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第123話 遠くへ着いたと知らせる機械

大型魔道具には、自動仕分け以外にも機能があった。


三国書類を読むため、遠方の登録所と魔法信号をやり取りする。商会印や封印番号が有効か、各国の記録板へ問い合わせる仕組みだ。


「この通信部分だけでも、使えませんか」


僕が設置職人へ尋ねると、彼は機械の背面を開いた。


中には三つの小さな通信石があり、それぞれ国境の登録所へつながっている。今は番号の照合にしか使っていないが、短い定型文なら送り返せるという。


交易所で、長く困っていたことを聞いた。


荷物が着いたか分からない。


到着を知らせる仕事は、これまで夜番の若い書記が担当していた。三国書類の審査が終わった箱から、送り主と受取人へ手紙を書く。一台に二通、日に二十台なら四十通。


書記は同じ文章を何度も書き、伝書鳥の空きを待つ。急ぎの検問連絡と普通の到着通知が同じ鳥籠へ入り、本当に急ぐ手紙が遅れることもあった。


「通知がなければ、荷物は渡せませんか」


「渡せます。でも受取人が来ず、倉庫で待ちます」


到着通知は法的な審査ではない。単純だが量が多く、遅れると保管場所を使う。大型魔道具が得意な仕事に近かった。


若い書記へ、機械へ任せたいか聞いた。


「なくなると助かります。ただ、届かなかった相手を誰が見るかは残してください」


仕事を減らされる不安より、例外が消えることを心配していた。通知先なし、通信石の不通、誤った登録先。この三つだけは人の確認欄へ出すことにした。


商人は必要期限を過ぎても、街道のどこに荷車がいるか知らない。交易所へ着いていても、三国の書類がそろうまで到着印を送れない。御者は、受取人から催促の伝書鳥を何羽も受ける。


「受付番号を束ねた時点で、『交易所へ到着』だけ送れますか」


書類の審査が終わった、倉庫へ入った、受取人へ渡した、は別の状態だ。全部を『到着』と呼ぶとまた混乱する。


通知を三つに分けた。


門へ着いた。確認を終えた。次の御者へ渡した。


三つの印は、同じ形に日付だけを変えなかった。


門はアーチ。確認済みは二つの目。引渡しは左右の手。受取人が一つだけ見ても、今どの段階か分かる。


最初は三つとも機械から送る案だった。しかし、確認を終える判断は三国の検問官、引渡しは倉庫員と御者が行う。機械が自動で送れば、現場の作業より先に通知される可能性がある。


門への到着だけは、受付番号を束ねた時点で事実になる。だから一つに絞った。


残り二つは、担当者が共通札を裏返した時に手動で送る。将来、十分安定してから見直せるよう余白を残した。


大型魔道具が担当するのは、最初の『門へ着いた』だけ。封印番号を束ねた瞬間、送り主と受取人の登録板へ定型の印を送る。


丸い門の印と日時。文字は各国の登録所が自国語へ変える。


「内容を自由に書けますか」


マルテが聞いた。


「書けますが、一つにしましょう」


自由文にすれば、商人からの質問や交渉まで機械へ集まり、返事をする人が要る。今は到着した事実だけ。詳しい問い合わせは今までの窓口へ分ける。


試しに、アーシュの香辛料へ到着印を送った。


東国の農園、ラウムの香辛料屋、アーシュ本人の携帯札。三か所へ同じ門印が光る。香辛料屋から、『受領予定を明朝へ変更する』と返事が来た。


以前は、交易所を通過して二日後に荷物が突然届くことがあった。到着だけ分かれば、倉庫や人を準備できる。


次に、登録板を持たない小さな農家の荷物で試した。


通信石が一時的に曇った場合も試した。送信中の印が回り続け、成功と失敗が分からない。設置職人は、一定時間で黄色札へ変わるよう調整した。


再送は一回だけ自動。二回目も失敗したら書記の確認箱へ。何度も送り続けて通信石を消耗させない。


同じ通知が二通届いた時、受取人が荷物も二台あると思わないよう、封印番号と『再送』の小さな印を付ける。アーシュの商会へ実際に二度送り、一台として読めるか確かめた。


「通知の失敗まで試すんですね」


マルテが言った。


「うまく届く時より、届かなかった時に誰が動くかを決めたいです」


送信先がなく、魔道具は黄色い『通知先なし』を表示した。勝手にエラーとして止めず、御者へ紙の到着札を渡す。次の宿の定期便で農家へ送る。


機械を使えない相手も、荷物を通せる道を残した。


三日間で、到着通知は四十件送られた。問い合わせの伝書鳥は半分以下になり、御者が同じ説明を繰り返す回数も減った。


夜番の書記が書いた手紙は、四十通から七通へ減った。通知先なしが三、通信失敗が二、受取人名の確認が二。人が書く七通には、それぞれ理由があった。


空いた時間で、書記は翌朝の仮置き場を整理し、夜番同士の引継ぎを一緒に見られる。単純な通知を機械へ渡し、人は不明な荷物へ時間を使えた。


到着通知で使う通信石の費用も計った。一件ごとの魔力消費は伝書鳥の餌代より少ない。ただし保守費を含めると、荷車が日に五台以下なら紙のほうが安い。今の交易所は平均二十台なので役に立つ。


『大きな機械だから何にでも使う』のではなく、量と費用が合う仕事を一つ選べた。


自動行き先判断は使わない。けれど文字読み取り、番号束ね、重い箱の移動、到着通知には、毎日役がある。


「無駄ではなかったんですね」


マルテは、安心して涙を流した。


「全部を使い切ったわけでもありません。使わない機能の費用は、失敗として記録しましょう。その上で、残った役を大切にします」


購入報告には、失敗した目的と、新しく絞った目的を両方書いた。成功だけへ書き換えない。


大型魔道具の名前札も、『三路自動仕分け機』から、『国境受付・到着通知機』へ替えた。現場の人が、何を任せてよいか名前で分かる。


十日の契約期間は終わりに近づいていた。


共通札の運用手引き、三確認台の最終配置、到着通知の登録、夜番への引継ぎ。あと四日あれば、全交替で一度ずつ試せる。


マルテは、延長費用と宿を用意できると言った。


予定板を見る。


四日目からは、僕とリゼが約束していた三連休だった。

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