↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お人好し令嬢の異世界婚活記3〜白百合と蒼金の誓い  作者: カンテラ澪


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/10

9 ケルビム様ってもしかして?

アデリーヌ様を魔法陣に閉じ込めて、その後、第二魔術師団が突入して、さらに封じ込めの結界を強化、アデリーヌ様は魔術師団の取り調べ室に運ばれたそうだ。


私はヴァン様が迎えに来て、そのままグラサージュ公爵家へ帰ったのだけど。


「ララ、顔が強張っている。何があった」


バルトランザ邸であったことは全て話した。


「……闇の王サダーン、禁書庫にあった名だな」

「ええ、それと、ヴァン様の結界に弾かれた時に、ケルビムか、と」


「ケルビム?聞いたことがないな」


私たちが読んだ本には『ケルビム』という名はなかった。


「……ララ、アデリーヌが簡単に捕まったのもおかしいと思わないか」

「ええ。もっと手ごわいかと。でもダークミストが手から出てたので、ダークミスト耐性がない人には十分危険でした」


「ダークミストを手から出している状態で拘束できたのだ。これで断罪は可能になった。よくやった」


ヴァン様が少し微笑んでくださる。


「でも、アデリーヌ様が、なんだか気の毒で」

「まだ、そんなお人好しを言っているのか」

「だって、アデリーヌ様はヴァン様の婚約者だったのですし」


ヴァン様がとっても嫌な顔になった。

「だから何だ!仮に好意があったとして、仮にだ!ララなら好意がある男に死ぬとわかっている毒を与え続けるのか」


「あ!そんなこと、絶対にしません。そんなことするくらいなら代わりに死にます!ごめんなさい。やっぱりアデリーヌ様の罪は許せないです」


「わかったならいい。だが、身代わりになる、はやめてほしい。私が守るから」

「……私だってお守りします」

「わかった、わかったから」


真顔になったヴァン様が続ける。

「それとブーレ湖だが、国中の湖を探したが、見つからない」

「なかったのですか」


「地理院の者に古い地図や文献も調べてもらったが、どこにもない」


ないって、なぜ?

禁書庫の壁画になっているくらい、重要な場所のはずなのに。


「ヴァン様、他にウィンザー王国があるなんていうことは」

「それも調べたが、あの書物が、同名の他国を指しているとは思えない」

「……ブーレ湖がない。もしかしたら、封印されたから消えたのでは」


「ならば、地形が変われば地図や歴史書に載るだろう?魔法が存在する国は、魔法で地形が変わってしまう場合もある。消えた地名や土地は地理院で把握してるはずだと思うが。全く存在がない」


でもブーレ湖の壁画を見て、懐かしい、と思ったのに。


「……ブーレ湖に関する本って下の禁書庫にはなくて、塔の上の禁書庫だけにありました。隠さなくてはならない場所だとしたら、結界の中?」


「そうか、そういう考え方もできるな」


リリエル様の時代、一番高い魔力があったのは、大魔法師と呼ばれたエルラール様。

今、この国で一番なのはヴァン様で、ダークミストを殲滅できる《黄金の風》を持つ。

そしてヴァン様の結界はサダーンを弾いた。


まさかね。でももしそうだとしたら、なぜ?


「ララ、サダーンは、私の結界に当たった時にケルビムという名を出したんだな」


「ええ、もしかしたら?」

ヴァン様が頷く。


「……意味はわからないが、そういう結論になってもおかしくない」


「また、行きますか?」

「また行くのか。仕方ない。アデリーヌの方はジュリアスに任せておけばいい。では行くか」


私たちは、グラサージュ公爵家の庭に立っているうろのある大木まで歩く。


そしてその木肌に触れた。

あっという間に木に引き込まれる。


⌘

「着いたぞ、直通は早いな」

ヴァン様が苦笑いをしている。


「ふふっ、いくら王城が近いと言っても、尖塔までかなり歩きますから、これ早くていいです」


そう、尖塔の上の禁書庫が、グラサージュ公爵家のお庭とそっくりになった日に、見つけた大木に触れると公爵家に戻れる。

逆に公爵家の大木に触れても禁書庫に行ける、ということがわかってからは移動が楽になったの。


尖塔の上の禁書庫は、あれからずっと大木があって、白百合の花が咲き乱れている。


あれ?また奥に広がっている?

「ララ、新しく奥に広がっているぞ。離れるな」


ヴァン様に手を引かれて奥に向かう。


そこは、誰かのお部屋だった。

優しい設え、でも家具や調度品は最高級だとわかる。

壁に大きな絵があった。婚姻式の絵。


あ、これは。


「リリエル王妃の部屋か」


たぶん、そう。

神殿で誓う時の絵。横にいるのがルベール様ね。

すごい、天使が絵の中に飛んでいる。


「ララが他の男と婚姻するのを見るのは面白くない」

「えっ」

「この横に立つのは私だろう」

ヴァン様、何をおっしゃっているの?しかも絵を睨んでいる。


「ヴァン様、それは四百年以上前のお二人ですよ」


「……そうだったな。勘違いだ。瓜二つは困る。それで何か気になるものはないか」

咳払いをしたヴァン様が部屋を見渡す。


このお部屋で気になるところ。私は歩き回ってみる。

扉があるんだけど、位置からすると寝所ね。

開けたら、違う場所だったら?


「ララ、待て。一緒に開けよう。扉を触って、まさかグラサージュ家に戻る、ではないだろう。他に飛ばされると困る」

ヴァン様が後ろから私を軽く抱きしめて、二人で扉に手を伸ばす。


カチャリ。

扉が開く。寝所だった。

詰めていた息が、自然にふうっと出る。


「普通で良かったですね」

「これのどこが普通なんだ。尖塔の上だぞ」

「まあ、それはもう気にしない方が、気持ちが楽です」


部屋の中に入って見渡す。

あ、きっと、あれ。


「ヴァン様、きっと、あの壁にあるはず」


寝台の後ろの壁に百合の紋章が五個も彫られている。


「一緒に触るぞ。壁にララを吸い込まれては困る」


あの大木に吸い込まれてから、ヴァン様はかなり慎重で過保護。

ヴァン様の手が私の手の上にかぶさる。

私は、なぜだか迷わずに二番目の紋章を押した。


カチリ。

やっぱり。

何がやっぱりなのかよくわからないけれど。

そこには一冊の本が。

手にとってパラパラとめくる。


「これ、日記です」

「私には白紙に見えるが、ララには字が見えるのか」

「ええ」

私は寝台に座って読もうとしたら、えっ?


あっという間に腰を引かれた。

もう言っても仕方がないので、ヴァン様の好きなように。


寝台に座ったヴァン様の膝の上に座って、日記を読む。


ああ、そうなのね。


——王妃になってから、とにかく多忙な日々。そんなに遠くないブーレ湖にさえ、行くことができないほど忙しい。でも明日はやっと公務の休みの日だから。ルベール様が一緒に行ってくださる——



——今日、ブーレ湖に行ってきたわ。一年ぶり。変わらず神殿は美しく、ルベール様と祈りを捧げる。水は澄んでいた。そしてブーレ湖の水は、ほのかにジュニパーベリーの懐かしい香りがする。やっと会いにくることができました——


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。