Ⅲ 聖女の失踪
2巻も7月20日発売! 予約受付中!
わたしは紅茶を口に含む。シアのお菓子は……紅茶ともとても良く合う。
「これ、実は手作りなんです」
「そうなの!?」
「はい、皆さんに振る舞うつもりだったんですが、ちょうどタイミングが良かったです」
にっこりとシアは笑った。一方のフィルは「ずるい……」とつぶやいている。
シアはこんなに可愛くて、優しくて。そして、美味しいお茶を淹れることもできて、お菓子まで手作りで用意できる。
完璧だなあ、とわたしはため息をついた。
前回の人生で、みんながシアのことを好きになったのもわかる気がする。
みんなはシアを必要として、わたしを必要としなかった。
なら、今回の人生では……どうだろう?
もしかしたら……また、同じことになるんじゃ……ないだろうか?
時間が経てば、みんなシアの魅力に気づいて、フィルもアルフォンソ様も他のみんなも、シアのもとへと行ってしまって。
そんなことが起きたら、そのとき、わたしは……。
「どうしたんですか? クレア様?」
心配そうに、シアがわたしの瞳を見つめていた。
わたしは誤魔化すように微笑みを浮かべた。
「なんでもないの」
いま考えていたことをシアに言うわけにはいかない。
シアは、わたしと違って、前回の人生からやり直しているわけじゃないんだから。
結局、一日が終わったとき、弟妹対決はシアの勝利で終わった。
シアの行動は遠慮があるように見えて、常に素早く、フィルの一歩先を行っていた。
そういうところが、セレナさんやアルフォンソ様には印象的だったらしい。
審査員三人の多数決で決めたから、シアの勝利となったわけだ。
レオンはフィルに投票したみたいだけれど、これはフィルに対する友情というか、親しさからかもしれない。
フィルは不満そうに、残念そうにしていた。
「……お姉ちゃんと一日お出かけする権利、手に入れたかったな……」
「そんなのなくても、フィルと一緒ならいつでもお出かけするよ?」
「本当?」
「わたしからお願いしたいぐらいだもの」
学園の授業期間は忙しかったし、男子寮と女子寮にわかれていたせいで、フィルと一緒に過ごす時間を十分にとれなかった。
だから、休暇で別荘にいるうちは目一杯、フィルと楽しむつもりだった。
もちろん、シアとも。
シアがやってきて、嬉しそうに「勝ちました!」と報告する。
わたしは微笑んだ。
「良かったね」
「はい。でも、本当に勝ったとは言えないかもしれませんね」
「どうして?」
「アリスさんが審査員をクレア様自身にしなかったのがどうしてかわかりますか?」
質問に質問で、シアが返す。
わたしは答に詰まった。
たしかに……わたしの理想の弟妹を決めるためにわたしに奉仕するというのなら、わたしが審査員になって判断するのが一番いいと思う。
そうではなく、アルフォンソ様たちに審査員をしたのは……。
「もしクレア様が審査員だったら、フィル様の圧勝になってしまいます。だって、クレア様はフィル様のことが大事なんですから」
わたしは返事に困った。けど、たしかにそうだ。シアのことだって、大事じゃないわけではない。
けど、わたしはいつもフィルを優先して行動してきた。
シアは明るい笑顔を作った。
「クレア様を困らせるつもりはなかったんです。いつか本当に妹の方が良いって証明しますから! そのまえに……」
「そのまえに?」
「弟妹対決の賞品の……デート権、使ってもいいですか? 一日、二人で一緒に街に遊びに行きたいなって」
「もちろん! シアと一緒なら、とっても楽しそう」
わたしは心からそう言った。フィルは羨ましそうにわたしたちを見つめ、シアはくすっと笑った。
「私も……すごく楽しみです!」
シアは、思わずみとれてしまうぐらい、満面の笑みを浮かべた。
このとき、まだ暗い雲の影は、一つもなかった。
けど、わたしとシアは一緒に街に遊びには行けなくなった。
次の日。
シアは行方不明になった。
二度目になりますが……2巻は7月20日発売。カバーイラストもとても可愛いのでぜひご確認ください。予約受付中です!
また、追放×悪役令嬢の新作です↓
『宮廷を追放された最強ヒーラーは、五人の悪役令嬢を破滅から救う ~戦争に負けそうだから戻ってこいと言われても、もう遅い。俺は助けた彼女たちと幸せになります~』
フィルのような(?)義妹ヒロインも出てきます! よかったらお読みください!
https://ncode.syosetu.com/n2066gz/







