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やり直し悪役令嬢は、幼い弟(天使)を溺愛します 2023/7/15コミックス2️⃣巻発売!  作者: 軽井広@北欧美少女ノベル5巻が8/25から発売!
第三章 学園と第二の王子

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Ⅲ メイドと主人

「ねえ、アリス。男子寮にこっそり忍び込む方法ってないかしら?」


「まあ、お嬢様もお年頃ですね」


 メイドのアリスは、朝の身支度をするわたしの髪に、リボンをつけようとしていた。そんなアリスは、びっくりしたようにわたしをまじまじと見つめる。

 わたしは、アリスの淡い灰色の瞳を見つめ返して、ふるふると首を横に振る。


「違うの。フィルに会いに行きたいだけ」


「あら、てっきり素敵な殿方との逢引に行かれるものかと思いましたのに」


「フィルより素敵な男の子なんていないわ」


 わたしが冗談めかして言うと、アリスはくすっと笑って、「さすがお嬢様、姉バカですね」と言う。


 わたしとアリスがいるのは、王立学園の女子寮の自室だった。今日は休日で比較的のんびりできる。


 王立学園は貴族の生徒ばかりだけれど、そのなかでも、わたしは公爵令嬢として特別扱いを受けている。

 寮の中でも特別豪華なだだっぴろい部屋を与えられていて、天蓋付きのベッドまである。

 普通の生徒は二人から四人で一部屋を割り当てられているから、破格の待遇だ。


 前回の人生のときは……特別扱いされていることはわたしの自慢だったけれど。でも、所詮、それはわたしが偉いんじゃなくて、リアレス公爵家が偉いだけだと気づいてしまった。

 ただ、一つだけ嬉しいことがある。


 それはアリスと一緒にいられることだ。

 前回の人生では、わたしが学園に入学する前に、アリスは死んでしまった。けど、今回は、わたしはフィルと一緒に、アリスの死の運命を回避することができたのだ。

 だから、わたしと一緒に、今は学園の二年生になっている。


 ホントは、アリスの方がわたしよりも二つ年上だけど、わたしのメイドということで、わたしと同じ年に入学したのだ。 


 学園の標準入学年齢は十二歳だけど、飛び級で早く入ったり、若干遅く入学したりするのも、入試に受かりさえすれば自由に認められている。

 

 そして、今のアリスは、わたしと一緒の部屋に住んでいる。

 メイドを一緒の部屋に住ませるなんて、普通の生徒にはできないから、これは公爵令嬢の特権だ。

 べつに特権があることを誇るつもりはないけど、あるものは有効活用しよう。

 

 ただ、そんなわたしの(家の)力をもってしても不可能なことがある。

 それはフィルと同じ部屋に住むことだ。

 さすがに男の子のフィルと同じ部屋にしてほしい、という要望は通らない。女子寮は男子禁制だ。


 アリスは「うーん」と腕を組む。


「フィル様なら、待っていれば、そのうち会えますよ?」


「わかってるけど……でも、フィルはもう昨日到着したのに、まだ会えてないし……」


 学園への入学手続と検査さえ終われば、すぐに会えると思っていた。

 ところがフィルは男子寮に入ったっきり、出てこない。

 男子寮の寮監は取り次いでくれないし、結局、会えずじまいだ。


 フィルもわたしに会いたい、と思いながら、会えない事情があるのだと思うけれど……。


「フィルが……わたしのことなんか、どうでもいいと思っていたら……どうしよう……?」


「あのフィル様にかぎって、そんなこと絶対ないと思いますけどね」


「でも……お屋敷と違って、この学校には刺激的なものがたくさんあるし……可愛い女の子だっていっぱいいるし……」


 わたしは思わず、不安を口にする。

 問題は、今だけのことじゃない。ずっとお屋敷で一緒にいた以前とは違う。フィルだって成長していくし、そうなったとき、わたしとフィルの関係は今まで通りでいられるだろうか?


 前回の人生で、フィルがシアを好きになったように、アリスと親しくなったように、誰かわたしより大事な人を見つけたら……。

 それ自体は覚悟はしているけど、でも、それで、わたしのことなんてどうでもよくなったら、どうしよう?


 アリスはそっとわたしの肩を抱いた。


「大丈夫。フィル様にとって、きっとクレアお嬢様はいつまでも最高の姉ですよ。だって……お嬢様より魅力的な方なんて、この世にはいないんですから。お嬢様にとって、フィル様よりも素敵な方がいないのと同じように」


「……そうかな?」


「はい。お嬢様のことをよく知っているあたしが言うんだから、間違いありません」


 アリスは優しく、わたしを安心させるように微笑んだ。

 そんなアリスを見ていると、不安が薄らいでいくのを感じる。

 フィルにとって、またシアにとっての姉がわたしであるように、わたしの姉代わりの存在がアリスなのだ。


 アリスは急にぽんっと手を打った。


「あっ、でも……お嬢様……」


「な、なに?」


「男子寮に忍び込むというのは面白そうなので、やってみたい気がしてきました」


「ええと……やっぱりやめておいた方が良い気がしてきた」


 アリスがこういうふうに目を爛々と輝かせているときは、危険だ。アリスはこういう冒険的なことが大好きで、前は一人でサグレス王子に会いに行ったりしているし……。


 アリスはふふっと笑った。


「冗談です」


「よかった……」


「あら、お嬢様が言いだしたことではありませんか」


「それはそうだけど……でも、アリスのおかげで考えが変わったの」


 フィルには明日、必ず会える。明日の入学式のあとの全学舞踏会には在校生も新入生も参加するからだ。

 今考えるべきなのは……フィルを最も効果的に、わたしの弟として紹介する方法だった。


 そのためには……目立つ必要がある。

 そして、その手段もあった。

いよいよ舞踏会!


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― 新着の感想 ―
[一言] アリス君君は止める側でしょうに
[一言] これからの物語でクレアとフィルが恋愛に発展するのかしないのか、うずうずしながら読んでます(^^)これまでのファルはただひたすら可愛いっ!!って感じだったので、もし発展するようなことがあればど…
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