↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こはる行政書士見習帖 〜 昭和に転生して許認可に振り回されると試験知識が骨身にしみます 〜  作者: 条文小説
〈行政法 配点112点/300点〉 行政組織

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/278

[行政主体]現場編 「決まりです」と言われたところから行政法は始まる。役所の「駄目」の中身をほどく魔法の質問

挿絵(By みてみん)

 役所の壁に貼ってある文言は、ときどき妙に偉そうです。


 「できません」


 「受け付けません」


 「認められません」


 黒々とした文字。ラミネート加工。無駄に強い断定。


 あれを見せられると、人はだいたい二種類に分かれます。


 「そういうものか」と帰る人と、

 「いやでも、おかしくないですか」と食い下がる人。


 そして、町で本当に面倒ごとを起こすのは、たいてい後者です。


 ――で、今の私は、その面倒ごとを眺めている側でした。


 いや、正確には、眺めているつもりだったんですけど。


 目が覚めたとき、私は木の長椅子に寝かされていました。


 硬い。狭い。首が痛い。


 見上げれば古びた天井。鼻をくすぐるのは紙とインクと古いファイルの匂い。耳に入るのは、ガチャガチャと乱暴に引き出しを閉める音と、外から聞こえる車のクラクション。それから、すぐ近くで誰かが吐き捨てるように言いました。


「起きろ、新人。そこで死なれると邪魔だ」


 ひどい第一声です。


 顔を上げると、白シャツにベスト姿の男が、書類の束を抱えたままこちらを見下ろしていました。三十前後。目つきは悪い。けれど、“嫌な人”というより“常に忙しすぎる人”の顔をしています。


「……誰ですか」


「こっちが聞きたい」


 そんな切り返しありますか?


 でも次の瞬間、頭の奥で、知らないはずの記憶がぴたりと噛み合いました。


 ここは片桐行政書士事務所。

 私は朝比奈こはる、十八歳の事務見習い。

 この口の悪い人は、先輩の相馬誠司。


 そして、壁のカレンダー。


 昭和六十三年。


「……うわあ」


「何だその顔」


「いえ、ちょっと時代が重くて」


「朝から意味不明だな、お前」


 意味不明なのは私もです。


 昨夜まで私は令和のワンルームで、行政書士試験のテキストに埋もれていたはずでした。

 行政主体。行政機関。行政庁。法規命令。行政規則。訓令。通達。


 眠い単元のフルコースです。


 いえ大事なんですよ。大事なのは分かります。でも、受験生の脳にとって「通達と法令の違い」は、深夜一時を過ぎると急に霧の向こうへ消えていくんです。少なくとも私の脳ではそうでした。


