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こはる行政書士見習帖 〜 昭和に転生して許認可に振り回されると試験知識が骨身にしみます 〜  作者: 条文小説
〈民法 配点76点/300点〉 債権

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516/590

[民法・贈与]法理編 こはるノート

挿絵(By みてみん)

 タダでもらったものは、本当に自分のものになるのでしょうか。


 口約束でも。


 契約書がなくても。


 お金を一円も払っていなくても。


 答えは、イエスです。


 ただし。


 贈与には、普通の売買契約とは違う、少し変わったルールがあります。


 まだ渡していないもの。


 もう渡してしまったもの。


 毎月あげると約束したお金。


 介護を条件に贈る家。


 そして。


 自分が死んだら、相手にあげると約束した土地。


 全部、同じ「贈与」という言葉で呼ばれるのに。


 法律上の扱いは、少しずつ違うのです。


 昭和六十三年。


 夕方の片桐行政書士事務所。


 私は机に向かい、ノートを開いていました。


 表紙には大きく、


 ――こはるノート・民法編。


 と書いてあります。


 机の右側には、六法全書。


 左側には、判例集。


 そして真ん中には。


 淡い青色の湯呑み。


 藤野真紀さんからいただいたものです。


「……先輩」


「何だ」


「この湯呑み、もう私のものですよね?」


 相馬先輩が新聞から顔を上げました。


「昨日も同じこと聞いてただろ」


「確認です!」


「真紀さんがお前にくれて、お前が受け取ったんだろ」


「はい!」


「だったら、贈与は成立してるだろうが」


「そうですよね!」


 私は湯呑みを両手で包みました。


 温かい。


 そして、ちょっと嬉しい。


「でも先輩」


「まだあるのか」


「もし真紀さんが、明日になって『やっぱり返して』って言ったら?」


「今回の贈与について、書面がないことを理由に撤回するのは無理だな」


「なぜですか?」


「もう渡してるからだ」


 そう。


 そこです。


 昨日の事件。


 藤野真紀さんの電気窯。


 叔父の源蔵さんから、口約束で贈られた大きな窯。


 それなのに、真紀さんの商売が軌道に乗り始めると、叔父は突然、


『タダでやったんだから返せ!』


 と要求してきました。


 理由は、


『契約書がないから』


 でも。


 窯は既に真紀さんの工房へ引き渡されていた。


 配送伝票もあった。


 搬入写真もあった。


 源蔵さん自身が、


『お前にやった以上、大事に使え』


 と書いたはがきまであった。


 結果として、内容証明郵便を受け取った源蔵さんは、返還要求を撤回しました。


 ただし。


 叔父の倉庫に残っていた、もう一つの贈り物。


 ろくろについては、同じように解決できたわけではありません。


「……窯と、ろくろ」


 私は鉛筆を握りました。


「今日は、そこから整理しましょう!」


「ようやく始めるのか」


「はい!」


 相馬先輩は新聞を畳みました。


「じゃあ、まず贈与って何だ」


「民法五百四十九条です!」


「よし。言ってみろ」


 私は六法を開きました。


 そして。


 最初の見出しを書きました。


 ――第一問。贈与は、いつ成立するのか。


 ◇


「まず、贈与とは何か」


 私はノートに大きく書きました。


 ――贈与。


 一方が財産を無償で与える意思を表示し、相手方が承諾することによって効力を生ずる契約。


「つまり?」


 相馬先輩が聞きました。


「『あげる』『もらいます』で成立する契約です!」


「そうだ」


「お金を払う必要はありません」


「うん」


「そして、原則として、契約書を作らなくても成立します」


 私は大きく丸をつけました。


 民法第五百四十九条。


 これは、昭和六十三年でも、現代でも、贈与の基本となる考え方です。


「でも先輩」


「何だ」


「相手が何も言っていなくても、勝手に贈与は成立するんですか?」


「どう思う」


 私は少し考えました。


「しません」


「なぜだ」


「贈与は契約だからです」


 そうです。


 ここが最初のポイント。


 贈与は、贈与者だけの一方的な行為ではありません。


 受贈者の受諾が必要です。


 たとえば。


「先輩! 私の六法、差し上げます!」


「いらねえ」


「えっ」


「重いし、俺のがある」


「せっかくなのに!」


「いらねえもんはいらねえ」


 私はノートを指差しました。


「この場合、どうなります?」


「俺が受け取ることを承諾してねえから、贈与契約は成立しねえな」


「正解です!」


「何でお前が出題者なんだよ」


 私は笑いました。


 契約というのは、当事者の意思の合致によって成立するもの。


 贈与でも、それは同じです。


 売買なら。


『この湯呑みを千円で売ります』


『買います』


 贈与なら。


『この湯呑みをタダであげます』


『もらいます』


 違うのは、対価があるかどうか。


 どちらも、原則として当事者の合意で成立します。


「こはる」


 片桐所長が奥から声をかけました。


「はい!」


「贈与は、要物契約か」


「いいえ!」


 私は即答しました。


