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こはる行政書士見習帖 〜 昭和に転生して許認可に振り回されると試験知識が骨身にしみます 〜  作者: 条文小説
〈行政法 配点112点/300点〉 行政手続法

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105/272

[行政手続法36条の2・行政指導の中止等の求め]現場編 「役所から是正を求められた以上、従うしかない」の罠。法律に基づく指導と、要件を外した“正しさ”を切り分ける

挿絵(By みてみん)

 役所の「直してください」は、ときどき命令より怖いです。


 命令なら、根拠を聞けます。


 不服なら、争い方も考えられます。


 でも。


 「お願いです」


 「指導です」


 「自主的にお願いします」


 そう言われると。


 こっちが断った瞬間だけ、急に悪い人みたいになる。


 行政指導。


 法的には柔らかい。


 現場では、全然柔らかくない。


     ◇


 昭和六十三年。


 地方都市の片桐行政書士事務所。


 私は朝比奈こはる。


 十八歳の事務見習い。


 そして。


 前世では令和の行政書士受験生でした。


「朝比奈」


「はい」


「電話」


「誰です?」


「怒ってる」


「分類が雑!」


 相馬先輩から受話器を渡されました。


 出てみると。


『もう店閉めろってことですか!』


 耳が痛い。


「ええと、落ち着いてください。片桐行政書士事務所です」


『落ち着けるか!』


 落ち着けませんでした。


 相談者の名前は、野中修一さん。


 駅裏で、小さな金属加工工場を営んでいるそうです。


 従業員は六人。


 親の代から続く町工場。


 自動車部品の下請けや、農機具の修理部品を作っている。


 その工場へ。


 今日、市役所の職員が来た。


 そして。


 こう言ったそうです。


『設備の使用をやめてください』


「何の設備ですか?」


『プレス機だよ。古いやつだ』


「騒音ですか?」


『近所から苦情が出たって』


 なるほど。


 ここまでは、まあ分かる。


 町工場。


 古い機械。


 騒音。


 近隣苦情。


 行政が間に入ること自体は、ありそうです。


「それで、市役所は何て?」


『法律違反だから是正してくださいって』


 私は受話器を持つ手を止めました。


「法律違反?」


『そうだよ! 騒音の基準超えてるから、このまま使うなって』


「測定したんですか?」


『知らん』


「知らない?」


『今日来た職員は、苦情が何件か来てる、前にも注意した、それで十分だって』


 あ。


 嫌な感じ。


 かなりします。


「書面は?」


『これ』


「電話なので見えません」


『ああ、そうか』


 野中さん。


 相当混乱しています。


「持ってきてもらえますか」


『今から行く』


 電話が切れました。


 相馬先輩がこちらを見ます。


「何だ」


「工場に行政指導です」


「騒音か」


「たぶん」


「で?」


「法律違反だからプレス機止めろって」


 相馬先輩の眉が少し動きました。


「測ったのか」


「そこが怪しいです」


「なら来たら見る」


 私は机に戻りました。


 でも。


 頭の中では。


