【悲報】子供の産めない女の私が、堅物可愛い幼馴染軍人に媚薬を盛った結果。。。
わたしは、ぼんやりと天井を眺めた。
「困ったなあ……」
誰にも、わたしの言葉は届かない。
今日も一人、わたしは何にもすることがない。
1897年(明治30年)6月。
日清戦争で勝利してから数年。日本は急速に工業化と都市化が進んでいた。
大国へと向かいつつある日本の光と影。そして、ロシアの脅威。
まあ、でも、そんなことは、わたしには直接の関係はない。
18歳の少女である、わたし……ただの岩瀬美雨には。
わたしは名門旗本、岩瀬家の生まれ。旗本、というのは、つまり、江戸時代なら、徳川将軍家に直接お仕えする、名誉ある存在だ。
岩瀬家はそのなかでも大身。有力な家柄。
ついでに、わたしは超美人&頭も良い。
自分で言うのも変だが、事実なのだから仕方ない。
この春、わたしは高等女学校を卒業した。
結婚相手もよりどりみどり。父のすすめで、東京帝大卒の外交官(しかも大名華族の次男)と婚約した。
本当なら、エリート外交官の妻として、花の外交官夫人生活!
憧れの西洋にも行けるはずだったのに!
卒業直後のある日。わたしは医者に、子供が産めない婦人病だと診断された。
その事実が、わたしの運命を暗転させた。
つまり、婚約破棄というわけで。
「ああっ、もうっ腹が立つ!」
ばしっと壁を叩くと、弟の朝広さんが迷惑そうな顔で部屋に入ってきた。
朝広さんはひょろっとした少年だ。来年、一高……最も難しい官立第一高等学校を受験するということで、勉強に励んでいる。
秀才なんだけど、ちょっと頼りない。
ごろごろしているわたしを、朝広さんは呆れたように見た。
「姉上~、静かにしてください」
「どうせ朝広さんにはわからないわ。婚約者に捨てられた、わたしの悲しみは……」
よよ、とわたしが泣き真似をしてみせると、朝広さんはうさんくさそうにわたしを見た。
「気の毒だとは思いますよ。しかし、姉上は本心から悲しんでいるようには見えないのですが……」
「あら、そんなことないわ。このままだと、わたしは厄介な家事手伝い。朝広さんにも迷惑をかけるかも」
「まあ、それならそれで、良いのです。あ、姉上のことは、僕が一生、責任を持って面倒を見ますから」
少し照れたように、朝広さんは言う。
口ではいろいろ言っても、優しい子なのだ。
「ありがとう、朝広さん。でも、子供の産めない女を、結婚させてくれる家はないかしらねえ」
「姉上のお眼鏡にかなうような、男だとなかなか難しいかと……」
家のために、世継ぎを産む。
やはり女に求められる一番大事な役割は、それだ。
七去、という言葉がある。女の一般的な離縁理由だ。嫉妬深いとか、おしゃべりだとか。
でも、他の欠点はなんとでもなる。ただ、七去の一つ、子供が産めないことはどうしようもない。
どんなに気立てが良くても、美人でも、子供が産めなければ、妻失格だ。
うーん、とわたしと朝広さんは頭を悩ませた。
朝広さんがぽんと手を打つ。
「そういえば、ほら、慎太郎さんって覚えていますか?」
「もちろん! 昔近所に住んでいた慎太郎さんよね。かっこよかった。それに、優しかったわ」
一木慎太郎さんは、わたしの幼馴染だ。歳は四つほど上。
わたしたちの屋敷のあるのは、東京市下谷区谷中。そこから、すぐ近くの本郷区根津の長屋に、慎太郎さんは住んでいた。
岩瀬家は大身旗本で、一木家は御家人最下層。だから、身分にはかなり違いがある。