「諾成契約です!」


 諾成契約。


 当事者の合意によって成立する契約。


 物の引渡しまで、契約成立の要件にはなっていません。


「つまり?」


 所長が聞きます。


「昨日、『来週、この湯呑みをあげる』と約束して、相手が承諾すれば、まだ湯呑みを渡していなくても、贈与契約は成立します」


「そうだ」


「でも、成立したことと、実際に物を渡したことは別です」


 所長が頷きました。


「そこを忘れるな」


 私はノートに二本の線を引きました。


 ――契約の成立。


 ――契約の履行。


 似ています。


 でも、違います。


 契約の成立は、約束ができたこと。


 履行は、その約束を実際に果たすこと。


 昨日の事件では、この違いが重要でした。


 叔父が、


『窯もろくろも、真紀にやる』


 と言い、真紀さんが承諾した。


 この時点で、贈与契約は成立し得る。


 しかし。


 窯は引き渡された。


 ろくろは引き渡されていない。


「……ここから、運命が分かれるんですね」


「大げさだな」


「でも本当です!」


 私は次の見出しを書きました。


 ――第二問。口約束の贈与は、撤回できるのか。


 ◇


「ここが、昨日の事件の最大の論点です!」


 私は六法を指差しました。


 民法第五百五十条。


 昭和六十三年の条文には、こう書かれています。


 ――書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。


「先輩!」


「何だ」


「どうして、口約束の贈与は撤回できるんですか?」


「考えてみろ」


 私は首をかしげました。


 普通、契約は守らなければならない。


 売買契約なら、


『やっぱり売るのやめた』


 と勝手に言えるわけではありません。


 でも、贈与は違います。


「……タダだから?」


「それだけじゃ足りねえな」


 相馬先輩は煙草を取り出しました。


「タダで財産をやるって約束は、勢いでしちまうこともある」


「はい」


「書面も何もない場合、よく考えずに約束した可能性もある」


「なるほど」


「それに、後で言った言わないになりやすい」


 私は頷きました。


 確かに。


 売買なら、代金という対価があります。


 贈与は、対価を受け取らずに自分の財産を減らす契約。


 だから民法は、書面によらない贈与について、当事者が撤回できる余地を認めている。


 ただし。


「一度渡してしまったら?」


 相馬先輩が聞きました。


「履行の終わった部分については、撤回できません!」


「そうだ」


 私は大きな矢印を書きました。


 口約束。


 ↓


 まだ渡していない。


 ↓


 原則、撤回できる。


 そして。


 口約束。


 ↓


 もう渡した。


 ↓


 履行済みの部分は撤回できない。


「なるほど!」


 私は鉛筆を置きました。


「この二つを並べると、分かりやすいです!」


「昨日の窯とろくろだな」


「はい!」


 窯。


 口約束。


 引渡し済み。


 したがって、書面がないことを理由には撤回できない。


 ろくろ。


 口約束。


 未引渡し。


 ほかに書面による贈与や履行済みの事情がなければ、撤回できる余地がある。


「つまり、同じ人が、同じ日に、同じ相手にあげると約束しても、結果が変わるんですね」


「そうだ」


「先輩、これ、意地悪な試験問題になりそうです」


「何でだ」


「『窯とろくろを贈与した。窯だけ引き渡した。その後、贈与者が撤回した』って」


「うん」


「窯は?」


「履行済みだな」


「ろくろは?」


「未履行だな」


「じゃあ、全部撤回できる?」


「できねえ」


「全部撤回できない?」


「それも違う」


「正解!」


 私は机を叩きました。


「履行の終わった部分については撤回できない、です!」


 相馬先輩が苦笑しました。


「試験官になったつもりか」


「はい!」


「じゃあ、もう一問」


「どうぞ!」


「物を渡したら、それだけで、必ず贈与の履行になるのか?」


「……え?」


 私は固まりました。


 相馬先輩が笑いました。


「たとえば、俺がお前に六法を貸したとする」


「はい」


「お前が受け取った」


「はい」


「それで贈与の履行が終わったことになるか?」


「……なりません!」


 そうです。


 貸しただけ。


 これは贈与ではありません。


 ただ物を手渡したという事実だけでは、贈与の履行を証明できない。


 あげる意思があったのか。


 相手が受け取ることを承諾したのか。


 所有権を移す趣旨だったのか。


 それらを確認しなければならない。


「だから、昨日は配送伝票だけじゃなく、源蔵さんのはがきも大事だったんですね!」


「そういうことだ」


 私は納得しました。


 配送伝票は、引渡しを裏づける。


 はがきは、贈与の意思を裏づける。


 二つを合わせることで、


『貸しただけ』


 という叔父の主張に、大きな疑問が生じたのです。


「所長!」


「何だ」


「つまり、法律と証拠はセットですね!」


「そうだ」


 所長は静かに頷きました。


「契約の種類を決めるのは、物が動いた事実だけではない」


「はい」


「なぜ渡したのか。その合意を確認しろ」


 私は、その言葉をノートの余白に書きました。


 ◇