 未来の条文が、もう立ち上がり始めています。


 行政手続法第三十六条の二。


 行政指導の中止等の求め。


 かなり後から追加された制度。


 平成二十六年改正。


 つまり。


 昭和六十三年の今から見れば、遥か未来。


 でも。


 その制度が必要になる理由は。


 たぶん。


 今から玄関を蹴破りそうな勢いで来る。


 そんな気がしました。


     ◇


 十分後。


 本当に蹴破りそうな勢いで来ました。


「片桐先生!」


 野中さんは四十代後半。


 油の染みた作業着のまま。


 手には封筒。


 顔は真っ赤でした。


「これだ!」


 机の上に紙が置かれます。


 私は相馬先輩の横から覗き込みました。


 市役所環境保全課。


 表題。


 ――騒音発生施設の改善について。


 本文。


 近隣住民から騒音に関する苦情が寄せられている。


 関係法令に照らし、適正な状態を確保するため。


 プレス機の使用停止または防音措置を講じるよう指導する。


「……行政指導ですね」


 私が言うと。


「だから困ってるんだよ!」


 野中さんが叫びました。


「指導って書いてあるけど、役所から止めろって言われたら止めるしかないだろ!」


 はい。


 現場の行政指導です。


 教科書では。


 任意。


 非権力的。


 相手方の協力を求める。


 そんなふうに書かれています。


 でも。


 六人の従業員を抱えた町工場で。


 市役所の職員が来て。


 法律違反です。


 設備を止めてください。


 と言われたら。


 「これは任意だから断れますね」


 なんて笑える人は、たぶんあまりいません。


「所長」


 片桐先生――ではなく片桐所長が、文書を受け取ります。


「市の職員は何を根拠にした」


「騒音の法律だってよ」


「法律名は?」


「そこまでは聞いてねえ」


「この文書にも具体的な条文がないな」


 所長が静かに言いました。


 私も確認します。


 関係法令に照らし。


 適正な状態を確保するため。


 ふわっとしている。


 役所文書は、ときどき「関係法令」という言葉で法令名を霧にします。


「前にも注意されたんですか?」


 私が聞くと。


「一年前にな。夕方うるさいって言われたから、夜七時以降は止めた」


「今回は?」


「最近、近所にマンションが建ったんだよ」


「ああ」


 嫌な予感が一本つながりました。


「工場は昔から?」


「三十年だ」


「マンションは?」


「去年」


 うわあ。


 新しい住宅。


 古い工場。


 典型的に揉めます。


 でも。


 それと。


 法律上の基準違反かどうかは。


 別です。


「騒音の測定値って、あります?」


「ない」


「市役所から見せてもらってない?」


「見てない」


「工場のどの機械が、どの時間帯で、どれくらい超えてるとか」


「聞いてない」


 私は所長を見ました。


 所長は。


「相馬」


「はい」


「市役所」


 短い。


「こはるも」


「やっぱり」


 昭和の行政書士事務所。


 論点に気づいた見習いは。


 だいたい現場に連行されます。


     ◇


 市役所環境保全課。


 窓口へ行くと。


 係員は、私たちを見るなり少し警戒しました。


 最近。


 市役所で私たちの顔、覚えられてません?