とはいえ、そんな身分を気にするのは、うちの父とか、保守的な人間だけだ。
今は明治の世。四民平等なのだから。
わたしは慎太郎さんによく懐いていた。慎太郎さんはとても真面目な性格で、年下の女の子のわたしにも、一々真剣に応対した。
木に登ってセミを取ってほしいと頼めば、取ってきてくれた。
地球は平面だと議論をふっかけても、理路整然と地球は球体だと答えてくれた。
朝広さんが「姉上の相手をして、疲れないのは僕と慎太郎さんぐらいのものです」なんてつぶやいている。
失礼な。
朝広さんは咳払いをする。
「まあ、慎太郎さんは、ちょっと愛想がないのが、欠点ですが」
「殿方はそのぐらいがいいんじゃない?」
「そういうものですかねえ」
「それで、その慎太郎さんがどうしたの?」
「ほら、彼は海軍兵学校に行ったでしょう? 少尉候補生としての訓練を終えて、今では立派な少尉殿。士官ということですね」
海軍兵学校は、海軍軍人を養成するエリート学校だ。全寮制だから、しばらく実家を離れていた。
そして、そこを卒業した慎太郎さんは、少尉。つまり兵を率い、指揮する偉い立場なのだという。
ほお、とわたしは身を乗り出す。
「いいことを聞いたわ」
「何をするつもりなんです?」
「今は明治の世。婦人も少しぐらい、淫乱なほうが殿方も喜ぶと思うのよね」
「いや、どこ情報ですかそれ」
「婦人道徳の本に書いてあったわ」
「鵜呑みにしないでくださいよ。そんなことはないはず……」
朝広さんの言葉を無視し、わたしは手近な書籍をめくる。
そう、たしか。
あった。媚薬の作り方だ。
薄荷酒、ミントの緑色の酒。そこに様々な漢方薬を混ぜる。
朝広さんが心配したように言う。
「あまり無理をしないでくださいよ、姉上~」
「ええ、わかっているわ!」
「全然、わかっていないと思うなあ……」
☆
いくら明治の世になっても、女性が男性に会うのは、それなりに難しい。
いや、武士以外の町人、農民なら、そんなことはない。むしろ農村では若者組を作って、そのなかで「自由恋愛」で結婚相手を決めるとか。
しかし、わたしは仮にも名門・岩瀬家の娘。
軽率な行動は、本来なら慎むべきだ。
「でも、どうせ失うものはない身だし」
結婚できないことは、確実だ。子供が産めないわたしに、未来はない。
女子高等師範学校に行き、教員に行くというのも悪くないけれど。あそこはとても倍率が高い。
それに、こう見えて、わたしも一度ぐらい殿方に愛されてみたいのだ。
ということで、一木慎太郎さんを標的にすることにした。
彼はとても真面目な性格だ。昔と変わっていないなら。
だから、一度抱いてしまった女を娶ろうとするかもしれない。
騙し討ちのようで気が引けるけど……。
そこまでいかなくても、からかってみるのは面白そうだ
それに……。わたしは慎太郎さんのことを、憎からず思っていた。
ほんのりと頬が熱くなる。そう、かっこいいなと思っていたのだ。
数年前はわかっていなかったけど。それは異性として、好意を持っているということで。
わたしは首を横に振る。深く考えるのはやめよう。
恥ずかしくなってくるから。
一木家から少し離れた通りの物陰で、わたしは待ち伏せをしていた。
ばったり、遭遇したフリを装うためにね!
銘仙の華やかな着物を身にまとい、可能な限りのお洒落をして。
わたしはこの場に望んでいた。
これでも容姿に自身はある。美人写真コンテストに勝手に応募されて、入選してしまうぐらいには……!
