XXXXV わたしがフィルを助けます!
王妃アナスタシアの登場に、わたしは一瞬固まった。「は、母上……!」と王太子がうろたえて声を上げる。
どうして王妃様がここに来たんだろう?
それより、王妃はもしかしてフィルを助ける方法を知っている?
王妃はベッドのフィルに駆け寄ると、つぶやく。
「やっぱり……呪いをかけられたのね」
「やっぱりってどういうことですか? それに呪いって……誰がフィルを呪ったりしたんですか?」
「説明している時間はないの。……クレア・ロス・リアレス」
名前を呼ばれて、わたしは固まる。前回の人生では、敵だった相手が、深い青色の瞳で、わたしを見つめている。
「この子の呪いはね、魔女の呪い。根源的には、あなたと同一のものよ」
「わたしと同じ……?」
「そう。夜の魔女であるあなたと、ね。だから、あなたがこの子の呪いを引き受ければ、この子は回復する」
王妃の言葉に、わたしは飛びついた。
フィルが助かるなら、何でもする。……どんなことでも。
だって、まだ、わたしはフィルとちょっとの時間しか過ごせていない。
せっかくフィルが弟になってくれたのに、わたしを必要としてくれているのに。
だから……わたしは絶対にフィルを助ける。
けれど、シアが王妃の言葉に激しく反応した。
「私は反対です! そんなことをしたら、クレア様がどうなるか……」
「ええ。成功すれば、何も起こらないかもしれない。けれど、呪いに負けたら、フィルって子は助かっても、この場でクレアは夜の魔女となるでしょうね」
「そんな危険なこと、クレア様にはさせられません。もしクレア様が魔女になったら、私は……」
「そうね。魔女になったクレアは殺さないといけないわ」
きっぱりと王妃は言い切る。
この世に災いをもたらすという存在。
夜の魔女。それにわたしがなってしまうかもしれないという。そうなったら……わたしは、ふたたび破滅するんだと思う。きっとみんなの手で殺されて。
だから、わたしが破滅を回避したいなら、ここでフィルを見捨てるべきなんだ。
でも……!
「わたし、やります!」
「クレア様!」
シアが悲鳴を上げる。わたしはシアににっこりと微笑む。
「ごめんね、シア」
シアは泣きそうな顔で、でも、それ以上、何も言わなかった。
そして、わたしは王妃に向き直った。
「何をすればいいんですか?」
「することは簡単。この子の額に手を当てて、その呪いを引き受けようと願うだけ。魔女候補であるあなたは、それだけで、この子の呪いを消すことができるわ」
わたしはうなずいた。王妃の言う通りにやってみよう。
それ以外にフィルを助けられる方法はなさそうだ。
……一度は破滅した身だ。
怖いことなんて……ない!
わたしはフィルの小さな額にそっと手を当てた。
すでにフィルの身体中に赤く禍々しい模様が走っている。
そんな姿になっても、フィルは可愛かった。
「いま助けるからね、フィル」
わたしは目を閉じ、そして、フィルを救おうと願った。
その途端、わたしのなかに何か熱いものが流れ込んでくるのを感じた。
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