4 ヴァンドール様と共に討伐へ行きます
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ヒデオン先生の研究室。
ナステイル討伐の数日前。
ヴァン様と私は、ヒデオン先生の研究室で、ヴァン様の治癒方法について相談をしていた。
ヴァン様のお話では『黄金の風』を発動した瞬間から、魔法の威力に応じて、体内が焦がされていく。
もしその時に、少しでもダークミストを吸い込んだり触れたりしたら命に関わる。
一体どんな痛みを背負って討伐へ向かわれていたのかと思うと、こっちまで苦しくなる。
「ヴァンドール様に治癒魔法をかける時、ここの痣のところが一番早いようなのです」
「確かに、私もそんな気がする」
今、ヴァン様は寝台にうつ伏せに横たわったまま、私は背中に手を当てて治癒魔法をかけている。
隣ではヒデオン先生がヴァン様の脈診をしている。
「今は、とても微量の魔力を流していますが、いかがでしょうか」
「さっきより魔力量が多く感じるな」
「ヒデオン先生、いかがでしょうか」
「確かに、ペルラ様の言う通りですな。脈診でも、ペルラ様が同じ量の魔力を流しても、場所によって体内に出る効果が違う。色々と試して頂いたが、ペルラ様が言われた場所が、一番、魔力の通りが速く効果が高い。どうやってこの場所を見つけられたのか」
「初めて治療した時に、ここにダークミストが集まっていました」
「つまりダークミストがここから注がれていたと」
私は頷く。
「それは皆、そこに溜まるのか」
ヴァン様が顔をこちらに向けて聞いてくる。
いつもは見下ろされているけれど、下からの目線はヴァン様が少し幼く見える。なんだか新鮮。
「ヴァンドール様は特別かと。他の方は、お臍の下が多いですよね」
ヒデオン先生が頷く。治癒師や薬師は知っていることだけど、体の中に魔力が溜まる場所がある。多くの人はお臍の下。
「以前、治療と称してダークミストを受けていた時は、ここだったのですか?」
「確かに、アレもここに手を当てていた。しかし、服は脱いだ事はないし見せた事もない。それにアレは特級治癒師ではなかったのに、なぜこの場所がわかったのだ」
ヴァン様の身に起きることは説明がつかないことが多い。
「ヴァンドール様、アデリーヌ様がこの場所をなぜ選んだかわかりませんが、後ろから、ここを狙われると防御が難しいですね」
「魔法を使う時は結界は張っている。私の結界を壊せるものがいるとは思えないが、気をつけよう」
「私が後ろにいることで、防御は強固にできます。ヴァンドール様の背中に手を当て、黄金の風を発動する瞬間に聖属性の治癒魔法『ピュアソウル』を発動しましょう。それが一番、効率的です」
「ララ、手を当てるだけなら、私の前で抱きついて後ろに手を回してくれてもいいぞ。その方がララを守りやすい」
一瞬何を言われたのかわからなかった。少し考えて顔が熱くなる。
「ヴァンドール様、討伐時にそんな格好できません!」
ヴァン様がニヤリとする。
ヒデオン先生が笑っている。
「若いということは良いことですな。お二人の愛の熱さでダークミストなどすぐに蒸発してしまいそうだ」
ヒデオン先生まで、何をおっしゃるの。
もう恥ずかしい。
ヴァン様が起き上がって、私の髪をひとふさ掬い取る。ヒデオン先生の前でやめてください。
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そしてナステイルの討伐日になった。
陽が昇る前に、ヴァン様と私は、ラファールとガブリエルに乗って、ナステイルへ向けて文字通り飛んだ。
空から第一魔術師団の駐留地が見える。その先にダークミストが迫っているのも見えた。
少し手前で地に降りて駆ける。
アルタス副師団長がすぐに気がついて挨拶がなされる。
昨夜急いで調合した新しいポーションをアルタス様に渡す。
「アルタス様、これを皆さまにどうぞ。先にご出発され、魔獣討伐で消耗しておられると思いますので」
「はっ!怪我をしている者も多いので助かります」
「状態異常もこれで効くはずです。もし傷が治らない方は申し出てくださいませ」
アルタス様は部下に命じ、ポーションを全員に配ってくださった。
ヴァン様とアルタス様が打ち合わせされている。
「団長殿、アデリーヌ嬢は」
「アルタス達が連れてきたのでは」
「えっ?団長殿が同行されるかと」
「なぜ私が、あれと関わる必要がある」
「確かに」
「帰還したら必要ないと言っておけ」
「はっ」
その間に、周りから声が上がってきた。
「嘘だろ、なんだこれ」
「傷が全部消えたぞ」
「嘘みたいだ、指が!」
一人の魔術師様が前に走ってきて、跪き、涙を流している。
「指が、指が、治癒師殿、ありがとうございます」
その方が縋り付きそうになった時、私は抱え上げられていた。
「皆に紹介するのが遅れた。減るから、お前たちには見せたくなかったが、仕方ない」
何を言ってるんですか?魔術師様たちが唖然と固まっている。
「私の真の婚約者であり、特級治癒師のペルラ・クレサール嬢だ。皆いいか。私のことはいい。命をかけてペルラ嬢を守り抜け!ダークミスト殲滅の女神だ!」
「「おーーーーーーーッ」」
なんと言う号令をかけているんですか。恥ずかしい。
「これは厳命だ。私の婚約者に近寄るな!触るな!もし指一本でも触れたら指を切り落とすぞ」
皆さんがシンと静まる。
ちょっと待って。
私は、なんとかヴァン様からすりぬけ、一歩踏み出した。
「指は、私が治しますので、怖がらないでください」
心の中で呟いた。治せるポーションがあるわ。
「「「おおおーーーーーーーーっ!」」」
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そして、私達は、魔術師団の後方支援を受け、最前線に立つ。
私は、ヴァン様の『黄金の風』を初めて見た。
片手を上げ、静かに一言だけ。
《全てを御許に》
ヴァン様の背に大きな一対の翼がはためき、辺りの空気を揺らした。全てを祓いながら一瞬で燃えたのか、消えたのか、吹かれたのかわからないけれど、ダークミストは消滅した。
私には、そう見えた、気がした。
同時に私は、その背中に手を置いて、無詠唱でヴァン様に聖魔法を注ぎ込んでいく。
《身を焦がし吹き荒れる黄金の風よ、
この者を癒したもう、御身の御前に安らかに》
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後ろにいた第一魔術師団の全員が呆然と立ち尽くした。
ヴァンドール団長が手を上げた瞬間、後ろにいた純白のローブを纏った治癒師ペルラ嬢を中心に魔法陣が立ち上がる。
そして二人の全身を覆うように、純白のベールが現れ、
極薄い紫が混じった銀粉が周りを舞い散る。
二人の姿が再び現れたとき、ダークミストは消え去っていた。
詠唱もない静かな一瞬だった。
ダークミストの殲滅は無事に終了した。
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——コロセ、ハヤク、コロセ、アデリーヌ、コロセ——
更新頻度を上げられるよう頑張ります。