それにしても慎太郎さん、なかなか、帰ってこない……。
きょろきょろとあたりを見回す。
わたし、じっとしているのが苦手なのよね。子供が産めても、お転婆なのは玉に瑕だったかも。
おしとやかではないから……。でも、慎太郎さんなら、こんなわたしでも受け入れてくれるだろうか……。
「どうされましたか? どなたかを待っている?」
「ひゃっ」
後ろから低い声がして、わたしは驚く。振り返ると、背の高い男の人がいた。
無表情に、彼がわたしを見下ろす。
その顔を、わたしはよく知っていた。
「慎太郎さん!」
「はい、一木慎太郎です。そういうあなたは、岩瀬のお嬢様ですね」
覚えていてくれたんだ……。数年ぶりなのに。
わたしは顔が熱くなるのを感じる。
「お嬢様、ではなく、名前で呼んでくださらないと」
「では、美雨様。こんなところを、一人で歩かれるのは、感心しません。危険ですからね。美雨様のように美しい方なら、なおさらです」
「あら、美しいだなんて、そんな……」
「……何か誤解されていませんか?」
「慎太郎さんが、わたしを美しいと思ってくださっていると、理解しました」
「いや、間違ってはいないのですが……。それで、どなたか、お待ちですか?」
わたしは思案した。
後ろから見つかった時点で、ばったり遭遇作戦は失敗した。どう見ても、わたしは不審者だったし。
腹を括る必要がある。
「慎太郎さんをお待ちしていました……」
「僕をですか? なぜ?」
「久々にこちらに戻っていらっしゃっていると聞いて。いても立ってもいられなくなったのです。お目にかかりたいな、と」
わたしは身を乗り出して、言う。
積極的に訴えてみた。はしたない、かな……。
だが、慎太郎さんの反応は薄かった。
「そうですか、それはありがとうございます」
もともと表情の変化の乏しい人だ。朝広さんの言うように、愛想のない人ではある。
とはいえ、わたしはそこは気にならない。だからこそ、子供の頃は慎太郎さんに懐いていたのだし。
慎太郎さんはわたしをちらりと見る。
この仕草は……。
「何か迷っているのですか?」
「よくおわかりですね」
「それはもう、わたしは慎太郎さんの幼馴染ですから!」
えへんと胸を張ってみせる。
慎太郎さんがわずかに頬を緩める。
「せっかくお越しになったので、あがっていただこうかと思ったのですが……」
「ぜひ!」
「ですが、こんな貧相なあばら家ですし。岩瀬のお嬢様をお招きするには、ふさわしくないなと」
「わたし、そんなこと気にしませんわ。住めば都と申しますし」
住んでもよい、むしろ住みたい!と訴えてみる。たしかに岩瀬の屋敷に比べれば、この御家人の長屋は立派とはいえない。
だけど、そんなことどうでもいい。慎太郎さんがいれば。
だが、慎太郎さんは肩をすくめた。
「それにですよ。母が亡くなって以来、この家は無人です。ええとですね、つまり……」
「わたしがお邪魔すると、慎太郎さんと二人きりになってしまいますね」
「そう、それが問題です。美雨様でしたら良い方もいらっしゃるでしょう。いえ、すでにご結婚されていますでしょうか」
当然、男の家に女が一人で上がりこんだなんて言ったら、武家社会では問題視される。
わたしが既婚者なら、なおさらだ。まあ、実際、それは建前で、現実にはもっといい加減だったりするけれど……。
わたしはふふっと笑う。
「わたし、結婚していませんわ。それに、婚約者もいません。婚約はこないだ破談になりましたから」
慎太郎さんが眉を少し上げる。わずかな反応だが、これは驚いているのだろう。
「申し訳ありません。不躾なことを聞いてしまいました」
「ですから、何も気にすることはないのですよ。その……慎太郎さんのことですから、良い方が家にいらっしゃるのかもしれませんけど」
すでに妻とか、同棲中の恋人がいたら、さすがにわたしも引き下がるつもりだった。
略奪愛に挑む勇気はない。これでも淑女なので、男性経験がわたしはないし。
ただ、慎太郎さんはこないだまで練習航海で海の上。そのまえは全寮制の学校。まだ、恋人とかはいないと睨んでいた。
わたしの予想は当たった。
「誰もいませんよ。僕はあまり女性に人気がないもので」
それはないだろう、とわたしは思う。
これだけかっこよくて、背が高くて、優しい人なのに。
まあ、誤解されやすいということはあるかもしれない。
「美雨様のような方がいれば、良かったのですが」
慎太郎さんが小声でつぶやく。
わたしは目を見開く。
それって……わたしが妻だったらいいのに、ってこと!?