「でも先輩」


「何だ」


「贈与の撤回って、昭和と現代で言葉が違うんですよね」


「また変なことを言い始めたな」


「大事なところです!」


 私はノートに二つの欄を作りました。


 昭和六十三年。


 ――書面によらない贈与の『撤回』。


 現代。


 ――書面によらない贈与の『解除』。


「……あれ?」


 相馬先輩が首をかしげました。


「解除?」


「あっ!」


 しまった。


 また、未来の言葉です。


「い、いえ! 今のは覚え間違いです!」


「覚え間違い?」


「はい!」


 私は慌てて言いました。


「とにかく、この時代の条文は『撤回』ですね!」


「そうだ」


 危ない。


 でも、これは本当に重要な違いです。


 現代の民法五百五十条では、『解除』という言葉が使われています。


 一方、昭和六十三年当時は『撤回』。


 そして。


 どちらの時代でも、履行の終わった部分については、書面によらないことを理由に覆せないという基本的な保護があります。


 ただし。


 私は、ここで一つ注意書きを入れました。


 ――第五百五十条で撤回できないことと、ほかの理由で解除できないことは別。


「……先輩」


「何だ」


「ここ、大事ですね」


「何がだ」


「昨日、所長に赤鉛筆で直されたところです」


 私は思い出しました。


 内容証明の原案。


 最初、私はこう書こうとしたのです。


 ――一度履行が終わった贈与は、いかなる理由でも解除できない。


 でも。


 所長は、それを消しました。


「何で駄目だった?」


 相馬先輩が聞きます。


「五百五十条ただし書は、書面によらない贈与についての撤回を制限する規定だからです」


「うん」


「たとえば、負担付贈与で受贈者が負担を履行しなかった場合などは、別の解除原因が問題になります」


「そうだ」


 つまり。


 窯を渡した。


 だから、書面がないという理由では撤回できない。


 これは正しい。


 でも。


 窯を渡した。


 だから、どんな契約違反があっても絶対に解除できない。


 これは言い過ぎ。


「法律って、一つの条文を万能の盾にしちゃいけないんですね」


 私が言うと、所長が頷きました。


「そのとおりだ」


 私はノートに二重線を引きました。


 ――撤回できない理由と、解除できる理由を混同しない。


 よし。


 これで、昨日の赤鉛筆の意味が分かりました。


 ◇


「さて、こはる」


 相馬先輩が六法を閉じかけました。


「はい?」


「昨日の窯が、最初から壊れていたらどうなる?」


「……壊れていた?」


「ああ」


 先輩は湯呑みを持ち上げました。


「源蔵が『窯をやる』と言った。真紀さんが受け取った。ところが、電源を入れても熱くならない」


「……それは困りますね」


「修理代は誰が払う?」


 私は口を開きました。


「契約不適合責任です!」


 沈黙。


 相馬先輩が、ゆっくり顔を上げました。


「……何だ、その言葉は」


「あっ」


 しまった。


 またやりました。


 令和の民法。


 契約不適合責任。


 それを昭和六十三年の事務所で、堂々と口にしてしまったのです。


「こはる」


「はい……」


「今は昭和六十三年だぞ」


「知ってます!」


「だったら、今の民法を読め」


「……はい」


 私は六法を開き直しました。


 民法第五百五十一条。


 そこに書かれていたのは。


 ――贈与者の担保責任。


「……瑕疵!」


「そうだ」


「瑕疵って、欠陥のことですよね!」


「そうだな」


 私は改めて条文を読みました。


 この時代の第五百五十一条は、贈与の目的物や権利に瑕疵があったり、権利そのものが存在しなかったりしても、贈与者は原則として責任を負わない。


 ただし。


 瑕疵や不存在を知りながら、受贈者に告げなかった場合は別です。


「……あれ?」


 私は首をかしげました。


「タダでもらった物が壊れていても、原則として贈与者は責任を負わないんですか?」


「そうだ」


「なぜです?」


「考えてみろ」


 私は腕を組みました。


 売買なら。


 買主は代金を支払います。


 だからこそ、契約で予定した品質や権利を取得できなければ、売主の責任が問題になる。


 でも、贈与は。


 原則として、対価を支払わずにもらう契約。


「……だから、売買と同じ責任を当然に負わせるのは、重すぎる?」


「そういうことだ」


 相馬先輩が頷きました。


「ただし、欠陥があると知ってて黙って渡したなら、話は別だ」


「はい!」


 私はノートに書きました。


 昭和六十三年。


 民法五百五十一条。


 原則として、贈与者は瑕疵や権利の不存在について担保責任を負わない。


 ただし、知りながら告げなかった場合は例外。


「所長!」


「何だ」


「現代の第五百五十一条とは、かなり違います!」


 片桐所長は顔を上げました。


「どう違う」


 私は、一瞬だけ困りました。


 未来の条文をそのまま説明するわけにはいきません。


「ええと……もし、贈与の目的物を特定したときの状態で引き渡す義務がある、と整理したら分かりやすいなと思いまして」


「ほう」


「たとえば、古い窯をそのまま贈る約束なら、その状態で引き渡すのが原則です。でも、正常に動くよう修理してから渡すと特に約束したなら、その約束に従う必要がありますよね」


