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ダンジョンで現代の味を覚えたスライム、人の姿でいざファミレスへ ~お金が必要? じゃあダンジョンで稼ごう~  作者: 海山 鍬形


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九十三話 すう、崩れる

 ——ごはんを、たべてるだけ、だったのに!


 地面に開いたくちへ落ちたすうは、真っ暗な空間を落下しながら心の中で叫んだ。


「なんですかさっきの穴!? ……もしかしていま落ちてます!?」

「え、あえ、護衛さん……? 護衛さん!? い、いない? うそ……」


 一緒に呑み込まれてしまった杏子と七巫が戸惑いの声をあげている。

 真っ暗でわからないが近くにはいるようだ——と、考えた時。


 ぐわんと辺りの空間が揺れた。


 同時に白い照明が目の前に現れる。


「!?」

「まぶしっ」


 いきなりの眩しさに目を細めている間にも白い照明はいくつもいくつも乱雑に出現して空間を照らし出した。

 そしてすうは自分たちがどんな場所にいるのかを目にする。


「なに、これ……!?」


 辺りの景色はぐちゃぐちゃだった。

 照明がものすごい勢いで横を通り過ぎたかと思えばろうそくがゆらりと宙に浮かぶ。

 厳めしい石像が下から突きあげてきた直後に店に飾られているようなマネキンが上から降ってくる。


 昔も今も、上下も左右も、ねじれ、ゆがみ、混ぜ合わせているような。


 床と思われる場所にはいつまでもつかない。落ちながらも地面は遠ざかっていき、天井がずっと近づいてくる。


「きもちわるい……!」


 手に持つ串とまんじゅうを守るすうが言った瞬間、一気に空間は広がり始めた。


「わっ……すうちゃん! 七巫さ——!」


 途端、杏子たちがはるか向こうへ遠ざかっていき一瞬で見えなくなってしまう。

 代わりに空間へちゃんとした形ができあがっていく。


 天井が固定されてそこに白い照明が取りつけられる。下には照明をキラキラと反射する磨かれた床が敷き詰められていった。

 人が数人ならんでもまだ余裕があるぐらい広くなった通路に、その両側には様々な店らしきものが構えられていく。


 通路はぐねぐねとうねって迷路のようになっていき……やがて、落下する感覚が止まった。


「ほあ!?」


 ふわふわ浮くようだった体が急に重くなる。

 魔素を喰われたことで弱った体では受け身も取れず、すうは変な声をあげながらも体をひねった。


「ふぐっ!」


 どしんと背中からぶつかったすう。

 ただそれでも手に持ったごはんたちは無事だ。絶対に手放したりもしない。


「セーフ……!」


 じんじん痛む背中は無視してすうは安堵の息を吐いた。


「でも」


 立ち上がり、周りを見てすうは疲労のため息を吐いた。


「なんで、いきなりダンジョン……!」


 周囲の光景は、一度だけ入ったことのあるショッピングモールと少し似ている。

 だがすうの魔素感知センサーはその全てが膨大な魔素で作られているとわかってしまう。


 ここは間違いなくダンジョンだ。


 すうがいたのは普通の道だったはずだ。

 やっていたことはごはんを食べていただけ。自分からダンジョンへ踏み込んだりもしていない。

 だというのに。


「むこうから、ひきずりこむのは、はんそく!」


 ダンジョンが出現しやすい地域だとは聞いた。

 でもどう考えてもあれはすうをピンポイントで狙っていたのだ。


 じゃないといきなりコンクリートが手の形になって、足を掴まれるなんてあるはずがない。


「そうだ、あし!」


 すうはヒビ割れていた足へ目をやる。

 だがそのヒビは少しずつ治っていっていた。


 ダンジョンへ入ったことで、喰われた分を補充するように周りの魔素が流れ込んできているのだ。

 やがて完全に足は治って体に力も戻ってきた。


「……あんずに、みられた、かな?」


 地上へいた時は見られていなかったはずだ。

 ヒビの部分は手で隠していたし路地は薄暗かった。


 それにすぐダンジョンへ吞み込まれた。落下している間はすうの細かな姿を確認している余裕なんてなかった、はず。


 でももし見られていたら?

 そんな不安が首をもたげてきてすうはカラアゲを一口かじった。


 さくさくした衣を食べているとちょっとずつ気持ちが持ち直してくる。


「もうなおった、し、きのせいって、ごりおす」


 なんとかなると楽観的に考えた。


「それより、あんずたち、さがさないと」


 ここはダンジョン。すうの近くには見当たらないが魔物もいる。

 今日の杏子はいつもの武器を持ってきていないはずだ。


 心配になりつつすうが一歩踏み出すとぐにゅんと足が地面へ沈みこむような感覚。

 同時にビリッ! と何かが引き裂かれるような音。


「む!? わな!?」


 落とし穴か何かを踏み抜いたのか。

 すうが飛びのきつつ足へ目を向けると。



 ——すうの足は筋肉ムキムキに膨れ上がっていた。



「……………………???」


 一瞬……いや瞬き七回分ほどすうの動きが停止する。


 やがて再起動したすうはそっと床に足をつけた。

 力がかかったことでビリッとズボンの裾が破れる。


 さっきの裂くような音はこれだったらしい。あまりにたくましい筋肉に服が耐えきれなかったのだ。


「……」


 すうはそっと足を上げ下げする。

 足に、痛みはない。毒とかでは、たぶんない。


 ——え、これなに?


「なにこれ!?」


 ようやく衝撃が脳に到達してすうは叫び、ガッと自分の足を掴んだ。

 すると指が触れた部分だけ筋肉がぎゅっと沈み込み、代わりに掴んだ腕の方がムキィ! とたくましくなった。


「ぎゃー!?」

『ぎゃ?』


 呼びました? とギャーが腕輪から顔を出す。

 そして腕輪をはめている手首が太くたくましくなっていることに気づいて目を見開いた。


『ぎゃー!?』

「ななななにが、どうなっ……む!」


 だがすうは気づいた。

 変化した足や腕からおかしな感覚が伝わってくる。


 それも体そのものではない。

 魔素だ。

 魔素がおかしい。


魔素感知センサー!」


 必要もないのに叫びながら感知に集中する。

 するとすぐに原因はわかった。


「へ、び?」


 感じたものを形として表すならそれだ。

 魔素がずるりと、ヘビの如く這いずっている。

 しかもその魔素はすうのものではない。


「あの、て。つかまれた、ときに、なにかされ、た!」


 魔素のヘビは這いずりながらゆっくりとすうの足をのぼってきている。

 そしてヘビが動くたび、ムキムキになったりがりがりになったり不定形になったりと体の形状が変わってしまう。


 腕が変わったのも魔素を伝って手にこのヘビが移ってきたからだ。


 魔素が侵入して——。


「しんにゅう……しん、りゃく」


 侵略型。

 かろうじて記憶の隅に引っかかっていた単語。


 魔素へ侵入して体を作り変えてしまう魔素のヘビ。

 ダンジョンを侵略するダンジョン。


「しんりゃくがた、ダンジョン……!?」


 そう呼ばれるものがこのダンジョンなのだと気づいた時、ずるりとすうの足が液状に崩れた。

 その形は、まるでスライムのようだった。


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― 新着の感想 ―
切り離さなきゃあかんか?
 すうちゃん、ヤ、ヤバイっ。  魔石を持つとか、髪に魔素を貯めるとか、魔素をギュッと圧縮~圧縮・体内蓄積とか、でけんものか?
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