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ダンジョンで現代の味を覚えたスライム、人の姿でいざファミレスへ ~お金が必要? じゃあダンジョンで稼ごう~  作者: 海山 鍬形


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六十九話 すうたち、とどめをさす

 下から飛び出してきた凛は、あばら骨の遥か上にある背骨へとさかさまに着地した。

 その脚を覆うのは、両側に羽根が装飾された灰色のブーツ。


「まどう、ぐ?」


 すうが呟くと同時、凛へとファウナの触手が向いた。もう一人の侵入者を撃退しようと針が放たれる。


 思わず声を上げようとしたすうは再び膨れ上がる魔素を感じ取った。

 その発生源は凛の脚から。


「【翼と牙ウィンガー】!」


 恐らく魔道具の名なのだろう。

 凛が叫び、背骨を蹴った。


 飛んできた針の間を抜けて一直線に落ちる凛。

 宙で反転し、足を下に、あばら骨の一つへ飛び蹴りを叩きつけるように着地した。

 同時にドゴン! と魔素が爆発したように物理的な衝撃をもって弾け飛ぶ。あたりのファウナが引きちぎれ吹き飛ばされた。


「はやい、……し、つよい」


 すうは思わず呟く。


 どうやらあの魔導具……【翼と牙ウィンガー】は一時的に魔素を膨れ上がらせて身体能力を強化するものらしい。

 脚力だけでなく体全体を魔素が包み込んでいた。


 しかも着地の衝撃で頑丈なクジラ骨を砕き、ファウナまで吹き飛ばした。相当な威力だ。


「あ、あっぶな……! 落ちるとこだった!」


 ただ使い慣れてはいないらしい。よろりと立ち上がった凛は冷汗を拭っている。

 何をやっているのか、という視線をすうが向ける。それを感じたのか凛がぎっとすうを睨んできた。


「あんたなに見て……は?」


 ただその顔が一気に困惑へ染まる。


「なにその……なにその状態!? ムカデが巻きついてる!? キモッ! ふざけてんの!?」

「ふざけて、ない! ぼうぎょ、してた!」


 反射的に言い返したすう。

 だが言い合いをしている暇はない。


「また、くる!」


 新たな侵入者に再びファウナが狙いを定めて飛来物を放ち始めた。


「ああもう鬱陶しい!」


 その場から飛びのきつつ凛は近場のファウナを蹴り殺した。

 あちこちから放たれる飛来物を拳で叩き、足で砕き。あばら骨を飛び越えて曲芸のように動きながら被弾する様子がない。


 【翼と牙ウィンガー】の効果なのか、あばら骨へ垂直に立っても落ちたりしない。

 動き回る凛に合った装備なのだろう。


「む」


 さらにすうは辺りの様子が変わったのに気づく。

 さっきまで取り巻くムカデにぶつかっていた飛来物が少なくなっている。


「ふたり、だか、ら?」


 侵入者が増えたことで狙いが分散したのだ。

 これならどうとでもなる。


 すうはドームを解除して【異形器グロテスク】を振るう。

 すうの腕ぐらいの太さの鞭は、唸りを上げて辺りのファウナを刈り取った。


「よし」

「あんたは周りのやつ相手にしてなさい! あたしは頭を潰す!」

「あっ」


 凛が一気にあばら骨を飛び越えて頭骨へ近づいた。


「ぎゃーーーっ!?」


 その瞬間、周囲から恐ろしい量の飛来物が集中して凛が逃げ帰ってくる。


「それ、さっきやった」

「知ってたんなら教えなさいよおぉぉ……!」

「まわりの、つぶさないと、むり」

「わかってんのよ体験したから! さっさとやるわよ!」


 示し合わせたわけでもなく、二人は同時に左右へ散った。


 すうは【異形器グロテスク】で、凛は【翼と牙ウィンガー】で、縦横無尽に骨の住処を駆けてファウナを潰していく。

 とはいえ上から下まで移動するのも面倒ではある。


 そんなすうの思考を読んだように、上の背骨にひっつくファウナを一つの矢が穿った。


「……うる()?」


 飛んできた方を振り返れば背骨の末端、尾の方に二人の少女が乗っているのが見えた。

 潤と杏子だ。


 潤は上側のファウナを狙い撃ち、杏子はそんな潤の周りにいるファウナを潰していっている。

 槌を振りかぶっては叩きつけ、その度に小さくゴォン! ガァン! と豪快な音が響いてくる。そういえば杏子は怪力だった。


「でも、どうやっ、て?」


 凛や自分のように飛んできたわけではない、と思いつつ下を見て理解した。


「じめんが、ちかい」


 どうやらファウナを倒し続けたことで、クジラ骨を浮かしていられなくなったらしい。あばら骨の下はもう砂がスレスレのところまで迫っている。

 杏子たちは普通に飛び乗ってきたのだろう。


 それができるほどホエール・オブ・ファウナは追い詰められている。


【ボォオオオオォォォォォ——————】


 そう考えた瞬間、耳を塞ぎたくなるような叫び声があがった。

 少なくなったファウナが全身を振るわせて合唱のように音を響かせている。


「なに……?」


 すうの魔素感知センサーは辺りの魔素が妙にうねるのを捉えた。


 うねりが最も大きいのはこの場を囲む水槽のアクリル。

 叫びが終わった直後メキメキとアクリルが歪み、ひび割れ、決壊した。


 どお、と一気に水が溢れて砂に降り注ぎ魚たちが流れ込んでくる。


「りん! あれ、しって、る!?」

「なっ、はあ!? 水槽が割れてる!?」


 凛も知らない。これもまた異常な出来事らしい。


「どんどん下が水浸しになっていきます! これどうなってるんですか!?」

「わからない! けど、まずそう……!」


 何が起こっているのか誰にもわからない。

 ただこのまま放っておくと最悪、このボス部屋そのものが水で埋まる。


 しかも流れこんできた魚はこれまでの階層にいた魔物たち。

 すうたちを敵とみなして水を、宙を泳ぎ突撃して来ている。


「すう!」


 叫んだ凛と、それを聞いたすうが同時にホエール・オブ・ファウナの頭へと駆け出していた。

 もう既にファウナはほとんど狩りつくしている。後は頭だけだ。

 

 凛の【翼と牙ウィンガー】の魔素が膨れ上がる。

 すうの【異形器グロテスク】は鞭から剣へと姿を変える。


 頭骨へ近づけば再びファウナの一斉射に晒される。


「まえから、なら」


 もう伸ばして周囲をカバーする必要もない。

 すうは右腕の剣だけで全てを叩き落した。


 そして、その後ろから凛が頭骨へと飛び込み。


「これで、終わり!」


 爆発的な魔素の衝撃が放たれ、ファウナを一掃した。


追記:遅れてすみませんでしたぁ!!

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