 所長は頷きました。


「契約の内容を確かめることは重要だ」


「はい!」


 私は心の中で、未来のノートに書き込みました。


 現代の民法五百五十一条では、贈与者は目的物を特定したときの状態で引き渡し、または権利を移転することを約したものと推定される。


 そして、負担付贈与については、負担の限度で売主と同じ担保責任を負う。


 昔と今では、責任の整理の仕方が違うのです。


「ただし、こはる」


 所長が言いました。


「はい」


「贈与だからといって、危険な欠陥を知りながら隠してよいわけではない」


「はい!」


「それに、特別な約束があれば、その内容も確認する必要がある」


 私は大きく頷きました。


 タダだから何も責任がない。


 これも間違い。


 タダでも売買とまったく同じ責任がある。


 これも間違い。


 大切なのは、その時代の法律と、当事者が何を約束したかを正確に確認することなのです。


 ◇


「さて」


 相馬先輩が、ノートの次の欄を指差しました。


「負担付贈与だ」


「来ました!」


 私は鉛筆を握り直しました。


 ――第三問。負担付贈与とは何か。


「昨日の真紀さんの事件ですね!」


「ああ」


「叔父さんは、窯とろくろを贈る代わりに、お母さんのお墓を毎年掃除してほしいと約束していました」


「そうだな」


「それが契約上の義務として合意されていれば、負担付贈与です!」


 私はノートに書きました。


 負担付贈与。


 受贈者が一定の負担を負うことを内容とする贈与。


 たとえば。


 祖父が孫に土地を贈る。


 その代わり、祖父の生活の世話をする。


 あるいは。


 叔父が姪に電気窯を贈る。


 その代わり、親族の墓を掃除する。


「でも先輩」


「何だ」


「これって、タダじゃないような気がするんですが」


「どうしてだ」


「もらう側も、何かしなければならないんですよね?」


「そうだ」


「それなら、売買みたいじゃないですか」


 相馬先輩は笑いました。


「いいところに気づいたな」


「褒めました?」


「まだだ」


「またですか!」


 先輩は六法を指差しました。


「五百五十三条を読め」


 私は読みました。


 負担付贈与については、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。


「……双務契約!」


「そうだ」


 双務契約。


 当事者双方が、互いに対価的な関係にある債務を負担する契約。


 売買なら。


 売主は物を引き渡す。


 買主は代金を支払う。


 双方が義務を負います。


 一方、普通の贈与では、基本的に贈与者が財産を与える義務を負う。


 でも。


 負担付贈与では、受贈者も負担を負う。


「だから、双務契約に関する規定が準用されるんですね!」


「そうだ」


 もっとも、負担付贈与はあくまで贈与です。


 受贈者の負担があるからといって、当然に売買契約へ変わるわけではありません。


 私は、そこに赤線を引きました。


「じゃあ先輩」


「何だ」


「真紀さんが墓掃除をしなかったら、どうなるんですか?」


「そこが、昨日調べた最高裁判決だ」


 私は判例集を開きました。


 昭和五十三年二月十七日。


 負担付贈与に関する最高裁判決。


 受贈者が負担を履行しない場合、双務契約の解除に関する規定が準用され得ることを示した判例です。


「つまり……」


 私は言いました。


「贈与者は、負担の不履行を理由として、契約を解除できる場合がある!」


「そうだ」


「ただし、負担が果たされていないというだけで、何の手続もなく、必ず解除できるわけではない」


「そのとおりだ」


 解除には、不履行の内容や催告の要否など、適用される要件を確認する必要があります。


「たとえば、墓掃除をする約束だったのに、何年もまったくしなかったら?」


「解除が問題になるな」


「でも、毎年きちんと掃除していたら?」


「その不履行を理由に解除することはできねえ」


「ですよね!」


 私は昨日の資料を思い出しました。


 真紀さんは、ちゃんと墓掃除をしていました。


 叔父の要求は、売上げの三割。


 でも。


 そんな負担は、最初の贈与契約には含まれていなかった。


「だから、叔父さんは、あとから好き勝手に条件を増やせなかったんですね」


「そういうことだ」


 さらに。


 負担付贈与には、もう一つ重要なルールがあります。


 民法五百五十一条第二項。


 贈与者は、負担の限度において、売主と同じく担保責任を負う。


「つまり?」


 相馬先輩が聞きました。


「普通の贈与より、贈与者の責任が重くなる場合があります!」


「なぜだ」


 私は考えました。


 たとえば。


 真紀さんが、毎年の墓掃除という負担を引き受けている。


 それなのに、叔父が重大な欠陥のある窯を贈ったとしたら。


