↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こはる行政書士見習帖 〜 昭和に転生して許認可に振り回されると試験知識が骨身にしみます 〜  作者: 条文小説
〈行政法 配点112点/300点〉 行政行為

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/274

[附款]現場編 「約束を破ったから許可は消えました」の罠。許可そのものを消す条件と、許可にくっつく義務は別物です

挿絵(By みてみん)

 役所の「条件つきです」は、条件とは限りません。


 何を言っているのか分からないと思います。


 私も、昨日までなら分かりませんでした。


 条件と書いてあるなら条件でしょう。


 日本語としては百点です。


 行政法としては、時々零点です。


 そして、こういう日本語と法律用語の食い違いは、たいてい困っている人のところへ最悪の形でやってきます。


「店、閉めろって言われました」


 昭和六十三年。


 地方都市の片隅にある片桐行政書士事務所で、私は朝からその一言を聞かされていました。


 相談に来たのは、駅前商店街で小さな惣菜屋を営む森下佳代さん。


 四十代半ば。


 白いブラウスの袖口には、たぶん朝の仕込みでついたのでしょう、薄く醤油色の染みが残っています。


 膝の上に置かれた両手は、ずっと落ち着きなく組み替えられていました。


「閉めろ、というのは?」


 片桐所長が聞きます。


「市役所の人にです。裏口のところに箱を置いていたら、約束違反だから営業許可はもう駄目だって」


「箱?」


「野菜の空き箱です。朝、八百屋さんから届いた分を一時間くらい置いてただけで」


 私は思わず首をかしげました。


 一時間、空き箱。


 それで営業許可が吹き飛ぶ。


 行政法、突然の即死魔法ですか。


 横で書類をめくっていた相馬先輩が顔を上げました。


「許可書あるか」


「はい」


 佳代さんがバッグから茶封筒を出しました。


 中から現れたのは、市が出した仮設店舗使用許可書。


 駅前再整備に伴い、商店街の一部店舗が工事期間中だけ市有地の仮設店舗へ移るため、その使用を認める書類でした。


 なるほど。


 駅前再整備。


 最近、この町の相談事にやたら絡んでくる四文字です。


 町を便利にするはずなのに、その周囲で書類と人間だけがどんどん面倒になっていく。


 都市計画というものは、道路より先に揉め事を整備するのでしょうか。


「ここです」


 佳代さんが震える指で一か所を示しました。


 許可書の末尾。


 そこにはこうあります。


 使用条件


 一、店舗裏通路には商品、容器その他一切の物品を常置しないこと。


 二、周囲の美観および通行の安全を妨げないこと。


 三、上記事項に違反したときは、使用許可を取り消すことがある。


「ほう」


 相馬先輩が低く言いました。


「で、市役所は何て?」


「昨日、担当の人が来て……箱を見て、『条件違反です。条件を守れないなら許可は効力を失います』って」


「効力を失う?」


 私はそこに引っかかりました。


 片桐所長がこちらを見る。


 嫌な予感。


 最近分かってきました。


 所長が私を見るときは、だいたい「何か言え」です。


「こはる」


 ほら来た。


「どう思う」


「……まず、その“条件”が、本当に行政法上の条件なのかが怪しいです」


 佳代さんがきょとんとしました。


「条件って書いてありますけど」


「ですよね」


 私もそう思います。


 でも。


 昨夜までテキストで眠かった単語が、急に頭の中で起き上がりました。


 附款。


 主たる行政行為に、何かをくっつける。


 条件。


 期限。


 負担。


 撤回権の留保。


 法律効果の一部除外。


 五人組。


 見るだけで眠くなる行政法戦隊です。


 でも今日、そのうちの二人が殴り合っています。


「佳代さん」


「はい」


「市役所の人は、“箱を置いた瞬間に許可そのものが自動的に消えた”みたいな言い方をしたんですよね」


「そうです。もう無許可状態だから、今日から店を開けたら駄目だって」


「書面は?」


 所長が聞きました。


「ありません」


「取消通知も?」


「ないです」


「電話だけ?」


「いえ、昨日来た職員さんに口頭で」


 相馬先輩が鼻で笑いました。


「ずいぶん便利だな。箱一個見つけたら、その場で許可が蒸発するのか」


「先輩、言い方」


「違うのか」


「たぶん違います」