 嬉しくない実績です。


「野中鉄工所の件です」


 相馬先輩が文書を置きました。


「これ、誰が出した」


「うちです」


「何に基づく行政指導だ」


 職員が答えます。


「騒音規制に関する法令です」


「法令じゃ広すぎる」


「具体的にお願いします」


 私も言いました。


 職員が少し面倒そうな顔をしました。


「騒音規制法等に基づくものです」


 私は心の中で引っかかりました。


 等。


 法律文書における、便利で怖い一文字。


「じゃあ」


 相馬先輩が続けます。


「この工場が、法律上のどの要件に該当してる」


「要件?」


「法律違反だから是正しろって言ったんだろ」


「ええ」


「なら違反の要件があるだろ」


 職員が黙りました。


 そこへ。


「どうしました」


 奥から、倉田係長が出てきました。


「また皆さんですか」


「またです」


 私が答えると。


「今日は商工観光じゃありませんよ」


「出張ですか」


「違います。環境保全課と調整してる案件です」


 どうやら駅前再整備の関係で、課をまたいで動いているらしい。


 倉田係長も大変です。


 でも。


 大変なのと、雑でいいのは別です。


「野中鉄工所への行政指導です」


 所長が文書を渡しました。


 倉田係長が読みます。


「ああ……」


「根拠は?」


「騒音規制法です」


「条項は?」


「そこまで必要ですか」


 倉田係長が少し疲れた顔で言いました。


 相馬先輩の顔が。


 一段階冷たくなりました。


「必要だから聞いてる」


「ですが、近隣苦情もありますし」


「苦情があることと、法律違反は同じか」


「……同じではありません」


「なら、法律違反だから是正しろと言うなら、どの要件に当てはまるか説明してください」


 倉田係長は黙ります。


 私はそこで。


 昨日まで眠かったはずの未来の知識が。


 急に、血を通わせ始めるのを感じました。


 行政手続法三十六条の二。


 未来では。


 法令違反の是正を求める行政指導。


 しかも。


 その行政指導の根拠となる規定が法律に置かれている場合。


 その相手方が。


 その行政指導は法律の要件に合っていないのでは。


 と思ったとき。


 行政機関に対して。


 中止その他必要な措置を求めることができる。


 でも今は昭和六十三年。


 そんな制度はまだない。


 私は。


 未来の条文そのものではなく。


 その骨だけを使うことにしました。


「係長」


「何です」


「市役所は、“法律違反だから是正してください”と言ったんですよね」


「はい」


「だったら」


 私は文書を指で押さえました。


「違反になる要件を確認しないと、是正の前提が分からなくないですか」


「……」


「近所から苦情が出た、は事実」


「はい」


「音が大きいかもしれない、も事実」


「はい」


「でも、“法律違反です”は別の話です」


 倉田係長の表情が固まります。


「その法律は、どういう場合に是正の対象にできるんですか」


 私は聞きました。


「野中さんの工場は、その条件を満たしてるんですか」


「だから、それを調べるためにも――」


「調べる前に止めろと言ったんですか?」


 私が言うと。


 空気が止まりました。


 しまった。


 少し強すぎた。


 でも。


 相馬先輩は止めません。


 むしろ。


「そこだな」


 と低く言いました。


「調査が先だろ」


 倉田係長が唇を結びます。


「苦情が続いていて、早急な対応が必要だったんです」


「それは分かります」


 私は言いました。


「でも」


 ここで。


 この人を悪者にしてはいけない。


 そう思いました。


 倉田係長は。


 苦情を放置したかったわけじゃない。


 住民から電話が来る。


 市議から言われる。


 駅裏再整備の話もある。


 町工場から音はする。


 だから。


 とりあえず止めてもらえれば丸い。


 そう考えたのかもしれない。


 でも。


 その「とりあえず」が。


 六人分の給料を止める。


「苦情対応と」


 私はゆっくり言いました。


「法律違反を理由にした是正指導は、分けたほうがいいと思います」


「分ける?」


「まだ法律上の違反が確認できていないなら、“苦情が出ているので協力してください”という話かもしれない」


「……」


「でも、“法律違反なので止めてください”と言うなら、法律の要件に当てはまってることを確認しないと」


 所長が短く言いました。


「理由が違えば、相手の受け止め方も違う」


 そう。


 そこです。


 自主的な協力要請。


 法律違反の是正を求める行政指導。


 見た目は似ています。


 どちらも。


 「直してください」


 と言う。


 でも。


 重みが違う。


 法令違反だと言われれば。


 企業の信用にも関わる。


 取引先へ噂が回るかもしれない。


 従業員だって不安になる。


 だからこそ。