 それがどうして昭和の行政書士事務所なのか。


 どうして見習いなのか。


 どうして首がこんなに痛いのか。


 何一つ納得できませんが、現実逃避をしている余裕はありませんでした。


「茶ァ入れろ。あと、その壁見てこい」


 相馬先輩が顎で示した先、事務所の入口脇に、小さな人だかりができていました。


 地域の掲示板です。


 商店会のお知らせ、祭りの案内、求人、迷い犬。そういう紙に混じって、一枚だけ、妙に役所っぽい紙が貼られています。


 私は近づいて、その文面を読みました。


露店営業に関するお知らせ


 駅前広場周辺においては、衛生上および景観上の観点から、一切の食品販売営業を認めないこととする。


湖西市商工観光課


「……強いなあ」


「だろ」


 相馬先輩が肩越しに言う。


「今朝それ見て、近所の団子屋の婆さんが怒鳴り込んできた」


「怒鳴り込んだ?」


「毎年、祭りの日だけ駅前で団子売ってるんだと。今年もそのつもりで仕込みまで始めてたのに、急にこんなの貼られたってな」


 なるほど。


 相談が来て、事件が起きて、犯人を止めに走る――ではありません。


 今回はもう、壁に答えみたいな顔をした問題文が貼ってあるわけです。


 しかもこの文面、嫌な感じがします。


 ものすごくする。


「所長は?」


「奥で話聞いてる」


 奥の応接へ行くと、小柄なおばあさんが腕を組んで座っていました。年は六十代後半くらい。割烹着。目が鋭い。泣いてはいません。むしろ今にも市役所を噛みそうな顔です。


「安西フミです。あんたが新しい子?」


「はい、朝比奈こはるです」


「こはるちゃん。あの貼り紙、腹立たないかい」


「腹は立ちます」


 即答すると、おばあさんは少しだけ機嫌を直しました。


「そうだろう? こっちは三十年、祭りの日だけ団子焼いてきたんだよ。急に『一切認めない』だってさ。何様だい」


 片桐所長が静かに湯呑みを置きました。


「安西さん、確認ですが、これまで駅前で団子を売るのに、毎年許可か何かは取っていましたか」


「商店会には話を通してたよ。観光課の若いのも、『例年どおりで』って」


「書面は?」


「ないねえ」


「警察や保健所は」


「そこまでは知らないよ。昔から皆やってるし」


 私は内心で、「うわぁ」と小さく呻きました。


 昭和の“昔からやってる”は、かなり強い。

 そして法的には、かなり危ない。


 でも同時に、壁の貼り紙にも引っかかる。


 一切の食品販売営業を認めないこととする。


 この言い方。


 役所はよくこういう言い方をします。

 でも、「よく言う」ことと「法的にそれでいい」ことは別です。


「こはる」


 所長がこちらを見る。


「何か気づいたか」


「はい」


 私は貼り紙を指さしました。


「たぶん最初の論点は、“それ、誰が決めたんですか”です」


 相馬先輩が、ああ始まった、という顔をしました。


 でも止めない。止めないなら続けます。


「所長、この貼り紙、法令名が書いてありません」


「……続けろ」


「景観上とか衛生上とか、理由っぽい言葉はある。でも、何の条例なのか、何の規則なのか、どの権限で一切禁止にしたのかが抜けてます」


 安西さんが眉をひそめました。


「つまり?」


「貼り紙だけでは、法律なのか、内部のお願いなのか、ただの窓口方針なのか分からないってことです」


 部屋の空気が少し変わりました。


 所長がほんのわずかに頷く。


「そうだな」


 相馬先輩が腕を組む。


「じゃあ、ただの張りぼてか?」


「そこまではまだ」


 私は首を振りました。


「本当に条例や規則に基づいて制限してる可能性もあります。でも逆に、課の内部運用とか、通達めいたものを、市民に対して“法”みたいな顔で貼ってるだけかもしれません」


「通達?」


 安西さんが首をかしげる。


「何だいそれ」


「役所の中で、部下にこうしろって回す文書です」


「じゃあ外の人間には関係ないのかい」


「原則として、そのまま市民を直接縛るものではありません」


 相馬先輩が口の端を上げました。


「寝ぼけてるわりに、今日は回るな」


「私も驚いてます」


 本当にです。


 昨夜までテキストの隅にあった「通達は行政内部の命令にすぎず、国民を直接拘束しない」なんて一文が、今はやけに生き生きして見えます。


 文字だけなら眠いのに、人の商売がかかると急に目が覚めるの、ずるくないですか行政法。


「相馬」


 所長が立ち上がる。


「市役所だ。こはるも来い」


「またですか」


「言い出しっぺだ」


 昭和の職場、言い出しっぺに厳しい。


 市役所の商工観光課は、古い建物の二階にありました。


 窓口で件の貼り紙を見せると、若い職員が「ああ」と気まずそうな顔をしました。


「それですか……」


「あなたの課が出したんですね」


 相馬先輩が単刀直入に聞く。


「はい。ただ、祭り前で混乱してまして」


「質問を変える。これ、何に基づくんです?」


 職員は一瞬詰まりました。


「ええと、駅前広場の適正利用の観点から……」


「それは観点だ。根拠じゃない」


 強い。


 私はちょっと好きです、こういう詰め方。


 若い職員は助けを求めるように奥を見て、やがて係長らしい男性が出てきました。四十代。疲れた顔。でも嫌な人ではなさそうです。


「どうされました」


 片桐事務所の名刺を見せると、係長は少しだけ警戒を深めました。