 いや。


 ここは、たぶんでは困ります。


 私は許可書をもう一度読みました。


 店舗裏通路には物品を常置しないこと。


 これって。


「所長」


「何だ」


「この“物を置かないこと”って、許可の効力の発生や消滅そのものを、不確実な事実にかからせてるわけじゃないですよね」


「続けろ」


「仮設店舗を使っていいという許可自体は、もう出ている。その上で、“通路には物を置くな”という追加の義務を課している」


 所長が一度だけ頷きました。


「そうだ」


 私は息を吸いました。


「だったら、これは行政法上の“条件”というより、“負担”じゃないですか」


 佳代さんがますます不思議そうな顔になります。


「……負担?」


「言葉がややこしくてすみません」


 本当にすみません。


 名付けた人を呼んできてほしい。


 相馬先輩が許可書を指で叩きました。


「要するに、店を使わせる。ただし通路に物を置くな。そういう義務をくっつけたわけだ」


「はい」


「で、その義務を破った」


「そこまではそうです」


「じゃあ役所が怒るのは当然だろ」


「怒るのは自由です」


「雑だな」


「でも、“義務違反があった=許可がその瞬間に消えた”とは別です」


 自分で言いながら、頭の中が急に晴れました。


 これです。


 条件と負担の違い。


 テキストでは何度読んでも眠かった。


 でも今、佳代さんのお店が開くか閉まるかと思った瞬間、やたら鮮明です。


 条件なら、その事実が起きることで行政行為の効力そのものが発生したり消えたりする。


 でも負担は、行政行為に付け加えられた特別な義務。


 義務に違反したからといって、主たる行政行為が当然に消えてなくなるわけではない。


「行きましょうか」


 所長が立ち上がりました。


「市役所へ?」


「話を聞く」


 相馬先輩も立ちます。


「こはる、お前も来い」


「またですか」


「論点で喋った責任だ」


「論点に責任制度あるんですか」


「今できた」


 行政法より先輩法のほうが怖い。


 市役所の都市整備課は、最近やけに混んでいます。


 駅前再整備。


 観光振興。


 仮設店舗。


 道路工事。


 役所の机には図面とファイルが積み上がり、その間を疲れた顔の職員が走り回っていました。


 窓口で名刺を出すと、見覚えのある顔が出てきます。


「……また片桐さんですか」


 倉田係長。


 最近、こちらも顔を覚えられつつあります。


「またとは何ですか」


 相馬先輩が言う。


「最近よく来られるので」


「そっちが案件作るからだろ」


「好きで作ってるわけじゃありません」


 この二人、少しずつ仲が悪くなくなっている気がします。


 嫌な仲良くなり方ですが。


 倉田係長は佳代さんの許可書を見ると、ああ、と眉間を押さえました。


「森下さんの件ですか」


「昨日、部下の方が“条件違反だから許可は失効した”と説明したそうですね」


 所長が聞きます。


 倉田係長の眉が動きました。


「失効?」


「はい」


「誰がそんな言い方を……」


 嫌な予感がします。


 そして案の定、奥から若い職員が呼ばれてきました。


 三十歳くらい。


 真面目そうな人です。


 名前は野口さん。


「昨日、森下さんに何と説明しました?」


 倉田係長が聞く。


 野口さんは少し緊張しながら答えました。


「許可条件に違反したので、もう使用は認められないと」


「許可を取り消したんですか」


「いえ、正式な手続はまだです。ただ……条件を守らなかったので、当然、許可は効力を失うものかと」


 出ました。


 当然。


 行政法でこの言葉が出ると、私は最近ちょっと身構えるようになりました。


 “当然に”。


 “直ちに”。


 “一切”。


 試験でも現場でも、強い副詞はだいたい何かを隠しています。


「確認していいですか」


 私は言いました。


「この許可書にある“裏通路に物品を常置しないこと”って、その事実が起きた瞬間に、許可の効力を自動的に消滅させる趣旨なんですか」


 野口さんが首を傾げました。


「条件ですから」


「その“条件”って、許可書にそう書いてあるからですか」


「ええ」


「でも、“許可の条件”という言葉と、行政法上の“条件”って同じとは限らないですよね」


 野口さんの顔が止まりました。


 倉田係長がこちらを見ます。


「どういう意味です?」


 私は少し緊張しました。


 こういう瞬間、いつも思います。