 根拠となる法律の要件から外れた行政指導なら。


 後世の法律は。


 行政自身に見直させる道を作る。


 私は。


 未来の制度の意味が。


 少しずつ見えてきました。


「係長」


 所長が言います。


「測定記録を確認できますか」


「……測定はまだです」


 野中さんの眉が跳ねました。


「測ってねえのかよ!」


「落ち着いてください」


 私は慌てて止めました。


 ここで窓口が魚市場になると話が進みません。


「じゃあ何をもって基準超過と?」


 相馬先輩が聞く。


「職員が現地で確認した際、相当な騒音がありました」


「耳で?」


「……はい」


「測定器は?」


「持参していませんでした」


「法律上の基準値超過を、耳で判断した?」


「そこまでは……」


「じゃあ法律違反だと言ったのは?」


 倉田係長は。


 しばらく答えませんでした。


 それから。


 小さく息を吐きました。


「表現が先走りました」


 来た。


 完全撤回ではない。


 でも。


 役所が自分で。


 そこを認めた。


「市としては、苦情が続いている以上、何もしないわけにはいきません」


「それは分かります」


 所長が答えます。


「なら、まず事実を確認してください」


「測定を?」


「ええ」


「必要な指定や施設要件も確認する」


「はい」


「その上で、本当に法令上の是正対象なら、その根拠を明示して指導する」


「はい」


「違うなら」


 所長が一度、野中さんを見る。


「違う言葉を使うべきです」


 倉田係長が頷きました。


 そのとき。


 野中さんが口を開きます。


「じゃあ」


 声は。


 さっきより少しだけ低くなっていました。


「今日の“法律違反だから止めろ”ってのは」


「現時点では撤回します」


 倉田係長が答えました。


「撤回?」


「法違反を前提とした是正指導としては、です」


 野中さんが目を見開きました。


「ただし」


 係長は続けます。


「苦情が出ているのは事実です。市として騒音の測定をさせてください。その結果によっては、改善をお願いすることがあります」


 野中さんは。


 少し考えました。


 それから。


「測るのは構わん」


「ありがとうございます」


「本当にうちが基準超えてるなら、防音も考える」


「はい」


「でも、測る前から違反者扱いはするな」


 倉田係長が。


「そこは申し訳ありませんでした」


 と頭を下げました。


 私は。


 胸の奥で。


 何かがすっとほどけるのを感じました。


 これです。


 たぶん。


 法律で勝ったわけじゃない。


 行政指導そのものを禁止したわけでもない。


 苦情が消えたわけでもない。


 ただ。


 法律違反かもしれない。


 が。


 法律違反だから直せ。


 に化けていた部分を。


 元へ戻した。


 それだけ。


 でも。


 それだけで。


 野中さんは。


 違反企業ではなく。


 これから事実確認を受ける事業者に戻った。


 ものすごく大きな違いでした。


     ◇


 市役所から出ると。


 野中さんが煙草を一本取り出しました。


 でも。


 火をつける前に。


「ここ、禁煙か?」


 と聞きました。


「そこは急に法令遵守」


 私が言うと。


「今日は懲りた」


 野中さんが笑いました。


 少しだけ。


 本当に少しだけ。


 最初の怒鳴り声の人から戻った気がします。


「こはるちゃん」


「はい」


「俺、法律ってのは役所がこっちに使うもんだと思ってた」


「分かります」


「でも今日」


 野中さんは市役所の建物を振り返りました。


「役所が法律を使うなら、その法律の条件も守らなきゃならんのな」


 私は。


 返事をするまで。


 ほんの少し時間がかかりました。


「……そうだと思います」


「そりゃ当たり前か」


「当たり前って、現場だと意外と見えないんです」


 本当に。


 そうでした。


 法律違反だから。


 是正してください。


 その言葉を聞くと。


 言われた側は。


 自分が悪いと思う。


 でも。


 まず見るべきなのは。


 法律が本当に。


 その人を違反者として扱う条件を満たしているのか。


 そこなんです。


     ◇


 三日後。


 市役所が正式に騒音測定をしました。


 結果。


 昼間の一部時間帯で。


 基準にかなり近い値は出たものの。


 測定した範囲では。


 直ちに「法令違反だから停止しろ」と言える状態ではありませんでした。


 ただ。


 プレス機を連続運転すると。


 近所へ響く時間帯があることも分かった。


 そこで。


 野中さんは。


 機械の下へ防振材を入れる。


 午後六時以降の連続運転を避ける。


 扉を閉めて作業する。


 できるところから対応することにしました。


「結局、直すんですね」


 私が事務所で聞くと。


 野中さんは紙袋を置きながら言いました。


