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やり直し悪役令嬢は、幼い弟(天使)を溺愛します 2023/7/15コミックス2️⃣巻発売!  作者: 軽井広@北欧美少女ノベル5巻が8/25から発売!
第二章 王太子という名の危機

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僕にとってのクレア:con Alphonso el Asturias

 僕の目の前で、クレアは弟を救うと宣言した。

 何の迷いも、ためらいもなく、僕の母上……王妃アナスタシアの言葉に従って、魔女の呪いを引き受けると言った。


 どうして……そんな恐ろしいことができるんだろう。そんな勇気が持てるんだろう。

 少なくとも、目の前で起きていることは普通ではない。


 僕にはそこまでの勇気を持つことが……できるだろうか。

 王太子という地位を守ることも、音楽家になりたいという夢も、どちらも大事だけれど。


 でも、そのために命を賭ける覚悟があるかといえば……。

 僕は所詮、王太子という与えられた地位のなかで、生きている存在に過ぎない。

 

 けれど……。

 少し前まで、クレアは同い年の普通の女の子にすぎなかった。

 ……今のクレアは僕よりもずっと大人のように見える。


 クレアは目を閉じて、その弟……フィルの手を握っている。

 二人の意識はどこか別の、遠い場所にあり、そして、魔女の呪いに抗っているようだった。


 みんな、固唾を呑んでクレアの様子を見守っている。

 例外は、冷静な母上と……シアという少女だった。


 シアは明らかに取り乱した様子で、その表情は絶望に染まっていた。

 

「……ああ、今度もクレア様を救えなかった。魔女に……なっちゃう」


 今度も? ……「今度」ということは、かつて救えなかったことがあるということか。

 ……いや、そんなことを考えている場合じゃない。


 それよりも。

 

「は、母上。魔女、とはどういうことです? クレアは聖女候補だったのではないのですか!?」


 預言によれば、魔女は聖女と対立する、世の災いだ。

 クレアは聖女となり、僕の地位を支えるために、重要な役割を果たすはずだった。


 でも、そうではないという。


「……わからなかったの」


「わからなかった?」


「聖女も魔女も同じ奇跡である魔法を操る存在だから。どちらが魔女かわからなかった。でも、本物の聖女は……」

 

 母上は、ちらりとシアを見た。悔しそうに唇を噛むこの少女が、聖女?


「……だとすれば……」


 僕の言葉は、別の人物の声でさえぎられた。


「いま、大事なのはそんな話じゃないはずです」


 物怖じせずに、堂々と言ったのは、メイドのアリスだった。

 メイド服の、決して身分が高くない少女は、王太子である僕と、王妃を前にしても、動じなかった。


「あたしたちにクレア様を助けることはできませんか? 力になることはできないのでしょうか?」


 クレアを助ける? 僕たちが?

 できるかどうか、考えもしなかった。シアもはっとした顔をしていて、その横の使用人の少年も驚いている。


 アリスの視線は真剣そのものだった。

 母上は、それに答える。


「残念だけれど、それはできないわ。あの呪いを引き受けられるのは、クレアだけ」


「祈ることしか……できないんですね」


 とアリスはつぶやき、そして、目を閉じているクレアの手に、自分の手をそっと重ねた。

 アリスとシアの二人は、クレアとフィルのことを強く助けたいと願っているようだった。

 僕は……どうだろう?


 もし聖女でないのであれば、僕にとってのクレアの利用価値はかなり下がる。

 けど……。

 クレアは僕の楽器の腕を心から褒めてくれた。僕を一人の人間として認めてくれた。

 その生き生きとした表情は……とても魅力的だった。


 ああ、僕も……クレアに助かって欲しいと思っているんだ。

 婚約者としてではなく、聖女候補としてではなく、一人の人間として、僕にとってクレアは必要な存在になる気がする。


 けれど、僕はクレアを助ける手を持たない。

 自分の無力さが歯がゆかった。

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また、本作と世界観に一部共通点とある書籍化ラブコメファンタジー『追放された万能魔法剣士は、皇女殿下の師匠となる』の1巻が、Kindle Unlimitedで読み放題となっています!


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