「その貼り紙ですが」


 私は言いました。


「条例ですか。規則ですか。法令に基づく一律禁止ですか。それとも課の運用ですか」


 係長は、露骨に答えづらそうな顔をしました。


「……厳密には、課内の申し合わせです」


 はい、出ました。


 心の中で机を叩きました。


「申し合わせで、“一切認めない”と市民に告知したんですか」


「いや、今年はトラブル防止のためでして」


「法的根拠なしに?」


 係長の額に汗がにじみます。


「駅前広場は苦情も多くてですね、煙だの匂いだの、見た目が悪いだの」


「それで課として控えてもらおうと考えた、と」


「ええ」


「でも、それは条例上の禁止ですか」


「……ではありません」


 相馬先輩が息を吐きました。


「つまり、法的な一般禁止じゃない」


「はい……」


「なのに、“認めないこととする”と貼った」


「……はい」


 係長、もう少し言い方を考えた方がよかったです。


 いえ、役所はだいたい考えてないからこうなるんですが。


 私はさらに聞きました。


「では、安西さんのような既存の出店者に、個別の説明や聴取は?」


「していません」


「許可制そのものを導入したわけでもなく?」


「そこまでは……」


 ここまでくると、かなり見えます。


 この貼り紙は、条例でも規則でもなく、せいぜい内部方針の外向け雑運用です。


 しかも書き方が強すぎる。


 所長が初めて口を開きました。


「係長。あなた方が混乱防止のために指針を設けたい気持ちは分かる。しかし、法令に基づかない内部方針を、市民に対して絶対的禁止であるかのように掲示するのはまずい」


 係長は唇を引き結びます。


「……しかし、自由にさせると収拾がつきません」


「なら、正しい手順を踏むべきです」


 私は思わず前のめりになりました。


「たとえば、必要な許可や調整の種類を明示するとか、“今年は個別協議が必要”と書くとか。“一切認めない”って書き方は、法令の禁止みたいに見えます」


 係長が、初めて私をちゃんと見ました。


「君、学生さん?」


「見習いです」


「妙に細かいね」


「昨日まで受験生だった気がするので」


「何だそれ」


 それは私も思います。


 結局、その場で全面撤回まではいきませんでした。役所はそんなに素直じゃない。


 でも所長は、静かに逃げ道を作りました。


「では少なくとも、この表現は修正してください」


「修正、ですか」


「ええ。法令に基づく一律禁止ではない以上、誤解を招きます。必要な手続や関係機関との協議が必要である旨を、事実に即して書き換えるべきです」


 係長はしばらく悩み、やがて頷きました。


「……文面は、検討します」


 相馬先輩が横から刺す。


「今日中にです。祭りは待ってくれません」


 圧が強い。頼もしい。


 事務所へ戻ると、安西さんは腕組みのまま待っていました。


「で?」


「団子は、今のままだと即営業とは言えません」


 所長が先に言う。


「ただし、あの貼り紙が“法律だから絶対無理”という話ではありません」


 安西さんの目が鋭く光る。


「じゃあ、戦えるのかい」


「喧嘩は勧めません」


 私は言いました。


「でも、必要な手続を確認して、正しい土俵に引きずり戻すことはできます」


「土俵」


「はい。今の問題は、“何が必要か”じゃなくて、“役所の雰囲気で全部駄目にされている”ことです」


 安西さんは、ふん、と鼻を鳴らしました。


「確かに、あの紙はむかつくね」


「私もです」


「気が合うじゃないか」


 そう言って笑う顔は、最初より少しだけ柔らかくなっていました。


 その後、所長と相馬先輩が必要な窓口を整理し、私は安西さんのこれまでの出店実績や場所、販売形態を聞き取りました。


 すると分かったのは、完全な無秩序ではなかったということです。


商店会との調整は長年されていた

祭りの日の短期出店として慣行化していた

本格的な常設営業ではない

ただし保健衛生面や場所の使用ルールは曖昧だった


 つまり、安西さんは“悪質な無許可営業者”ではなく、昔ながらの慣行の上にいた人だったのです。


 問題はそこへ、役所が雑に“禁止”の札を立てたことでした。


 夕方、市役所から一本の電話が入りました。


 受けたのは私です。


「はい、片桐行政書士事務所です」


『商工観光課の倉田です』


 午前中の係長でした。


『掲示文、差し替えました』


「早いですね」


『早くしないと、明日もっと怒鳴り込まれますから』


 それはそうです。


『表現を、“食品販売を一律に禁止するものではなく、関係機関との協議および必要手続を経て個別に判断する”に修正しました』


「ありがとうございます」


『……君の言うとおり、あれでは法律みたいでした』


 少し意外でした。


 もっと意地を張るかと思っていたのに。


『ただ、出店を全部認めるわけではありませんよ』


「ええ。それは分かっています」


『分かってるならいい』


 そこで電話は切れました。


 私は受話器を置いて、少しだけ息をつきました。


 完全勝利、ではありません。


 安西さんが明日すぐ駅前で団子を焼けるわけでもない。


 必要な確認はまだある。

 衛生面のこと。

 場所の使用のこと。

 関係する窓口との調整だって残っています。


 でも、少なくとも一つ、剥がれました。


 “役所がそう決めたから絶対だ”