「そりゃうるさいのは本当らしいからな」


「じゃあ最初から従えば」


「それとこれとは別だ」


 即答でした。


「違反してねえのに、違反してるから止めろって言われるのは嫌だ」


「はい」


「でも迷惑かけてるなら直す」


「はい」


「同じ“直す”でも、全然違うだろ」


 私は思わず笑いました。


「今日の法理編、もう野中さんが書けそうですね」


「何編だ?」


「いえ、何でもないです」


 危ない。


 未来用語。


 片桐所長が紙袋を開けました。


 中には。


 たい焼き。


「なんでたい焼きなんです?」


 私が聞くと。


「駅前の店で買った」


 野中さんが答えます。


「この前、木の鯛で揉めたって聞いたから」


 情報が早い。


 町が狭い。


 相馬先輩が一個取ります。


「じゃあ俺は尻尾」


「勝手に分割しないでください!」


 私も手を伸ばします。


 すると。


 所長が言いました。


「一人一個」


「はい」


「異議なし」


 相馬先輩も素直です。


 こういうときだけ。


     ◇


 夕方。


 事務所が静かになったあと。


 私はノートを開きました。


 白いページの上に。


 ゆっくり。


 題名だけを書きます。


 ――行政指導の中止等の求め。


 書いた瞬間。


 変な感じがしました。


 この言葉は。


 この時代にはまだない。


 正確には。


 行政手続法そのものすら、まだない。


 しかも。


 この制度が法律に加わるのは。


 もっともっと先。


 平成二十六年の改正。


 今から四半世紀以上。


 未来です。


 でも。


 今日の市役所で起きたことは。


 まるで。


 その条文が生まれる前の問題集みたいでした。


 法令違反の是正を求める行政指導。


 役所は。


 「法律違反です」


 と言った。


 でも。


 その法律が要求する要件を。


 本当に満たしているのか確認されていなかった。


 未来なら。


 一定の場合。


 相手方から行政機関へ。


 その指導は法律の要件に合っていない。


 だから。


 中止など必要な措置を求めます。


 そう正式に申し出る道ができる。


 そして役所は。


 必要な調査をする。


 法律の要件に合っていないと認めたなら。


 行政指導を中止したり。


 必要な措置をとったりしなければならない。


「朝比奈」


「はい」


 相馬先輩が私のノートを覗き込みました。


「また妙な題つけてるな」


「自分用です」


「今日のは何だ」


 私は少し考えます。


 行政指導の中止等の求め。


 そのまま説明したら。


 未来人確定です。


「役所から“法律違反だから直せ”と言われても」


 私は答えました。


「その法律の条件に当てはまってないなら、指導する側にもう一回確認を求めてもいいんじゃないか、って話です」


「当たり前だろ」


「そうなんですけど」


 私は笑いました。


「当たり前を手続にするのが、法律なんだと思います」


 相馬先輩が。


 少しだけ黙りました。


 奥で。


 片桐所長が帳簿を閉じます。


「こはる」


「はい」


「今日、一番大事だったのは何だ」


 私は。


 迷いませんでした。


「行政指導だから、じゃないです」


「ほう」


「法律違反の是正を求めるって言うなら、その法律の要件に本当に合ってるかを見ることです」


「それでいい」


 所長が言いました。


 短い。


 でも。


 たぶん今日は。


 それだけでいい。


 私はノートの一番下に。


 一行だけ書きました。


 ――「法律違反だから直せ」と言われたら、まず、その法律のどの要件に当てはまるのかを聞く。


 ペンを置きます。


 窓の外では。


 駅裏の工場街に。


 一つずつ灯りがついていました。


 野中鉄工所のプレス機も。


 今ごろ動いているかもしれない。


 少しだけ静かに。


 少しだけ気をつけながら。


 法律は。


 工場の機械を止めることもある。


 でも。


 その前に。


 行政の口から出た「法律違反」という言葉を。


 本当に法律の形へ戻すこともできる。


 条文は冷たい。


 要件も冷たい。


 でも。


 冷たいからこそ。


 「たぶん違反だ」


 を。


 「違反だから従え」


 にしてしまう熱を。


 少しだけ冷ましてくれる。


「先輩」


「何だ」


「たい焼き、もう一個残ってません?」


「ない」


「本当に?」


「ない」


「根拠は?」


「俺が食った」


「事実関係の調査が終わってた!」


 どうやら。


 こちらについては。


 中止を求めるには遅すぎたようです。

 以下に私の作品へのリンク貼ってます。是非、手に取って頂ければと思います。また、ついでに評価ブックマーク頂ければ幸いです。

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