く上がっていました。
その煙が明日も上がるのか。
止まるのか。
まだ誰にも分かりません。
でも少なくとも。
その結論へ向かう机の上には。
昨日より一人分、多くの声が乗っています。
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