 何の負担もない贈与とは、事情が違います。


「もらう側も、義務を引き受けているからです!」


「そうだ」


 だから民法は、負担付贈与について、負担の限度で売主と同じ担保責任を認めています。


 これは昭和六十三年にもある規定です。


 現代の民法でも、その考え方は引き継がれています。


「ただし、負担の限度ってところが重要ですね」


「そうだ」


「どんなに小さな負担でも、無制限に売主と同じ責任が生じるわけではありません」


 私は二重丸をつけました。


 ――負担付贈与は、受贈者にも義務がある。負担の不履行なら解除が問題となり、贈与者も負担の限度で担保責任を負う。


「よし!」


 私は顔を上げました。


「これで負担付贈与は完璧です!」


「まだ完璧じゃねえな」


「ええっ!」


「同時履行の抗弁権は?」


「……あ」


 忘れていました。


 双務契約に関する規定の準用。


 そこには、同時履行の抗弁権や危険負担なども含まれ得ます。


 もっとも。


 実際にどの規定がどう適用されるかは、負担の性質や履行時期によって変わる。


 たとえば、贈与者が先に土地を移転し、受贈者がその後十年間にわたり介護をする約束なら、すべてを同時に履行できるわけではありません。


「なるほど……」


 私は鉛筆を回しました。


「ただ『双務契約を準用』って丸暗記するだけじゃ足りないんですね」


「そういうことだ」


 私はノートに書き足しました。


 ――準用とは、何でも機械的に当てはめることではない。契約の性質に合わせて考える。


 少し難しい。


 でも。


 昨日の窯の事件を思い出すと、理解できます。


 契約で約束したことは何か。


 誰が何をする義務を負うのか。


 その義務は果たされたのか。


 そこから、結論を考えるのです。


 ◇


「では、次です!」


 私はノートをめくりました。


 ――第四問。定期贈与とは何か。


「先輩!」


「何だ」


「毎月二万円、お小遣いをあげます!」


「……俺に?」


「はい!」


「本当か?」


「例題です!」


「何だよ」


 相馬先輩ががっかりしました。


「定期贈与とは、一定の時期ごとに財産を無償で与える贈与です!」


 私は説明しました。


 毎月二万円。


 毎年十万円。


 毎年の誕生日に、一定の財産を贈る。


 このように、定期的な給付を目的とする贈与です。


「では先輩!」


「何だ」


「私が先輩に、毎月二万円を一生あげると約束したとします」


「ずいぶん太っ腹だな」


「もちろん例題です!」


「分かってるよ」


「ところが、一年後に私が亡くなりました」


「……何だか物騒だな」


「その後も、先輩は私の相続人に対して、毎月二万円を請求できるでしょうか?」


 相馬先輩は即答しました。


「原則として、できねえ」


「正解!」


 民法五百五十二条。


 定期の給付を目的とする贈与は、贈与者または受贈者の死亡によって効力を失います。


「どうしてですか?」


 私は聞きました。


「考えてみろ」


 うーん。


 私は少し考えました。


 毎月お金をあげる。


 それは、相手との継続的な関係を前提にしている。


 もし、贈与者が亡くなっても、相続人が当然に何十年も払い続けなければならないとしたら。


 贈与者が自分の意思で始めた無償の給付を、相続人にそのまま負担させることになります。


「……だから、死亡によって将来の定期給付を終わらせるんですね」


「そういう趣旨だな」


 また。


 もらう側が亡くなった場合にも、定期贈与は効力を失います。


「つまり、もらう側の相続人が、当然に毎月のお小遣いを受け継げるわけでもない」


「そうだ」


 私は大きく書きました。


 ――定期贈与は、贈与者または受贈者の死亡によって効力を失う。


「でも先輩」


「何だ」


「既に支払期限が来ていたお金はどうなりますか?」


「そこも区別が必要だな」


 死亡によって定期贈与の効力が失われることと、死亡前に既に発生していた具体的な給付請求権の扱いは、別に検討しなければならない。


 さらに。


 最初から十万円ずつ十回払いで百万円を贈る契約と、毎月十万円を継続して贈る定期贈与とでは、契約の性質が違う場合があります。


「……あっ」


 私は目を見開きました。


「同じ毎月十万円でも、約束の中身によって違うんですね!」


「そうだ」


「単に支払方法を分割しただけなのか、定期給付そのものを約束したのか」


 私は赤線を引きました。


 これは試験で引っかかりそうです。


 毎月支払う。


 だから必ず定期贈与。


 そう決めつけてはいけない。


「契約の名前じゃなくて、何を約束したかを見るんですね」


「昨日から何度も言ってるだろ」


「……はい!」


 民法。


 やっぱり、一筋縄ではいきません。


 ◇