「それはわたしが妻だったら良いということですか!?」
しまった。全部口に出してしまった。
そそっかしいわたしのクセだ。
慎太郎さんは目を軽く泳がせる。わたし以外だったら気付けないわずかな変化。だけど、照れている。
「あくまで、たとえばのお話です。美雨様には、僕は身分では釣り合いませんから」
「華の海軍軍人ではありませんか。大日本帝国が誇るべき存在です!」
「ええ、まあ、そうおっしゃっていただけるのは嬉しいですが……」
「お邪魔しますね」
わたしは先んじて、慎太郎さんの家に入ってしまう。
もともと、慎太郎さんは母、一木鮎さんと二人暮らしだったとか。一木鮎さんはすごく美人で、近くんの家族、根津徳川伯爵の愛人だったという噂もある。
ただ、その鮎さんも、もう死去している。
「鮎さんにもわたしは可愛がっていただいていましたから。だから、まずは鮎さんの位牌にお線香を上げてもよろしいですか?」
こうすることで、慎太郎さんの好感度を上げようという打算もある。だけど、鮎さんに可愛がってもらっていたのも、本当のこと。
慎太郎さんはこくりとうなずく。
「母も喜ぶでしょう」
わたしは鮎さんの位牌のある部屋に行き、頭を下げた。
息子さんはわたしが幸せにしますからね……! いや、気が早すぎるか。
ひとしきり、鮎さんの供養をすると、わたしは慎太郎さんに向き合った。
「しばらくはこちらの家にいらっしゃるのですか?」
「いえ、数日後には、また横須賀の軍港へと向かいます。この家も近々、引き払わないといけないと」
なるほど。
時間がない。やっぱり、秘策を使うべきかも……。
慎太郎さんが頬を緩める。
「それにしても、懐かしいですね。美雨様はお転婆で、よくうちに来て、いろいろ無理難題をおっしゃっていきました」
「あら、そうかしら」
「ええ、蓬莱の玉の枝を取ってこいというおっしゃりようでしたよ」
慎太郎さんが笑みを浮かべたので、わたしは驚く。
こんなにわかりやすく表情が変わるのは初めてだ。
わたしは咳払いをする。
「い、今はわたしはおしとやかになっていますよ」
「変わっていないように思えますが」
無慈悲な言葉が胸に刺さる。
まあ、うん、事実なので……。
けれど、慎太郎さんは優しい目でわたしを見た。
「そういう御婦人のほうが、僕にとっては好ましいですけどね」
直球でそんなふうに言われて、わたしはドキドキする。
それにしても、この人、美形だなあ……。
「では、慎太郎さんの好みに合わせて、もっとお転婆になりますね!」
「いえ、今ぐらいでちょうどいいと思いますが」
「これ以上、お転婆になると振り回しすぎて、死んじゃうかしら?」
「それはそれで、楽しそうですね」
慎太郎さんは目を瞬かせる。
お転婆なほうが良い、と言いましたよね?
それなら、本当に実行してみよう。
わたしは風呂敷からガラス瓶を取り出した。
慎太郎さんが不思議そうに言う。
「それは?」
「交流のある侯爵家からいただいた、薄荷酒なのだそうです。なんでも舶来物で、とても美味しいとか! いかがですか?」
自然と手土産という体裁で渡すが、これは媚薬である。
惚れ薬、とも。
さて、効果のほどは……。
慎太郎さんは首をかしげる。
「では、せっかくなのでいただきましょう」
よし!