 昨日まで机の上で赤ペンを引いていた受験生が、役所の窓口で同じ話をすると急に怖い。


 でも。


 佳代さんは隣で、両手をぎゅっと握っています。


 だったら、眠気くらい吹き飛ばせます。


「この許可は、もう効力が発生していますよね」


「はい」


「森下さんは、仮設店舗を使える。そのうえで、“裏通路に物を置かないこと”という義務がくっついている」


「……はい」


「それなら、その部分は“条件”という名前が付いていても、実質は負担じゃないですか」


 倉田係長の目つきが変わりました。


 野口さんは黙っています。


「負担違反があったとしても」


 私は続けました。


「主たる許可が、その瞬間に当然に消滅するわけじゃないですよね」


 しん、としました。


 役所の窓口で静寂が来ると怖い。


 何か間違えたかと思います。


 でも所長は止めません。


 相馬先輩も黙っている。


 倉田係長が許可書を読み直しました。


「……確かに」


 野口さんが口を開きました。


「でも、“違反したときは、許可を取り消すことがある”とも書いてあります」


「そこです」


 相馬先輩が初めて口を挟みました。


「“取り消すことがある”と、“違反した瞬間に消える”は、同じか?」


 野口さんが詰まりました。


 そう。


 そこです。


 私は思わず相馬先輩を見ました。


 いつも「論点で喋るな」と言う人ほど、こういうとき一番えぐいところを刺します。


「違いますよね」


 私は言いました。


「取り消すとか撤回するとか、そういう判断をする余地を残しているなら、少なくとも自動消滅とは違う」


 倉田係長が野口さんを見ました。


「昨日、閉店を命じる決定をしたのか?」


「……していません」


「課として?」


「していません」


「じゃあ、何で“今日から開けたら駄目”とまで言った」


「それは……条件違反ならそうなると思って」


 悪い人ではない。


 たぶん。


 ただ、“許可条件”という言葉を、そのまま法的な条件だと思った。


 そして。


 違反。


 即失効。


 という一直線を引いてしまった。


 制度の雑さって、たぶんこうやって生まれるんだと思います。


 悪意より。


 言葉を一つ飛ばすことで。


 倉田係長がため息をつきました。


「森下さん」


「はい」


「昨日の説明は訂正します。現時点で、使用許可が失効したという扱いにはしません」


 佳代さんの肩が、目に見えて下がりました。


「じゃあ……今日、店を開けても?」


 倉田係長はそこでは即答しませんでした。


 そこが、たぶん前よりいい。


 何でもその場で言い切らない。


「安全上の問題がありますから、裏通路の物品は撤去してください。それから、今後どう扱うかはこちらで確認します」


「箱はもう片づけてあります」


「分かりました」


 野口さんが少し不満そうに言います。


「でも、違反があっても何もできないんですか」


「誰もそんなこと言ってません」


 私は反射的に答えました。


「負担に違反したからって、役所が全部黙って見てなきゃいけないわけじゃない。ただ、“違反した=自動的に許可消滅”ではない、って話です」


 所長が初めて私のほうを見ました。


 その目が、ほんの少しだけ「そこだ」と言っているように見えました。


「必要なら」


 所長が言いました。


「法令や許可の内容に従って、履行を求める。場合によっては、撤回などが問題になることもあるでしょう」


 野口さんが頷きます。


「でも、そのための判断と手続を飛ばして、“もう許可はありません”とは言えない」


「……はい」


 倉田係長が許可書の最後の一文を指しました。


「この“違反したときは使用許可を取り消すことがある”というのは、撤回権を留保している趣旨でしょうね」


 私は内心で、おお、と声を上げました。


 撤回権の留保。


 本日、行政法戦隊三人目の登場です。


「ただし」


 所長が言いました。


「書いておけば、何でも自由に撤回できるわけではありません」


「合理的な理由が必要、ということですか」


 私が聞く。


「そうだ」


 佳代さんの空き箱一つ。


 一時間程度。


 すでに撤去済み。


 通行事故も起きていない。


 それで仮設店舗の使用許可そのものを取り上げることが適切か。


 それはまた別に検討しなければならない。


 少なくとも。


 許可書に“取り消すことがある”と一行書いたから、役所が気分次第で店舗を潰せる。


 そんな話ではない。


「じゃあ」


 佳代さんが小さく聞きました。


