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やり直し悪役令嬢は、幼い弟(天使)を溺愛します 2023/7/15コミックス2️⃣巻発売!  作者: 軽井広@年下お姫様に甘えられる大正ロマン結婚生活1巻が予約受付中
第四章 新たな出会い

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IX 襲撃

書籍、昨日発売です!

「フィル、楽しかった?」


「うん!」


 バシリオ先生の研究室を去り、わたしとフィルは、人気のない廊下を二人きりで歩いていた。

 聡明で、古い時代に関心のあるフィルのことを、バシリオ先生は気に入ったようだった。

 人見知りのフィルも、バシリオ先生とは打ち解けたようだし。


 なんやかんやいっても、バシリオ先生は有力な王族の息子だ。

 フィルと親しくなっておいてもらえば、フィルの未来に役立つこともあるかもしれない。

 

 フィルをバシリオ先生に会わせたのには、将来を見据えた狙いもあった。


 こういう打算を、前回の人生では、わたしは自分のために使った。立派な王妃になろうとして。

 今は……すべてはフィルのためだ。

 フィルの幸せのためなら、わたしは何だって利用する。わたしはフィルの最高の姉になりたいのだから。


 まあ、単純に、フィルの喜ぶ姿が見られるだけでも、嬉しいのだけれど。

 バシリオ先生の研究室で見たものについて、フィルは頬を上気させて、嬉しそうにわたしに話してくれた。


 そんなフィルの顔を見られるだけで、わたしにはご褒美だ。


 あとは思わぬ収穫もあった。

 

「夜の魔女の瞳、がお姉ちゃんは気になっているんだよね?」


 フィルの言葉にわたしはうなずく。

 アルフォンソ様にも相談しに行ってみよう。預言についての知識もあるはずだし。


 わたしがそう言うと、フィルはうなずいて、そして、ちょっと頬を膨らませた。


「やっぱり……王太子殿下のことを信頼しているんだね」


「そう……かな?」


 アルフォンソ様は、前回の人生で、わたしを裏切った張本人だ。ただ……今回はまだそんなことは起きていない。勝手に監禁したのも、わたしのことを思ってのことだった。

 だから、少なくとも、それほど悪く思ってはいない。

 

 フィルはわたしを見つめる


「そうだよね。殿下は……お姉ちゃんの婚約者だもの」


「フィルは、アルフォンソ様のことが信頼できない?」


「そんなことないよ。でも、そういうことじゃなくて……お姉ちゃんは……いつか殿下と結婚して、ぼくのもとからいなくなっちゃうんだな、って思って……」


 フィルは消え入るような声で言った。

 たしかに、わたしがアルフォンソ様と結婚したら、フィルと毎日会ったりすることはできなくなってしまう。


 わたしは王宮に住み、フィルは公爵領に戻ることになるのだから。

 それは嫌だけど……でも、そんなのは先の話だ。だいたい、前回の人生みたいに、アルフォンソ様との婚約だって、破棄されてしまうに違いない。


 それより、フィルがヤキモチを焼いてくれるのが嬉しい。その不安そうな表情も、赤く染まる頬も、とても可愛かった。

 わたしは微笑んだ。


「大丈夫。わたしはフィルのもとからいなくなったりしないから」


「本当?」


「ええ。アルフォンソ様よりも、今のわたしはフィルの方が大事だし」


「……それ、殿下には絶対に言っちゃダメだよ?」


 とフィルは小声で言い、でも、嬉しそうな笑顔を浮かべた。


 わたしは思わずフィルを抱きしめたくなり……そのとき、また、わたしは視線を感じた。

 誰かがわたしを見つめている視線。しかも……好意的な目じゃない。


 しかも……さっきよりもずっと近くだ。

 フィルも誰かがいる気配に気づいたようだった。


「……お姉ちゃん」


 フィルがぎゅっとわたしの腕にしがみつく。

 いったい……誰が、何の目的で、わたしをつけているのだろう?


 その答えはすぐにわかった。

 物陰から一人の男子生徒が姿を現したからだ。


「あなたは……!」


「このあいだは世話になりましたね」


 そこにいたのは……このあいだの決闘で戦ったカルメロだった。

 黒髪に褐色の肌。獰猛な黒い瞳。

 学園の標準服姿で、そして、腰に木剣をぶら下げている。


 彼は残忍そうな笑みを浮かべ、そこに立っていた。

 

「何の用?」


 わたしはフィルをかばうように前へ進み出て、そして、カルメロを睨みつける

 こいつが、視線の正体だったんだ。


 勝負で負けた相手を、じっと陰から見ているなんて、陰湿だ。


 カルメロは笑みを深くする。

 

「恥をかかされた礼をしに来たわけですよ」


「へえ、仕返しってわけ? 情けないのね」


 カルメロは急に真顔になった。

 そして、わたしを鋭く睨みつける。カルメロは木剣を構えた。


「剣を持っていればこそ、あなたはそれなりに強いが……今は素手ってわけですからね」


「まさか……」


「まあ、手加減はしますが、ちょっと痛い目を見てもらうぜ」


 わたしはすうっと背中が寒くなるのを感じた。


 ここには誰もいない。校舎のなかでも薄暗くて、ほとんど人も来ない。

 そして、わたしもフィルも武器を持っていない。

 剣を持ってすらなんとか勝てた相手に、素手で戦うなんて……無理だ。


「恥ずかしくないの!? 武器を持っていない相手を痛めつけようとするなんて」


「これは私の本意じゃありません。騎士道精神には反するのですが……まあ、しかし、私はそこまで高潔な性格でもないのでね」


 ということは、カルメロは、誰かの指示で動いているんだろうか?

 いや、今は……ともかく、この場をなんとか切り抜けないと……。


「わたしやフィルに怪我をさせたら、ただじゃ済まないのは、わかっているでしょう?」


 暗にわたしは王太子のアルフォンソ様のことをほのめかした。けれど、カルメロは一笑し、黙って剣を振り上げた。

 サグレス王子が背後にいる以上、怖くない、ということなんだと思うけど……。

 これも、サグレス王子の命令? 

 でも、こんな卑劣で短絡的な手段を取るような人には、サグレス王子は見えなかった。


 わたしは身構えた。初撃をかわして、そして剣さえ奪い取れば……なんとかなるかもしれない。

 けれど、カルメロの剣は相変わらず鋭くて、わたしは最初の一撃を避けるだけで精一杯だった。

 しかもフィルもいる。フィルをかばいながら、反撃するのは不可能だ。

 わたしは二撃目の剣を避けようとして、転んでしまった。


「お姉ちゃん……!」


 フィルの叫び声が聞こえる。


 もうダメかもしれない。わたしはカルメロの振り下ろそうとする木剣を見て、ぎゅっと目をつぶる。

 けれど、次の瞬間、何も起こらなかった。


 おそるおそる目を開けると、そこには、長身の男性がわたしに背中を向けて立っていた。

 その人は細長い木剣を構え、そして、カルメロと向き合っている。


 どうやら、その人が、カルメロの剣を防いでくれたみたいだ。

 そして、彼は、わたしたちがさっきまで会っていた人だった。


「ば、バシリオ先生!?」


 バシリオ先生は、わたしたちを振り返ると、穏やかに微笑んだ。

書籍、昨日発売です!


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― 新着の感想 ―
[一言] あかんです。 カルメロ君、黒髪褐色の容姿説明で、何故か名前が似ている卵の殻を被ったあいつが頭に浮かんで、OP曲が脳内リフレインです。 なんでだろうな~、嘴が黄色い若僧だからかな~?
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