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第111話 麦に良くても薬草には強い風

ミナは、セラと一緒に中央倉庫へ来た。


薬草の束を一本ずつ見る。色、匂い、茎の曲がり、葉の割れ方。毒になった物や腐った物はない。ただ、水分が抜けすぎ、運ぶ振動で葉が粉になる。


「薬は乾いているほど長持ちすると思っていました」


倉庫員が言った。


「種類によります。この葉は、少ししなやかさが残らないと割れます。粉でも使える薬はありますが、量を量り直す必要があります」


ミナは三本の葉を並べた。


一つは適度に乾き、曲げるとゆっくり戻る。一つは乾きすぎ、触れただけで割れる。一つは湿りすぎ、色が暗くなっている。


「長持ちするのは、真ん中ではありません。薬ごとに、ちょうどよい場所があります」


倉庫員たちへ実際に触ってもらった。目で色を見て、指で曲げ、匂いを離れて確かめる。測定魔道具を一台増やす案もあったが、まず毎日手に取る人が変化へ気づける三つの見本を棚へ置いた。


見本は一月ごとにセラが交換する。古くなった見本を正解として残さないためだ。


セラは、廃棄箱に入っていた粉を調べた。汚れのない物は、塗り薬の材料として使える。床へ落ちた物は使えない。


全部を捨てたと思っていた損の一部は、用途を分ければ戻せた。


原因は、三月前に入れた乾燥魔道具だった。


麦袋の湿気を減らすため、倉庫全体へ弱い風を回す。薬草棚は食料と同じ壁にあり、風の出口に最も近い。測定石の数字を安定させようとした改善が、別の保管物へ影響していた。


乾燥魔道具を設置した記録には、『麦袋の底の湿気を減らす』と書かれていた。薬草についての欄はない。当時、薬草棚は別室にあり、後から空調のよい中央棚へ移されている。


魔道具を入れた人も、棚を移した人も、それぞれの目的では正しかった。二つの変更が重なった時に、確認する役がいなかった。


今後は、倉庫内で場所を変える時、『風』『湿気』『温度』『隣の品』の四つを見る。新しい設備を入れる時は、主な対象だけでなく、その風下にある棚を一週間確認する。


失敗した乾燥魔道具を外すのではなく、変更同士のつながりを手順へ足した。


「乾燥魔道具を止めますか」


ドーガが聞いた。


「麦には今の範囲が合っています。薬草だけ場所を分けましょう」


倉庫の北側に、昔使っていた小部屋があった。扉はあるが、棚がなく、今は空箱置き場になっている。風の直撃を受けず、温度も安定していた。


まず一週間だけ、三種類の薬草を少量ずつ移した。湿り気札を置き、朝夕に葉を一枚曲げる。折れず、黴も出ない範囲を確かめる。


残りの薬草は、すぐ全て動かさなかった。新しい小部屋が合わなければ、被害が広がる。試す束には黄色い紐を付け、診療所へ出荷しない。試験終了日も扉へ書いた。


一日目、朝と夕に大きな差はない。三日目、奥の棚だけ匂いが弱い。五日目、入口側の葉はちょうどよい。


倉庫員が毎回同じ葉を曲げ続けると、その葉だけ傷む。束の端へ試験用の三枚を別に付け、日ごとに一枚ずつ使うようにした。


確認するために商品を壊す量も、最初から数える。試験用に使った葉は、汚れていなければセラが調合練習へ回した。


ミナは、薬草を全て同じ条件へ置かなかった。


青札は乾燥を好む根。緑札は少し湿り気を残す葉。白札は瓶へ密封する粉。棚を三段に分け、風口からの距離も変えた。


「名前だけでは、新しい倉庫員が分かりません」


ルカが言う。


札には薬草名と一緒に、葉、根、粉の形を描いた。さらに、『乾かす』『風を避ける』『封を確かめる』の手順を一つずつ付ける。


薬草棚の担当を、一人だけにはしなかった。食料当番の中から毎日一人、診療所から週に一人。倉庫の保存状態と、実際に薬として使った時の状態を互いに伝える。


毎日の倉庫員は、見本と比べて札を置く。週一度の薬師は、薬効と調合時の崩れ方を見る。役割を混ぜず、二つの観察を一枚へ並べる。


倉庫員が薬の良し悪しまで判断しなくてよくなり、薬師も毎日倉庫へ通わなくてよい。


異常がある時の連絡も分けた。黴や異臭はその日にセラへ。少し乾きすぎは週次札。棚の破損はドーガ。誰に知らせるか迷って僕へ全て来ないようにした。


ミナは連絡札を作りながら、『私の名前だけを書かないでください』と言った。彼女が薬房にいない日もある。宛先は『当番薬師』にし、その日の名札を替える。


水路のネルが一人で全部見る怖さを思い出し、僕も賛成した。


最初の週、緑札の葉は割れなくなった。しかし奥の棚で少し匂いが弱くなった。風を避けすぎて、湿気がこもったらしい。


棚の背板へ小さな穴を開け、直接ではない風を通す。二週目には、しなやかさと匂いが両方残った。


「一度で正しい場所を決めなくてよかったです」


倉庫員は、試験札へ二度の変更を書いた。


エメリク校長へも結果を送り、学校の畑授業へ『同じ植物でも保存場所で変わる』という新しい札が加わった。子どもたちは、日向、日陰、風の三か所へ同じ葉を一枚ずつ置き、翌日比べた。


学校で作った試し方が倉庫へ来て、倉庫の学びがまた学校へ戻る。共同学び場は土地だけでなく、仕事の経験が戻る場所になっていた。


報告表の理由にも、『調剤使用』『保存中破損』『別用途へ転用』の三つを増やした。廃棄を隠さず、何が戻せたかも分かる。


一月後、薬草の減り方は診療所への出荷とほぼ一致した。以前の半分近くまで無駄が減り、粉へ転用した量も別に数えられる。


ドーガは、空の小部屋へ立派な薬草棚を作ろうとした。


「俺の部下に、すぐ大工を呼ばせる!」


「使う人に、必要な箱を聞いてからにしましょう」


セラは薬房へ連絡を送った。


数日後、中央倉庫の前に馬車が三台止まった。


薬房で一緒に仕事をした薬師たちが、新しい保存箱と、古い箱を直した物を積んで来ていた。

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