狙い通り。
ただ、次の言葉はわたしの予想外だった。
「美雨様もお飲みになっては?」
「え!? わたしは一応、女ですし、その……」
一応、お酒を飲むことに年齢制限はない。海外ではそういう国もあるそうだけど……。
それより、一応、良家の女は人前で酒は飲まないことになっている。
飲んだとしても、一口だけ、とか。
ただ、慎太郎さんは言う。
「貴重な海外の酒なら、せっかくなら、美雨様も味わってみていてはいかがでしょうか。ここには僕しかいませんし」
「そ、それなら……」
台所から、お猪口を慎太郎さんが用意する。
その目が少し笑っていた。
わたしは緊張して、お酒を注ぐ。
「さ、さあ、どうぞ……」
「美雨様もお飲みになってくださいね?」
これ、媚薬なのよね。
わたしも飲んでも平気かしら……。
ええい、ままよ。
お転婆で知られているのだから、この程度、乗り切るしかない。
緑色の液体を、わたしはぐいと飲んだ。
不思議に甘い味だ。自分で作っておいて、あれだけど……。
しばらくして、身体が熱くなるのを感じる。
これ、本当に効果があったりして……。
慎太郎さんが、話をわたしに振る。
「それにしても、美雨様の婚約者は見る目がありませんね。美雨様を袖にするなど……」
「仕方ないのです。わたしは子供を産めないのですから」
子供を産めない。そのことを後から言うのは、西洋風に言うと、「フェア」ではない。
なので、先に言うことにした。
騙し討ちは、やっぱり良くない。
これで、慎太郎さんはどう反応するだろうか。
慎太郎さんはゆっくりと首を横に振った。それから、薄荷酒、というか媚薬をさらにあおる。
「一度、結婚を誓いあった仲なのに、美雨様に責めのないことで破談というのは、やはり理不尽なものです。今は江戸の世ではないですし」
「ですけど、慎太郎さんだって、相手が子供を産めないのであれば、お困りでしょう? 亡き鮎さんにも申し訳ないでしょうし」
「どうでしょうか。母は変わり者でしたから。僕自身についていえば、僕は根津のキリスト教会にも通っていましたから、儒教的な考えに重きは置きません。つまり、子孫繁栄は絶対に必要なことだとも思いません」
「だとしても、やっぱり、自分の子供は男の人は欲しいものではないかしら?」
「僕は海軍軍人ですから。数年後にはロシアとの戦争も始まり、そこで死ぬかも知れません。そうなったとき、子供がいては、かえって困ると思うのです。それは未亡人となる、妻も同じことですが」
「それなら、わたしはぴったりですね。だって、わたしは子供を産めないし、他の家に嫁げませんから……。未亡人になったって気にしません。今、この瞬間、慎太郎さんに愛していただけるのなら」
とんでもないことを、わたしは勢いで口走る。
これも媚薬のせいだろうか。
頭がぼんやりとする。
慎太郎さんはわたしの肩にそっと手を触れる。
「慎太郎さん?」
「美雨様……。このお酒、媚薬なのでしょう?」
「え? そ、それは……!?」
「あまりにもあからさまですよ。僕だって、海軍軍人。西洋の知識はそれなりにあります。新語辞典に載るぐらいには、薄荷酒だって媚薬として知られているんですよ」
し、しまった……。
うかつだった。そんなに有名な話だなんて。
「それに、男の家に二人きりであがりこむなど、やはり淑女のすることではありませんね」
慎太郎さんが淡々というが、これはからかっているのだ。
わたしは頬を膨らませる。
「わかっていて家に上げたのでしょう? それに、媚薬だと分かっていて、そのお酒もお飲みになったわけですし」
「ええ。すべてわかった上ですよ」
「あっ……」
わたしは慎太郎さんに押し倒されていた。
自分の顔は、たぶん真っ赤になっている。心臓が壊れそうなほど、ドキドキしている。
「し、慎太郎さん……」
「昔から、美雨様のことを僕は気に入っていたのです。そう、妻として迎えたいと思うぐらいには」
「本当ですか!?」
「ええ。ですが、美雨様と僕では家柄が釣り合いません。だから、諦めていたのです」
ところが、そんなとき、私がこの家を訪れた。
しかも、婚約を破棄された、と告げて。
そのうえ、媚薬まで盛ったのだから。
慎太郎さんからしてみれば、絶好の機会だっただろう。
つまり、わたし……。
これから、そういうことをされるってことよね。
「え、えっと、心の準備が……」
「そのための媚薬でしょう。責任を取ってくださいね」
「わ、わたし、慎太郎さんがこんなに男らしい方だなんて、知りませんでした。幼馴染なのに、知らないことも多いんですね」
「これから知っていけば良いのです。お互い。男らしいのはお嫌いですか?」
わたしは不敵ににやりと笑う。
「嫌いじゃないわ。だって、わたし、淑女じゃないもの……あっ、慎太郎さんっ♡」
こうして、わたしは慎太郎さんの「女」になった。
そう、きっと遠からず、妻にもなる。
この後、実はわたしが子供を産める体質だと判明して、元の婚約者が押しかけてきて、一騒動起きるのは別の話。
【作者から】
少しでも、
「面白い!」
「続きが気になる!」
と思っていただけましたら、
広告の下↓にある【☆☆☆☆☆】をタップして、【★★★★★】に染めてくださると嬉しいです。何卒よろしくお願いいたします。





