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第125話 凍らない水路の横道

ネルとは、水路町で別れて以来だった。


すぐ道を見に行きたい気持ちはあったが、僕たちの残り二日は休日だった。


「調査は三日後からでも大丈夫ですか」


「もちろんです。僕も明日は水路当番へ戻ります。三日目の朝、町で待ちます」


ネルは地図を預けず、自分で持ち帰った。僕が休みの日に読み始めないよう、リゼが頼んだわけではない。彼自身が、相談と作業の日を分けていた。


連休二日目の朝、交易所から黄色札が一通家へ届いた。大型機械が古い書式を読めず、受付が三台待っているという。


封筒には、『赤ではない。連休後でよい。記録のため送付』と大きくある。


僕は開封せず、相談室の翌営業日箱へ入れた。冬講座では子どもたちと雪道の足跡札を作り、三日目は昼まで眠った。


差し出した一日以外の二日は、仕事へ戻らずに済んだ。


約束の日の朝、交易所の三台は弟子たちが手動受付を終えていた。古い書式の写しと質問だけが残り、荷物は止まっていない。それを確認してから、水路町へ向かった。


彼は約束通り、陶札と交替手順を使った一月分の報告を送ってくれた。その後も季節ごとに、割れた札、休めた日、直した場所を知らせてくれている。


「今は、夜中に四回見回っていませんか」


「していません。交替札が三角の時だけ、二人で見ます。僕も月に二日休んでいます」


ネルの一月報告には、陶札が割れた日もあった。荷車の車輪が柱へ当たり、丸札が一枚落ちた。予備へ交換し、破片を陶器工房へ送ると、次の札は縁を少し厚くして戻った。


ミズネズミは陶札を食べなかったが、紐を巣材にした。革紐へ替え、低い所だけ金具にした。


問題がなくなったのではない。小さく見つけ、町の人だけで直せるようになっている。


「僕がいない日に、中央門を閉めることもありました」


「怖くありませんでしたか」


「少し。でも、戻った時に記録と水が合いました」


休めた経験が、今の落ち着いた声につながっていた。


以前より声が少し大きくなっていた。


彼が持ってきた地図には、水路町から国境へ向かう古い管理道が描かれていた。


山の貯水池から流れる水は、地下の温かい岩を通るため、冬でも完全には凍らない。その水路に沿って、水番が門を点検する細い道がある。


管理道は地図上では一本だが、所有と役割は三つに分かれていた。


水路町が管理する門沿い。領主府が持つ古い石橋。途中の農家が手入れする林道。


「水番の判断だけで、全部を荷車へ開けられません」


ネルは、最初から三者の連絡先を地図へ付けていた。前の彼なら、自分で全て許可を取ろうとしたかもしれない。


水路町は、点検を優先する条件で試験を認めた。領主府は橋の重量上限を守ること。農家は、畑へ入る角を広げる代わりに通行料の一部を受け取る。


使っていない道でも、誰のものでもないわけではなかった。


街道は雪が積もると峠を大きく回る。管理道なら谷沿いに進み、距離が一日分短い。


「荷車が通れますか」


「全部ではありません。狭い橋が二つ、低い枝が一か所。小型の荷車なら今も通ります」


ネルは、使えると言い切らなかった。地図には、幅、高さ、坂、水路門の位置が書かれている。


水路沿いには、陶札を保管する小屋が三つある。普段は水番の休憩所で、空き棚と乾いた床がある。荷物を一晩置けるかもしれない。


「どうして、この道を?」


「交易所の荷車が雪で二日遅れると聞きました。僕たちの水路が、何か返せると思って」


水路町では、作業代を受け取れなかった。僕は次回条件を決め、ネルから使用報告をもらった。彼はそれだけでは返し足りないと考えていたらしい。


「報酬を返せなかった借りとして、道を無償で貸す必要はありません」


「借りではありません。水番の仕事として、使っていない道を役立てたいんです。維持費は必要です」


彼のほうが、条件を先に言った。


管理道を使う荷車一台ごとに、橋と路面の維持費。水番小屋へ泊まるなら清掃費。水路の点検がある日は通行停止。通れる荷車の大きさと重さにも上限。


水番の緊急作業が入った時、荷車の期限より水を優先する。交易所側はそれを契約へ明記し、別の街道へ回る時間も見積もる。


「短い道なのに、止まるかもしれないのは困る」と商人は言った。


「必ず通れると約束する道ではありません。前日の水路札が丸なら予約し、三角なら街道へ戻す補助路です」


一つの道へ全荷物を移さず、選択肢を増やす。通れない日があっても、元の街道は残る。


到着通知機には、管理道を選んだことと、前日確認の印を送る欄を加えた。受取人も、遅れの可能性を先に知れる。


僕たちはその場で新しい輸送路にせず、空荷の小型馬車一台で試した。


ネル、ルカ、僕、リゼが乗る。幅を測り、車輪が水路へ寄りすぎる場所へ杭を置く。最初の橋は通れた。二つ目は、荷台の角が欄干へ近い。


「荷車を全部小さくしますか」


「橋の手前で荷物を積み替える案もあります」


積み替えれば手間と落下の危険が増える。橋を広げれば費用が大きい。フィンへ幅を少し増やす金具を相談し、まず一台ずつ誘導することにした。


休憩小屋も見た。


一つ目は乾いている。二つ目は水路道具で半分埋まる。三つ目は屋根の端から雪が入る。


荷物保管に使うのは一つ目だけ。二つ目は水番の道具を優先。三つ目は修理するまで使わない。


何でも空いている場所として使わず、本来の仕事を守った。


水温のおかげで道の雪は薄く、試験馬車は街道より半日早く国境へ着いた。荷物の受け渡しを合わせれば、一日短くできる。


試験の帰りは、あえて夕方に通った。日が傾ると水路から霧が立ち、二つ目の橋が見えにくい。昼は問題なかった場所へ、反射する白い陶札を置くことにした。


夜間通行は認めなかった。灯りを増やせば走れるが、水路へ落ちた時の救助が難しい。急ぎの荷物ほど夜も走らせたくなるので、日没時刻を出発札へ大きく書く。


一日短縮は、夜を削った速さではなかった。安全な昼の道が短い分だけだった。


交易所の到着通知機へ、新しい道の試験印が届いた。


ネルの地図は、報酬の代わりではなかった。前の仕事で休めるようになった水番が、自分の仕事として持ってきた次のつながりだった。

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