「今日は、店を開けていいんですね」


 倉田係長は書類を見てから答えました。


「少なくとも、昨日の口頭説明だけで許可が消えたという扱いにはしません。通路は空けて営業してください」


 佳代さんが、深く頭を下げました。


「ありがとうございます」


「こちらの説明も正確ではありませんでした」


 倉田係長が言います。


 野口さんも、少し遅れて頭を下げました。


「すみませんでした」


 佳代さんはしばらく黙っていました。


 怒ってもいい場面です。


 でも。


「箱は、もう置かないようにします」


 そう言いました。


「私も、“ちょっとくらいなら”って思ってたから」


 倉田係長が頷く。


「お願いします。あそこは工事車両も通りますから」


 こういうところ。


 法律だけなら、勝ち負けで終われます。


 でも生活は、そのあとも続く。


 佳代さんは明日も店を開ける。


 倉田係長たちは明日も駅前を管理する。


 完全にどちらかを叩き潰すより。


 誤解だけを切り離して、残りを現実に戻す。


 たぶん、そのほうが長持ちします。


 事務所へ戻る途中、相馬先輩が煙草をくわえながら言いました。


「お前、今日は珍しく役に立ったな」


「“珍しく”いります?」


「いる」


「削除請求します」


「却下」


「その処分の根拠を」


「俺が先輩」


「行政法上いちばん危ない根拠!」


 前を歩いていた所長が振り返りもせず言いました。


「うるさい」


「はい」


 所長命令は強い。


 事務所に戻ると、夕方。


 佳代さんが一度店へ戻り、その一時間後。


 大きな紙袋を抱えてやってきました。


「今日、開けられました」


 そう言って笑いました。


 朝とは別人みたいな顔です。


「残り物だけど」


 袋の中には、コロッケ。


 きんぴら。


 卵焼き。


 そして、少し焦げた唐揚げ。


 相馬先輩の目が光りました。


「いい相談者だな」


「食べ物で評価しないでください」


「実務では重要だ」


「絶対違う」


 佳代さんが笑います。


「本当に助かりました。昨日は、もう店を畳まなきゃいけないのかと思って」


「箱の件は、気をつけてくださいね」


 私は言いました。


「分かってる。もう置かないよ」


「そこはお願いします」


「でもさ」


 佳代さんが、少し考えてから言いました。


「条件を破ったら、許可ってなくなるんじゃないんだね」


「そこが、今日いちばんややこしいところです」


「条件って書いてあるのに?」


「条件って書いてあっても、法律上は条件じゃないことがあります」


「役所の日本語って変だねえ」


「行政法の日本語です」


「もっと悪いね」


 否定できません。


 佳代さんが帰ったあと。


 相馬先輩は早速コロッケを一つ確保しました。


「先輩」


「何だ」


「それ、私が狙ってたやつです」


「知らん」


「では、そのコロッケを食べる許可に条件を付けます」


「何だよ」


「私にも半分くれること」


「嫌だ」


「条件違反です。食べる許可は失効しました」


「お前今日何を学んだ?」


「……あ」


 相馬先輩が勝ち誇った顔をします。


 くやしい。


「じゃあ負担です」


「何だ」


「コロッケを食べていい。ただし、私に半分渡す義務を負う」


「従わなかったら?」


「コロッケを食べた事実は消えません」


「当たり前だ」


「でも義務違反です」


「執行してみろ」


「所長!」


 私は奥へ声をかけました。


「コロッケ紛争です!」


「自分たちで解決しろ」


「救済なし!」


 昭和六十三年。


 片桐行政書士事務所。


 どうやら行政法より先に、惣菜法の整備が必要です。


 結局、唐揚げ一個との交換でコロッケの半分を確保しました。


 取引法の勝利です。


 外が暗くなり始めたころ。


 私は机の端に許可書の写しを置きました。


 今日のあれは。


 何だったんだろう。


 使用許可という本体。


 そこへくっつけられた、


 通路に物を置かないこと。


 一定の場合には許可を取り消すことがある。


 期間。


 ほかにも、もし、


 来年三月三十一日まで。


 会社成立後から効力が出る。


 公益上必要なら撤回する。


 本来なら生じる効果の一部だけを除く。


 そんな文言がついたら。


 全部“おまけ”みたいに見えるけれど、法的な意味は一つずつ違う。


 私はノートを開きました。


 でも、まだ書きません。


 今朝の私は、


 “条件付き許可”