 という、あの妙に分厚い膜が。


 最初に貼り紙を見たときは、一枚の紙が駅前全部を封鎖しているように見えました。けれど中身を尋ねてみれば、その「絶対」は少しずつほどけていった。


 誰が決めたのか。

 何に基づいているのか。

 本当に一律禁止なのか。

 それとも、役所の中でそう扱うことにしていただけなのか。


 たったそれだけ確認しただけで、「駄目です」だった話が、「では、何が必要ですか」という話に変わったのです。


 法律って、もしかして。答えを出す前に、質問を正しい形に直すものなのかもしれません。


 帰り際、安西さんが事務所に小さな包みを置いていきました。


「今日はまだ売れないから、試作の団子だよ」


「ありがとうございます」


「こはるちゃん」


「はい」


「あんた、妙な子だね」


「よく言われます」


「でもいいね。“駄目”の中身を聞く子は」


 その言葉は、ちょっと嬉しかった。


「昔はさ」


 安西さんは包みの紐を結び直しながら言いました。


「役所の人に駄目だって言われたら、それで終わりだと思ってたんだよ」


「今も、そう思う人は多いと思います」


「でも今日みたいに、聞いてみりゃ違うこともあるんだねえ」


「あります」


「じゃあ、今度から聞くよ」


 安西さんは顎を上げました。


「何で駄目なんですか、って」


 私は思わず笑いました。


「たぶん、嫌がられますよ」


「知ったことかい」


 強い。


 この人、たぶん私たちがいなくてもそこそこ戦えたんじゃないでしょうか。


 でも。


 戦える人ばかりじゃありません。


 窓口で「決まりです」と言われれば、それ以上聞けない人もいる。


 壁に「一切認めない」と貼られていれば、自分にはどうしようもないと思って帰る人もいる。


 言葉が強ければ強いほど、その後ろに根拠があるように見える。それが役所の名前で出ていれば、なおさらです。


 安西さんが帰ったあと、相馬先輩が包みを開けました。


「お、みたらしか」


「まだ私、見てもいませんけど」


「早い者勝ちだ」


「事務所における団子の配分ルール、雑すぎません?」


「嫌なら所長に申し立てろ」


「何をですか」


 奥で新聞を読んでいた所長が、顔も上げずに言いました。


「却下」


「まだ申し立ててません」


「結論は同じだ」


「横暴!」


 相馬先輩が笑いました。


「ほら。『駄目です』って言われたぞ」


「所長の場合は根拠を聞いても無駄そうですね」


「聞いてみろよ」


 私は所長を見ました。


「所長。私が団子を二本食べてはいけない法的根拠をお願いします」


「残りが三本しかない」


「ものすごく合理的だった」


「一人一本だ」


 相馬先輩がすでに二本目へ手を伸ばしていました。


「先輩?」


「俺は先輩だから二本」


「そのルールこそ根拠を出してください!」


 結局、団子はじゃんけんになりました。


 役所より迅速。手続も透明。


 ただし私は負けました。


 行政手続以前に、じゃんけん手続で救済されませんでした。


 少しして、事務所が静かになります。


 窓の外では、昭和の町が夕暮れに沈み始めていました。


 商店街の看板に灯りがつき、遠くから自転車のベルが聞こえる。


 机の端には、今日一日ほとんど開けなかった私のノートがありました。


 表紙を開く。白いページ。


 書こうとして、私はペンを止めました。


 今日覚えたことは、たぶん一行では済みません。


 あの貼り紙は、なぜ人を直接縛ることができなかったのか。条例や規則だったらどう違うのか。通達や内部の申し合わせは、役所の中ではどんな意味を持つのか。


 そして、役所の内部ルールが現実には市民へ影響するのに、それでも法律と同じではないというのは、どういうことなのか。


 考え始めると、頭の中に疑問符が増えていきます。


「何だ。書かないのか」


 相馬先輩が言いました。


「今書くと、たぶん間違えます」


「珍しく慎重だな」


「今日は現場で分かった気になっただけなので」


 これは本当にそうでした。


 私は今日、


 “役所の決まりには種類がある”


