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お人好し令嬢の異世界婚活記3〜白百合と蒼金の誓い  作者: カンテラ澪


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4 ヴァンドール様と共に討伐へ行きます

⌘

ヒデオン先生の研究室。


ナステイル討伐の数日前。


ヴァン様と私は、ヒデオン先生の研究室で、ヴァン様の治癒方法について相談をしていた。


ヴァン様のお話では『黄金の風』を発動した瞬間から、魔法の威力に応じて、体内が焦がされていく。

もしその時に、少しでもダークミストを吸い込んだり触れたりしたら命に関わる。


一体どんな痛みを背負って討伐へ向かわれていたのかと思うと、こっちまで苦しくなる。



「ヴァンドール様に治癒魔法をかける時、ここの痣のところが一番早いようなのです」

「確かに、私もそんな気がする」


今、ヴァン様は寝台にうつ伏せに横たわったまま、私は背中に手を当てて治癒魔法をかけている。

隣ではヒデオン先生がヴァン様の脈診をしている。


「今は、とても微量の魔力を流していますが、いかがでしょうか」

「さっきより魔力量が多く感じるな」


「ヒデオン先生、いかがでしょうか」

「確かに、ペルラ様の言う通りですな。脈診でも、ペルラ様が同じ量の魔力を流しても、場所によって体内に出る効果が違う。色々と試して頂いたが、ペルラ様が言われた場所が、一番、魔力の通りが速く効果が高い。どうやってこの場所を見つけられたのか」


「初めて治療した時に、ここにダークミストが集まっていました」


「つまりダークミストがここから注がれていたと」

私は頷く。


「それは皆、そこに溜まるのか」

ヴァン様が顔をこちらに向けて聞いてくる。

いつもは見下ろされているけれど、下からの目線はヴァン様が少し幼く見える。なんだか新鮮。


「ヴァンドール様は特別かと。他の方は、お臍の下が多いですよね」


ヒデオン先生が頷く。治癒師や薬師は知っていることだけど、体の中に魔力が溜まる場所がある。多くの人はお臍の下。


「以前、治療と称してダークミストを受けていた時は、ここだったのですか?」


「確かに、アレもここに手を当てていた。しかし、服は脱いだ事はないし見せた事もない。それにアレは特級治癒師ではなかったのに、なぜこの場所がわかったのだ」


ヴァン様の身に起きることは説明がつかないことが多い。

「ヴァンドール様、アデリーヌ様がこの場所をなぜ選んだかわかりませんが、後ろから、ここを狙われると防御が難しいですね」


「魔法を使う時は結界は張っている。私の結界を壊せるものがいるとは思えないが、気をつけよう」


「私が後ろにいることで、防御は強固にできます。ヴァンドール様の背中に手を当て、黄金の風を発動する瞬間に聖属性の治癒魔法『ピュアソウル』を発動しましょう。それが一番、効率的です」


「ララ、手を当てるだけなら、私の前で抱きついて後ろに手を回してくれてもいいぞ。その方がララを守りやすい」


一瞬何を言われたのかわからなかった。少し考えて顔が熱くなる。


「ヴァンドール様、討伐時にそんな格好できません!」

ヴァン様がニヤリとする。


ヒデオン先生が笑っている。

「若いということは良いことですな。お二人の愛の熱さでダークミストなどすぐに蒸発してしまいそうだ」


ヒデオン先生まで、何をおっしゃるの。

もう恥ずかしい。


ヴァン様が起き上がって、私の髪をひとふさ掬い取る。ヒデオン先生の前でやめてください。




⌘

そしてナステイルの討伐日になった。

陽が昇る前に、ヴァン様と私は、ラファールとガブリエルに乗って、ナステイルへ向けて文字通り飛んだ。

空から第一魔術師団の駐留地が見える。その先にダークミストが迫っているのも見えた。


少し手前で地に降りて駆ける。

アルタス副師団長がすぐに気がついて挨拶がなされる。


昨夜急いで調合した新しいポーションをアルタス様に渡す。

「アルタス様、これを皆さまにどうぞ。先にご出発され、魔獣討伐で消耗しておられると思いますので」


「はっ!怪我をしている者も多いので助かります」

「状態異常もこれで効くはずです。もし傷が治らない方は申し出てくださいませ」


アルタス様は部下に命じ、ポーションを全員に配ってくださった。


ヴァン様とアルタス様が打ち合わせされている。

「団長殿、アデリーヌ嬢は」

「アルタス達が連れてきたのでは」

「えっ?団長殿が同行されるかと」

「なぜ私が、あれと関わる必要がある」

「確かに」

「帰還したら必要ないと言っておけ」

「はっ」


その間に、周りから声が上がってきた。

「嘘だろ、なんだこれ」

「傷が全部消えたぞ」

「嘘みたいだ、指が!」


一人の魔術師様が前に走ってきて、跪き、涙を流している。

「指が、指が、治癒師殿、ありがとうございます」

その方が縋り付きそうになった時、私は抱え上げられていた。


「皆に紹介するのが遅れた。減るから、お前たちには見せたくなかったが、仕方ない」

何を言ってるんですか?魔術師様たちが唖然と固まっている。


「私の真の婚約者であり、特級治癒師のペルラ・クレサール嬢だ。皆いいか。私のことはいい。命をかけてペルラ嬢を守り抜け!ダークミスト殲滅の女神だ!」


「「おーーーーーーーッ」」

なんと言う号令をかけているんですか。恥ずかしい。


「これは厳命だ。私の婚約者に近寄るな!触るな!もし指一本でも触れたら指を切り落とすぞ」


皆さんがシンと静まる。

ちょっと待って。


私は、なんとかヴァン様からすりぬけ、一歩踏み出した。


「指は、私が治しますので、怖がらないでください」

心の中で呟いた。治せるポーションがあるわ。


「「「おおおーーーーーーーーっ!」」」




⌘

そして、私達は、魔術師団の後方支援を受け、最前線に立つ。


私は、ヴァン様の『黄金の風』を初めて見た。


片手を上げ、静かに一言だけ。

《全てを御許に》


ヴァン様の背に大きな一対の翼がはためき、辺りの空気を揺らした。全てを祓いながら一瞬で燃えたのか、消えたのか、吹かれたのかわからないけれど、ダークミストは消滅した。

私には、そう見えた、気がした。


同時に私は、その背中に手を置いて、無詠唱でヴァン様に聖魔法を注ぎ込んでいく。



《身を焦がし吹き荒れる黄金の風よ、

この者を癒したもう、御身の御前に安らかに》 




⌘

後ろにいた第一魔術師団の全員が呆然と立ち尽くした。


ヴァンドール団長が手を上げた瞬間、後ろにいた純白のローブを纏った治癒師ペルラ嬢を中心に魔法陣が立ち上がる。

そして二人の全身を覆うように、純白のベールが現れ、

極薄い紫が混じった銀粉が周りを舞い散る。


二人の姿が再び現れたとき、ダークミストは消え去っていた。

詠唱もない静かな一瞬だった。


ダークミストの殲滅は無事に終了した。



⌘

——コロセ、ハヤク、コロセ、アデリーヌ、コロセ——

更新頻度を上げられるよう頑張ります。

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