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ダンジョンで現代の味を覚えたスライム、人の姿でいざファミレスへ ~お金が必要? じゃあダンジョンで稼ごう~  作者: 海山 鍬形


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二十九話 すう、受けて立つ

 お互いに謝りあって雰囲気が和らいだところに、小兵こひょうが聞いた。


「あなた達は特例探索者・・・・・だろう。同行者はどうした?」


 その時、三人の間にほんのわずか緊張が走った。

 一瞬だけだがお互いに目を合わせ……最初に口を開いたのは、これまで前に出ていた杏子あんずではなく、りんだった。


「なんで、わかったんですか? あたしたちが特例だって」

「なんとなく」

「すご……んんっ」


 目を輝かせかけた凛は首を振って気を取り直し、小兵を見つめ返す。


「これは試験に備えてのテスト、です」

「ほお」

「同行者がいない状態でもちゃんと行動できるかっていう……その、ルール違反ではないでしょう」


 見上げる小兵の目に、凛は少し怯みながらもはっきりと答えた。

 小兵も「まあそうだな」と頷いている。そういえば小兵も一階層ですうから離れていた。


「ただそれはフォローできる範疇で、の話だ。あんなに叫んでるのに助けに来ない、来れないのは同行者としては問題だな。……いやまあ私が偉そうに言えることでもないが」

「あれぐらい、どうとでもなりましたし」

「それは確かに」

「え……」


 意地になったような凛の言い分を小兵はあっさり認めた。

 たじろぐ凛たちを、一人一人小兵は眺める。


「あなた達はあれだけ魔物に囲まれて、分断までされていたのに、誰も大きなけがを負っていないな。装備も中古だけど自前のものだ。実力があるのはよくわかる」

「え、と」


 いきなり褒められたからか凛たちは頬を赤くして顔を見合わせている。

 実際すうも三人に実力があるというのはわかる。特にさっき少しだけとはいえ共闘し、殴り合った凛の強さはよく理解できた。


 ただだからこそ、どうして助けを求めたのかともすうは思うのだが。

 すうの訝しげな視線に気づいたのか杏子が慌てたように手を振る。


「あの、でも、助けて頂かないと危ないところではあったんです! いきなり大量の魔物たちに囲まれて、混乱してしまって……」

「そうそう、それだ。二階層の魔物は基本的に群れないはず。どうしてあんな量が集まってたんだ?」


 それはすうも気になっていた。

 一応、同じような現象を目にしたことはあるが、それは三階層以降での話だ。


「戦いが長引いたって二階層の魔物がそんなに寄ってくることはないだろう。まさかモンスタートレインになったとかじゃないよな」

「いいえ!! まさかそんな!!」

「やってないです!!」

「そんなことになる前にちゃんと倒す!」


 全員が全力で否定している。あまりの必死さにすうは思わず一歩下がった。


「も、もんすたー、とれいん、って?」

「ダンジョンでも最悪の事件の一つだ。探索者が攻撃した魔物が倒せず、中途半端に逃げようとしてずっと追われ、途中に他の魔物を巻き込んだせいでそいつらからも追われ……と、そんなことを繰り返して大量の魔物を引きつれた事件が昔あったんだよ」

「しかもその探索者は他の人へ魔物をなすりつけようとしたんです。人の多い階層だったせいでたくさんの探索者が亡くなって、ダンジョン内で一日に最大の死者を出したそうです」

「無駄に魔物を刺激するから、人類そのものへの敵対行為。その探索者はトレイン中に死んだけど、生きてても死刑になっただろうという噂」

「それから魔物と戦うならなるべく倒し切るか、しっかり逃げきれ。できなきゃすぐに助けを呼べって教えられるようになったのよ。あんた、そんなことも知らないの?」


 怒涛の解説にたじろぐすう。

 しかし最後の凛の言葉にむ、と口を尖らせる。


「あー、すうちゃんは色々特殊でな。まだ教えてる最中なんだ。それより、モンスタートレインじゃないなら魔物が集まった理由に思い当たるものはあるか?」


 小兵の問いに杏子は首を横に振った。


「いいえ、突然辺りから一気に押し寄せてきたので……」

「理由不明か。ダンジョン課に報告を上げて調査してもらうしかないかな」

「そうですね」


 調査。

 すうは小兵が言っていた大きな調査がある、という言葉を思い出した。

 これが何か関係あるのか。しかし小兵も知らないようだから、全く別のことなのか。


 なんにせよ自分のところに魔物が集まってくれたら稼ぎ放題なのに。

 すうが欲望まみれの思考をしていると。


「あの、ところで」


 凛が手を挙げ、じろりとすうの方を睨んでくる。


「そいつ……その子、教えてる最中って言ってましたけど、もしかして」

「ああ、すうちゃんも特例探索者だ。私が同行者をしている」

「「え!?」」


 凛以外、潤と杏子の二人がすうへ注目してきた。


「た、たしかにどういう関係なんだろうとは思っていましたけど……小兵さんが同行者だなんて!」

「羨ましい。凄く」

「というか同い年だったんですね。同じ特例として、よろしくお願いします」

「かわいい子、よろしく」

「お、おお」


 ぐいぐい詰め寄ってくる二人にすうは圧されるばかりだ。

 小兵に視線で助けを求めても、がんばれと手を振られるだけだった。


 思えばすうは同じぐらいの少女たちと話したことなどない。そのせいで対処がわからない。

 小兵は目線が同じぐらいなだけで大人だし、病院にも探索者ばかりが集まっていて子供はほとんどいなかった。

 何を言えばいいのか。下手なことをすると魔物だとバレるのでは。


 あわあわ追い詰められていると、ふと突き刺さる視線を感じた。

 そちらに顔を向ければ、二人の後ろで腕を組んで睨んでくる凛がいる。


 なんとなくもやっとして睨み返せば、ずんずんと凛が近寄ってきて、杏子たちを押しのけ見下ろしてくる。


「三日後の試験、受けんの?」


 唐突な問い。すうは訝しみながらも頷いた。

 すると凛は指を突きつけて宣言してくる。


「じゃあどっちが受かるか勝負よ! 負けた方は罰ゲーム!」

「うけて、たつ」


 瞬時にすうは勝負を受けた。


 試験がどんなものかもわからない。ばつげーむというのが何かも知らない。

 だが凛を前に「なにそれ」と聞くのも、「やらない」と退くのも、認められない。


 『ダンジョン・カロリーブロック』を飽きたと言った、この相手だけには。


 すうが地上にでるきっかけとなった言葉は、思っていたよりずっと深くすうの心に突き刺さっていたのだった。


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