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お人好し令嬢の異世界婚活記3〜白百合と蒼金の誓い  作者: カンテラ澪


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8 アデリーヌ様の誘いに乗ります

⌘

今日は、アデリーヌ様からお茶会に誘われた日。

これからバルトランザ侯爵家を訪問する。

そして昨夜から、ヴァン様がずっと心配をしてくださっている。



「絶対に無茶はするな」


「大丈夫です。私だって死にたくないですから。それよりも、ヴァン様の結界魔法を解除してください。これでは、またダンスの時のようにアデリーヌ様を弾いてしまいます」


「それは駄目だ。ダンスもないし、女の茶会で手を握り合うこともない。そもそも身体に触れるほど近づくことがないのだから。もし向こうが扇で打とうとして、弾かれるのは自業自得ではないか」


「……それはそうですけれど」


「ララから防御の結界を外すのは、拒否する。何が起こるかわからない」


「……では、椅子に座ったり近くでお話ができる距離で、弾き飛ばさないようにお願いします」

「まあ、仕方ない、そのくらいは譲歩するが、新しい術式を付与しておく」


ヴァン様が私の首飾りに触れて、結界の調整をして下さった。


「もしダークミストがララを、いや、なんでもない」

何を仰りたいのかわかった。生贄のことだわ。


「ヴァン様、大丈夫です。ダークミストがあの地獄の門と関係があるのなら、封印できるのは私たちのはず、そうでしょう?」


「わかった。邸の周りに第二魔術師団を待機させるので、とにかく慎重に」


私は頷いて馬車に乗った。



⌘

バルトランザ侯爵邸。


侯爵家へ近づくにつれてダークミストの気配を感じる。

馬車の窓から外を見て、納得した。

お屋敷全体が、ダークミストの気配に包まれている。

今は黒い靄は見えないけれど、間違いないわ。


これだけの悪意あるダークミストの中で、生きているなんて驚くべきこと。

人ならば、生きられない。つまり、違うの?


グラサージュ公爵家の馬車が門を抜けると、馬車の周りだけ空気が変わった。

そう、馬車には特殊な結界の術式が組み込まれているから、澱んだ空気は左右に分かれ道ができていく。

ヴァン様が考えた新しい攻撃型の結界は、聖伝輝(セイデンキ)というもので、ダークミストを寄せ付けないそうで、雷神と呼ばれた大魔法師エルラール様の、天を轟かせるほどの魔法を改善したと仰っていたわ。

禁書庫の本には、聖伝輝はリリエル様が使った魔法と書いてあったけれど、ヴァン様が教えてくださらない。


着いた。



⌘

バルトランザ邸、サロン。


私たちはサロンで、向き合ってお茶を飲む。


「ペルラ様、人のものを盗んでおいて、よく私に会いにいらしたわね」


この方がアデリーヌ様。

殺気はあるけれど、とても美しい方だった。

ストロベリーブロンドに赤茶色の瞳。


そして瞳の奥に、見たこともない炎が見える。


「お招きいただきありがとうございます。アデリーヌ様。十年ほど前にお会いいたしましたね」


「お会いしたことはございませんわよ」

「王立治癒院の治癒師試験の会場で。右側にいらしたでしょう。私は左側にいたのです」


「……なっ!何を、会うなり言いがかりをつける気!」


「言いがかりだなんて。私は試験に落ちただけですから」


ポスン!


早速、扇が飛んできて結界に当たって下に落ちた。


「なっ!あなた結界を」

私は王妃様から頂いた細い首飾りに手を添えて見せる。


「ごめんなさい。ご存知のようにこの王家の首飾りは婚姻するまで外れないそうです」


「この低位貴族のくせに」

「アデリーヌ様、今日、お招きいただいたのは、何かお話があったのでは」


「そうよ、あなたなんか居なくなればいいのよ!」


アデリーヌ様が立ち上がったときだった。

彼女の後ろに、大きな黒いものが浮かび上がる。

ダークミストと言うより、大きな人のような影?

ああ、画集で見た醜いもの。

真っ黒なのに、目だけが真っ赤。


思わず呟いていた。

「……邪悪なもの」


「見えるのだな、一粒の清廉な真珠。我が生贄」


「この世に出てきてはならざるもの、あなたは」


「闇の王、サダーン」


ああ、これが。

リリエル様の時代に、ブーレ湖底から人間の世界へ這い出そうとしていた邪悪の根源。ダークミストを撒き散らす存在。


黒い霧が人型のようになって、こちらへ手を伸ばそうとする。

そして、私の近くで雷が轟いた。


「なんだ!これは!」

黒い霧は弾け飛んでバラバラになって、その辺りに粒のように漂っている。

首飾りにも付与してくださったヴァン様の聖伝輝、効果があるのね。


「まさか、ケルビムか。どこにいる?あやつを出せ!」


ケルビムって誰かしら?

「リリエル。お前の血肉を必ず食って、この世界を我の物にするから待っていろ!」


小さな黒い粒が言葉を発して、黒い霧はかき消えてしまった。

私をリリエル様と間違えている?



「ペルラ!王に何をしたの?許せないっ!」

アデリーヌ様が怒りだし、手を振る。


まさか!

アデリーヌ様の手のひらからダークミストが溢れてくる。

この方は、もうダークミストに浸潤されているのね。

それでも私にはダークミストは到達しない。全て結界で弾かれている。


私は落ち着いて、禁書庫の本で見、練習した通りに魔法陣を開く。


すると、その魔法陣は、ダークミストごとアデリーヌ様を包んでしまった。

ダークミスト相手に初めて使ったけれど、封じ込めが上手く行ってほっとした。


「出しなさい!ペルラ!ここから出しなさいよ」




不定期更新ですが完結します。よろしくお願いします。

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