「じゃあ、最後です!」


 私は新しいページを開きました。


 ――第五問。死因贈与とは何か。


 相馬先輩が、少し真面目な顔になりました。


「これは、実務でも揉めやすいぞ」


「そうなんですか?」


「ああ。財産をくれると言った本人が、亡くなってるからな」


 私は頷きました。


 確かに。


 生きていれば、


『本当に土地をあげる約束をしましたか?』


 と聞くことができます。


 でも。


 本人が亡くなってしまったら。


 その約束を直接確認することはできません。


「たとえば」


 私は例題を書きました。


 祖父が、孫に言います。


 ――わしが死んだら、この土地をお前にやる。


 孫が答えます。


 ――ありがとう。もらうよ。


「これが死因贈与です!」


「そうだ」


 民法第五百五十四条。


 贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与。


 その性質に反しない限り、遺贈に関する規定が準用されます。


「では先輩!」


「何だ」


「死因贈与と遺贈の違いは何でしょう!」


 相馬先輩が答えました。


「契約か、単独行為かだろ」


「正解です!」


 私はノートに二つの欄を作りました。


 死因贈与。


 贈与者が『死んだらあげる』と申し込み、受贈者が受諾する。


 つまり、当事者の合意が必要な契約。


 一方。


 遺贈。


 遺言者が、遺言によって財産を与える。


 こちらは単独行為。


 相手方の受諾を、遺言成立の要件とはしません。


「なるほど……」


 私は鉛筆を止めました。


「『死んだら土地をあげる』という言葉が同じでも、制度が違うんですね」


「そうだ」


「死因贈与は契約」


「ああ」


「遺贈は遺言による単独行為」


「そうだ」


 私は大きく丸をつけました。


「ここ、絶対に間違えません!」


 そのとき。


 片桐所長が、奥から一枚の紙を持ってきました。


「こはる」


「はい」


「では、これはどうだ」


 所長は、手書きの文書を机に置きました。


 ――私が死亡したときは、所有する甲土地を田村健一に贈与する。


 ――田村健一は、これを承諾する。


 ――昭和六十三年十月某日。


 贈与者の署名。


 受贈者の署名。


 押印。


「……死因贈与契約書!」


 私は言いました。


 所長が頷きます。


「では、これが遺言書だったら?」


「遺言としての方式を満たさなければなりません!」


「そうだ」


 昭和六十三年の民法でも、遺言には法律上の方式が定められています。


 単に紙に、


『死んだら土地をあげる』


 と書けば、必ず有効な遺言になるわけではありません。


 一方、死因贈与は契約です。


 受贈者との合意が必要ですが、遺言とまったく同じ方式を当然に要求されるわけではありません。


「ただし、こはる」


 所長が続けました。


「はい」


「死因贈与だから、一度約束したら絶対に撤回できない、と考えるな」


「……えっ?」


「遺贈に関する規定が、性質に反しない限り準用される」


 私は六法を見つめました。


 そうでした。


 民法第五百五十四条。


 遺贈の規定の準用。


 死因贈与の撤回についても、遺贈に関する考え方が問題になります。


 特に、贈与者の死亡までの間に撤回できるかどうか。


 そして、受贈者が既に負担を履行していた場合などに、どこまで撤回が認められるか。


 そのような問題には、判例も関わってきます。


「……うわあ」


 私は頭を抱えました。


「何だ」


 相馬先輩が聞きました。


「贈与って、思ったより複雑です!」


「今さらか」


「だって!」


 私は指を折りました。


「普通の贈与!」


「うん」


「書面によらない贈与!」


「うん」


「負担付贈与!」


「うん」


「定期贈与!」


「うん」


「死因贈与!」


「そうだ」


「しかも、遺贈との違いまである!」


 相馬先輩は笑いました。


「それが民法だ」


「……恐ろしいですね」


「面白いんじゃなかったのか?」


「面白いです!」


 私は即答しました。


「でも、面白いのと簡単なのは別です!」


「そりゃそうだ」


 私たちは笑いました。


 そして私は、ノートに一つの言葉を書きました。


 ――合意。


 死因贈与と遺贈を区別する最大の鍵です。


 死因贈与は、あげる人ともらう人の合意。


 遺贈は、遺言者の単独行為。


 これさえ押さえれば、少なくとも基本問題では迷いません。


 ◇


 窓の外は、もう夕暮れでした。


 私は、今日のノートを見直しました。


 贈与。


 民法五百四十九条から五百五十四条まで。


 たった六条。


 でも、その中には。


 契約の成立。


 書面によらない贈与の撤回。


 履行済み部分の保護。