 ということだけは、身体で分かりました。


 でも、その境目をきちんと言葉にできるほど理解したわけじゃない。昨日までテキストの中で眠っていた単語が、今日は急に立ち上がった。ただ、それぞれが何者なのかまでは、まだちゃんと顔を見ていません。


 所長が新聞をたたみました。


「それでいい」


「え?」


「分かった気になるより、疑問を残せ」


 私はノートの白いページを見ました。


「じゃあ、明日まとめます」


「今日のうちにしろ」


「どっちですか!」


 相馬先輩が吹き出します。


「所長、厳しいな」


「忘れる前に整理しろ」


 なるほど。そこは正論です。私はノートの一番上に、題名だけを書きました。


 ――行政立法。


 そして、その下は空けておきました。今日のところは、それで十分です。


 役所の貼り紙一枚。


 団子屋のおばあさん一人。


 たったそれだけの出来事なのに、教科書の中で眠っていた言葉が、急にこちらを向きました。


 法規命令。

 行政規則。

 訓令。

 通達。


 昨夜までなら、見ただけで眠くなった並びです。

 でも今は少し違います。


 あの「一切認めない」は、いったい何だったのか。


どうして私たちは、あの紙を法律と同じようには扱わなかったのか。


 そこをちゃんと説明できるようになれば、今日のことが本当に自分の知識になる気がしました。


 私はノートを閉じました。明日、もう一度開けばいい。そのときは、団子の匂いだけじゃなく、今日の「駄目です」の正体まで、きちんと言葉にしてみよう。


 窓の外では、駅前の灯りが一つずつ点いていました。


 役所の紙は、人を簡単に止めます。でも、その紙の後ろ側を覗いてみれば、そこには必ず、


 誰が決めたのか。

 何に基づくのか。

 本当に人を縛るものなのか。


 そういう問いが隠れています。


 今日、私が覚えたのは答えではありません。


 たぶん、「決まりです」と言われたところから、行政法は始まる。


 それだけでした。


 机の上では、最後の一本の団子をめぐって、相馬先輩がこちらを警戒しています。


「先輩」


「何だ」


「それ、半分にしません?」


「嫌だ」


「根拠は?」


「俺が先に取った」


「雑!」


 どうやらこちらの争いには、まだ救済の余地がありそうです。

 以下に私の作品へのリンク貼ってます。是非、手に取って頂ければと思います。また、ついでに評価ブックマーク頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こはる行政書士見習帖 〜 昭和に転生して許認可に振り回されると試験知識が骨身にしみます 〜
宅建見習い栞の人情事件簿 〜転生したら昭和の不動産屋だったので、巻き込まれているうちに宅建過去問が解けるようになりました〜
名探偵 藤原彰子の宮中事件簿 ――『転生皇后 藤原彰子』スピンオフ外伝
転生皇后 藤原彰子 〜 欠けることのない望月の世は私が創る 〜
新訳 太閤記 ~ 転生 豊臣秀吉、未来を識る僕は史実の道を静かに歩む 〜
新訳 三河物語 〜 徳川家康と家臣団の戦国サバイバル 〜 with 逆行転生犬シロ
新訳 北条五代記 〜 近所の隠居が書いたメモがガチの戦記だった件〜
美しき女帝 北条政子 〜 婚約破棄どころか強制結婚!? 平家のエリートに嫁がされそうになったので、豪雨の山を越えて愛する無職の元へ走ってみた 〜
新訳 曽我物語 〜 復讐系なろうの原点、父を殺された兄弟の二十年の復讐譚〜
箴言・格言・名言集 〜頑張るあなたへ、今日を乗り越えるための一言〜
拝啓、愛読者様。― 想いを少しだけ 謹呈 条文小説
六道輪廻抄 〜 戦国転生記 〜
コミックス「六道輪廻抄〜戦国転生記〜」
動画生成AIが作成したイメージビデオ
動画生成AIが作成したなろう小説イメージビデオ
動画生成AIが作成したなろう小説イメージビデオ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。