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ダンジョンで現代の味を覚えたスライム、人の姿でいざファミレスへ ~お金が必要? じゃあダンジョンで稼ごう~  作者: 海山 鍬形


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百話 すう、違和感を覚える

「出口が、ない?」


 大岩が爆散した衝撃でぐちゃぐちゃになっている通路の中、七巫は眉を寄せて呟いた。


「え?」

「……!」


 事態が理解できず疑問の声をあげる杏子。対してすうは魔素感知(センサー)によって七巫の言っていることを理解した。


 魔素の流れがおかしい。

 普通は地上へ巡っているはずの魔素の動きに一貫性がない。巡るのではなくバラバラに蠢いているだけだ。

 すうにもどこが出口なのかはわからなかった。


「でも、しんしょくがた、だから、じゃ?」

「あー。それなら確かに決まった入り口はない、かな? それでも外側へ向かう流れはあるはずなんだけど」


 確かにあまりに無秩序すぎる。

 二人で考え込んでいると、杏子が七巫とすうを交互に見てきた。

 なんだか困惑しているようだ。


「このダンジョンって侵食型なんですか?」

「あ」


 すうも七巫もここが侵食型だと理解したのは魔素を読んだからだ。

 当たり前のように通じ合っていたが普通はわからない。


 まずいだろうか、とすうが緊張する。魔素が感じられると知られたら、連鎖的にすうが魔物だとバレかねない。


「あー、ほら! 大岩に追われてる時に私が言ったじゃん!?」

「あ! そういえばそうでしたね。あの大岩の魔物を侵食型が取り込んだとか……すみません、忘れていました」

「いやいやしょうがないよぉ! 大変だったしねー!」


 咄嗟のフォロー。すうは魔物の先輩(・・・・・)へと感謝を抱く。


 さっきまでの問答で七巫が魔物であることをすうは完全に信じていた。

 魔素が見えること、体から根が生えること、しかもそれが魔道具ではなく体の一部であること。それらを目の前で見せられたし、七巫の雰囲気に嘘はなかった。


 自分よりも長く人間社会を生きて、しかも人に受け入れられている。

 すうは七巫に尊敬すら抱いていた。先輩すごい。


「そ、そういえば杏子ちゃんはなんで大岩に追われてたの? これまでのこと整理するためにも聞きたいかなーって」

「えぇと、二人と引き離されてからですね? 私は岩で作られた神殿みたいなところに放り出されたんです」

「しんで、ん?」


 驚くすうたちへ杏子は頷いた。


「一目でダンジョンだとわかりました。辺りも岩に囲まれてましたし……流石に警戒して離れたんですけど、そしたらいきなり神殿の扉が開いて大岩が転がってきて。それで逃げるうちにこの地下街に出たんです。最初はダンジョンから脱出したのかと思いました」

「うーん? なるほど。ちなみにその岩以外に魔物は見た?」

「いえ。……あの、話していて気づいたんですが」


 杏子は眉を寄せる。


「侵食型は元の町を乗っ取るんでしたよね? だったら、ここに神殿やさんちかがあるのはおかしいような」

「めっちゃくちゃおかしい。私たちが呑み込まれたのは中華街の下だしね。んだけどー……一応理由の説明もつかなくはない」


 七巫は少し考えてから口を開いた。


「多分、もうダンジョンを取り込んでる。しかもさんちかを模した現代ダンジョンと、杏子ちゃんが見た岩神殿のダンジョンの二つ」


 目を見開くすうたち。七巫自身も納得できていないように難しい顔をしていた。


「しかも最初の状況からしてここは発生したばかり、っぽい?」

「ま、待ってください! 発生したばかりでダンジョンを取り込んでるって、じゃあここにはもともとダンジョンがあったんですか!?」

「なかったよ。それは私が保証する」


 元町・三宮を守る者たちのトップはそう断言した。


「だから——三つのダンジョンが、重なるみたいに一気に現れたんじゃないかな」


 杏子が絶句した。

 七巫もまた厳しい顔でいる。


 そんな中でただすうだけが首を傾げていた。

 異常事態ではあるがそんなに大変なことなのか、と。


 よくわかっていないすうに気づいたのか、七巫が言葉を付け足す。


「侵食型ダンジョンが二つのダンジョンを取り込んだ状態はね、『元街三宮』と同じ状況ってことだよ。小兵さんたちが挑んだ最悪のダンジョンとね」

「……それは、やばい」


 すうもようやく状況を理解した。

 十年前とはいえ小兵が最悪だったという程のダンジョンの中に、すうたちはいるのだ。

 しかしそれを理解して再びすうは疑問を抱く。


「けどあんまり、きけんそうじゃ、ない」

「それは……たしかに。あの大岩以外はあまり大変じゃありませんでしたね」


 大岩以降の後続は全くでてこない。話し合いができるぐらいには落ち着いた状況だ。

 大岩クラスの魔物が来ずとも、辺りには店がまだまだたくさんある。だというのに追撃も来ない状態だった。


「不完全なのかも?」


 七巫がぽつりと言った。


「ダンジョンが発生する瞬間に三つ重なるなんて聞いたこともないしね。なにか不具合があってもおかしくはない……と思う」

「そういえば最初は魔物が出てきませんでしたね」

「でぐちが、わからないのも、そのせ、い?」

「かもしれないねー。……」


 不自然に沈黙した七巫が、ふと顎に手を当てる。


「今ならダンジョンを討伐できるかも?」

「え!?」




 驚愕の提案を七巫がしたその時。


「……?」


 すうは自分の体にかすかな違和感を覚えていた。


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