 贈与者の担保責任。


 定期贈与。


 負担付贈与。


 死因贈与。


 これだけの論点があります。


「……先輩」


「何だ」


「確認問題を出してもらっていいですか?」


「またか」


「お願いします!」


 相馬先輩は、しばらく考えました。


「じゃあ第一問」


「はい!」


「俺がお前に、明日、六法をあげると言った。お前は承諾した。贈与契約は成立するか」


「成立します!」


「まだ渡してねえぞ」


「贈与は諾成契約なので、合意で成立します!」


「正解」


 私は拳を握りました。


「第二問」


「はい!」


「その贈与は口約束だった。まだ六法は渡していない。俺が撤回したら?」


「昭和六十三年の民法五百五十条により、原則として撤回できます!」


「正解」


「第三問」


「はい!」


「俺がお前に六法を贈って、引き渡しも終わった。その後、書面がないという理由だけで撤回できるか」


「できません!」


「なぜだ」


「履行の終わった部分については、撤回できないからです!」


「よし」


 私は得意になりました。


「第四問」


「はい!」


「俺が毎月二万円をお前に贈ると約束した。ところが、お前が亡くなった」


「定期贈与は、贈与者または受贈者の死亡によって効力を失います!」


「正解」


「第五問」


「はい!」


「土地を贈る代わりに、毎月の介護を約束した。受贈者がその負担を履行しなかったら?」


「負担付贈与なので、要件を満たせば契約解除が問題になります!」


「よし」


「第六問!」


 今度は、私が先輩に言いました。


「先輩!」


「何だよ」


「死んだら土地をあげるという合意による契約は?」


「死因贈与だろ」


「遺言者が一方的に財産を与えるのは?」


「遺贈」


「正解!」


 私はノートを閉じました。


「……完璧です!」


 相馬先輩が、少し笑いました。


「まあ、昨日よりはましになったな」


「褒めました?」


「少しな」


「やった!」


 私は、思わず湯呑みを持ち上げました。


 真紀さんからいただいた、淡い青の湯呑み。


 あの電気窯で焼かれたもの。


 そして。


 贈与契約の成立と履行の違いを、私に教えてくれた贈り物です。


「所長」


「何だ」


「贈与って、何のためにあるんでしょうね」


 所長は少し考えました。


「人が、自分の財産を、他人に与えたいと思うからだろう」


「……はい」


「ただし、気持ちだけでは、争いが起こる」


 私は頷きました。


 誰かを応援したい。


 子供に財産を残したい。


 世話をしてくれた人に報いたい。


 大切な人に、毎月お金を渡したい。


 死んだあと、自分の財産を役立ててほしい。


 どれも、人間らしい気持ちです。


 でも。


 その気持ちは、時間とともに変わることがあります。


 贈った人が、後悔することもある。


 受け取った人が、約束を守らないこともある。


 親族同士で争うこともある。


「だから民法は、贈与を一つの契約として整理しているんですね」


「そうだ」


 所長が頷きました。


「無償の契約だからこその規律もある」


「はい」


「だが、贈与を受けた人の期待や生活も守らなければならない」


 私は昨日の真紀さんの笑顔を思い出しました。


 古い電気窯。


 それは、ただの中古設備ではありませんでした。


 真紀さんの仕事を支える、大切な財産。


 だから。


 あの窯が既に引き渡されていたという事実には、大きな意味があったのです。


「……分かりました」


 私は最後のページを開きました。


 今日の一行の覚え書き。


 ゆっくり。


 丁寧に。


 ――贈与は「合意で成立、履行済みは撤回不可」。定期は死亡で終了、負担付きは義務もあり、死因は死亡で効力発生。


「……できた!」


 私はノートを掲げました。


「どうですか!」


 相馬先輩が覗き込みました。


「長いな」


「ええっ!」


「一行に詰め込みすぎだろ」


「でも、全部大事なんです!」


「欲張りだな」


「行政書士試験は、欲張らないと合格できません!」


 相馬先輩が笑いました。


「まあ、忘れなきゃいいけどな」


「忘れません!」


 私は、湯呑みを見つめました。


 真紀さんの窯。


 叔父さんの口約束。


 配送伝票。


 はがき。


 内容証明郵便。


 そして。


 守られた、小さな工房。


 その事件を思い出せば、きっと忘れません。


 ◇


「ところで、こはる」


 相馬先輩が言いました。


「はい?」


「その湯呑み、本当に気に入ったのか?」


「もちろんです!」


「そうか」


 先輩は、私の湯呑みをじっと見ました。


「いい色だな」


「ですよね!」


「形もいい」


「はい!」


「俺にも同じのが欲しいな」


 私は、にこりと笑いました。