 と聞いたら、


 条件を破れば許可が消える。


 そう単純に考えていたかもしれません。


 野口さんと、あまり変わらない。


 でも今日、佳代さんの店を挟んだら違って見えました。


 許可そのものの効き目と。


 許可にくっついてくる義務。


 そこを混ぜると、


 たった一個の空き箱が、


 一軒の店の営業許可全部を飲み込んでしまう。


 条文は冷たい。


 行政法の言葉はもっと冷たい。


 条件。


 期限。


 負担。


 撤回権の留保。


 法律効果の一部除外。


 人間味なんて一ミリもありません。


 でも。


 その冷たい名前を一つずつ分けるからこそ、


 「約束を破ったんだから、全部なし」


 という雑な扱いを止められる。


 私はノートの一番上にだけ、書きました。


 ――附款。


 その下は、今日はまだ空白です。


「また明日に回す気か」


 相馬先輩が言いました。


「違います。整理する前の助走です」


「言い訳が上手くなったな」


「成長です」


 所長が奥から言いました。


「今日中にまとめろ」


「やっぱりですか」


「忘れる」


「所長、私の記憶力を信用してください」


「しない」


「即答!」


 相馬先輩が笑います。


 私は仕方なくペンを取りました。


 でも、最初の一行だけは決まっていました。


 許可に何かが付いているときは、


 “何が付いたか”より、


 “それを破ったら本体がどうなるのか”を見る。


 条件なら、事実の発生が本体の効力に直結する。


 負担なら、まずは本体とは別の義務として考える。


 そこを混ぜない。


 今日の教訓は、それで十分です。


 私はふと、昼間の佳代さんの顔を思い出しました。


 昨日。


 市役所の職員に、


 もう許可はありません。


 今日から営業できません。


 そう言われて。


 それを疑うことさえできず、店を閉めかけた。


 法律は、時々ものすごく冷たい顔をします。


 でも。


 冷たいからこそ、


 怒っている人の勢いにも、


 役所の思い込みにも、


 その場の空気にも流されず、


 ここまでは義務。


 ここからは許可そのものの効力。


 そう線を引ける。


 今日、一軒の惣菜屋を救ったのは、


 優しい言葉ではありませんでした。


 “条件”と“負担”は違う。


 たったそれだけの、眠そうな区別でした。


「こはる」


「はい?」


 相馬先輩が、最後の唐揚げを箸でつまんでいます。


「これ、食っていいか?」


「駄目です」


「条件は?」


「私が食べ終わるまで待つこと」


「それ条件か?」


「……たぶん期限です」


「本当に今日中に整理しろ」


「はい」


 どうやら附款は、


 コロッケ一つでも間違えるくらいには、


 まだ油断ならないようです。

 以下に私の作品へのリンク貼ってます。是非、手に取って頂ければと思います。また、ついでに評価ブックマーク頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こはる行政書士見習帖 〜 昭和に転生して許認可に振り回されると試験知識が骨身にしみます 〜
宅建見習い栞の人情事件簿 〜転生したら昭和の不動産屋だったので、巻き込まれているうちに宅建過去問が解けるようになりました〜
名探偵 藤原彰子の宮中事件簿 ――『転生皇后 藤原彰子』スピンオフ外伝
転生皇后 藤原彰子 〜 欠けることのない望月の世は私が創る 〜
新訳 太閤記 ~ 転生 豊臣秀吉、未来を識る僕は史実の道を静かに歩む 〜
新訳 三河物語 〜 徳川家康と家臣団の戦国サバイバル 〜 with 逆行転生犬シロ
新訳 北条五代記 〜 近所の隠居が書いたメモがガチの戦記だった件〜
美しき女帝 北条政子 〜 婚約破棄どころか強制結婚!? 平家のエリートに嫁がされそうになったので、豪雨の山を越えて愛する無職の元へ走ってみた 〜
新訳 曽我物語 〜 復讐系なろうの原点、父を殺された兄弟の二十年の復讐譚〜
箴言・格言・名言集 〜頑張るあなたへ、今日を乗り越えるための一言〜
拝啓、愛読者様。― 想いを少しだけ 謹呈 条文小説
六道輪廻抄 〜 戦国転生記 〜
コミックス「六道輪廻抄〜戦国転生記〜」
動画生成AIが作成したイメージビデオ
動画生成AIが作成したなろう小説イメージビデオ
動画生成AIが作成したなろう小説イメージビデオ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。