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やり直し悪役令嬢は、幼い弟(天使)を溺愛します 2023/7/15コミックス2️⃣巻発売!  作者: 軽井広@年下お姫様に甘えられる大正ロマン結婚生活1巻が予約受付中
第二章 王太子という名の危機

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XXXXIII 急変

 次の日の朝、わたしは王妃と会うために、ドレスを着ようとしていた。

 王妃は厳格な性格だと思うし、何が彼女の逆鱗に触れるかわからない。

 だから、行儀作法に外れた振る舞いはできないし、身だしなみも整えておく必要がある。


 わたしの部屋には、フィルの代わりにアリスがやってきた。

 アリスは上機嫌にわたしのドレスの着付けをしている。


 女の子のアリスなら、同室を許されたというわけだ。

 それに……王太子はアリスのことを気に入ったのかもしれない。なぜかシアは王太子に強い警戒心を示しているけど、アリスは物怖じせず、いつもどおり明るく率直に王太子に接していた。

 わたしの言葉に、アリスはくすっと笑った。


「あたしが王太子殿下に気に入られたなんて、そんなことないですよ」


「そう?」


「はい。だって、殿下のお気に入りは、クレアお嬢様なんですから」


「そんなことはないと思うけど……」


 わたしは形式上の婚約者だけど、王太子に好かれたりはしていないと思う。わたしが王太子の立場でも、わたしよりアリスを気に入るかも……。

 

「今のお嬢様は素敵ですよ。もっと自信をもってください。ほら、ドレスもこんなに似合っていますし」


 ドレスを着たわたしは、鏡の前に立つ。

 青一色のドレスだ。華美な感じにならないようにしている。

 ……まあ、なんとか公爵令嬢らしいというか、王太子の婚約者らしい雰囲気は出ているかもしれない。

 シアには見劣りするけど、いちおうわたしだって、前回の人生では、学園ではそれなりに美少女ということで知られていたし。

 

「そういうアリスこそ、とっても可愛いじゃない」


「そ、そうですか?」


 えへへ、とアリスが笑う。

 アリスもわたしと一緒に王妃に会うから、珍しく正装している。

 いつもは真っ黒でぶかぶかなメイド服姿だけど、今日はドレス姿だ。


 髪と目の色と同じ、淡い灰色のドレス。胸元が少し開いていて、大人な感じを出している。

 わたしはまだ子どもにすぎないけど、アリスはもう14歳で、大人の女性ではないとしても、美しい少女といって差し支えない。

 こういう姿をしていると、アリスも立派な男爵令嬢だった。


「さあ、王妃様に会いに行きましょう!」


 アリスの言葉に、わたしはうなずく。

 王妃から、わたしが監禁されている理由を聞き出さないといけない。

 嫌われないようにしないと……。


 ところが、わたしとアリスが部屋を出ようとしたとき、慌てた様子のレオン少年が飛び込んできた。


「お、お嬢様、大変です! ふぃ……」


 レオンの口が急に止まった。

 アリスがレオンの額にデコピンしたからだ。


 レオンが涙目になって、アリスを上目遣いに見つめる。


「痛いです、アリスさん……」


「レディの部屋にノックもなしに入っちゃダメでしょ?」


 とアリスがにこにこしながら言う。


 二人とも下級貴族出身の使用人で、言ってみれば、アリスがレオンの先輩にあたる。

 公爵屋敷にレオンが初めてやってきたときも、アリスがなにかとレオンの世話を焼いたらしい。

 だから、レオンはアリスに頭が上がらないようだった。

 前回の人生ではフィルのサポートもしていたし、つくづくアリスは面倒見のいい性格だなあと思う。


 レオン少年が素直に「すみません……」とうなずく。わたしに対しては生意気なのに……。

 アリスは「よろしい」と言ってくすっと笑う。


「それで、だいぶ慌ててたみたいだけど、用事はなに?」


 わたしはレオンに続きを言うようにうながした。


「フィル様がご病気なんですよ!」


「ど、どういうこと?」


 レオンの説明によると、今朝からフィルが高熱を出しているのだと言う。

 フィルは一人で何でもできるとはいえ、まだ幼い子どもだ。だから、一応、身の回りの世話をレオンに任せていた。

 それで、レオンが朝にフィルの部屋に行くと、ぐったりした様子でベッドに横たわっていたという。

 

「原因がわからないんですが、意識もはっきりとしないんです。いま、お医者さまを呼んでいるところですが……」


 わたしは部屋の時計に目を走らせた。

 フィルのことが心配だ。普通だったら、今すぐにフィルのもとへ飛んでいくところだけど……王妃との面会時間は迫っている。


 どうしよう?

 

 ……少しだけど、まだ時間はある。

 ひと目、フィルの様子を見てから、王妃に会いに行くこともできるはずだ。

 わたしはそう考えて、アリスとレオンと一緒に、フィルの部屋へと向かった。


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