「先輩」


「何だ」


「真紀さんから、先輩も一ついただいてますよね?」


「……ああ」


「どうして私の湯呑みを見るんですか?」


「いや、お前の青い方がいい色だなと思って」


「……」


 私は、湯呑みを抱え込みました。


「駄目です!」


「まだ何も言ってねえだろ!」


「交換しません!」


「交換なんて言ってねえ!」


「贈与もしません!」


「だから何も言ってねえって!」


 私は胸を張りました。


「この湯呑みは、真紀さんが私に贈与してくれたものです!」


「知ってるよ!」


「私が受諾しました!」


「ああ!」


「そして引渡しが終わっています!」


「分かってる!」


「だから、先輩には渡しません!」


 相馬先輩が頭を抱えました。


「こはる……」


「はい!」


「お前、民法を覚えた途端、性格が悪くなってねえか?」


「失礼な!」


 私は頬を膨らませました。


「これは、権利意識が高まったんです!」


「都合のいい言葉を覚えやがって」


 そこへ。


 片桐所長が、静かに言いました。


「相馬」


「はい」


「湯呑みなら、来客用がある」


「……はい」


「そっちを使え」


 相馬先輩は、がっくり肩を落としました。


「所長まで……」


 私は思わず笑いました。


「ほら、先輩!」


「何だ」


「他人の贈り物を欲しがっちゃ駄目です!」


「お前なあ!」


 私は湯呑みを持ち上げました。


 お茶は、もう少しぬるくなっていました。


 でも。


 手のひらには、ちゃんと温かさが残っています。


 贈与。


 それは、財産を無償で与える契約。


 法律の言葉にすると、それだけです。


 でも。


 人が何かを贈るとき。


 そこには、理由があります。


 応援したい。


 助けたい。


 感謝したい。


 喜んでほしい。


 そんな気持ちです。


 そして、受け取る人には。


 その贈り物を、大切にしたいという気持ちが生まれることがあります。


 民法は、そうしたすべての感情を保証してくれるわけではありません。


 でも。


 約束が成立したか。


 履行が終わったか。


 どんな負担を引き受けたか。


 いつ効力が生じるか。


 その区別を通して、財産と約束の関係を守ってくれます。


 昨日の真紀さんの工房のように。


 人生を支える贈り物が、あるからです。


 私はノートの最後の一行を、もう一度読みました。


 ――贈与は「合意で成立、履行済みは撤回不可」。定期は死亡で終了、負担付きは義務もあり、死因は死亡で効力発生。


 よし。


 今日の教訓。


 これなら忘れません。


 そのとき。


 相馬先輩が、にやりと笑いました。


「こはる」


「はい?」


「一つ、いいことを教えてやる」


「何ですか?」


「お前、その湯呑みをもらったんだよな」


「はい!」


「だったら、もう自分のものだ」


「そうです!」


「つまり、割っても、欠けても、基本的にはお前の責任で管理することになる」


「……え?」


 私は湯呑みを見ました。


 薄い飲み口。


 繊細な形。


 そして、机の端。


 ……近い。


「うわっ!」


 私は慌てて、湯呑みを机の中央へ移動させました。


 相馬先輩が吹き出しました。


「何だ、急に!」


「割れたら困ります!」


「そりゃそうだ」


「もう私のものなんですから!」


「そうだな」


「大切にします!」


 先輩は、笑いながら新聞を広げました。


「それでいいんだよ」


 私は湯呑みを見つめました。


 もらったもの。


 自分のもの。


 そして、自分で守るもの。


 贈与とは。


 財産を受け取るだけではなく。


 その財産を、これからどう大切にするかまで、受け取ることなのかもしれません。


 窓の外。


 昭和六十三年の町に、夕暮れの明かりが灯っていきます。


 あのどこかで。


 真紀さんは、今日も窯に火を入れているのでしょう。


 誰かの食卓で使われる、新しい湯呑みを焼くために。


 私は六法を閉じました。


 民法五百四十九条から五百五十四条。


 たった六条。


 でも。


 そこには、人が人に何かを託すときの、大切なルールが詰まっていました。


「相馬先輩!」


「今度は何だ!」


「贈与って、やっぱり面白いですね!」


「分かったから、湯呑みを片付けろ!」


「はい!」


 私は笑いながら、湯呑みを大切に抱えました。


 ただし。


 先輩に取られないように。


 ……という理由では、ありません。


 あくまで。


 大切な贈与財産を、適切に管理するためです。


 民法を勉強すると。


 日常生活の言い訳まで、少しだけ法律家らしくなってしまうのでした。

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