第124話 三日のうち一日
三連休には、遠くへ旅行する予定はなかった。
増築した家で雪囲いを直し、共同学び場の冬講座へ一日顔を出し、残りは二人で何もしない。生活板へ三つの青い月札を続けて置いていた。
「冬講座は、休日ですか」
リゼが聞いた。
「子どもたちと雪の札を作るので、半分仕事かもしれません」
「学校から講師料は?」
「もらいません。僕が参加したい講座です」
自分で楽しみに行くことと、頼まれて働くことを分けた。もし安全責任者として呼ばれるなら仕事になる。今回はエメリク校長が責任者で、僕は参加者だった。
三日間の内訳は、生活板へもう少し具体的に書いた。一日目、帰宅と雪囲い。二日目、冬講座。三日目、予定なし。
予定なしの青札も、空白ではない。何も置かないと決めた日だった。
仕事を四日延ばせば、三枚とも消える。
「全部を守るなら、延長を断れます」
リゼが言った。
交易所は、今の手順でも動いている。僕たちが帰っても、急に荷物が止まるわけではない。残りは全交替の訓練と、使いながら出る質問への対応だ。
「一日だけ、仕事へ使いたいです」
僕は三枚のうち、最初の一枚を指した。
一日目を仕事へ渡すと、帰宅は夜になる。雪囲いは、バルド社長が前日に確認できる。冬講座は二日目のまま。何もしない三日目も残る。
差し出す物と、守れる物を並べた。
「リゼの一日も、仕事へ変わります」
「私は交渉担当として、その一日が必要だと思う。でも、シュウが残るから付き合うのではなく、自分で選ぶ」
僕の善意へ、恋人の時間を自動で付けない。リゼも自分の契約延長を一日分だけ書いた。
宿の延長は一泊。翌日の帰り馬車も予約する。『終わるまで』ではなく、出発時刻を先に決めた。
初日の朝に夜番と休日番の訓練を終え、夕方までに引継ぎをする。残り二日は帰って休む。質問はルカ、フィン、ミナと、交易所の書記が受ける。
「一日を差し出すのは、断れないから?」
「いいえ。ここまで作った仕組みを、僕がいる日に一度だけ休日番へ渡したいです。その一日を使うと決めます」
失う休日を数え、残す二日も先に決める。全部かゼロかにしない。
マルテへ条件を出した。
延長は一日だけ。翌日以降は弟子たちの現地支援へ契約を分ける。僕への連絡は、食品の安全、荷物の紛失、人身事故の赤札だけ。その他は二日後にまとめて読む。
弟子たちにも、頼む前に予定を聞いた。
「僕たちが引き受けなければ、連休を全部使いますか」
ルカが尋ねた。
「いいえ。マルテさんたちだけで続け、質問は連休後にまとめます。訓練が一巡しないだけです」
二人が断れば僕が犠牲になる、という圧力を置かない。別の案を先に伝えた。
フィンは二日目の午後に工房の予定があるため、午前だけ。ミナは三日目に薬房の当番なので、一日目と二日目。ルカは二日とも現地に残るが、その次の二日を休みにする。
若い人の空白へ仕事を詰めず、代わりの休日まで予定板に置いた。
マルテは三人を『シュウさんの代わり』と呼んだ。僕たちは言い換えた。
ルカは現地運用、フィンは機械保守、ミナは食品と薬の確認。僕の代わり一人分ではなく、三つの役を持つ担当者だった。
ルカは国境の荷車動線を見たい。フィンは大型魔道具の保守を学びたい。ミナは薬と食品の口元札を確認したい。三人とも引き受けたが、連続勤務にならないよう日を分けた。
報酬は、僕の延長分から移すのではなく、現地支援として個別に計上する。宿と食事も交易所が手配した。
最初の休日の朝、僕たちは夜番の交替を見た。
前夜に仮置きした三台。封印あり、危険札なし、必要期限は三日後。朝番は共通札の五項目を指し、受付機へ番号を通し、三確認台へ送る。
一台の数量欄が、東国の単位だけだった。
ルカは換算表を使う前に、袋数と荷車の大きさを見た。換算後の重量が荷車の積載上限を超えるなら、単位の読み違いかもしれない。
計算すると上限の半分で、実物の見た目とも合った。書記二人が同じ換算を別々にし、結果をそろえる。
確認のために二人で全計算を重ねるのではなく、異なる国の単位を換える時だけ二人確認にした。
通知先なしの荷物では、紙の到着札へ誰が運ぶかを書いていなかった。休日番は定期便箱へ入れた後、運送組合の受取印をもらう欄を足した。
訓練の日にも、仕組みは少し直った。
以前ならマルテを起こす。今は換算表を見て、ラウム重量を追記し、書記二人が確認印を押した。
別の一台は通知先なし。紙の到着札を次の定期便箱へ入れた。
僕が答える場面はなかった。
午後、休日番が同じ手順を使い、黄色札を二件出した。どちらも弟子たちとマルテで処理できた。
夕方、僕は相談記録へ署名し、残り二日の月札を指した。
「明日から、僕は返事をしません。赤札以外は三日目の朝に読みます」
黄色札が届いても開くのは三日目の朝。冬講座と、何もしない日を先に終えてから戻る。その扱いも、マルテと弟子たちへ確認した。
マルテは泣きながらうなずいた。
「私も、夜番へ任せて眠ります」
交易所を出ようとした時、門の外に見覚えのある細身の男性が立っていた。
丸、四角、三角の陶札が付いた水路地図を抱えている。
「シュウさん。報酬の代わりになるか分かりませんが、見せたい道があります」
水番のネルだった。




